サクラ大戦3外伝 ~絶海より愛をこめて~   作:ヤットキ 夕一

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「やったね! なずな!!」

 

 馬型蒸気獣が爆発したのを見届けてあがったコクリコの快哉の声。

 大技を放って息を乱したなずなは、それに呼吸を整えつつ頷いた。

 

「ええ。なんとか……」

「さすがイチローの代わりの人だよ。それに前にきた人達もそうだけど、帝国華撃団ってスゴい人ばかりなんだね」

「そ、そんなことない。あの人達に比べれば、あたしなんて……それに──」

 

 二人でどうにか撃破した馬型蒸気獣。

 それからそう時間をあけることなく、続いてもう一機の大型蒸気獣──四本腕と臀部に当たる部分が大きく膨らんだその姿から“蟻型蒸気獣”と呼称されていた──を撃破したという報告が入る。

 そうなれば、残る一機はなずなとコクリコを抜きにしても四対一の状況である。

 

「なずな、ボク達も早く行こう!」

「そうね。急いでいかないと!」

「──いや、その必要はなくなった」

 

 なずなとコクリコの通信に、グリシーヌが割り込んだ。

 

「え? どういうこと?」

「……あの熊野郎も、きっちり倒したからさ。アタシの一撃を受けて見事に大爆発ってわけさ」

 

 倒したロベリアが代わりに答えた。

 残る一体の、豪腕を持った巨大蒸気獣は、頭に王冠を被ったような熊の姿だった。

 合流した二体の大型蒸気獣相手に、巴里華撃団はさすがの連携で見事に倒したのである。

 

「ということは──」

「そうだよ、なずな……アンタの巴里での初陣は、見事に勝利ってことさ」

 

 グラン・マの声が通信に入る。

 

「あの馬型をよく止めてくれたね」

 

 彼女はそう言って手放しで誉めた。

 正直、グラン・マはなずなを不安に思っていた。

 巴里華撃団への補充人員を、帝国華撃団には「大神か、もしくはそれに匹敵するほどの者」という要望を出してはいたが、無論、それが通るとは彼女も思ってはいなかった。

 だが、やってきたのは育成機関出の新人である。

 これには、欧州出身の織姫かレニあたりを期待していたグラン・マとしては、さすがに肩透かしを食らった感は否めない。

 だが、今回の戦いを見る限りでは合流をせずに戦った戦況分析はもちろん、彼女が展開した霊力の障壁結界という巴里華撃団が欲していた霊能力支援の片鱗が見えた。

 

(案外、掘り出し物かもしれないねぇ、この()は)

 

 誉められて嬉しそうに「はい。ありがとうございます」と笑みを浮かべる、ツインテールの娘を見ながら、グラン・マは内心でほくそ笑むのであった。

 

「さあ! なずなさん、勝利したからにはお約束のあれですよ!」

「──って、巴里華撃団でも定番なんですか?」

「うん、イチローが始めたんだって」

「……アイツは堅物なのかなんなのか、時々分からなくなることがあるようなことをするからねぇ」

「うむ……それには、わたくしも同意する」

「でも、伝統になっていることですから……」

 

 霊子甲冑を下りた、燕尾服のような戦闘服姿の巴里華撃団花組達。

 彼女たちが駅を背景にまるで集合写真を撮るかのように位置取り──

 

 

「勝利のポーズ……決めッ!!」

 

 

 一枚絵になるかのように思い思いのポーズを取る。

 今日の中心は、新メンバーであり活躍を見せた、黄色い戦闘服姿の白繍なずなだった。

 そして彼女は──さすがは帝国華撃団花組の育成機関出身、その初の勝利のポーズも戸惑うことなく、堂々と決めていたのであった。

 

◆  ◇  ◆  ◇  ◆

 

 ──戦闘が終わったあとのこと。

 

 その戦場となったターミナル駅から去ろうとした巴里華撃団は、とあるものを発見した。

 

「……え? 霊力反応? これって人がいるってこと?」

 

 霊子戦型という分類になったなずなの光武Fに搭載された霊子レーダーは、一般人レベルの霊力反応をしっかりと捉えていた。

 戦闘時には、蒸気獣が放つ強い反応に隠れて見逃していたが、その存在がいなくなったことでハッキリと反応していた。

 そして、その反応は戦闘が終わったというのに、動かずに位置を変えない。

 

(逃げ遅れた人? でもそれなら、戦闘中でもどうにか逃げようとするだろうし。それに、戦いが終わってから少し経ったのに残っているのは不自然よね)

 

 なにより蒸気獣が出てきたが、その目的が現時点ではさっぱり分かっていない。

 

(ひょっとして敵側の人間が、偵察していた?)

 

 だからこそ華撃団が去るまで動かず、ずっと情報収集に務めているのかもしれない。

 下手をすれば、去り際の隙を狙って攻撃される危険だってある。

 

(確かめないと……)

 

 なずなは、バレたのに気がついた工作員に反撃されるのを警戒しながら、その反応のある地点へと近づいた。

 だが、なずなが動いても反応に動きはない。

 相変わらず位置を変えず、霊力反応も反撃のために大きくなったり、逆に隠そうとして小さくなることもない。

 

「ん? なずな、どうかしたのか?」

 

 撤収しようとしていたグリシーヌが、そんななずなの動きに気がついて声をかけてきた。

 

「はい、ちょっと気になる反応が……」

 

 そう答えながら、なずなはその場所へと到達する。

 そこには──

 

「人が倒れてる!?」

 

 意識を失った様子の男の人が倒れていた。

 

「グ、グリシーヌさん!! 人が倒れてます! 要救助者発見です!!」

「落ち着け、なずな。負傷程度は?」

「わ、わかりません。降りて確認します!!」

「バカ者! 不用意に霊子甲冑から降りるな!!」

 

 罠を警戒したグリシーヌが警告したが、すでになずなは機体から降りていた。

 慌てて駆け寄ると、男性の姿がハッキリとわかる。

 歳の頃はなずなよりも少しだけ若いだろうか。

 そしてモニター越しでは見落としていたが、その艶やかな黒色の髪には既視感があった。

 

「あれ? この人って……」

 

 外傷が無いのを確かめながら、なずなはその体を抱き起こす。

 そして彼の顔を見て、なずなは気がつく。

 

 その場所に倒れていたのは──巴里にきた初日に、まさにこの場所で泥棒を捕まえてくれた彼だった。

 


 

<次回予告>

 

ローラ:

 やあやあ、初めまして、紳士淑女の皆様方。ボクの名前はローレル=クレセント。御覧の通りの()()()探偵さ!

 さてさて、突然現れた蒸気獣やら、どうしてボクの助手の彼──ケントくんがあんな場所で倒れていたのか、謎が謎を呼ぶ状況だけど、それを説明している暇も余裕も時間も無い!

 なにより、それじゃあボクの活躍の場がなくて面白くない! もちろん、このボクが!!

 

 さて、次回は今回バラバラだった敵が連携して襲ってくるという展開。

 それに対抗する巴里華撃団だが、致命的なものが足りていなかった。それは──

 

次回、『サクラ大戦3外伝 絶海より愛を込めて』 第2話

 

貴族の義務(ノブレス・オブリージュ)

 

 次回の敵の姿は──実はすでに登場していた! と推理しておこう!!

 

 




【よもやま話】
 最後に主人公登場……というわけで次回に続く。
 次回予告は前作が予知能力者だったので、今回は探偵の推理、という形にしました。


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