晴れ渡る空は青く澄んでいて、ピュウと吹いた風は少し火照った身体に丁度よい涼しさで、心地よくて。
潮の香りがする空気を大きく吸い込んで、ゆっくり吐く。
そうすれば、眼前の光景から意識を変えれた。
風が砂埃を流したことでクリアになったそれは、まぁ、当然の結果としか言いようがない。
倒れている巨躰と、悠然と佇む巨躰。
「うん。勝者、フルーラちゃん」
審判を務めたダイゴさんは、この結果に驚くこともなく淡々とジャッジを下した。
仮にも殿堂入りトレーナーに昨日トレーナーになったばかりのルーキーが勝ったのだから、もう少し反応あってもいいと思う。
うーん、やっぱ食えない人だよなぁ。
何を思って今もここに居るのかは当人しか分かりようもないけれど、昨晩イライラが一周回って虚無に昇華した時にちょっと、疑問が出た。
私とヒビキくんを引き合わせたのは偶然…かは置いておいて。
多分ではあるのだけれど、確定に近い気がするのだ。
何故、私とヒビキくんを交流させたいんだろうか、と。
初対面時のアレはこっちは何も発言してないのでノーカンとして、思い返すはジム戦後のポケセンでのやり取り。
いくらダイゴさんが鋼メンタルだろうと、お忍びでプライベートな時だったとしても、チャンピオンがあんな空気読まない発言するか…?と。
だってチャンピオンとはその地方の顔であり、代表なのだ。
そんな人が、他の地方で殿堂入りをしているだろうトレーナーに対して過激な発言をするか、否か。
しないでしょ、と。
ならあの発言には何かしらの意図がある。
じゃあそれは何?と考えると、ヒビキくんへのタイプ相性講座に繋がってく。
そもそもアレはダイゴさんの一言が原因で開かれたモノなのではじめから誘導されてたんだな、と。
松ちゃんとシミズさんの意見も聞いたりして考えて出したその答えはこんな感じ。
その1、私がカントーを旅をする間の
その2、タイプ相性曖昧な殿堂入りトレーナーをしっかり勉強させて将来を担う存在になって欲しいリーグの思惑。
…付け足すなら、実力も知識もあるトレーナーになったヒビキくんを四天王ないしチャンピオンに据えたいワタルさんの画策。
で、それに巻き込まれてるダイゴさん、みたいな。
いつ頼まれたのかは多分アーシア島を出る前…ではなく、私が観戦席からバトルフィールドに移動していた数分の間かな。
あながち間違ってないと思うんだよね。
とまぁ、そんなこんなでポケモンセンターの裏にあるバトルフィールドにて、昨夜決めた制裁…とは違うけれど、勝負はついた。
使用ポケモンは一体。
ヒビキくんは相棒のバクフーン。
それに私も相棒たる松ちゃんで対峙した。
当初の予定ではピー助のゆびをふるでフルボッコしてやろうと思っていたけど、昨日の叱咤叱責に反省した…というより年下にボロッカスに言われて火がついたのか目の下に隈を作ってまで念仏を唱えるが如く暗唱してたので少し許した。
あきらかに徹夜したね?
ついでに言うならダイゴさんに何か言われたんだと思う。
で。
努力したのならその結果を見るのは当然…とばかりに追試()を受けさせて、まぁ、70点代だったので一応合格にしてあげた。
単一タイプのみだから本当は100点満点で合格にしたいんだけど、昨日の点数が余りにも悲惨だったから…私の慈悲深い心に感謝してくれてもいいんだよ?
朝食済ませ、テストをして、採点し、及第点を与え、さてどうしようかと思ったらヒビキくんがバトルしたい、と言った。
どうも一晩中慣れない勉強に費やした結果、体がムズムズしてしまいどうにか発散したいのだとか。
脳筋…いやバトルジャンキーかよ。
致し方ないのでご褒美とは言わないけど一戦だけなら、と引き受けたのがだいたい十数分前。
そしてその結果が、私の勝利。
「マジかよ…」
呆然といった表情で倒れた相棒を収めたボールを見つめるヒビキくんには悪いが、こちらはまぁ想定の範囲内なので勝利したとて嬉しさとかは特にない。
私が松ちゃんで戦って、負ける訳がなかろうに。
何年一緒にいると思ってるの?
例え相手がヒビキくんが一年丸々ジム巡りで鍛えたであろうパートナーであったとしても、だ。
こっちは三年間ずっと一緒に居て格上とばかり戦って、バトルを叩き込まれ、しかも出会ってすぐに命がけの脱出体験だってしてるんだからな。
おかげ様で松ちゃんだけはレベル50余裕で超えてるんだよね!!
戦法は当然トリックルーム仕掛けの先制マウント。
後はずつきとみずのはどう、切れそうになったらトリックルームの繰り返し。
そんな感じでひるみとこんらん狙っての全力バトルさせないでひたすらボッコした。
勝負して分かったけど、ヒビキくんのバクフーンは水技に若干耐性出来てる。
察するに、まぁ、ライバルことシルバーくんの相棒がオーダイルなんだろうなぁ…って。
まぁダメージ耐性出来ててもこんらんしちゃったら無意味だよね★
「はぁーっ松ちゃんサイコー大好きー!」
「もっと褒めてくれてもええんやで」
「よっスナイパー松ちゃん!今日も相手の目を狙うえげつない水捌きだったね!そこに痺れる憧れるぅ!!」
「シバくで」
「ごめんて」
いやでも松ちゃん水技使うとだいたい目狙うじゃん??
バクフーンのこんらんの原因は半分くらい目に水入ったからだと思う。
ぎゅーっと抱き着きながらお巫山戯するのはいつもの事なのでまぁいいとして、だ。
微笑ましいと言わんばかりのダイゴさんの眼差しがなんか…ねぇ?
「ヒビキくん、ぼーってしてないでバクフーン回復してあげなよ」
「っえ、あ…おう」
うん、意気消沈してる様子じゃないみたいだし問題なし。
パタパタとポケセンに戻るヒビキくんを見送って、さて。
「ダイゴさんは、いつまでここにいるんですか?」
「…そうだね。もう、帰るよ」
「そうですか」
うーんポーカーフェイス。
でも、私が何か察したことに気付いてるような雰囲気でもある。
「一つだけ教えて欲しいんですけど」
「なんだい?」
「ワタルさんですか?リーグからですか?」
ふふっと笑うその顔を、松ちゃんと一緒に要観察。
分厚い顔の皮剥がしてぇ…とか思ってないよ!
チャンピオンの仕事柄必然的に必要な処世術なのは分かるからね!
けどまぁそれに苛ついたりムカついたりするのは別問題ってだけで!
気付かなかったら気にならないけど、気付いちゃったら気になるのは仕方ないよね。
「聞いてどうするんだい?」
「どうもしませんよ。リーグからって言うなら私が実力示せばいいだけですし。ただ、もしワタルさんからって言うなら頑張ってフェアリー&こおり攻めで凸ってみようかなって」
「…ほどほどにね」
「善処します」
うーん、反応からしてこれは両方かな?
面倒臭いなぁもう。
松ちゃんも異論は無さそうだし、れいとうビー厶かふぶきの技マシンでも探そうかな。
軽くさっきのバトルについて話しながらポケセンに戻って、ジョーイさんに松ちゃんを預ける。
回復待ちしながら今度は未だぎこちないヒビキくんを交えてバトルの反省点や良かった点を聞いたりして過ごす。
そうしてヒビキくんの緊張というか、私への態度が軟化したのを見計らって、聞く。
グリーンさんに、何て言われたのか。
曰く、
「俺に挑みに来たら全力で戦いたい相手」
そして、
「カントーのチャンピオンになれる存在」
と。
トキワジムが8番目に挑戦するジムと知らずに門戸を叩いたら呆気なくあしらわれ。
ならばと一目で強いトレーナーだと分かったグリーンさんに、ジムバトルでないバトルを挑んだものの、素気無くあしらわれ。
俺と本気でバトルしてぇなら、カントーのジムリーダー全員倒してみろよ。
と言われ、それに頷き、いつか挑んでやるつもりでいたのに。
アイツのが早く来るかもな。
と。
小さく呟いたソレを聞いてしまって。
聞いたら、そう返ってきた。
らしい。
っておぃいいぃいぃいいい!!
何言ってんのグリーンさぁあぁぁん?!
思った以上に過大評価されてる気がするんですけどぉおぉおおぉぉ!!!
ダイゴさんはなんで頷いてんのぉおおぉぉ!!!?