アサルトリリィ MIX BLOOM   作:カッパサン

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第6話です。

納得出来る話にするために投稿が遅くなりました。
亀更新な感じになったと思います。
今回の話も文字数が多くなりましたが、次は短いかも知れません。
それではご覧ください。


「6」木葉奈々は手の内を明かす

木葉奈々は、白井夢結と一緒に訓練を行っていた。

 

その訓練内容は………

 

 

 

 

奈々「…………………」

 

 

射撃訓練だった。

 

夢結は訓練用のグングニル・カービンを片手で持ち、的の中央を適格に命中させてるのに対し、

 

奈々は同じグングニル・カービンで両手で持ってるのに、的に一才当たらなかった。

 

 

夢結「これが貴女の2年間の成果なの?」

奈々「私は射撃が苦手だって知ってるでしょ!」

 

 

自身が言った通り、奈々は射撃が苦手である。

 

2年前、グングニルを使ったときから彼女は苦手だったのだ。

 

CHARMを変えても、射撃の扱いが変わることはなかった。

 

そこで奈々は短所を補うのではなく、長所を伸ばす方針に切り替えた。

 

 

結果、完全近距離特化の戦闘スタイルを確立させた。

 

また、使っていたCHARMは近距離特化のダインスレイフだった。

 

その為か、戦闘スタイルが夢結と少し被ってる事もあってか、戦闘では同じ前衛で戦っていたのだ。

 

今回、ブルーガードにいた時の訓練は、アタッカーとしてのスキルを優先した為、射撃の訓練は本の少し。

 

なので奈々の射撃スキルはわずかしか鍛えられていない。

 

 

奈々「私は純粋な近接型ですから、射撃は必要ありません」

梅「あははは…いいんじゃないか?近接特化。梅は嫌いじゃないゾ」

 

 

同じく訓練していた梅が言う。

 

 

夢結「何いってるのよ。いくら長所を伸ばしたとはいえ、射撃は大事よ。取り巻きの駆除、牽制、活躍できる場面は多いもの。梨璃も最近は射撃が上手くなってるんだから、貴女も射撃の腕を磨かないと…」

奈々「一応牽制の術はありますよ」

夢結「えっ?」

 

 

奈々は訓練用に用意され第一世代CHARM、ヨートゥンシュベルトを手に取る。

 

そしてそのまま的に向けて、ヨートゥンシュベルトを素早く振ると、マギの刃が放たれ、的を半分に割った。

 

 

夢結「マギの剣圧…!」

梅「これは考えたナ」

 

 

割れた的は、しっかり中央から割れていたのがわかる。

 

先程のマギの刃は、確実に中央を捉えていたのだ。

 

 

奈々「ブルーガードで学んだ術です。これなら十分牽制に使えますよ」

夢結「………貴女らしいわね。短所を補うのではなく長所を伸ばす」

奈々「長所の向上は短所を補える。ブルーガードの教導官から言われた教訓ですからね」

梅「純粋な近接特化として固めていってるナ」

奈々「遠距離で戦うのは私の性に合いませんから」

夢結「……そういえば奈々」

奈々「?」

夢結「レアスキル、覚醒したの?」

 

 

夢結が奈々に突然レアスキルの事を質問した。

 

 

奈々「唐突にレアスキルの質問ですか?」

夢結「少し気になったのよ。貴女が何故CHARMを2つ持ってるのか…」

 

 

夢結は奈々のベルトに付けた2本のCHARMに気付き、質問をした。

 

 

奈々「この2本ですか?」

 

 

奈々はグングニル・カービンをテーブルに置き、腰に付けた2本のCHARM、カナベラルとブルメリアを外し、二人の前に見せた。

 

 

梅「大きめの剣のCHARMと短剣のCHARMか」

奈々「何故私が2本持ってるか…夢結さんはどうお考えで?」

夢結「そうね…基本、リリィはCHARMを一本しか扱えない。CHARMを2つ以上所持する理由としては2つあり、前者はCHARMが壊れたときの予備用として。後者はCHARMを2つ以上扱えるレアスキル、円環の御手を所持してる事。見たところ貴女が持ってるその2本はどちらも上等な物で、代えになる物はそうそうない。その2本のCHARMに付いてる傷から使い込まれてる事がわかるから前者じゃない…だとすると…」

奈々「私が後者、つまり円環の御手を持ってると…」

夢結「そう考えたけど…円環の御手に覚醒するスキラー数値は85以上が条件。入学当時の貴女のスキラー数値は50。円環の御手の修得条件を満たしてない。だから後者も違う。前者でも後者でもないとすれば、考えられるのは…私たちも知らない新たなレアスキル…円環の御手に近い能力を持ったレアスキルを貴女が持っていることかしらね」

 

 

夢結が推測で奈々がCHARMを2本持ってる理由に付いて述べてみた。

 

 

奈々「………」

夢結「……まあこれ以上詳しくは聞かないわ。貴女のレアスキルは実戦で見せてもらうわ」

奈々「わかりました。その時になったら…」

 

 

奈々は2本のCHARMを腰に納める。

 

 

奈々「所で梨璃ちゃん、どんなレギオンを作るんでしょうね」

夢結「さあ…正直。梨璃にメンバーを集められるとは思わないけど、時には失敗も良い経験になるでしょう」

奈々「どうですかね…前の話を聞いたところ、もしかしたらやりきるかもしれませんよ?」

梅「そう聞くと、本当にやるかもナ」

夢結「そうかしら…」

奈々「なんで疑問系?梨璃ちゃんのシュッツエンゲルなのに?」

夢結「まだなってから1日しかたってないんだけど…」

梅「奈々はレギオンに入るのか?」

奈々「しばらくはフリーでやっていこうと思ってます。元々私の戦闘スタイルは単独に強いので…」

梅「昔の夢結みたいだな」

夢結「昔の私…奈々みたいだった?」

 

 

夢結との練習を終えた奈々は気分転換に庭へやって来た。

 

 

奈々「?」

 

 

奈々は目の前に金髪の少女を見つけた。

 

安藤鶴紗である。

 

 

鶴紗「!?」

 

 

鶴紗は茂みの音に気付き、振り替える。

 

なんと茂みの中から出て来たのは黒猫だった。

 

黒猫は元気よく鳴いた。

 

 

鶴紗「はぁ…何だ猫か」

 

 

本来なら振り替えって去っていく筈だが、鶴紗は別人になったかのようにおかしなテンションで黒猫に近付いた。

 

 

鶴紗「ニャニャ〜!こんな所で何してるニャ〜?」

奈々(!!!??)

 

 

流石の黒猫もかなりビビった。

 

 

鶴紗「迷子になったかニャ?お腹空いてないかニャ?猫缶あるから一緒にどうかニャ〜?」

 

 

徐々に表情がやばくなっていく鶴紗。

 

しかし、鶴紗は奈々の気配に気付き、奈々の方へ顔を向けた。

 

 

奈々「やば!?」

 

 

それに対し、奈々は危機感を感じ、この場を去ろうとしたが…

 

鶴紗に肩を捕まれた。

 

 

鶴紗「今の見たな……!!」

 

奈々「うぎゃあああああーーー!!!??」

 

 

奈々の断末魔が学院中に響いた。

 

 

 

 

そんなこんなで、3日後…

 

午後の食堂で夢結と食事を取ってる奈々の前に、梨璃が6人のリリィを揃えてきた。

 

 

奈々「ほらね?」

夢結「ビックリしたわ。ほんとの意味で」

 

 

梨璃の後ろには、二水、楓、ミリアム、雨嘉、神琳、梅がいた。

 

 

梨璃「お姉様のお陰でこんなにいい仲間が出来ました!」

夢結「私は何もしてないけど…」

奈々「短期間で残り一人か…すごいな梨璃ちゃん」

夢結「ええ。ここまで集まるなんて、思っていなかったわ。梅は梨璃のレギオンに入ったのね」

梅「また夢結と一緒に戦えるからナ。そうだろ?」

夢結「そうね。よろしく頼むわ」

奈々「他の皆も梨璃ちゃんに協力したんだね」

楓「当然ですわ。梨璃さんいるところに私あり!ですわ」

二水「私も梨璃さんのレギオンに入った以上は足を引っ張らないよう頑張ります!」

ミリアム「夢結様の戦いに興味あるのもそうじゃが、またこの面子で一緒に戦えるのが嬉しくての」

雨嘉「梨璃に入ってほしいと言われて、私も梨璃の力になりたいと思ったから」

神琳「私も雨嘉さんとどう意見ですわ」

 

 

全員、梨璃に協力する気満々のようだ。

 

 

奈々「これで8人か…後一人だね」

梨璃「それなんだけど…奈々ちゃん、レギオンに入ってくれないかな?」

 

 

梨璃の誘いに奈々は…

 

 

奈々「ごめんなさい」

 

 

と、お辞儀をして断った。

 

 

梨璃「ええ!?」

神琳「まるで彼女に告白を断られた彼氏の光景ですわね」

楓「どうしてですの?梨璃さんの誘いを断るなんて…」

奈々「ごめん。私、しばらくはフリーで行こうと思ってるんだ。レギオンには入らないけど、協力はするから」

二水「奈々さんは他のレギオンからも誘われてるんですか?」

奈々「まあね。全部断ったし…でも誘うならもっといいリリィがいたはずじゃない?ほら、涼ちゃんとか」

二水「涼さんは違うレギオンを作りたいからと断られました」

奈々「同じ椿組の鶴紗ちゃんは?」

梨璃「鶴紗さん?実は…誘えなかったの」

二水「話しかけようとしたら、睨まれてしまって…」

奈々「鶴紗ちゃんらしいな…一度も誘ってないならチャンスがあるんじゃないかな?」

梨璃「うーん、誘いたいんだけど、今日は欠席だったから」

奈々「そうだった」

梨璃「…鶴紗さん、いつも一人でいるみたいだけど…」

梅「ああいう子は、なにかしら重いものを背負ってるからな。夢結みたいに」

夢結「何故私の方を向くのかしら?」

梨璃「だったら尚更、鶴紗さんをレギオンに入れないと…!」

夢結「…………梨璃」

 

 

夢結が話に入ってきた。

 

 

梨璃「お姉様?」

夢結「たとえ鶴紗さんの秘密を知っても?」

梨璃「………はい!」

 

 

一方、奈々は何故、安藤鶴紗が欠席したことについて考えていた。

 

 

奈々(そういえば、最後に会った時は頭を怪我してた…鶴紗ちゃんは木の上から落ちて怪我をしたって言ってたけど……まさか…!)

 

 

奈々は鶴紗がいない理由に、1つの答えを見出だした。

 

と、その時…!

 

 

 

 

鐘の音が響いた。

 

ヒュージ襲来の合図である。

 

 

梨璃「これは…!?」

夢結「ヒュージが来たわね」

二水「今日の当番はたしかアールヴヘイムの方達でしたね」

ミリアム「ワシ達はどうするんじゃ?」

夢結「アールヴヘイムは百合ヶ丘トップのレギオンよ。彼らの戦いを見るのもいい勉強になるわ。今後の為にも、ノインヴェルト戦術はもう一度見ておいた方がいいわ」

楓「それが懸命ですわね」

雨嘉「ノインヴェルト戦術…」

神琳「マギスフィアをパスで回しながらマギを溜め込み、相手にぶつける必殺武器ですわね」

二水「その代償として、マギとCHARMを大きく消耗してしまいます」

夢結「下手すれば、CHARMを破損してしまう可能性もある」

梨璃「出来るかな…私達に…奈々ちゃんは…あれ?」

 

 

いつの間にか奈々の姿がなかった。

 

 

ミリアム「いつの間にかいなくなっておる」

夢結「こんなときに何処へいってるのかしら……ん?」

 

 

夢結がテーブルに目を向けると、夢結が楽しみに残していたケーキが無くなっていた。

 

 

夢結(………奈々ね)

「そこにいたか…」

 

 

出雲が梨璃達の元へやって来た。

 

 

梨璃「先生どうしたんですか?」

出雲「さきほどのヒュージ襲来の合図とは別のヒュージが街の近くに現れた」

梨璃「ええっ!!?」

 

 

なんと別のヒュージが現れたことを出雲が皆に告げた。

 

 

出雲「襲来するヒュージはギガント級。今街で暴れているヒュージはラージ級だ。現在アールヴヘイムは街の外に待機しているが、ラージ級まで相手にしたらマギを消耗しかねん。お前達は発生した街に向かい、ラージ級を撃破しろ」

梨璃「先生、奈々ちゃんいなくなっちゃって…」

出雲「心配はいらん。一足先に現場に向かっている。それにもうひとつ重要な情報だ」

梨璃「重要な情報?」

 

 

 

 

 

出雲「安藤鶴紗が、政府からの依頼で現在ラージ級を相手にしている」

 

 

 

 

変わって、廃虚となった街の外れでは…ラージ級が暴れており、そこで戦ってるのは鶴紗一人だった。

 

相手にしているヒュージは前に梨璃と夢結が止めを刺した哺乳類のラージ級に少し似ていた。

 

鶴紗は専用の大剣CHARM、ティルフィングで大きな一撃を何度も与えるが、ラージ級はまだ倒れない。

 

鶴紗に焦りの色が見え、大きな隙を作ってしまい、ラージ級の口から炎が吹き出され、鶴紗は飲み込まれるように炎を受けてしまう。

 

 

鶴紗「くっ……この程度…!!」

 

 

鶴紗はティルフィングを盾にして炎を防ぐものの、制服の袖が焼かれて、腕が露出していた。

 

しかも腕には火傷の跡が残っていた。

 

ところが、鶴紗の腕の火傷が徐々に消えていき、もと通りに治っていた。

 

 

彼女は普通の人間ではない。

 

薬を投与されて人工的に強化されたリリィ…ブーステットリリィである。

 

彼女は過去に「GEHENA(ゲヘナ)」と呼ばれる組織に捕まり、否人道的な人体実験をされた経験があった。

 

彼女にとってそれは地獄のようなものだった。

 

実験されては苦しみ、次第に自分の体じゃなくなっていく恐怖感を何度も味わってきた。

 

しかし彼女は百合ヶ丘に保護され、ようやくGEHENAからの呪縛から逃れた。

 

 

 

はずだった……

 

 

 

なんと、GEHENAは政府を通して彼女に単独でのヒュージ退治をやらせようとしたのだ。

 

当然それは、ブーステットリリィの戦闘データを集める為のもので、彼女は再び利用されていた。

 

 

 

 

 

結局、彼女はGEHENAからの呪縛からは逃げられてはいなかったのだ。

 

それでも、彼女…安藤鶴紗は戦うしかなかったのだ。

 

リリィとして……

 

 

 

再びラージ級に挑む鶴紗…

 

しかし油断したのか、ラージ級の前足が鶴紗を捉え、近くの地面に押し潰された。

 

幸い鶴紗の倒れた地面は柔らかった為、危機を脱したが…ラージ級は再び炎を吐こうとした。

 

動きたいが、鶴紗の体はラージ級の前足で固定されて動けない。

 

しかも、鶴紗の表情からは僅かな絶望感が出ていた。

 

鶴紗は右手に持ったティルフィングを手放し、ラージ級の方へ伸ばした。

 

 

鶴紗「………お前なら………私を…殺せる……?」

 

 

鶴紗のその言葉は、生きることを諦めた発言だった。

 

再び炎を吐くラージ級…

 

しかし、突然飛んできたマギの刃がラージ級の頭に当たり、一瞬だけ仰け反った。

 

今の一撃でラージ級は倒れ、炎は吐かれなかった。

 

更に鶴紗を押さえてた前足が離れて、自由になれた。

 

 

鶴紗「!?」

「やっと間に合った…!」

 

 

鶴紗はその体を起き上がらせると、目の前には黒いコートを羽織った少女…奈々の姿があった。

 

 

奈々「本当に無茶しちゃって…まあ私も人の事言えないけどね」

鶴紗「どうして…ここに…」

奈々「鶴紗ちゃんの事だからまたGEHENAの奴が政府を通してヒュージ討伐を頼んできたんでしょ?本当に懲りない奴だよ」

鶴紗「そうじゃない!何故私を…助けたの?」

奈々「私が助けたかったから。ただそれだけ」

 

 

起き上がったラージ級に再びマギの刃を飛ばし、倒転させる奈々。

 

 

鶴紗「私を…助けたかった…?」

奈々「あと、聞こえたけど…私を殺せるなんて言葉…口にしないで!」

鶴紗「!?」

奈々「自分の体が皆と違うからだったら理由にならないよ。君は百合ヶ丘のリリィ、安藤鶴紗であってそれ以外の何者でもないよ。いつまでも一人で抱え込むのはやめて、仲間に頼ったらどうなの?」

 

 

鶴紗がブーステットリリィである事を知っているから言える説得力のある発言を吐く奈々。

 

 

鶴紗「でも…私に仲間なんて…」

奈々「いるよ。周りにほら」

 

 

いつの間にか鶴紗の近くには、梨璃が駆けつけていた。

 

 

梨璃「鶴紗さん、大丈夫?」

鶴紗「貴女は…!」

 

 

後から来た夢結と梅は奈々と同じ前衛に付いた。

 

 

夢結「奈々、また勝手に…」

奈々「これが私の十八番ですんで」

梅「ハハハ…梅はそういうの嫌いじゃないゾ!」

夢結「梅、笑い事じゃ…!?」

 

 

再び起き上がったラージ級が奈々達に攻撃を仕掛けるが、先に奈々が動き、腹にCHARMによる突進攻撃を仕掛けて仰け反らせた。

 

そこに夢結と梅がCHARMで同時に攻撃して、ラージ級の動きを妨害する。

 

 

楓「流石夢結様、負けられませんわ!」

ミリアム「ワシもじゃ!」

神琳「雨嘉さん、援護をよろしく!」

雨嘉「うん、任せて!」

 

 

更に後から来た楓、ミリアム、神琳、雨嘉がそれぞれのCHARMをシューティングモードに変形させ、遠くからラージ級の前足に連続射撃を行い、再び倒転させた。

 

 

二水「周辺にラージ級以外のヒュージは居ません。このまま外に押しきってください!」

 

 

同じくやって来た二水がレアスキル、鷹の目を使って周囲の状況を把握しながら皆に戦況と対応策を伝えている。

 

 

梨璃「もう、鶴紗さんを一人で戦わせたりしません!」

鶴紗「どうしてこんなことを…!」

梨璃「同じ訓練に参加した仲間ですから!」

鶴紗「仲間…!」

 

 

仲間と呼ばれた鶴紗に僅かな安心感が生まれた。

 

そこに夢結が現れた。

 

 

夢結「メールの内容で、鶴紗さんの政府からの依頼は不正と見なされ、取り消されたわ。先生がGEHENAの者が政府に紛れ込んでることを報告したらしいわ。今後政府もGEHENAに対して警戒を強めるよう約束したわ。GEHENAも迂闊に手を出せなくなるでしょうね」

鶴紗「!?」

 

 

出雲の働きによってGEHENAの企みを見破ったことでGEHENAは鶴紗に手を出せなくなった。

 

これは即ち、鶴紗が本当の自由を手に入れた証である。

 

そんな鶴紗の表情には希望が生まれていた。

 

 

梨璃「鶴紗さん、一緒に戦いましょう!」

 

 

梨璃が鶴紗の前に左手を差し伸べた。

 

その行動に、鶴紗は手放したティルフィングを拾い、左手で梨璃に握手した。

 

 

鶴紗「わかった。私も、仲間として戦う。梨璃のレギオンに入って皆と戦う」

 

 

そう言って鶴紗は梨璃の前で初めて笑みの表情を見せた。

 

 

梨璃「ありがとう!」

二水「これで9人揃いましたね!」

梨璃「うん!」

奈々「喜ぶのは後にしてくれない?」

 

 

奈々が梨璃達にそろそろ戦うよう伝える。

 

 

夢結「アールヴヘイムが安全に戦えるよう、まずはこいつを片付けないと…」

奈々「それなら代理がもう来てますよ」

夢結「代理?」

 

 

夢結達の後ろから2本のCHARMを持った2つに別れた髪を三つ編みにした栗色の髪の少女が駆け付けてきた。

 

 

レギンレイヴ 1年生 六角汐里(ろっかく しおり)

 

 

奈々「汐里ちゃんってことは、レギンレイヴが駆け付けてきたの?」

汐里「はい。梨璃さん達と入れ替わりでラージ級を倒せと先生に言われました」

奈々「先生が?」

汐里「ギカント級を仕留め損なった時の予備軍として待機しろとの報告です…!?」

 

 

そう言って汐里は再び襲いかかるラージ級に対し、左手に持ったティルフィングで叩き斬りながら右手に持ったメイス型の武器、シャルルマーニュで連撃を繰りだし、ラージ級を横に倒させる。

 

 

梨璃「CHARMを2本同時に扱ってる!?」

二水「あれが汐里さんのレアスキル、円環の御手です!」

 

 

 

 

レアスキル 円環の御手(サークリットブレス)

 

通常は同時に一つしか扱えないCHARMを二本同時に扱えるレアスキル。

 

威力が2倍と思われがちだが、2本持って使う時は片方に通常の4分の3しか出せないため、総合威力は1,5倍となる。

 

それだけでもかなり強力であり、ヒュージとの戦いではゼノンパラドキサと並ぶほどのレアスキルである。

 

また、リリィバトルクロスと呼ばれる戦闘服、キャバリエと呼ばれる大型パワードスーツを扱うときにはこのレアスキルは必須条件となる。

 

 

 

 

次第に、レギンレイヴのリリィ達が集まって来た。

 

 

夢結「ありがとう汐里さん。皆、すぐにアールヴヘイムの元へ急ぐわよ」

梨璃「はい!」

奈々「汐里ちゃん、あとお願い!」

 

 

そう言って梨璃達と奈々はラージ級との戦闘領域から離れていった。

 

 

汐里「皆さん……お気をつけて…!」

 

 

ラージ級は、汐里含むレギオン、レギンレイヴが代わって討伐を引き受けることとなった。

 

 

 

 

 

 

一方、梨璃達と奈々は、アールヴヘイムがギガント級ヒュージと戦ってる姿を目撃した。

 

 

梨璃「もう戦闘が始まってる!?」

 

 

戦ってるヒュージは4つの足で跳ぶ巨大なつぼみのような姿であった。

 

ヒュージは、つぼみの上部から金属製の触手を伸ばし、アールヴヘイム達を攻撃していた。

 

 

梨璃「大きい……」

奈々「あれがギガント級。レギオンによる団体で挑まないと倒せないボス級の相手だよ」

楓「私も実際にギガント級は初めて見ましたわ」

二水「どどどど、どうしましょう!?ギガント級が目の前に…!」

ミリアム「落ち着かんか」

奈々「それよりも、今の状況…」

梅「ああ。押されてるな…アールヴヘイム」

奈々「あのヒュージ、もしかして陽動を仕掛けてきた…!?」

夢結「そのようね。それにあのヒュージ、リリィ達をまるで恐れてない」

奈々「となると…レストア…!」

夢結「あり得るわね」

 

 

ヒュージの触手攻撃は休む間もなく続き、至るところに振り回されている触手にアールヴヘイムのリリィ達は防御するだけで手いっぱいである。

 

 

亜羅椰「くっ、こいつ、戦い慣れてる…!」

 

 

キリがないと悟った天葉は近くの建物に着地し、特殊な弾を自分の大剣CHARM、グラムの装填口に入れる。

 

 

天葉「アールヴヘイムはこれより…上陸中のヒュージに…ノインヴェルト戦術を仕掛ける!フィニッシュは亜羅椰に任せる!」

 

 

天葉はシューティングモードに変形させたグラムを構え、離れたところに飛翔している依奈に向けてマギスフィアを発射した。

 

依奈は飛んできたマギスフィアを自分のCHARM、アステリオンで受け止め、次のメンバーに向けて飛ばす。

 

 

二水「アールヴヘイムがノインヴェルト戦術を仕掛けるみたいです!」

夢結「梨璃、よく見ておきなさい。これからレギオンとして活動する貴女にとっては必要なことよ」

梨璃「はい。お姉様」

 

 

梨璃達がアールヴヘイムのノインヴェルト戦術を見る中、奈々はヒュージに違和感を感じた。

 

 

奈々(あの触手…前に見たことが…それに…このマギは…!)

 

 

一方、アールヴヘイムはノインヴェルト戦術によって育てたマギスフィアを最後の一人にパスした。

 

 

壱「亜羅椰、お願い!」

亜羅椰「不肖、遠藤亜羅椰…フィニッシュショット、決めさせて貰います!!」

 

 

マギスフィアをアステリオンで取り込んだ亜羅椰は、狙いやすい建物に着地し、シューティングモードに変形させたアステリオンをヒュージに目掛けてマギスフィアを発射した。

 

狙いはしっかりヒュージを捉えた。

 

ギガント級を倒すのに必要なマギはマギスフィアに十分入っている。

 

当たればギガント級ヒュージを倒せる。

 

 

 

 

 

 

 

はずだった……

 

 

 

 

 

何とギガント級ヒュージは、マギスフィアが当たる直前にバリアを張り、亜羅椰が発射したマギスフィアを正面から受け止めていた。

 

 

天葉「何!?」

壱「フィニッシュショットを止めた!?」

亜羅椰「嘘!?」

 

 

ノインヴェルト戦術のマギスフィアを受け止められていた事に驚きを隠せないアールヴヘイム一同。

 

 

ミリアム「何じゃーー!?」

夢結「!?」

 

 

夢結は見た。

 

ヒュージが張ったバリアの模様には、ルーン文字のようなものが浮かび上がっていた。

 

 

奈々「あれは…ルーン…ということは…!」

 

 

奈々はヒュージが張ったバリアの正体がわかった。

 

 

天葉「こんにゃろーーーー!!!」

 

 

天葉がマギスフィアに向かって接近し、グラムでマギスフィアを押し出し、ヒュージのバリアをぶち破ったが、その代償としてグラムが半壊してしまう。

 

しかしバリアを破ったことで押し出されたマギスフィアはヒュージの上部に当たり、大爆発を起こした。

 

天葉は樟美によって助けられ、大爆発から逃れた。

 

現在は樟美の傘をさして上空で待機していた。

 

 

樟美「もう…天葉お姉様危ないです」

 

 

ノインヴェルト戦術を使ったことで、アールヴヘイムのリリィ達のマギはかなり消耗しており、CHARMは殆どが半壊…特に天葉のグラムは使い物にならなくなっている。

 

CHARMが無ければリリィは戦えない…

 

アールヴヘイムにとって、これ以上の戦闘は不可能となった。

 

 

天葉「不本意ですが、アールヴヘイムは撤退します……くっ!」

 

 

悔しさと共に、天葉はアールヴヘイムのメンバーに撤退の指示を与え、戦闘領域から撤退し始めた。

 

 

そして残ってるのは、待機中の9人揃ったばかりの梨璃達と奈々のみであった。

 

 

楓「アールヴヘイムが、ノインヴェルトを使って仕損じるなんて…」

鶴紗「今回のヒュージ…何時もと違う…」

梨璃「………あれ?」

 

 

梨璃が何かに気付いた。

 

 

二水「どうしたんですか梨璃さん」

梨璃「奈々ちゃんがいつの間にかいない」

ミリアム「なんじゃと!?」

雨嘉「あっ、あれ!」

 

 

雨嘉が見つけた指を指した先には奈々がヒュージに向かって先行していた。

 

 

楓「奈々さん、また勝手に…!」

神琳「まるで鉄砲玉ですわね」

夢結「仕方ないわ。いつもの事よ…でもあの子がヒュージの方に向かって行ったってことは…」

 

 

夢結は奈々の行動で理解した。

 

まだヒュージはやられていないと…

 

 

ミリアム「マギスフィアは直撃したはずじゃか…」

梨璃「動いてます…!」

雨嘉「え?」

梨璃「あのヒュージ、まだ動いてます!」

 

 

梨璃もヒュージはまだやられていない事に気付く。

 

 

 

一方奈々は瓦礫や建物に跳び移り、ヒュージに向かって飛翔していた。

 

とある疑問を持ちながら…

 

 

奈々(バリアによってノインヴェルト戦術の威力は大きく削られた。まだヒュージは生きている。特にあのバリア…もしかしたら…!)

 

 

奈々はカナベラルを起動させ、動き出したヒュージから繰り出した2本の触手を弾いてはかわしていく。

 

 

奈々「叩き割る!」

 

 

そしてヒュージへの攻撃射程に入った奈々はそのまま頭上から突進し、ヒュージのつぼみの上部をかち割る。

 

すると、ヒュージのつぼみの部分が大きく2つに割れた。

 

そこで奈々は何かを見つけ、驚いていた。

 

 

奈々「………やっぱり」

 

 

奈々の考えは確信となった。

 

ヒュージの割れた上部の中には、なんと大剣のCHARMが刺さっていた。

 

そしてそのCHARMに奈々は覚えていた。

 

 

奈々「夢結さんの……ダインスレイフ…こいつが食べていたのか…」

 

 

2年前…甲州撤退戦で夢結が当時使っていたCHARM、ダインスレイフ。

 

その時にいた夢結のシュッツエンゲル…美鈴が重傷を負ったまま、夢結のダインスレイフを持ってギガント級ヒュージと戦ったが、残ったのは遺体となった美鈴の体だけだった。

 

それっきり、夢結のダインスレイフはその姿を眩ましていた。

 

奈々は思い出した。

 

あのヒュージは、2年前に現れたものと同じだと…

 

その証拠に、目の前のヒュージの体には、古傷が残っていた。

 

これは美鈴が付けた傷だと…

 

しかし一つだけ引っ掛かるところがあった。

 

ヒュージの中に刺さっていたダインスレイフが何故起動しているのかを…

 

 

奈々「本来リリィしか扱えないはずのCHARMをヒュージが何故使っている……?」

 

 

先程アールヴヘイムのノインヴェルト戦術を受け止めたあのバリアはダインスレイフから発したものであることは間違いない。

 

それをヒュージが使ったとなると、ヒュージはマギを操ってCHARMを使ったのだろうか……

 

しかし考えてもしょうがない。

 

今、奈々の目の前には美鈴を殺したヒュージがいる。

 

奈々にとって美鈴は便りになる戦いの先輩だった。

 

今こそ、リベンジの時である。

 

 

奈々「久しぶりだよ。2年前にあんたと出会ってから、私は悔しい思いをしてきた…けどそれも終わり…美鈴さんに代わって私がお前を…」

「よくも美鈴お姉様をおおおおーーー!!!」

奈々「え!?」

 

 

突然髪を白くさせ、瞳の色を紅くした姿の夢結がヒュージの方へやって来た。

 

 

奈々「げっ、ルナティックトランサー!?」

 

 

夢結はどうやらこのヒュージが美鈴を殺した相手だと思いだし、ルナティックトランサーを発動させてしまったらしい。

 

しかも完全な暴走である。

 

 

奈々「よりによって今戦わせたくない人に…!」

 

 

ヒュージも気になるが、今の夢結には、ヒュージを倒すことしか頭にない為危険である。

 

奈々は真っ先に夢結を止めるためにある方法を行うため、夢結に向けてカナベラルを振るう。

 

夢結もブリューナグで鍔迫り合いに入る。

 

 

夢結「退きなさい…そいつは私の相手よ!!」

奈々「いつから夢結さんの相手になったんですか?あれは私の獲物です!」

 

 

突如、ヒュージの触手が二人に襲いかかるが、切り払われる。

 

その勢いで奈々は再び夢結と鍔迫り合いに入り、押しきっていく。

 

 

夢結「邪魔よ!!」

 

 

夢結のブリューナグに力が入り、奈々を押していくが、奈々もカナベラルで押し返していく。

 

 

奈々「どっちが!!」

 

 

奈々もマギを高め、夢結を後ろへ押していく。

 

 

奈々「2年経っても変わりませんね。その暴れ牛ぶりは!」

夢結「誰が暴れ牛よ!!」

 

 

今度は割れた動体の内側から無数のレーザーが発射されてきたが、奈々は避けずに夢結をはじき、レーザーをカナベラルで全て弾き返した。

 

避けることは容易だが、ルナティックトランサー状態の夢結は回避の行動を取らないため被弾の恐れもある。

 

奈々はそれを避けるために回避は取らなかったのだ。

 

 

奈々「暴れ牛でしょ!その暴れぶり…頭に角付けたらどうですか?似合うと思いますよ!」

夢結「言わせておけば…!!」

 

 

二人は3度目の鍔迫り合いしながら低レベルの口喧嘩をしだした。

 

しかしそんな口喧嘩に付き合う夢結には、先程の暴走時の感情が少しずつ薄れていった。

 

その様子を見たヒュージの攻撃範囲内から離れている梨璃以外のメンバー達は…

 

 

楓「あの低レベルの口喧嘩はなんですの…?」

ミリアム「ヒュージがいる中でよくやれるのう」

神琳「いえ、ただの口喧嘩では無さそうですわ」

鶴紗「何かあるのか?」

神琳「夢結様の動きが、ルナティックトランサー発動前の動きに少しずつ戻ってきてます」

二水「ええーっ!!?」

楓「そんな偶然なこと…!」

梅「偶然ではないゾ」

 

 

梅が話に入ってきた。

 

 

二水「梅様!」

梅「2年前に夢結がルナティックトランサーを発動した頃、奈々が夢結を止めた頃があってな…その時も夢結に対して口喧嘩をしたそうだ。すぐに解除とはいかなかったが、ルナティックトランサーの効力を早めに切らせることが出来たんだ」

鶴紗「そんなことが…!」

神琳「奈々さんが夢結様を煽ってるのはその為…!」

 

 

代わってヒュージの近くで奈々はまだ夢結と戦っていた。

 

 

奈々「いつもイライラしてるのもよくないっすよ。胃がやられますよ?」

夢結「誰のせいだと思ってるのよ!!」

 

 

次第に夢結の動きがスムーズになっていく。

 

と、そこへ…梨璃が夢結を追いにやって来た。

 

 

梨璃「お姉様ー!!」

夢結「!?」

奈々「梨璃ちゃん、今来ちゃダメ!!」

 

 

梨璃の接近に気付いたヒュージは、梨璃に向けて触手を伸ばした。

 

梨璃は触手をグングニルで次々と弾くが、今度は無数の触手が梨璃を包むように拘束した。

 

 

夢結「梨璃!!」

奈々「梨璃ちゃん!!」

 

 

二人は助けようとするが、梨璃を拘束した触手は突然爆発を起こし、二人を吹き飛ばした。

 

 

 

 

ルナティックトランサーが解除され、気を失っていた夢結は目を覚ました。

 

 

夢結「り…梨璃…皆…何処…?」

 

 

目の前を見ると、梨璃を拘束した触手が砕け落ちており、梨璃の姿はなかった。

 

 

夢結「!?」

 

 

夢結は、梨璃がヒュージにやられたのかと思ってしまう。

 

しかし…

 

 

「夢結さん!」

「お姉様!!」

夢結「!?」

 

 

上空から梨璃を担いだ奈々が夢結の元へ降りてきた。

 

夢結「梨璃!」

梨璃「お姉様!」

 

 

奈々から降りた梨璃は拘束から無理に脱出したことで刃にヒビが入ったグングニルを捨ててそのまま夢結を抱く。

 

 

奈々「梨璃ちゃん無茶しすぎだよ。とはいえ、あの状態からよく抜け出せたよ」

梨璃「ここを離れましょう!!」

 

 

梨璃は夢結を連れて後退しようとするが…

 

 

夢結「…ダメ…あのヒュージにはダインフレイフが…私とお姉様の…だから…!」

梨璃「お姉様!!」

夢結「!!?」

 

 

梨璃が夢結に怒鳴って気が付かせた後、夢結を担いでヒュージの攻撃圏内から離れだした。

 

一方ヒュージも、二人を逃がさないと触手を伸ばすが、奈々が放ったマギの刃に妨害される。

 

 

奈々「よそ見をするな!」

 

 

夢結を担いだ梨璃は攻撃圏内から無事離れ、雨嘉の横を通っていく。

 

 

雨嘉「行って、梨璃!」

梨璃「すみません!すぐ戻りますから、ちょっと待ってて貰いま…あ痛!!」

 

 

遠くで梨璃が転んだような声が聞こえた。

 

 

梅「大丈夫か、梨璃!!」

梨璃「大丈夫ですーーーー!!」

 

 

大丈夫な事を遠くにいる梨璃は梅に大声で伝えた。

 

 

鶴紗「本当に大丈夫か?」

 

 

梨璃と夢結が一時離脱し、現在戦場にいるリリィは二水、楓、ミリアム、雨嘉、神琳、梅、鶴紗、奈々の8人である。

 

 

雨嘉「待ってろって?」

神琳「持ち堪えろって意味ですわね」

梅「人遣いが荒いぞ。夢結のシルトは」

ミリアム「どうする?ワシ等も他のレギオンと交代するか?」

 

 

楓が二水を背負ってやって来た。

 

 

楓「ご冗談でしょ?梨璃さんの死守命令は絶対ですわ!」

二水「そこまでは言ってないと思いますけど!楓さんに賛成です!」

 

 

後から奈々もやって来た。

 

 

二水「奈々さん、どうでしたか?」

奈々「うん。どうやらあのヒュージはダインスレイフの影響で強くなってると思う。ギガント級でもあそこまで激しい攻撃は普通してこない。かなりの強敵だね。あれは」

神琳「確かに強力でしたわ。ただあのヒュージはCHARMを扱い切れず、マギの炎で自ら焼いているわ」

奈々「となると、まずはダインスレイフを抜くことが先かな?二人が復帰するまでの間、私達でダインスレイフを取り戻す。CHARMがなくなってしまえば多分弱体化するはず」

神琳「ええ。その後夢結様が復帰すれば、勝機はあります!」

奈々「となれば、まずは邪魔な触手を全て倒すのが先決だね。引き続き私がおとりになるよ」

ミリアム「大丈夫なのか?」

奈々「これが私の戦いかただからね」

 

 

そう言って、奈々は単独でまたヒュージに向かっていくが…

 

 

「木葉、お前は白井の元へ向かえ」

奈々「?」

 

 

呼び掛けたのは今到着した出雲だった。

 

 

二水「先生!」

楓「今まで何をしてましたの!?」

出雲「悪いな。政府とのやり取りに時間がかかった。お前達のやり取りは聞いている」

神琳「これは説明する手間が省けましたね」

出雲「というわけだ。木葉、レーザーの方は任せろ。その間、白井を説得してこい」

奈々「わかりました。大至急行ってきます!」

 

 

おとりを出雲に任せ、奈々は捨てたグングニルを拾い、夢結と梨璃の元へ向かった。

 

 

梨璃「お姉様…」

 

 

遠くから梨璃の声が聞こえた。

 

どうやら半壊した建物の中で夢結と一緒にいるようだが、肝心の夢結は混乱してる。

 

奈々は建物の裏に隠れて、梨璃と夢結のやり取りを聞く。

 

 

夢結「見ないで…私を見ないで…」

 

 

聞いた所、夢結の精神は不安定のようである。

 

 

夢結「ルナティックトランサーは、とてもレアスキルなんて呼べるものじゃない…こんな物…ただの呪いよ…」

奈々(夢結さん…)

 

 

夢結の心境を思う奈々…

 

 

夢結「憎い…何もかも憎くなる!憎しみに呑み込まれて…周りにある物を傷付けずに居られなくなる…呪われてるのよ…私は…!」

 

 

夢結は自身のレアスキル、ルナティックトランサーを許せなかった。

 

 

夢結「美鈴お姉様を殺したのは私だわ!私が…この手で…あのダインスレイフで…!」

梨璃「…!」

奈々「ふざけるな!!」

 

 

奈々が頭にきて、夢結の胸倉を掴んだ。

 

 

梨璃「奈々ちゃん!?」

奈々「夢結さん…今の言葉を取り消してよ…!取り消せ!」

夢結「嫌よ…私はヒュージと何も変わらない!!」

梨璃「お姉様!!」

夢結「嫌!見ないで!!」

奈々「!!」

 

 

暴れる夢結に奈々はそのまま壁に押し付ける。

 

 

奈々「わかったような口を聞くな!あんたにヒュージの何が分かるんだ!私達と変わらない?全然違うんだよ!美鈴さんはヒュージと戦ったんだ!あんたには何の関係もない!」

夢結「そんなの奈々に解る訳がない!」

奈々「わかってないのはあんただ!夢結さんがこんなに思ってる人を手に掛けるはず無い!」

梨璃「奈々ちゃん…」

奈々「あんだってわかってるはずだろ!?なのに何子供みたいに駄々こねて……!?」

夢結「…………」

 

 

奈々は夢結が涙を流したのを見て血の気が引き、胸倉を離した。

 

 

 

夢結「私は…梨璃を守れない!!シュッツエンゲルになる資格も無い!!」

梨璃「…!」

奈々「…!」

 

 

梨璃と奈々は驚く。

 

ここまで弱音を吐く夢結ははじめてであると。

 

 

夢結「独りで居たかった訳じゃない…独りでしか居られなかっただけよ…私には…何の価値も無い…」

 

 

挫けて折れた夢結に対し、奈々は…

 

 

奈々「価値なんて、一人で決めるものじゃありませんよ。私から見て夢結さんは価値のない人間じゃありません」

夢結「そんなこと…」

奈々「梨璃ちゃんがそれを証明してますよ」

梨璃「そうです。お姉様とシュッツエンゲルになれて、私、凄く嬉しかったんですよ!」

夢結「解らない…私には解らないわ…あなたの気持ちなんて…私に愛されるのが…嬉しいなんて…」

奈々「……そうやって自分を責めても何の解決にもなりませんよ」

夢結「あなたに何が解るのよ!!」

 

 

まだ受け入れない夢結に奈々はある話題を明かす。

 

 

奈々「1年前…私の大切な友達が殺されました」

夢結「!?」

梨璃「えっ!?」

奈々「クジラ船に滞在してた頃、私はブルーガードの第4部隊でヒュージの討伐に向かった事がありました。私は仲間の負担を減らすために前線に立ち、一人でヒュージの取り巻きを片付けようとしました。しかし途中、ギガント級の攻撃が割り込んできて、私は重傷を負いました。気が付いた頃には戦闘が終わっており、生き残ったのは私一人だけだと、他の仲間から聞かされました」

夢結「…!」

梨璃「一人…!?」

奈々「私は自分を責めていました。私がもっと強ければ…皆を死なせずに済んだのにって…今の夢結さんみたいに…」

夢結「奈々…」

奈々「そんなとき、美鈴さんの言葉を思い出したんです。後悔する暇があるなら今やるべきことをした方がいい。あの言葉のお陰で今の私がいるんです」

夢結「……美鈴お姉様が…?」

奈々「私の大切な友達は私の心の中で生き続ける…夢結さんの心の中にも、美鈴さんがいるように…」

 

 

夢結は奈々を見て感じた。

 

この子は自分以上に大切な物を失い、背負ってる物があると…

 

それでも懸命に生きてるのだ。

 

それに比べたら、今の自分が恥ずかしいと夢結は悟った。

 

 

奈々「それに、梨璃ちゃんのシュッツエンゲルは、やっぱり夢結さんしかいませんよ。それだけで十分資格になります」

夢結「奈々……!」

 

 

奈々の言葉は正しかった。

 

2年前、梨璃を助けたから…彼女はこうして夢結の元にいるのだと。

 

そこへ梨璃が自分の額を夢結の額に優しく当てる。

 

 

梨璃「お姉様…もしお姉様がルナティックトランサーを発動したら、また私が止めます。何度でも止めます。何をしても止めます。例え、刺してでも…だから…」

 

 

梨璃も、奈々も、夢結の事を思い、信じていた。

 

ならばそれに答えなければと夢結も決心した。

 

 

夢結「………ありがとう、梨璃。それに、奈々も」

 

 

迷いが消えたのか、笑顔になった夢結が二人に礼を言った。

 

 

梨璃「はい……お姉様」

奈々「………もう大丈夫ですね?」

夢結「ええ。心配かけたわね」

 

 

もう夢結は大丈夫だと、奈々は悟った。

 

 

奈々「さて、お二人はもうしばらく待っててくださいね。ルナティックトランサーを使ってマギを消耗してますしね」

梨璃「え?」

夢結「そうだけど…何をする気なの?」

 

 

そう言って奈々は梨璃にグングニルを渡し、少し離れた所に跳び移る。

 

 

奈々「先程言いましたよね?ルナティックトランサーを呪いと…でも私は違うとはっきり言えます。あれは誰かを救う為の力であり、希望でもあるんです。それを今から…証明します!」

 

 

奈々は一旦深呼吸した。

 

そして、間を空けて…

 

 

奈々「むうん!!」

 

 

体に力を溜めるような姿勢から、奈々は赤い光を体に宿し始めた。

 

すると、奈々の髪が赤茶色から白に変わっていった。

 

 

梨璃「な、奈々ちゃん!?」

夢結「それは、まさか…!?」

 

 

二人はかなり驚いていた。

 

奈々が使ったのは、レアスキル、ルナティックトランサーである。

 

特に髪の色が白くなる現象は、完全な暴走状態である証拠。

 

奈々は二人の方に振り向く。

 

奈々の瞳は紅く光っているが、表情は普通だった。

 

 

奈々「見ててください夢結さん。これが本当のルナティックトランサーの使いかたです!」

 

 

そう言って奈々はヒュージに向かって飛んでいった。

 

その名の通り、空を飛んでいったのだ。

 

 

梨璃「空を飛んでる!?」

夢結「あれは…ルナティックトランサーの特性を…!」

 

 

ルナティックトランサーには身体強化だけでなく、重力や呼吸、腕力の影響を無視できる性質を持つが、他のルナティックトランサー持ちのリリィでさえ、空を飛ぶ前例はなかった。

 

それどころか、奈々は完全な暴走状態でありながら梨璃と夢結に対し普通に喋っていた。

 

 

一方ヒュージと戦ってる皆は、触手を一つ破壊したものの、それでも触手の数が多く、苦戦を強いられていた。

 

出雲が何本か触手を引き受けつつ、レーザーを封じようとするが、レーザーが発射される部分は固く、中々破壊できない。

 

長引けば、マギ不足は免れない。

 

と、そこへ、ルナティックトランサーを発動した奈々がやって来て、ヒュージに向かっていった。

 

皆も奈々に気付くが、奈々の変わりように驚く。

 

 

鶴紗「あれは…奈々か?」

ミリアム「何か髪の色が白くなっておらぬか?」

雨嘉「まさか、ルナティックトランサー…!?」

 

 

ヒュージの近くで戦ってる出雲も奈々に気付く。

 

 

出雲「あれは…木葉か?ルナティックトランサー持ちか?」

 

 

奈々は二水の横を通りすぎる前に指示を伝える。

 

 

奈々「皆!私が攻撃を誘導するから、触手の切断をお願い!その後先端部を私が切るから…!」

二水「あ、はい!!」

 

 

そう言って奈々は二水の横を通りすぎていく。

 

 

楓「奈々さん、普通にしゃべっていません?」

梅「奈々、ルナティックトランサーが使えるのか?」

神琳「コントロール出来てる…でもあの髪の色は…!」

 

 

奈々はヒュージの近くまで来た。

 

よく見ると、半分に割った動体が元通りにくっついていた。

 

触手の数は5本あり、1本は半分以上の所から破壊された後があった。

 

 

奈々「もう再生している…ならもう一度割るだけだ!」

 

 

そしてこっちに飛んできた出雲とバトンタッチする。

 

 

奈々「先生!」

出雲「レーザーの方はもうすぐ再生する。気を付けろ!」

奈々「了解!!」

 

 

奈々かヒュージの頭上に飛び、そのまま急降下して、カナベラルをヒュージの動体に打ち当てた。

 

すると再びヒュージの動体が開き、ダインスレイフが露になった。

 

しかし奈々の方へ、5本の触手が伸びてきた。

 

 

奈々「邪魔するなって言うの?こっちの方だぁ!!」

 

 

奈々はカナベラルを右手に持ち帰ると、なんと腰に付けていたもう一つのCHARM、ブルメリアを左手で取り出したのだ。

 

短剣のCHARM、ブルメリアは刀身から1メートルの青いマギの刃を展開した。

 

 

奈々「はああああああ……!!!!」

 

 

奈々は気合を入れながら次々と襲ってくる触手を2本のCHARMを交互に使いながら打ち返していく。

 

その2本のCHARMの刃が描く赤と青の残像は、奈々の剣舞を美しく見せる。

 

特に奈々がCHARMを降る早さはかなり早い上に、1本1本正確に打ち返していった。

 

そして触手の攻撃が止まると、奈々はその隙を逃さんと、触手の付け根をカナベラルで切り落とした。

 

 

残り4本。

 

 

しかし、割れた動体の内側からレーザーが放たれるが、奈々は体を捻りながら2本のCHARMで全て弾き返していく。

 

 

一方、奈々の戦いを見ていた二水達はかなり驚いていた。

 

 

二水「すごい……というか、CHARMを2本同時に使ってる!?」

 

 

二水はレアスキル…鷹の目を使って、奈々の戦いを観戦して驚いていた。

 

 

ミリアム「マジか!?」

楓「本来リリィは1本しかCHARMを扱えないはずでは!?」

二水「円環の御手を所持してるリリィなら可能ですが…」

 

 

と、話しながら触手の破壊を行っている。

 

楓はミリアムと一緒に触手の付け根を正確に攻撃し、破壊。

 

 

残り3本。

 

 

鶴紗「けど、リリィが持てるレアスキルは一つだぞ」

梅「ルナティックトランサー使ってるからナ」

 

 

鶴紗、梅のブレイドモードからの同時攻撃でもう一つの触手を破壊した。

 

 

残り2本。

 

 

雨嘉「レアスキルを2つ持つリリィなのかな…あの子」

神琳「デュアルスキラー…でしょうか」

 

 

雨嘉、神琳の中距離からの間接への射撃で5本目の触手も破壊した。

 

残り1本。

 

 

鶴紗「エンハンスメント…いや、あれはブーステットリリィ専用のスキル…奈々はブーステットリリィじゃないから使えるはずがない。そもそも、円環の御手に派生するサブスキルがない。じゃああれは一体…」

出雲「それは直接本人に言えばいいさ。今はこいつの触手を破壊するのが先だ」

 

 

出雲が単独で最後の触手を黒鉄で切断した。

 

 

二水「全ての触手は切り落とされました。残る先端部は大町3丁目と6丁目交差点に展開中!」

出雲「吉村、今のうちにダインスレイフを抜いてこい!」

 

 

と、出雲が梅に指示を伝える。

 

 

梅「人使い荒いなあ先生は…けど、あのダインフレイフ!絶対取り戻す!」

 

 

そう言って梅はレアスキル…縮地を使ってヒュージの元へ向かった。

 

 

楓「無論です!ヒュージがCHARMを使うなんてありえませんわ!」

 

 

楓は半分切断された2本の触手の内の一本の攻撃を受け流していた。

 

所が受け流していた触手が地面に落ちた。

 

奈々が5本目の切断部を切ったのだ。

 

 

楓「…仕事が早いことで…」

ミリアム「ルナティックトランサーもこうして見ると、頼もしいのう」

出雲「お陰で活路が見えてきたな…!」

 

 

一方奈々は直ぐに最後の触手の先端部を切り落としていた。

 

 

奈々「これで全部!後はダインスレイフを抜けば…って!?」

 

 

触手を全て切断した奈々だったが、いつの間にか新たな触手が2本も現れたのだ。

 

 

奈々「もう再生している…早すぎ!」

梅「奈々!」

 

 

梅が縮地で奈々の元にやって来た。

 

 

奈々「梅さん、ダインスレイフをお願いします!触手は私が処理します!」

 

 

梅にダインスレイフを任せ、奈々は再生された2本の触手を切断しに向かうが…

 

 

雨嘉「やらせない!」

神琳「私達がいることもお忘れなく!」

 

 

雨嘉と神琳が2本の触手の一つを弾き返す。

 

 

ミリアム「ワシも目立ちたい!」

 

 

ミリアムがニョルニールを真上に構え、もう一つの触手を弾く。

 

 

奈々「皆…!」

 

 

そしてダインスレイフを抜こうとしてる梅の隣には、楓と鶴紗が一緒に手伝っていた。

 

 

鶴紗「戦ってるのはお前だけじゃないって訳」

楓「そういう事ですわ。私達はリリィですもの!」

 

 

と、奈々に言う鶴紗と楓。

 

驚く奈々だが、再びヒュージの内側が光り、レーザーを放とうとしていた。

 

 

奈々「またか、そうはさせ…」

「そうはさせないわ!」

「そうはさせません!」

奈々「ええっ!?」

 

 

なんと復帰した梨璃と夢結がシューティングモードからの連射攻撃で左右の動体を攻撃していた。

 

 

奈々「梨璃ちゃん、夢結さん、復帰早!?」

 

 

一方梅、楓、鶴紗が抜こうとしていたダインスレイフはやっと抜けた。

 

 

梅「抜けた!」

奈々「ちょっと失礼します!」

 

 

奈々はCHARMを一時腰にしまうと、梅、楓、鶴紗をまとめて掴み、大きくジャンプしてヒュージから離れた。

 

ヒュージは内側からレーザーを放ったが、直前で標的がいなくなった為、内側同士に当たって爆発を起こした。

 

雨嘉、神琳、ミリアム、出雲も後退し、攻撃範囲外にいる二水の元に全員集まった。

 

 

二水「皆さん、ご無事で!」

梅「ふぇ…取り返したぞ…」

楓「死守命令…果たしましたわ!」

梨璃「大丈夫ですか!?皆さん!これが…あのヒュージに?」

 

 

梅は抜いてからしっかり持ったダインスレイフを皆に見せた。

 

 

梅「これ、やっぱり夢結が使ってたダインフレイフだな。傷に見覚えがある」

夢結「ええ」

奈々「あのヒュージを相手に行方を眩ませていたけど、ようやく戻ってきた…夢結さんのダインスレイフ」

梨璃「これがお姉様の…」

二水「それより奈々さん、大丈夫なんですか!?」

 

 

二水は奈々を心配した。

 

奈々の髪の色はまだ白いままで、瞳の色は紅く染まっている。

 

奈々はまだルナティックトランサーを発動していたのだ。

 

 

神琳「ルナティックトランサー…まだ続いてるようですね」

楓「大丈夫ですの?貴女も相当マギを使っていますけど」

奈々「その心配なら大丈夫。まだマギは3割しか減ってないから」

二水「3割!?」

夢結「なんともないの?」

奈々「全然」

 

 

ルナティックトランサーをまだ発動中の奈々には何の症状も無かった。

 

呼吸も安定してる為、普段通りと変わらない。

 

 

奈々「それを言うなら夢結さんだって日常生活にルナティックトランサー使ってるじゃないですか」

夢結「あれは誰のせいだと思ってるのよ…」

出雲「話はそこまでだ。今はアイツを倒すのが先だろ?」

 

 

出雲が話を切り、ヒュージの方へ指を指す。

 

ヒュージはダインスレイフを抜かれてもまだ動いていた。

 

自分の放ったレーザーの直撃を受けても大城な痛手には至らなかったようだ。

 

しかし触手は2本のままで他の触手は再生されていなかった。

 

動体も2つに割れたままである。

 

 

雨嘉「あいつ…まだ動いてる!」

出雲「ギガント級がそう簡単にやられるはずがない。だがCHARMを失ったあいつにはもうバリアははれない。ここからが踏ん張りどころだ」

 

 

皆にそう伝える出雲。

 

そこで梨璃が提案を出した。

 

 

梨璃「あの!私達でやってみませんか?」

楓「何をです?」

梨璃「ノインヴェルト戦術です!」

奈々「アールヴヘイムがやったあの戦術?確かにギガント級に有効だけど、行けるの?」

梨璃「今動けるリリィは私達しかいないもの。だったらやるしかないよ」

楓「ですがノインヴェルト戦術には専用の弾がないと…」

 

 

先程アールヴヘイムのリーダー、天葉がノインヴェルト戦術を実行する際にCHARMに装填していたあの弾の事である。

 

 

出雲「弾ならこれを使え」

 

 

出雲はノインヴェルト戦術用の特殊弾を取り出した。

 

 

梨璃「この弾は…ノインヴェルトの…!」

楓「どうして先生がそれを!?」

出雲「もしもの時に用意した物だ。1発で仕留めろ」

 

 

そう言い、出雲は梨璃にノインヴェルト戦術用の特殊弾を投げ渡す。

 

 

梨璃「おっと…!」

 

 

梨璃は弾を受け取った。

 

 

奈々「ノインヴェルト戦術は9人いれば十分な火力を出せるから…残った役割は、ヒュージへの妨害かな?残った触手の処理とレーザー封じ」

出雲「ああ。私と木葉で奴の気をそらす。ノインヴェルトの方は任せるぞ」

 

 

そう言って出雲と奈々はヒュージの方へ向かった。

 

梨璃はノインヴェルトの弾を見つめて、梅に弾を渡した。

 

 

梅「?」

梨璃「梅様!最初、お願い出来ませんか?私だといきなり失敗しちゃいそうで…」

梅「…あはは。人遣いが荒いぞ、ウチの後輩は。じゃあ梅の相手は…」

 

 

梅はノインヴェルトの弾を見つめてながら二水に目を向けた。

 

 

二水「ええ!?わ、私ですか!?」

梅「ほんじゃあ、ふーみんが撃って?」

 

 

梅はノインヴェルト戦術の特殊弾を指で弾き、二水のグングニルの装填口にスッポリ入れた。

 

 

二水「ぎゃああーっ!?何するんですかー!!何を撃つんですか!?まさかヒュージですか!?」

梅「梅をだよ。ほら撃て」

 

 

すでに距離を取り、スタンバイに入った梅。

 

 

二水「えええー!?気は確かですか梅様!私は人を撃つなんて出来ま…」

梅「はーやーくー!!」

二水「はあいーーっ!!!」

 

 

二水がシューティングモードに変形させたグングニルを構え、梅に向けて青いマギスフィアを発射した。

 

放たれたマギスフィアは、梅が自分のCHARM…タンキエムで受け止めた。

 

 

二水「マギスフィアが!」

梅「感じるぞ!これが二水のマギか!」

 

 

受け止めたマギスフィアは次第に青から黄色に変わっていった。

 

ノインヴェルトのマギスフィアは、各リリィのマギをCHARMを通して吸収する性質を持ち、人数が多ければそれだけ強力なマギスフィアになり、大火力を出せるが、その分扱えにくくなる上に、最悪の場合CHARMが破損する可能性もある。

 

メリットが大きいのと同時にデメリットも大きい。文字どおりの諸刃の剣である。

 

 

梅「じゃあ次は!」

 

 

次は雨嘉に目線を向けた。

 

 

雨嘉「ええっ!わ、私!?」

梅「わんわん、CHARM出せ!」

 

 

 

そのまま走り、雨嘉のアステリオンにタンキエムを当てる感じでマギスフィアを渡した。

 

 

雨嘉「梅様、近くありません!?」

梅「前に夢結と梨璃がやってたんだ。こうすればパスは外れないだろ!」

 

 

マギスフィアは黄色から緑色に変色すると梅は離れる。

 

 

雨嘉「こんなの教本にない!」

ミリアム「よし!今度はワシに寄越すのじゃ!」

 

 

今度はミリアムが飛び上がり、ミョルニールで雨嘉のアステリオンに付いたマギスフィアに接触した。

 

 

雨嘉「そんなにがっつかないで!!」

 

 

マギスフィアは緑色から紫色に変わり、ミリアムはマギスフィアをニョルニールにくっつけて、そのまま再び飛び上がる。

 

 

ミリアム「ちゃんと狙うんじゃぞ、鶴紗!!」

 

 

飛んだミリアムは鶴紗のティルフィングにニョルニールに付いたマギスフィアを渡し、離れた。

 

 

鶴紗「切っちゃったらごめん!」

 

 

受け取ったマギスフィアは紫色から赤色に変わった。

 

 

鶴紗「ほらよ!神琳!」

 

 

鶴紗は神琳に向かって突進し、マソレリックにティルフィングに付いたマギスフィア渡した。

 

 

神琳「もっと優しく扱えません!?」

 

 

マギスフィアは赤色からオレンジ色に変色わり、すぐに神琳はマソレリックに付いたマギスフィアを楓のジョワユーズに渡した。

 

 

神琳「気を付けて、思った以上に刺激的ですよ!」

楓「望む所ですわ!」

 

 

渡されたマギスフィアはオレンジ色から白色に変わった。

 

 

一方奈々と出雲は、残った触手の先端部を完全に破壊し、続けて脚部分も破壊していった。

 

そのほとんどが、ルナティックトランサーをまだ維持している奈々によるものである。

 

 

楓「ふふふっ…私の気持ち、受け止めて下さいな梨璃さん!!」

 

 

物凄い助走を付けて梨璃に向かって行く楓。

 

 

梨璃「み、皆のだよね!?」

奈々「楓ちゃん落ち着いて!梨璃ちゃんのグングニルはもう…!」

 

 

奈々の注意も空しく、梨璃は透かさずグングニルで楓のジョワユーズに付いたマギスフィアを受け止めるが、ひびの入ったグングニルでは耐えることも出来ず折れてしまい、マギスフィアは空の上に弾かれてしまう。

 

 

楓「私の愛が強過ぎましたわ!?」

奈々「言ってる場合かー!!!」

 

 

空に弾かれたマギスフィアは上空へ飛んだ夢結がブリューナクで受け止めた。

 

 

夢結「いえ、限界よ!無理も無いわ!」

 

 

マギスフィアを受け止めた夢結がそのままヒュージに向かうが、梨璃に手を差し伸べる。

 

 

夢結「梨璃!いらっしゃい!」

梨璃「お姉様!!」

 

 

梨璃も飛翔し、夢結の手を掴む。

 

 

奈々「先生!後は私と夢結さんと梨璃ちゃんが…!」

出雲「わかった。一旦後退する!」

 

 

出雲が撤退し、奈々がブルメリアをしまうと、カナベラルを両手で握り、同じく上空へ飛び上がる。

 

 

夢結「行くわよ、一緒に…!」

梨璃「はい!」

 

 

ブリューナグと折れたグングニルをマギスフィアに接触させると、マギスフィアは虹色に輝き出した。

 

 

夢結「私達なら…出来るわ!」

梨璃「はい!」

奈々「マギスフィアを体内にぶつけた後、私が誘爆させます!」

夢結「わかったわ!」

 

 

梨璃と夢結がマギスフィアをヒュージの体内に向かって急降下する。

 

 

二人「はああああああーーー!!!!」

 

 

マギスフィアは体内に撃ち込まれ、そこに奈々が急降下し、梨璃と夢結が離れた直後にカナベラルでマギスフィアをぶつけた。

 

 

マギスフィアにヒビが入り、奈々もその場から脱出した。

 

ヒビの入ったマギスフィアは内部で膨張するマギに耐えきれなくなり、ヒュージを飲み込むほどの大爆発を起こした。

 

その様子を見届けたアールヴヘイムのリリィ達。

 

別の所では、丁度ラージ級を倒したレギンレイヴのリリィ達が…

 

 

爆発が晴れると、ギガント級ヒュージの姿は、そこには無かった。

 

綺麗な空と真っ赤な夕陽…

 

その場には、ヒュージが消滅した際に散らばれた無数の小さなマギが漂っていた。

 

まるで、梨璃達の勝利を祝うかのように…

 

 

その梨璃達は疲れたのか、倒れたまま空を眺めていた。

 

特に夢結と梨璃の間には、互いの手を握っていた。

 

 

夢結「……梨璃……私は、あなたの事を信じるわ」

 

 

そう言って笑顔で梨璃を見つめる夢結。

 

 

梨璃「お姉様…」

 

 

梨璃も笑顔で夢結を見つめた。

 

 

そこへ、出雲がルナティックトランサーを解除した奈々を担いでやって来た。

 

 

出雲「よくやったぞお前達。初のギガント級にここまで頑張った」

梨璃「先生…!」

奈々「いやぁ、流石に今回は答えたなぁ」

 

 

ルナティックトランサーを長時間使った影響か、どうやら奈々は動けないらしい。

 

 

夢結「奈々、大丈夫なの!?」

出雲「心配いらん。筋肉痛みたいなもので動けなくなっただけだ。朝にアールヴヘイム予備軍との模擬戦、安藤の救出、そして今回のギガント級相手にルナティックトランサーの長期使用。流石に疲れて当然だろうが、特にルナティックトランサーの負担が答えたようだ」

奈々「流石に暴れすぎたかも…いたた…」

ミリアム「本当に暴れすぎじゃ」

楓「全ての触手を相手にしたのだから当然ですわ」

雨嘉「レーザーを全て弾いたのは驚いたけど…」

鶴紗「空を自由に動けるのも驚いたな」

梅「梅の縮地程じゃないけど、それでも早いぞ」

神琳「普通のリリィでもそんな芸道出来ませんわ」

夢結「とはいえ、ルナティックトランサーであれだけの動きをすれば体が持たないわよ」

奈々「返す言葉もありません…まあこれでルナティックトランサーが呪いではなく、守るための力だってことが分かりましたか?」

夢結「確かに…あの状態を維持できるのは認めるわ。でも…」

奈々「夢結さんなら私より使いこなせられますよ」

夢結「えっ?」

奈々「確かにルナティックトランサーを使えば、ヒュージに近い負のマギを体に宿してしまい、精神が不安定になりがちになります。ですがそれ以上に強い思いを持てば、ルナティックトランサーを完全に使いこなし、憎しみの感情に絶対に負けません。そして、夢結さんにはもうその強い思いを持っている筈です」

夢結「奈々…」

奈々「ルナティックトランサーを完全に使いこなしたリリィ…白井夢結に勝つことで、夢である最強のリリィへの道に大きく近付けると信じてるんです。その為にも夢結さん、早く使いこなして私の夢を叶える為の踏み台になってください」

 

 

笑顔で夢結を煽るような発言を言う奈々。

 

 

二水「奈々さん、ストレート過ぎますよ!?」

夢結「………ふふふっ」

 

 

夢結が少し笑う。

 

 

梨璃「お姉様?」

夢結「……最強のリリィね。けど、そう簡単に勝ちを貴女に譲らないわ。今まで私との模擬戦で一度も勝てなかった貴女に、私が負けるなんてあり得ないわよ」

奈々「私も2年前の頃とは違います。前の私と思ってかかると後悔しますよ?」

夢結「言ってくれるわね。いいわ。ルナティックトランサーを完全に使いこなしたら、貴女と勝負しましょう。その代わり、本気でいらっしゃい」

奈々「もちろんです。楽しみに待ってます」

二水「そういえば、奈々さんヒュージ相手にCHARMを2つ使って戦ってましたね?円環の御手では無さそうですが…」

奈々「あれね?その説明については明日にしてくれる?今日はゆっくり休みたいから」

楓「まあいいですわ。今日はゆっくり休みましょう」

 

 

話が済んだ所で、出雲が本題に移る。

 

 

出雲「さて…一柳よ、私の課題を見事こなし、ようやく9人揃ったようだな…」

梨璃「え?あ、はい!」

出雲「お前達はこれで、この百合ヶ丘の新たなレギオンとなった」

楓「それはつまり…」

出雲「お前達のレギオンは、学院の許可を得て、正式に登録されたぞ」

梨璃「ええ!?」

奈々「おおー!!」

二水「本当ですか!?」

 

 

なんと出雲は、梨璃達のチームがレギオンとして登録されたことを皆に伝えた。

 

 

梅「それで先生、レギオン名は何にしたんだ?」

出雲「落ち着け。お前達のレギオン名は白井が言う。もう考えているんだろ?」

夢結「お見通しですか…分かりました」

梨璃「お姉様の考えたレギオン名…なんだろ…」

 

 

楽しみで仕方がない梨璃。

 

そして夢結は考えたレギオン名を言う。

 

 

 

 

 

夢結「レギオン名は…………一柳隊よ」

 

梨璃「!一柳………!!?」

 

 

 

 

 

 

 

梨璃「ええええええええーーーーーっ!!!!」

 

 

僅かな間が空き、梨璃は夢結が付けたレギオン名に驚愕した。

 

 

夢結「どう、いい名前でしょ?」

奈々「なるほど、しっくり来ますなぁ」

梨璃「待ってください!これじゃ私がリーダーみたいじゃないですか!?白井隊じゃないんですか!?」

奈々「語呂が悪い。呼びづらい」

夢結「奈々、さりげなく私をバカにしてない?」

楓「流石夢結様!素晴らしいレギオン名ですわ。私は一柳隊で構いませんわ!」

神琳「いい名前だと思いますわ」

雨嘉「うん!」

二水「私も一柳隊がいいと思います!」

ミリアム「ミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウス隊じゃ長すぎるからな」

奈々「何自分の隊みたいに言ってるのミリアムちゃん」

鶴紗「私も、一柳隊の一員になれて、うれしい」

夢結「梨璃…ここにいる皆は、貴女の元に集まったのよ。だからリーダーは、貴女以外いないわ」

梅「梅も、夢結と一緒のレギオンになれて嬉しいゾ」

梨璃「皆…!」

出雲「一柳がリーダーなら、副隊長は白井が勤めろ。まだリリィとして頼りない所があるが、シュッツエンゲルであるお前なら色々カバー出来るだろう」

夢結「そのつもりです。梨璃の足りない所は、私が補いますので任せてください」

出雲「そういうことだ。一柳もリーダーとして精進しろ」

梨璃「よかった…ですよね…」

出雲「ただし…!」

 

 

出雲が黒鉄を持って梨璃の顔に向けた。

 

 

出雲「私が見張ってる事を忘れるな。もしお前がまた弛んでいたらこいつでお前を突っつく。いいな?」

梨璃「は、はい!!」

梅「あはは…これなら大丈夫そうだな!」

 

 

皆で騒いでる中…奈々は夢結を見て安心していた。

 

 

奈々(昔の夢結さんに戻って良かったよ。美鈴さんもきっと喜んでるかな?)

 

 

こうして…百合ヶ丘に、新たなレギオンが誕生した。

 

 

そして、次の朝…

 

 

校門の前で、恐ろしい表情の夢結が奈々の前に立ちふさがっていた。

 

 

奈々「え…夢結さん…?」

夢結「貴女、昨日私が楽しみにしていたチョコレートケーキをよくも食べたわね…!!」

 

 

夢結は昨日、食堂で食べるはずだったチョコレートケーキを奈々に食べられた事に怒っていた。

 

 

奈々「た、確かに食べたのは悪かったと思ってます!でも仮にあったとしても、結構時間が経って食べれなくなるかと…」

夢結「言い訳むよおおおーーーう!!!」

 

 

夢結が奈々に対し、ルナティックトランサーを発動し、襲いかかった。

 

 

奈々「うぎゃああああーーーーー!!!??」

 

 

今日も、奈々の断末魔が学院中に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………………

 

 

二水「次回は奈々さんのレアスキルが明らかになります!」

楓「ピーキー過ぎませんか!?」

 

 

 

 

NEXT 木葉奈々は狙われる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は奈々の活躍を混ぜた話に出来たと思います。
彼女のレアスキル、CHARMについては次の話で明らかにしますので、楽しみにしてくれたら嬉しいです。

出来るまで遅くなりますが、気長にお待ちください。

では!
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