実在した憧れに夢を見て、幻想を抱いて。
かつての記憶は、その栄光は、未だ色褪せる事なく輝いているのだろう。
もう、存在してない人なのに。
理想を押し付けるのは間違ってるし、重ね合わせて見られるのは迷惑極まりない。
同じ存在なんて居る訳がないのに、理解しようとしない、受入れられないのは愚かというより、哀れだと思う。
過去ばかりに目を向けて現在を見れないことになってまで、その面影を追いかけて。
そんな幻影は、もはや悪夢だろうに。
まぁ、だからといって私が救いの手を差し出すことはないんたけど。
というか救いの手どころか垂らした糸をバツンっと一思いに断つことしか出来ないし。
偶像崇拝の神様に直接手折られるのってどう考えてもSAN値が…ねえ?
そんなので(邪)神要素ぶっこまれたらそれこそブチギレるわ。
私は!ただの!!幼女なので!!!
前の記憶があるからといったってメンタルケアは全くの専門外だし。
そもそも一応は被害者な私がやる事じゃない。
そもそも巫女に指名される前は普通だったのに、自分達が任命したのに、ほんと…うん。
…そんなに、似てるのかなぁ?
例の巫女様と血縁関係があると知ったのはついさっき。
元々ポケモン達に好かれるところとか似てるとは言われていたけど、もしかしたら容姿が似てるっていう意味だったのかもしれない。
でもさぁ…
…うー。
うぅーん…
「そんな唸ってどうしたのフルーラちゃん。お腹痛い?」
「いや違いますけど」
「うん、知ってるよ」
「むぅ…」
「ヨウガンさん、そういうとこ直した方がいいと思いますよ?」
「ははは。まぁまぁ、今のはわざとだから、ね?」
一瞬めっちゃイラってしたんですけど。
煽りスキルもそうだけと、そーいうタイミングを見計らうのが上手いんだよね…
お兄さん、注意してくれるのは有り難いんですけど頭ボサボサになるから雑に撫でないで。
あとおじさんは何言ってももうダメだと思う。
「…はぁ。もう、もう…ほんと…もーーっ!」
「あははーフルーラちゃん駄々こねてるの可愛いねー」
「いやー拗ねてるフルーラちゃんはなんだか新鮮だね」
「おっちゃん達気ぃ逆立てんのうまいな…フルーラも見習いや?」
「松ちゃん…それなんか違うぅ…」
ぎゅーーーっと抱きついて、深呼吸。
ポケ吸いはぐらついた精神の特効薬、はっきり分かんだね。
すぅーーーーはぁーーーー。
「だっておじいちゃんが連れて来たくせに、なのに追い出すのはどーかと思います!」
「それはフルーラちゃんがキレちゃったからだねぇ」
「えっなにそれ珍しい見たかった」
「キレてないですぅー怒っただけですぅー!」
「いやアレはキレとったがな」
「松ちゃん!!」
「ぐぇ」
「こらこらヤドンにあたらないの」
「ぐぬぬぅー!」
私は!怒った!!だけです!!!
キレてたらもっと言いたかったこと言ってたもん!
ちゃんと自重してたもん!!
一応気を使って丁寧に言ったもん!!!
…言ってたよね?
ぶっすー、とわざとらしく頬を膨らませる。
ぷすっ、とお兄さんに潰されて空気が漏れる。
膨らます、潰される、膨らます、潰される…
…を何度か繰り返して、なんだか気が抜けてきた。
いやべつにほんとに拗ねてた訳じゃなくて…
ただ最後まで居させてくれなかったのが不満なだけで。
何と言うか全力で発散出来なかったのが…なんだろ。
むかむかする?
喉元でつっかえてるっていうか…
言い表せない不快感?
う"ぅーーーー…
「くっ…ふ、ふふ」
「あははは」
「……なんですか2人して笑って」
クスクスと、小さく肩を揺らして笑う2人を半目で睨みつける。
どうせ威嚇にもならないことは分かりきってるから、態度で不服を示してるだけだけど。
効果はいまひとつなんでしょーけど。
ふん。
「いやね?なんかフルーラちゃんが幼く見えて、ちょっと安心してるんだよ」
「ですよねー。フルーラちゃんってば他の子供達と比べると騒がないし…第一成人むかえたトレーナーより大人っぽいっていうか」
「そうそう。バトルの知識ならエリートトレーナーと遜色ないしねぇ」
「あーわかります。1人で潜水艦から脱出とか、犯行グループの推察とか…もうベテラントレーナー顔負けだよね」
「あぁ、それで身バレしたんだってね」
「ぐふっ…まぁそうなんですけど。そうなんですけどっ!」
「まぁ君からしてみれば災難だったね」
「……あははー…はぁ。まぁ、今はそれで良かったと思いますよ」
………?
……、…………。
………………………うん?
なんだろ。
なんだろう。
なんか、引っかかった。
なんとなく、なにかが、引っかかったの。
「国際的な犯罪組織の手掛かりが掴めたのって、結果的にフルーラちゃんのおかげですし…」
「まぁそうなんだよねぇ。犯罪組織に誘拐されて…自力で、しかもほぼ無傷で生還したんだってね。僕でも出来るかどうか」
「そーなんですよぉ!しかも!手持ちのポケモンはヤドン一体!!つい数十分前に捕まえたポケモンで!ですよ?!」
「海のポケモン達が加勢してくれてたって聞いたけど」
「あれは壮観でしたね。普段深海にいるポケモンとか、縄張り争いしてるポケモン達がこぞって勢ぞろいして海面からこっち見てるんですよ。怖かった…」
「…フルーラちゃんはヤドンに運ばれてたんだろう?」
「護衛とばかりにギャラドスとか一目で高レベルだとわかるポケモン達を侍らせてましたよ」
「……それは、すごいね」
あの日の、ことだ。
私が気絶してた時のこと。
詳しく聞いたことのなかった、話。
「あぁそれに、フルーラちゃんはポケモンの育成方針を立てるのが上手いんだよねぇ…僕がジムリーダーだったらジムトレーナーとして囲ってたよ」
「あーーー…グリーンくん、結構あからさまに唾付けしてましたねぇ」
「指導だけならまぁ、先輩としての対応だって終われたけど…わざマシンは…ねぇ」
「ですねぇ」
裏話。
気にとめてなかった、善意と流したこと。
本人がどう思ってたのかは他所に、周りがそう受け取ってしまう、出来事。
…私が、私として、自由に、思ったままに、動いてたこと。
例の巫女様に、似てるからとか、そうじゃなくて。
私のやったことが、長老様達の思考を、加速させた…?
例の巫女様の再来だと思われるような事を、私は既にしていた…?
えっ…
…え?
私のしたことって、そんなに、おじさんも、お兄さんも、驚くようなこと、だったの?
私が不貞腐れただけで、幼く見えるって…
年不相応なのは、認めるけど…
「私、そんなすごい人じゃ、ないです」
ぽつりと溢れたのは、紛れもない本心。
きょとんと瞬いた二対の瞳は、優しい眼差しで。
でも、ちょっと、真剣な顔つきで。
「自覚してなかったのは、私、ですか?」
訊ねるように聞いたけど、これは確信だった。
「あははー…分かっちゃった?」
「んー…察しが良すぎるのも、隠せたらいいかなぁ」
「…気をつけます」
わざと。
わざとだ。
私が例の巫女様と混同視されてると、きっともっと前から知ってたから。
だから、こんな風に、まるでおだてるみたいな会話をして。
分かりやすく教えてくれた。
でも。
でも、さ…
「おじさんもお兄さんも、優しくないぃいいぃー!」
私が年不相応に、まるで大人のように対応するから、長老一派が暴走してるんだよ、と。
例の巫女様のような偉業を既にしてるから、控えるようにって。
遠回しに言わなくたっていいじゃん!
わかったもん!
もうちゃんと理解したから!!
頑張って年相応の態度?とればいいんでしょ!!!?