「うがーーーーっ!」
咆哮。
というか絶叫。
鬱憤を吐き出すように大声で叫ぶ。
うん、少しだけスッキリした。
少しだけねっ!
「あははー。落ち着こうねーフルーラちゃん」
「お兄さんさんのおにちく!おじさんもだけどやっぱ優しくない!!知ってたけど!優しくない!!」
「おやー?そんな悪口いうのはどの口かなー?」
「いひゃいいひゃいいひゃい!!いひゃいっへばぁ!!」
「あははははー何言ってるか分からないなー」
「二人共楽しそうだねぇ」
「ひゃにょひふひゃいーー!!」
遊ばれイジられ憤慨するけど、暖簾に腕押し、糠に釘。
むしろ微笑ましいとばかりに掌でコロコロ転がされて加速する。
ただいまお兄さんから絶賛指導され中。
前々から、というかワタルさんから
それは如何に
人の多い都市、自然豊かな田舎、或いはビジネス街、港などの交通機関都市。
そこに居ても
または歩きながら、会話しながら、飲食しながら、バトルしながら。
周囲の人の観察の仕方、見られているかを察知する技法、そして気配の探り方。
習うより慣れろとばかりに、島民や観光客に紛れたお兄さんを見つけ出す日々を送っていた。
今では一応バトル中でもお兄さんを察知できるくらいにはなった。
一年の月日は偉大である。
だがしかし、だ。
そこに、今度は
これが非常に厄介。
周囲に溶け込みながら、視線や気配を察知しつつ、自分は無害な子供ですという
これにバトルしながら、となるとマルチタスクがすぎて処理能力が完全に追いつかない。
もともと周囲周辺の気配やら反応やら、そういうのを察知するのは結構得意な方だと思ってる。
伊達にエスパータイプと相性が良い訳ではないので。
でもね、だけどね。
演技とか、そんなスキルは持ち合わせてないんだよ。
あー!あーーっ!
もうっ!!
同い年の子ってどういう感じなの?!
目上の人には敬語じゃダメなの!?
ダメだからこうなってるの知ってるけど!!
丁寧すぎるって何?!
口調いず何?!
あとバトルの拙さってどうしたらいいの!?
うちの子達全力バトルしか出来ないんだけど!!
頑張って低レベル技で戦ったのにダメ出しされたのほんと解せない!!
すなかけ→しっぽをふる→でんこうせっかの何がダメなの?!
ぶすくれながらお兄さんから手渡されたキュートなポケモン、いつしか撫でた個体より柔い茶色の体を抱きしめる。
「えぶぃっ…」
「うぅ…不服そうな顔もかわいい…でもお願いちょっとまって癒して…もう無理ぃ…」
「ぶーぃー…」
仕方ねぇなこいつ…
みたいな視線を貰いつつももふもふするのを止めない止められない…
だって酷評がすぎるんだもん、少しくらい拗ねたっていいじゃん?
拗ねるのだってきっと年相応だよ…うん。
「んー…もうバトルの拙さについては諦めた方がいいんじゃないかな?野良バトルで有名になる前に別人になっちゃえばいいんだし…」
「いやぁー…それがフルーラちゃんが変装出来るのってバトルが鬼強い男の子か、バトルが異様に強い女の子の二択ですし…」
「フルーラちゃん…」
「そんな残念な生き物を見る目しないでくださいー!」
だってトゲチックもミニリュウも手加減ナニソレ美味しいの??って本気で技出すんだもん仕方ないじゃんか!
技の指示は聞いてくれるけど!
威力が!エグいの!!
なお松ちゃんはトリックルーム要員なので。
いやちゃんと手加減はしてくれるよ?
してくれてはいるんだけど、手持ちの中で一番レベルが高いので…
当ポケが意図せずにワンパンキルしちゃうから…
あと皆急所率高いし。
「せめてジムトレーナーくらいの強さなら…まぁ、それなりに居なくはないから…目標は、そこ、かなぁ…」
「んー。まぁ今のだとどうフォローしても駆け出しのトレーナーとは言えないからねぇ」
「だから何がダメなんですかぁ…」
「「技の選び方」」
「うわぁああぁぁん!!」
どうダメなのか教えてよぉおぉぉ!!
そんなこんなで。
とりあえず、他に誤魔化す方法もないから、と。
レベル低い子を手持ちに入れておこう。
という話になって、件のイーブイくんが手持ちに加わった。
親はお兄さんなので、自分の技量以上のレベルになったら言う事を聞かなくなるし…
指示を聞かないポケモン持ってたら上手くバトル出来るハズもないし…
と、いう、話、だった。
けど、これは、予想外にもほどがある。
貰ったイーブイが、次の日エーフィになってた。
これにはお兄さんもびっくり。
おじさんもびっくり。
なんなら私もびっくりしてる。
えーー…
いや、えぇー…
なんでぇ…?
なんというか、もう、困惑するしかない。
だって起きた時はイーブイだった。
朝ご飯たべてる時もまだイーブイだった。
ブラッシングしながらおじさんとお兄さんを待ってる時もまだちゃんとイーブイだった。
だがしかし。
来訪を知らせるベルが鳴り、二人を出迎えて、そう。
振り返ったら、エーフィだった。
いや、え?
マ??
進化の瞬間見れてないんだが???
てかなつき進化だよね??
そんなに好いてくれてたの???
ありがとうね????
ところでいつ条件満たしたの??
昨日の今日で進化って嘘すぎない???
全員揃ってスペースニャース顔を晒した。
おじさんはカントーでは滅多に見られないその進化した姿に驚いて。
お兄さんは渡した次の日に進化をしたことに驚いて。
そして。
このエーフィ、物凄く、バトル上手い。
というか演技上手。
全力でバトルしてるように
見掛け倒しの技…というか、視覚で見える効果より技の威力が低い…みたいな?
あっアレだ、
え?違う??
あとエスパー単一タイプだからか、意思の疎通がものすごくやりやすく滞りない。
指示の意図を察して…読み取ってくれるし、なによりバトルジャンキーじゃない。
素直に嬉しい。
松ちゃんとジャンキー達とも仲良く過ごしてくれてるし、非の打ち所のない名役者。
しかも。
しかも、だ。
散歩している時に連れ歩くと、不審者をいち早く察知してくれるし。
階段や段差がある所を通るときはサッと寄って来てくれるし。
人とすれ違う時は間に入って物理的に距離を取らせて接触しないようにしてくれる。
え、スパダリすぎん…?
松ちゃんと出歩く時は歩行ペースはのんびりまったり時々要介護だし…
ピー助と出歩く時はガッチリ抱えて周囲にポケモンが居ないか気を張るし…
えっ良い子すぎません…?
サポートが余りにも過不足なくさり気なくやってくれるのでもう、もう…ダメ人間になりそう。
いやね、おかげで子供っぽく振る舞うのに多少の余裕ができた訳だけども…
ところでバトルの指示、いる…?
あ、はい、ちゃんと指示出します。
手を抜くのはいけませんね、はい。
そんな
エーフィことシミズさんを引き連れての朝食の風景に違和感。
というか普段より圧倒的に豪華なそれに持ちポケ一同キョトン。
悪意に敏感な子達故に、こういうプラスの…サプライズとかに若干疎いのか知らなかったもよう。
かく言う私もお姉ちゃんも心当たりなどないのでキョトン。
そんな私達を見て、豪華なそれらを作り上げたお母さんから一言。
「お父さんが長老になったのよ」
「へっ?」
「ファッ?!」
え?
いや、え?
まって?
いつの間にそんなことになってたの…?
わけがわからないよ…
等身大ヤドンぬいぐるみ……