巫女ってガラじゃない!!   作:山乃庵

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雨に負けそうな日

 「ーーーだから、ドラゴンタイプのポケモンには同じドラゴンタイプをぶつけるのは悪い事じゃないけど、単純に効果抜群を狙って大きく削って短期決戦するならこおりかフェアリータイプで攻める方が有効的。しかもフェアリータイプのポケモンならドラゴンタイプの技が効かないから、それだけでまず有利。ここまではいい?」

 「…ぅ、……っ」

 「あれ、大丈夫じゃなさそうだね…えっ、どこから分からないの?」

 

 

 スクールで習うタイプ相性に追加で補足つけて解説すること約1時間。

 初めにノートに手書きしたタイプ相性早見表を唸りながら睨めつけるヒビキくんは、気の所為じゃなければ頭から疑問符が大量に出ているように見える。

 

 今の気分というか立場は先生。

 ただし教える相手は自分よりも一応年上で。

 けれども明らかに私より知識が無い。

 

 いやまぁ私の持ってる知識量がこの世界において異常なのは察してるけど。

 

 なんてったって図鑑や攻略サイト等から得たポケモンのタイプ及び覚える技、そして特性&夢特性、性格から好むきのみ=上がりやすい能力とか、更におよその種族値まで叩き込んだこの記憶が火を吹くぜ!

 犠牲になった期末テストの結果は散々だったけど、あつまれポケヲタの沼!チキチキ☆第✕✕回!攻略サイトの投稿を検証してみた!!ランキング5位まで完全網羅するまで眠りましぇん!!〜夏休み編〜とか仲間内で開催したりしてた。

 努力値の振り分けまで考察してくと夏休みなんて一瞬だし、エアコン効かせた室内で全力でゲームするのはマジ至福。

 偶に運ゲー信者がいてトチ狂ってる戦略でてくるから汗が滝のように目から出てきたよね。

 宿題は尊い犠牲になったのだ…

 

 

 ところでヒビキくんや、どこが分からないんだい?

 これくらい一般常識でしょ??

 

 っていうかノートに書けてるの私が話したことの半分くらいだね。

 もう限界?嘘でしょ。

 

 

 「えぇ…まだ全タイプ18種終わってないのに…?」

 「せやなぁ…」

 「私、スクールで効果抜群のタイプは教わるって聞いたんだけど…まだ複合タイプだってあるのに…」

 「せやなぁ…」

 「それに特性の解説なんて始まってすらないよ…」

 「せやなぁ…」

 

 

 松ちゃん、そんな遠くを見て黄昏れないでよ。

 私だってそんな顔したい。

 そもそもヒビキくんはスクール通ってたんだよね?

 なんでスクール行ったことのない私が教えてるの?

 

 実はスクール卒業出来てないとか言わないよね?

 流石にないよね??

 

 

 「んー…実践のが、いい?」

 「っ!!」

 「うわぁ」

 「あちゃー」

 

 

 めちゃめちゃ目ぇ輝いてるぅ…

 

 これ、アレだな。

 スクールは実技(バトル)の成績で座学(知識)をカバーして卒業したやつ…

 

 逆バージョンでテストの成績だけで卒業してく人は専門学校や大学に行って研究者になる人が多いんだって、おじさん言ってた気がする…

 ジムリーダーになるのに最低限の知識があるか確かめる認定試験があって、それが専門学校の入試程度だって、言ってたもん…

 

 

 「ふふ。大変そうだねフルーラちゃん」

 「ダイゴさん…恨みますよ」

 「んーごめんね?」

 「ぐっ顔がいい…」

 

 

 コテンと首傾げるのを不覚にも可愛いと思った私を誰かシバいてくれ…

 これだから顔のいいヤツは…!

 

 そもそも何故こんなことになっているのかというと、ダイゴさんが原因なので。

 

 何故私()()()が、グリーンさんに認められているのか。

 そう叫んだヒビキくんに、一言。

 フルーラちゃんの方がポケモンの知識があるからじゃないかな?

 と。

 

 全くもって悪意の欠片もない、1+1=2だよと言うくらいに普通に言うものだから…

 いやほんと、あの瞬間のポケセンの空気、ヤバかった…

 

 

 思わず二人を引っ掴んでさ、逃走しようとしたらさ、ラッキーがこっちおいでーって誘導してくれてさ、救護者用の部屋を一つ貸してくれたんだよね。

 瞬時に色々察してくれたジョーイさんは女神。

 

 そこで改めてヒビキくんと話し合おうと思ったんだけど、悪気なく貶されたと気付いたヒビキくんがダイゴさんに突っかかって、でもダイゴさんはどこ吹く風なもんだから…

 ダイゴさんのメンタル強すぎん?

 

 言葉が足りなかったから怒っていると判断したのか淡々とさっきのバトルの講評するダイゴさんに、今度は押され気味ヒビキくん。

 特に自身のバトルは反省する点が多いことは理解していたのか、最終的には沈黙していた。

 

 私自身、自分のバトルを講評されるのは日常だったけれど、それにしてもダイゴさんの講評は辛辣だった。

 良かった所、悪かった所と言ってくれるのは有り難いんだけど、言い方が抉ってくる感じで、こう、胸がグサグサッと刺された気分。

 

 お兄さんもおじさんも、言葉を選んでくれてたんだなぁ。

 二人の優しさが今になって染みてくる…

 

 

 そんな巻き込み事故を食らって、まぁ、反省会はしようと思ってたけど、初のジムバッヂゲットにもう少し浸らせてくれても良かったのに、しょんぼり落ち込む。

 私よりもエグいくらい講評が長いヒビキくんは、まぁ見てわかるくらいには沈んでた。

 心なしか前髪も萎んでる気がする…

 

 二人のやり取りを聞いていたけれど、ヒビキくんの戦法は基本的に効果抜群でガンガン行こうぜ!

 場を保たすには同じタイプを出して様子見するけど、よっぽどのことがない限りはタイプ相性有利のポケモンで戦うスタイル。

 

 なのだけど。

 

 

 タイプによっては複数の弱点があるし、ポケモンによっては無効になったりするって、覚えないと勝てる訳なくない…?

 

 

 例えばゲンガーの特性がふゆうだった場合とか、ね。

 私は身に沁みている。

 

 特にジムリーダー達は一日に複数回チャレンジャーとバトルする日もあるので、使うポケモンを変えたりする。

 その時、同じレベルの同種のポケモンを使ったとして、同じ技を覚えさせてるとは限らないし、個体が違うんだから特性も、得意な攻撃だって違うだろう、と。

 

 それなのにヒビキくんったら…ねぇ?

 

 確かにジョウトのバッヂを8個集め、そして殿堂入りまで果たしたらしいけれど。

 でも、だ。

 

 

 「知識ないなら、実践するの、よくないと思うの…」

 

 

 だから実践はしません。

 そもそも知識を教えるのは構わないけど、バトルするのは遠慮する。

 だってさぁ…

 

 

 「私の手持ちと、ヒビキくんの手持ちじゃ、レベルが違いすぎて無意味ですし」

 

 

 レベルでゴリ押しするのも嫌いじゃないけど。

 でも、レベルが全てだとは言わないし、それじゃ同じレベルのポケモンを持った人と戦った時に負け確で楽しくないだろう。

 

 

 「ヒビキくん、問題です」

 「…おう」

 「かくとうタイプの弱点は?」

 「ひこう」

 「ひこうだけじゃないよ?」

 「…エスパー、と、フェアリー」

 「見て答えるのやめよ…覚えてよ…」

 「…………むり」

 「無理かぁ…」

 

 

 えぇー…私が無理ぃ…

 

 カントー地方にて、殿堂入りトレーナーとしてジム巡りしてるヒビキくんはいま、大きな壁にぶつかっている。

 それはジムリーダーが本気でバトルしてくることにより、ジョウトでやれた攻撃ゴリ押しで勝つことが、難しくなっていること。

 

 そもそもジムリーダーはそのタイプのエキスパートなのだから、ジムバッチの認定試験のバトルで本気も何もないし、試験官として相手してくれてるのだから、勝てて当然とは言わないけど、レベルがあれば大抵は勝てる。

 だからこそ、勝つのに必要なのは、知識。

 それから戦術を考えること。

 

 攻撃技のみでなく、補助技を覚えたり、特性を利用して優位になるようフィールドを、天候を変えたりすること。

 自分にあう戦い方を見つけ出すこと。

 

 ヒビキくんに必要なことは、それ。

 

 だけど戦術を考える前に、自分にあう戦い方を見つけ出す前に、知識が足りてなさすぎる。

 大問題にもほどがある。

 

 

 「効果抜群、無効。これを完璧に覚えたら、次は特性。こっちは完璧に覚えなくてもいいけど、覚えておいた方がいい」

 

 

 じゃないとエレキブルの二の舞になるよ、と言えば押し黙ってしまう。

 

 

 んー…なんだろ。

 違和感、っていうかなんだろ…

 面倒臭い予感しかないんだけどさぁ…

 

 

 「何がそんなに引っかってるの?こう…なに、コンプレックス?かな?え、んー…誰に?」

 

 

 勉強会モドキが始まってから、物凄く気まずそうな…というかネガティブモード?

 あまりにもあからさまだったから聞いたらビンゴ。

 

 いや当たっても嬉しくないなぁ…

 

 

 「俺、さ」

 「はい」

 「シルバー…えっと、ライバルに、一回しか勝てたことないんだ」

 「…うん?」

 「ソイツはさ、すっげぇ強くってさ」

 「…そう」

 「ポケモンの知識もすごくってさ」

 「……うん」

 「いつも俺より、バッチ集めるの早かったし」

 「うん」

 「曲ったこと、嫌いなヤツでさ」

 「…そう」

 「進化させるのが難しいポケモンも、進化させてたし」

 「うん、それで?」

 「……俺さ」

 「はい」

 

 

 「アイツに、ちゃんと勝ちたいんだ…」

 

 

 んーーー、拗れてんなぁ…!

 

 てか、え?

 

 一回しか勝ててない、とな?

 おうん??

 

 

 

 

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