サクラ大戦3外伝 ~絶海より愛をこめて~   作:ヤットキ 夕一

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 巴里のターミナル駅には多数の蒸気獣ポーンの改造型が出現していた。

 蒸気で動く西洋甲冑といった出で立ちのポーン。その鎧の各所にトランプのクローバー型の意匠が加えられている。

 そしてその数、十体。

 決して少なくない数ではあったが、そこはそれ、所詮は低級の蒸気獣である。巴里華撃団の誇る光武F2の敵ではなかった。

 エリカ、グリシーヌ、コクリコ、ロベリア、花火の攻撃の前に、なすすべもなく破壊されていくポーン・トレーフル((クローバー))

 そしてもちろん、巴里華撃団としての初陣を飾り、ただ一人だけ光武Fに乗った白繍なずなも、また次々と敵を倒す。

 

 ──手にしたその金砕棒で。

 

 とはいえ使いにくい武器ではなかった。

 見た目のインパクトで敬遠しかけたその武器だったが、使ってみれば思いの外に悪くはない。

 昔話で鬼が持っているようなものとは違い、細めのそれはなずなが学んだ棒術、杖術に近い感覚で扱うことができたし、金鋲も威力を増す効果があるのは明らかだった。

 その武器の思いがけない良さに戸惑いつつも、満足する。

 

 ……決して、気に入ってなんていない。断じて。

 

「やるねえ、なずな」

 

 付近にいた蒸気獣ポーンの最後の一体に金砕棒を叩き込んで破壊したなずなの光武Fに、サーモンピンクの光武F2が近づいてきた。

 肩には猫のマーク。背中から延びる管楽器のようなホーンを装備したそれは、コクリコの機体である。

 

「そんなことない。この光武Fの性能のおかげよ……」

 

 以前、敵との戦闘という初陣に於いて乗ったアイゼンクライトよりもだいぶ動かしやすい機体だった。

 アイゼンクライトは高い霊力と身体能力を強要される“ワガママ”な機体だった。急場の調整だったということもあり“乗っている”というよりも“乗せられている”感を体が覚えている。

 さらにその前に乗った霊子甲冑は天武である。

 今は帝国華撃団でも欠陥機として封印されたそれは、なずなが試験搭乗者を務めたのだ。

 使用不能になる欠点こそ明らかになっていなかった時期だったが、未完成品の調整段階ということもあってだったが、、荒削りな乗り辛さがあった。

 それらに対して、まずは完成品であり、しかも実戦を重ねた機体である光武Fはぎこちなさや逆に突っ走りすぎることもない。

 そして光武系統の機体なだけあって、アイゼンクライトのような「機体に人が合わせる」感じもない。

 なずなは、霊子甲冑という機械でありながら、しかしまさに“甲冑”のようなスムーズさを光武Fからは感じていたのだ。

 

「またまた~、謙遜する必要ないよ」

「素直な感想よ……ジャン班長達には感謝の言葉しかないもの」

 

 それもなずなに合わせてシャノワール・メカニックチームがキッチリと調整してくれたからでもあるのだ。

 彼らに感謝の念を感じたそのとき──

 

「──ッ!!」

 

 なずなはその光武Fに、手にした金砕棒を思わず構えさせていた。

 武器を構えたのは──その直感で、危険を察知したからである。

 なずなが見た方向には新手が出現していた。

 

「あれは──」

 

 コクリコもまたなずなの反応を見て視線をそちらへ向け、新たな脅威を目にしていた。

 蒸気吹き出す人型の機械──という範疇はポーンとは変わらない。

 だが、その機体の大きさはまるで違う。

 そしてそれが纏い放つ霊的な力の強さについては桁外れだった。

 

「大型、蒸気獣……」

 

 コクリコが警戒しながらポツリと言う。

 その巨体は、ポーンとは形もまた大きく違っていた。

 一番の違いは二足歩行ではなく、四足でその巨体を支えているところだ。

 上半身こそ人のようなそれだが、下半身はさながら馬──まるで半人半馬(ケンタウロス)である。

 それもそのはず、その巨大蒸気獣は“馬型蒸気獣ファンフォー”と名付けられた機体であった。

 手にした武器は、そのあからさまに“騎兵”の姿がよく似合う騎乗槍(ランス)であった。

 

「こちら、なずな……巨大蒸気獣を確認しました」

 

 巨大蒸気獣の出現予想はブリーフィングでも言われていた。

 ならば一刻も早くこれを排除するためにも、部隊を集結させるべきである。そのためになずなは報告を入れたのだが──

 

「なるほど。こちらも確認したぞ……なかなか手強そうな相手だな」

 

 グリシーヌがそう返してくる。

 だが──なずなはそこに疑問を感じた。

 

(え? グリシーヌさんが、これを見つけたの?)

 

 直前のポーン討伐で、十体のポーンは比較的広範囲に広がっていた。

 それゆえに巴里華撃団は広範囲に散らばっていたはずである。

 今、なずなの近くにいるのはコクリコくらいで、他は比較的離れた場所にいるはずなのだが──

 

「あ!! わたしも見つけちゃいましたよ~!」

「なに!?」

 

 続いて聞こえたエリカの声に、ついさっき発見の報を入れたグリシーヌが困惑気味に驚く。

 

「本当なのか、エリカ? わたくしとお前では距離が離れているはずだが……」

「え? でも目の前にはちゃんといますよ? さっきのポーンとは明らかに違う、手強そうな敵が。腕が四本もありますし……」

 

「「え!?」」

 

 グリシーヌとなずなの声が思わず一致する。

 

「なにをバカな! 敵の大型蒸気獣はそんな姿などしていないぞ! ガッシリとした巨体に大きな腕が二本の、まるでクマのような……」

「クマ!? ウマじゃなくてですか?」

 

 グリシーヌが例えた表現に、なずなはさらに驚く。

 どう見てもなずなの前に現れた巨大蒸気獣は、熊という姿には見えない。

 

「ったく、一体どうなってるんだい!? 情報がとっ散らかりすぎてワケがわからない。まったく揃いも揃って……バカだからか?」

 

 ロベリアが舌打ちしながら愚痴った。

 彼女はまだ巨大蒸気獣と遭遇していなかったが、発見報告をした三人だったが、その内容は三人ともちぐはぐだった。

 そして駆けつけようとした彼女だったから気が付いたのだが、場所がバラバラである。

 

「……待ってください、皆さん。これはひょっとして三体…………」

 

 冷静になった、こちらも接敵していない花火が、怯えたように言うと、作戦司令室のグラン・マが肯定した。

 

「ああ、花火。アンタが気が付いた通りだよ……大型蒸気獣は3体いる」

「「「「「「なっ!?」」」」」」

 

 その状況に、6人は愕然とした。

 

「バカな! 3体だと!?」

「そんなにたくさん出てくるなんて……」

 

 グリシーヌとエリカがその事実を信じられない思いで声に出すが、続いて送られてきた各地の映像には、自分たちの目の前のものとは明らかに違う姿の大型蒸気獣が、他に二体映っていた。

 

「オイ、なずな……アンタ、だいぶ盛大に歓迎されてるみたいじゃないか」

「ち、ちっとも嬉しくないんですけど……」

 

 ロベリアの軽口に、苦笑混じりに答えるなずな。

 

「ど、どうしましょう……」

「どうもこうもないよ。みんなのためにも、全部やっつけるしかない!」

 

 動揺する花火に、コクリコは悲壮な程の決意を見せて戦意を高める。

 

「コクリコの言うとおりだよ。ここでアタシらが逃げるわけにはいかないんだ。総員、二人一組で一体に当たるんだよ! グリシーヌと花火、エリカとロベリア、それと、なずなとコクリコ……」

 

 グラン・マが指示を出してチーム分けしていく。

 敵に近いグリシーヌとエリカはそのまま目の前の敵に対し、それにグリシーヌには花火、エリカにはロベリアを急行させる。

 少し離れた場所になったなずなとコクリコは、そのまま馬型巨大蒸気獣と戦うことになった。

 




【よもやま話】
 ここで登場した馬型蒸気獣というのは、実は旧作で出したオリジナル蒸気獣の中でもっとも思い入れの深かったものを引っ張り出したものです。
 当時は馬型蒸気獣ファンファーレという名前で出して、やはり半人半馬といった姿でした。
 しかしこれを掲載する前に『サクラ革命』でウマ型機獣を出されたのは誤算でした。まるでそこからとったようじゃないですか!
 こっちとら『サクラ大戦4』よりも前から半人半馬を出していたんだからなー! と自己主張してみる。
 ちなみに熊型蒸気獣は前は出しませんでしたが、サクラ革命やる前から決めてました。ネタ被り…… orz
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