巫女ってガラじゃない!!   作:山乃庵

42 / 52
きゃ~!(歓声)

 その後の道中はまぁ平穏で、売られたバトルを高価買取りしたりしながらやって来ましたセキチクシティ。

 到着したのが夜だったので急いでポケセンに宿泊申請して、久しぶりのお風呂とふかふかベッドでリフレッシュ出来たし満足満足。

 

 

 そして今はお昼時をすぎた、お腹が満たされ少しばかり眠くなるようなそんな時間帯。

 ポケセンからちょっと離れた広場にて、シミズさんを侍らせて、なんならちょっと化粧もして、服もちょっーと華やかなのをチョイスして、準備万端。

 

 ざわざわと人の往来がそれなりにあるのを確認して、数度深呼吸して覚悟を決める。

 

 

 女は度胸!

 よし、やるぞ!!

 

 

 深く息を吸い込んで、細く優しく、吹き込む。

 

 

 突然響き始めた聞き慣れない音に行き交う人が一人二人と足を止め、なんならフラリと近寄って来る気配に、心の中でガッツポーズ。

 掴みは上々、後はどれだけ聞き惚れさせることが出来るかだ。

 

 奏でているのはもちろんオカリナ。

 祭事の練習用にと持ってきていた笛である。

 

 

 見慣れぬ子供が路上パフォーマンス…いやライブか?をしているのは興味惹かれる事らしく、2曲3曲と続けると疎らだった人はいつの間にか結構な人集りになっていた。

 足元で曲に合わせてぴょんぴょん跳んだり尻尾を揺らしたりと踊ってくれてるシミズさんは、きちんと集まった人達を警戒してくれているのでとても安心。

 いやほんとぐう優秀…しゅき…

 

 そして本来なら人前でこんな目立つ事をするのは自粛するべきであるのは理解している。

 理解してはいるけれど、どうしようもな…くはないけどちゃんと理由がある。

 

 実際こうなることは予想していなかった訳ではないけど、なんならセキチクシティまで保った現実を褒めて欲しいくらいだけど。

 予想外なことは既に起きてしまっていて、事態の現状を回復するにはこれが一番手っ取り早いと結論付けた。

 

 

 チャリン、と。

 ある人はヒラリと一枚大盤振る舞い。

 

 用意した箱に次々入れられるソレが、思ったより多くてとても嬉しい。

 投げ銭、ありがとうございます。

 

 ニッコリ笑顔を振り撒きながらお礼としてクルリと回ってパフォーマンス。

 わぉ流石シミズさん、タイミングバッチリ。

 

 音楽に合わせて同時に回ったパフォーマンスに、ちょっと歓声と追加の投げ銭ゲット。

 やだ皆さんやっさしー!

 

 

 見ての通り、目的はそう、お金である。

 

 

 旅に出るにあたって相応の…というか寧ろ多めにリーグから軍資金(というか補助金)を貰っていたのだが、それもほぼ底を突きそうなので、これは致し方ない事なのだ。

 と言い訳してみたり。

 

 だって、エンゲル係数やばいんだもの。

 

 言い直すと、まぁ、うん。

 カビゴンのご飯代、やっべぇ(真顔)。

 

 

 つまりそういう事である。

 

 

 そしてギャラリーと軽く会話したりして、リクエストされた曲を吹いてみたりと続けて何曲かと吹いて、そろそろ舌が疲れてきたので、最後の曲だと宣言して、打ち止め。

 

 右手を大きく回して胸元に止め、一礼。

 

 パチパチと貰い受ける拍手に、ちょっと感動。

 

 

 「ありがとうございましたー!」

 「嬢ちゃん、次はいつやるんだい?」

 「優しい音だね!楽しかったよ!」

 「セキチクに来たばっかりだろ?泊まるとかはあるのか?」

 「またここで演奏してくれるのかい?」

 「ねーちゃん!こんどラジオのやつ吹いてよ!ポケモンマーチ!ききたい!」

 

 

 思ったよりも友好的なギャラリーに、答えれるモノには答えながら帰り支度をパパッと整える。

 ここで失敗すると、諸々の計画がパーになるので迅速に、ってね。

 

 元々機材など持ち込んでないので投げ銭箱をしまっちゃえば殆ど準備は完了である。

 ので。

 笑顔を絶やさず対応し、手を振りながら良かったらまた明日お願いしますー!と言って撤退。

 

 

 シミズさんに神経を警戒に全振りしてもらい、足早にとにかく離れて、人の気配が無いところに着いて、ホッと一息。

 

 …うん。

 

 

 「ふぇーー!シミズさんありがとーー!!」

 「フィー…」

 

 

 ぎゅーっと抱き着いて、ついでに首筋に頬擦りしてモフモフを堪能。

 あぁー…癒やされるんじゃぁー…

 

 シミズさんからコイツほんと仕方ねぇな…と溜息混じりの感情が伝わってきたけど、仕方ないじゃん。

 

 人前でというか、路上ライブなんて、ほんと心臓に悪い!

 祭の時はもっと人多かったりするけどあんな近くで吹かないもん!

 話しかけて来る人いないもん!!

 それに吹く曲決まってるしいつも一曲だけだもん!

 

 うわーん!疲れたよぉーー!!

 失敗しなくて良かったぁーー!

 

 

 内心喚き散らしていたらポンポーン!と赤い閃光が飛び出してきて、4つの影に囲まれる。

 

 そして頭にぽむ、と柔らかい感触。

 

 

 「おつかれさん」

 「ま、松ちゃぁあん…」

 

 

 ぽふぽふと優しく叩かれて、労りの言葉をかけられて、思わず涙目。

 

 

 「りゅー…?」

 「ちょぴぃ…」

 「椿さん…ピー助ぇ…」

 

 

 ひんやりとした体で腕に擦り寄り、大丈夫?と覗き込んでくるつぶらな瞳。

 包むようにふわりと背中から抱き着いて、安心してーと頭を押し付けてくる温もり。

 

 

 「か、かびぃ…」

 「権兵衛さん…」

 

 

 ごめんなさいと言わんばかりに申し訳なさそうにこちらを伺い、大きな身体を屈ませ視線を合わせようとしてくれる優しさ。

 

 

 みんなほんとまじでいいこ…すき…

 

 

 ポロッと溢れた涙に、オロオロしだす愛おしい子達に、ふへへ、と締まらない笑みを返す。

 安心しただけだから大丈夫だよー、と。

 

 ありがとうの気持ちを込めて撫でて落ち着かせていれば、自然といつも通りの調子が戻ってきた。

 ポケモンセラピーはトレーナーのリフレッシュに最適、これ常識。

 

 

 「ふぅー…とりあえず、誰も追ってきて無い、よね」

 「フィフィ!」

 「せやな」

 「ん。なら、とりあえず着替えよっかな。権兵衛さん、ちょっと壁になっててね」

 「んび!」

 「シミズさんは警戒お願いします」

 「フィ!」

 「ピー助と椿さんは、戻ってくれる?」

 「ちょぴ!」

 「りゅっ!」

 「松ちゃん、着替え手伝って」

 「しょうがないなぁ…」

 

 

 わたわたと、荷物から着替を出して化粧を落として、変装からまた違う変装へ、今度は少年スタイル。

 もはや一人仮装大賞してるみたいだわ。

 

 髪も帽子に仕舞いこんで、っと。

 

 

 「松ちゃん、どう?」

 「ん、問題ないで」

 「よし。権兵衛さん、シミズさん、ありがとうね。戻って」

 「んがび」

 「フィ」

 

 

 残った松ちゃんを引き連れて、来た道とは違う道を使ってポケセンへ戻る。

 その道すがら、先程奏でていた曲を楽しそうに口ずさむ子達がいて、ちょっとほっこり…

 やだかわいい…うれしい…

 

 といってもまぁ…

 

 

 吹いてたのはゲーポケのBGMなんだけどな!

 

 一番好評だったのはセキチクシティのBGM。

 軽快な感じでとても良いよね!

 オカリナだと雰囲気ちょっと変わっちゃったのが無念…

 

 なおポケセンのBGMの時に聞いてたポケモン達がソワソワしてたのがめっちゃ印象的でした。

 

 

 「おっ。おかえり、どうだったよ」

 「ふふん!計画通り!見よ、この成果を!」

 「おぉー…いや、すげぇな?」

 

 

 宿泊室にて出迎えてくれたヒビキくんに本日の成果こと投げ銭箱を開封。

 そしてジャラジャラとなかなかな重さになった箱に入ってるお金を計算。

 

 初日だし数千円でも集まれば良いだろうくらいに思ってたけど、集計したら余裕で万こえててビビった。

 

 いや誰だよ万札投げたの…

 これは間違えて投げた説…

 

 でも、まぁ…うん…

 

 

 「これでカビゴン用ポケフーズ買える…!」

 「よかったなぁ」

 「権兵衛さんの体型維持にプロテイン多めのやつ選ばなきゃ…あの筋肉は推せる…!」

 「押せる…?筋肉を…?」

 

 

 疑問符浮かべてるヒビキくんはスルー。

 そして消費した諸々を補充しに、今度は一緒にフレンドリーショップへ。

 

 いやぁ、ゲームと違ってフレンドリーショップに普通に行き来できるのは有り難いね!

 なんてったっていあいぎり、持ってませんので!!

 

 ちなみに私達が路上ライブしていた時、ヒビキくんはサファリゾーン…もとい、パルパークに行っていた。

 なお捕まえたポケモンはいないらしい。

 

 

 そしてフレンドリーショップの店員にカビゴン用ポケフーズを用意して貰って、当ポケに試食して貰った結果…

 

 胃の中で膨らむ!ゴンベ・カビゴン用フーズ

 〜栄養満点プロテイン・すっぱい味〜

 

 となった。

 

 そっか…権兵衛さん、すっぱいのが好きなのね…

 貴方出したやつ残さず食べるから気付くの遅くなってごめんね…

 

 あっそっかなるほど?

 だからバタフリー農園の果実、熟れてないやつ食べ尽くしたのね??

 

 でもしぶいのが苦手なのは分かってたよ…

 

 ん?

 ってことは君、わんぱく???

 

 わんぱ、く…??

 

 ……そっかぁ…!

 

 

 にっこにこ。

 これはわっくわくが止まらないね…!

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。