ギターを持った少年   作:真仁

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敗走、そして・・・

薄暗い人里を離れた林道を一台の白い車が進む。後部座席には白いスーツを着た一人の男が座っていた。彼の名は天津垓、飛電インテリジェンスに劣らぬ巨大企業ZAIAエンタープライズジャパンの“元”社長である。

現在は同社内に設置された新部署“サウザー課”の課長兼実務担当としてアーク関連問題の後始末を請け負っている。

そんな彼がアークの再動たるアークハカイダーが行動を開始したにも関わらず別行動をしているのには訳があった。

車は【海野】と書かれた表札のある洋館の前に止まる。降りた天津は門をくぐり玄関にてチャイムを鳴らす。少しすると一人の女性が玄関を開ける。

「どちら様でしょうか・・・?」

「はじめまして。私はZAIAエンタープライズジャパンサウザー課課長の天津垓と申します。海野博士の奥様で間違いありませんね?」

「ZAIAの方・・・?すみません、主人は今家には帰ってなくて・・・」

「問題ありません、用があるのは貴女の方ですので」

「私に・・・?」

「ジローと呼ばれるロボットをご存知ですね?」

「ジロー・・・ジローですって⁉︎」

「彼について、貴女の知っている事を全て・・・1000%お聞かせ願えますか?海野ミツコ夫人・・・いえ・・・旧姓、光明寺ミツコさん」

 

 

 

 

 

戦場に姿を現した滅と迅はそれぞれの相対する相手と対峙する。

「データ照合・・・仮面ライダー迅。テロリスト滅亡迅雷.netの幹部の一人・・・」

「テロリストっていう呼ばれ方はあまり好きじゃないな。僕らはこの世界の悪意を監視する者、だからね」

「どうでもいい事だ。どのみちこの場で破壊されるのだからな!」

「悪いけど、今回はこれで失礼させてもらうよ」

迅は再び背面の翼を左側のみ展開すると、アークハカイダーめがけて突風を浴びせる。

「ヌウ・・・ッ⁉︎」

熱波を帯びた赤い突風により怯んだアークハカイダーの視界が一瞬遮られる。すぐさま視点を迅に戻すが、そこには既に迅と倒れていた二人のライダーの姿は無かった。

「・・・逃げられたか」

その時、アークハカイダーの頭部のユニットが怪しく明滅する。アークハカイダーはそれに反応する。

「・・・了解、一時帰投する」

そう言ってアークハカイダーは踵を返して歩き出すのだった・・・。

 

 

 

 

一方、或人とイズの前に現れた滅はマシンガンを構えたジローと睨み合う。正確には睨むのではなく、ヒューマギアとしての機能を使いカメラを用いてジローの細部を分析していた。

「これは・・・?」

そこに迅から通信が入る。

『滅、バルカンとバルキリーは救助したよ』

「・・・わかった、こちらも問題はない」

そう言って通信を切ると、滅は或人の元に近づく。動き出した滅に反応してジローがマシンガンを向ける。

「・・・悪いが“今はまだ”お前の相手をしてる暇は無い」

「なんだと⁉︎」

そう言って滅は手にした剣を鞘に納める。

「滅、アイツは・・・ジローは!」

「今は喋るな、飛電或人。話はここを離れてからだ」

「させるか!」

ジローは滅が或人に接触しようとする前にマシンガンを発砲しようとする。しかしそれよりも先に滅が弓型の武器“アタッシュアロー”をどこからともなく取り出して構える。

「何⁉︎」

すかさずアタッシュアローから光の矢が発射されジローの足下に命中、激しい火花に思わずジローは怯む。

「退くぞ、飛電或人」

そう言って滅は或人とイズを連れてその場から離れた。その場に取り残されたジローは再び胸を押さえて苦しみだす。

「ウ・・・ウゥ・・・ダメだ・・・僕は・・・俺は・・・!」

そのままフラフラと歩き出したジローは姿を消した・・・。

 

 

 

 

 

飛電インテリジェンス本社の社長室から繋がる秘密ラボ。そこに或人を含む滅と迅により救出された、傷ついたライダー達は集まっていた。

応急処置を受けながらそれぞれの持つ情報を交換し合う。

「アークハカイダー・・・またアークが動き出したのか・・・」

「ああ、そしてジローが暴走したのは奴のせいに違いねぇ」

そんな中で一人疑問を抱いていた刃が口を開く。

「だが・・・何故奴は飛電或人を狙ったんだ?」

「ジローは・・・飛電がヒューマギアを、ロボットを商売道具としていいように利用していると言っていた・・・」

「つまり・・・ヒューマギアの自由の為に戦ってるって事?僕たち滅亡迅雷.netみたいに?」

「だとしても疑問が残る。あのジローというロボットか何故そのような思考に至ったのか、だ」

滅の発言を聞いた或人はその言い回しに違和感を感じた。そしてジローの言葉も思い出す。

「そう言えば・・・ジローは自分の事をロボットと言ってた・・・」

「そうだ、飛電或人。奴は悪意により暴走したヒューマギアではなく・・・全く別の人型ロボットだ」

「なんだと?」

「ヒューマギア以外にも人型ロボットが存在したというのか・・・⁉︎」

「それについては私から話そう」

そう言ってラボに現れたのは天津垓だった。

「この非常時に連絡も取らずにどこに行ってたんだ」

かつて、天津はZAIAエンタープライズジャパンの社長として飛電インテリジェンスを買収・子会社化しようと画策していた事があり刃はその際に天津の部下として活動していた。結果的には鉄拳という離職届と共に刃はZAIAと袂を分かつ形になりそれ以降は一切の遠慮も無く辛辣な発言を出す事も多くなった。一連の顛末を知っている或人は相当ストレス溜まってたんだろうなぁと思いながらその様子を見ていた。

「そう無下にしないでもらいたいな。君達が今一番知りたいであろう情報を入手しに行っていたのだからね」

そう言って天津は持っていたUSBをラボにあったPCに挿し込む。するとラボの立体投影ディスプレイにジローの姿が映される。

「これは・・・!」

「君達がジローと呼んでいたロボットだ。そして・・・」

天津がキーボードを操作するとジローの解剖図とヒューマギアの基礎設計図が並ぶ。

「ねぇ滅。コレ、ヒューマギアだよね?で、コッチがジローで・・・」

「所々異なる点も多いが・・・これは・・・」

「・・・似ている。ヒューマギアの基礎設計と、ジローの内部メカニズム・・・!」

「そうだ飛電或人。他でも無い、ジローはヒューマギア開発の際にモデルとされた“自我を持ち得る程の電子頭脳を持つ人型ロボット”・・・いわばプロトタイプヒューマギアとも言える存在なのだ」

「そんな・・・どうしてジローが⁉︎」

「順を追って話そう。全ての始まりは君の祖父、飛電是ノ助とジローの開発者、光明寺博士という二人の人物の邂逅からなのだ・・・」

 

 

 

 

 

同じ頃、姿を消したジローはフラフラと人気のない暗い道を彷徨っていた。そんなジローの前にアークハカイダーが現れる。

「お、お前は・・・馬鹿な・・・た、確かにお前は俺が殺し・・」

ジローが言いかけたところでアークハカイダーの目が紅く光る。

「ジロー・・・お前の役目を忘れたのか・・・?お前の役目は飛電或人を・・・仮面ライダーゼロワンを破壊する事だ!」

「ウ・・・⁉︎グアアァァァッ⁉︎」

アークハカイダーの言葉に反応するかのようにジローは胸を押さえて苦しむ。

「飛電或人を殺せ!仮面ライダーゼロワンを破壊しろ!“命令”だ!」

「ガ・・・ア・・・アァァァァッ!」

立っている事も出来ずその場に崩れ落ち、胸を押さえながら地面をのたうち回るジロー。その様子をアークハカイダーの後ろから眺める影が。

「うわ〜、中々にエグい光景だね♪」

「・・・何の用だ、ヒューマギア」

「ひどーい、私にはちゃ〜んとアーク様から貰ったアズって名前があるんだからね」

イズに酷似した容姿の、だがイズと異なり長い髪と赤く光るモジュールを持つヒューマギアが面白おかしげな口調でアークハカイダーに話しかける。

「ねぇねぇ、ソイツ、使えるの〜?」

「コイツには“服従回路”が組み込まれている。命令には逆らえん」

「その割にはなんだか無駄な抵抗してるみたいだけど〜?」

「コイツの中には悪の命令を拒む“良心回路”も組み込まれているからな。だが、その回路は不完全な出来損ない、完全で強力な“服従回路”には到底敵わない」

「ふーん、中途半端な善意と完璧な悪意・・・まるで人間みたいだね。

さっさと悪意を受け入れてただの機械になっちゃえば楽なのに・・・馬鹿なロボットさんだね♪」

「だからこそ・・・面白いのさ」

苦悶の表情を浮かべで絶叫するジローを眺めながら、アークハカイダーはその変わる事のない鋼で出来た顔で、でも確かに心で笑ったのだった。

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