巫女ってガラじゃない!!   作:山乃庵

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いつの間にか少しづつ

 ヒシヒシと、あるいはミシミシと。

 唐突に肌に突き刺さる緊張感。

 プレッシャー。

 

 思わず息を止めてしまいそうなくらい、重い威圧。

 

 鋭い眼差しに、その堂々たる海神の姿は神秘的でもあって、場違いながらも惚れ惚れとしてしまう。

 

 

 まぁ、向けられてるの私達じゃないんだけど。

 

 だってここは17番水道を通ってグレンタウンに向かう道中。

 ()()()通り過ぎることに相成った()()()()に向けての、威圧。

 

 つまりはまぁ、()()()()()()()に対しての盛大な牽制なのである。

 

 

 「えっ何、何なの、何なわけ」

 「ぅんー…なんていうか、巻き込んでごめんね?」

 「は?」

 

 

 こんな重苦しい空気の中、戸惑いは見せるものの萎縮することなくいつもの調子を崩さないのは流石というべきか、なんというか。

 

 ポケセンでグレンジムを検索した時、既にジムの修復は終わっていた。

 噴火の被害からまだ完全に復興はしていないものの、仮設だったふたご島からグレンタウンへと移ったことは知っていたのだ。

 

 だからそう、今、ふたご島にいるわけだ。

 

 伝説の三鳥が一柱、こおり・ひこうの複合タイプのポケモン、フリーザーが。

 

 

 けれどルギアのこの対応から分かるとおり、ここのフリーザーは故郷のアーシア島にいるフリーザーとは別個体なのである。

 

 そもそも伝説のポケモンは定義が少し曖昧なので、一個体しか居ないポケモン、というのはそれこそ創生神様やその直々の配下といった存在。

 個体数が著しく少なく、そして非常に強く、知能も高く、更に言うなら()()()()()()()存在。

 それがゲームでいう伝説のポケモンの分類。

 

 なんてったって研究しようにも個体数がアレだし、運良く出会えたとしても気を許して貰えるかは別だし、逆鱗に触れた場合の被害がやばい。

 そんな訳で伝説、と称されるポケモンは研究が進んでないのである。

 

 とまあ、それはそうとして、だ。

 何が言いたいのかっていうと、別個体がいる、という現実の話。

 

 アーシア島の三鳥は海神を含めて信仰の対象。

 けれど、ここに御座せるのは違う個体。

 

 つまり、ルギアの配下じゃない訳で。

 

 だからまぁ多分、その、アレだ。

 ウチのに手ぇ出すなよ、的なね。

 

 

 ネイティオの一件もあってちょっと過保護じゃないかと思わなくもないけど、相手が伝説という格上な存在であれば話は別。

 身を守る為なら海神の御威光に縋りますとも。

 

 そんなことをそれとなく比喩とか使ってぼかしにぼかしてヒビキくんに説明したけど、首を傾げて簡潔に頼むと言われたので仕方なく。

 

 

 「ルギアは私を守ってくれてるだけ」

 「…なるほど」

 

 

 いや、言っておいて何だけどこれで納得出来るのすごいね??

 

 

 そして威圧をかけながらも進んでいたのでグレンタウンが見えて来た。

 

 ので、そろそろ威圧を緩めたりしてくれたり…しませんか、そうですか。

 

 えっ。

 送り届けたらちょっと行ってくるって、え?

 ふたご島に行かれるんです??

 何しに…

 あっ、大丈夫です。

 心配は無用の事かと存じますが、どうかお気をつけて。

 

 

 島の端も端、人気もなければ野生のポケモンの一匹もいない場所に降り立ち、勇んでいらっしゃる海神様をお見送り。

 

 …うん。

 

 

 「噴火しないといいな」

 「は??」

 「いや、ちょっとね?」

 「いやいやいやちょっとどころの話じゃねーだろおい」

 「ヒビキくん」

 「お、おう」

 「世の中にはどうにも出来ない事は沢山あるんだよ」

 「は?」

 

 

 伝説のポケモンのバトルはね、自然災害と同じ扱いなんだよ。

 どうにか出来る事じゃないんだって。

 しかも原因()が自分だとか、そんなの口を閉じる理由にしかならない…

 

 ちょっと遠くに視線を飛ばしつつ、なるべく早くこの島から出ようと決意。

 

 そんな訳で。

 

 

 「松ちゃん、頼りにしてるからね…!」

 「まぁなんや、まかしとき…」

 

 

 どことなく疲れてる感あるけど松ちゃんで無双するのが一番確実で早いかなって。

 

 精神的負荷があったことはとても良く分かってるんだけど、ここはみずタイプ持ちの松ちゃんに頑張ってもらうジムなので…

 

 そう!

 ほのおタイプにはみず!!

 後はじめん、いわ(手持ちにいない)で殴ろうな…!

 

 

 わいわいがやがやと、賑やかな観光客達を避けながら向かう先はグレンジム。

 噴火からの復興支援を含めての観光業なのは理解しているけれど、温泉プッシュに力入れすぎでは…?と思わなくはない具合にすごい。

 

 アニメだとカツラさん、観光気分でジムに挑戦してくるトレーナーばっかだったからジム閉鎖してたし…

 まぁ本気なトレーナーの挑戦は受けてたから、良い人の分類でいいとは思うんだけど…

 

 けど、まぁ…うーん。

 罪悪感ではないけど、後ろめたい気持ち…とも違うんだけど、ちょっと、ね。

 

 

 ドーン、と。

 目の前にある大きな建物。

 

 新築らしくピッカピカなジム。

 

 

 「なんか、入り辛いね?」

 「わかる」

 「せやなぁ」

 

 

 雰囲気が違うんだよ、雰囲気が。

 まぁそれでもこの真新しいジムに入るんですけどね。

 新築特有のなんとも言えないこの臭い…落ち着かないね?

 仕方ないことだけどさ。

 

 そして今回も私が先にバトルするよ!

 勝利のグーを天井に掲げたよね!

 

 え?ジムトレーナー?

 あぁうん、クイズしたよ!

 ()()当然全問正解したよ!!

 簡単だったしね!!

 

 ヒビキくん!

 終わったら補習だかんね!!

 わざマシンの番号覚えろとは言わないけど、どんなわざがあるかは知っておこうな!!

 

 

 っと、お説教は後にして。

 

 対面するのはグラサンスキンヘッドで白ひげの男性。

 ちなみに服は白衣着用。

 

 うーん、とってもピカブイ。

 グレンタウンが温泉地だったから、髪があるorヅラ姿を見れるかとちょっと期待してたりしてなかったり…ってね。

 まぁいいけど。

 

 言葉はかわさず、一礼してフィールドに立つ。

 うん、やってやりましょう。

 

 

 「それでは、バトル開始っ!!」

 「松ちゃん任せた!」

 「いけ!サイドン!!」

 

 

 この声は!ト○ーおじいちゃん!

 おっと失礼でおじゃった。

 

 例に漏れずにアニメ声と理解したけどねぇちょっと待ってよ!

 アニメでも思ったけどここほのおジムじゃん!!

 なんでじめん・いわタイプ使うの!!!

 温泉掘る用ポケモンってネタにされてたの覚えてるよっ!!!

 

 まぁでもさ!

 

 

 「松ちゃん!みずのはどう!」

 

 

 素早さどっこいどっこいと見たのでラッキーこんらん狙いつつ効果抜群で削り倒す!!

 

 今日も完璧な目玉狙いえげつないね!

 そんなところも大好きだよ!!

 

 目を瞑ってのつのドリルなんて避けれるに決まってるでしょう。

 サイドンに手札を晒すつもりはないのでひたすらみずのはどうで、勝利。

 

 うんうん、流石松ちゃん!

 バトルで身体を動かすことが気分転換になったのか、憂鬱感も無くなって良かった!

 絶好調だね!!

 

 はてさて。

 アニメパーティなら残りはキュウコンとブーバー。

 

 ブーバーがエースであることを考えると、当然次のポケモンは…

 

 

 「ふん。なかなかやるじゃないか。じゃが次はどうかな!いけキュウコン!!」

 「きゅおおん!」

 

 

 わぁ、毛艶めっちゃいいー!

 生キュウコンテンション上がるぅ!

 でもでも、予想通りー!

 

 普通に素早さ負けてるからね!

 

 となれば、はい!

 

 

 「トリックルーム!!」

 「なぬっ?!」

 

 

 素早さどっこい勝負してたから、トリックルームは予想外だった?

 一応それ狙ってサイドン戦の時使わなかったからね。

 動揺してくれるならなによりです!

 

 

 「キュウコン!ほのおのうずだ!!」

 「松ちゃんみずのはどう!」

 

 

 ほのおのうずは4〜5ターン体力を1/8削ってくる技。

 そして松ちゃんはゴーストタイプじゃないので、うずに巻かれている間ボールに戻せない。

 

 けどまぁそんなのどうって事ない!

 

 

 「松ちゃん!倒れるまでみずのはどう!」

 「させるか!キュウコン、かえんほうしゃ!」

 

 

 勢いの良い炎と水が何度か交差し、互いに体力を削るもこちらは効果いまひとつなのでモーマンタイ。

 なにより相手は効果抜群だしね!

 どうあがいても確実に向こうのが先に倒れる!

 

 

 「きゅっ、きゅおお?!」

 「キュウコン?!」

 

 

 ん?

 あっ!ラッキー!

 

 10%やけどよりも20%こんらんのが確率高いので、キュウコンはあらぬ方向に炎を吐いて、きゅうきゅう鳴いて、正気に戻ろうと奮闘する。

 

 まぁそんな隙を見逃すほど優しくはないので!

 トドメのみずのはどう、ゴー!

 

 バシャッと一撃。

 きゅー、と倒れたキュウコンをボールに戻し、カツラさんは最後のボールを強く握っていた。

 

 

 「ぐぬっ…最後だ!いけ!ブーバー!!」

 「ぶっばっば!!」

 

 

 予想通り、最後のエースはブーバー。

 記憶の中の知識から覚えてる技はほのおのパンチ、だいもんじ、かえんほうしゃ、ロケットずつきと当たりをつけて、考える。

 

 アニポケでのカツラさんの切り札で、腕から出す熱でなんかピカチュウの電撃を無効化?して、サトシくんに負けを認めさせたポケモンだ。

 うん、格好いい。

 

 憧れだとかそういう興奮は抑えて、とにかく今は確実に勝つことのみを考える。

 結論!

 

 

 「松ちゃん戻って!椿さんお願いしまーす!」

 「りゅりゅー!」

 

 

 トリックルームがきれたので、ブーバーの素早さに多少追いつける椿さん選出!

 ほのお技はいまひとつだし、やけど負ったとしても特性:だっぴでなんとかなるしね!

 そんでもって!

 

 

 「しんそく!」

 「ほのおのパンチ!」

 

 

 先制とらせて貰ったし、反撃でパンチを受けてしまったけど、大丈夫。

 この距離ならこのままもっかい先制取れる!

 

 

 「アクアテール!」

 「んりゅーーっ!」

 「ぶばっ?!」

 

 

 クリーンヒットォ!

 椿さんの長い尾が、ブオンッと水を纏ってブーバーお腹へ直撃!

 これはいいダメージを与えたかな?

 

 ドラゴンテール、アクアテール、しんそく。

 セキチクジムで覚えさせていたたつまきは、今はアクアテールに変わっている。

 尻尾でブッ飛ばす快感にハマったらしく、椿さんは上手くキマったアクアテールに満足気である。

 

 うん、本ポケが楽しそうで何よりだよ。

 でも将来的はパンチ技覚えさせるつもりなんだけど、カイリューになっても尻尾技スキーだったら相談して決めるか。

 

 軽く思考を飛ばしつつ見つめるフィールドでは、ブーバーが体勢を立て直し椿さんを睨み付けいた。

 

 アクアテールに追加効果はないので純粋にダメージを与えただけのハズだが、おそらくパンチからのカウンター攻撃を受けて、こう、カチン、ときたみたいだ。

 それでもトレーナーの指示を待ち、純粋に闘志を漲らせて隙なく構えているのだから、やはりエースに相応しい精神を携えているのだろう。

 

 けど。

 

 

 「椿さん、アクアテール!」

 「だいもんじだ!」

 「怯まず突っ込んで!!」

 「ぶっばぁあぁああっ!」

 「りゅーっ!」

 

 

 熱風がこっちまできて、とても熱い。

 灼熱の炎が眩しくて思わず目を瞑りそうになるのを耐えて、大の字の炎へ飛び込む椿さんを目に焼き付ける。

 

 ポケモンバトルにおいて、バトルしているポケモンの一挙一動を見逃すのはたとえ有利な戦況であってもしてはいけない。

 視野は広く。

 そして注意深く観察し、相手トレーナーの動作も見て、全てを把握すること。

 

 そうでないと、

 

 

 「っ椿さん!!避けて!!」

 「遅い!ばくれつパンチ!!」

 「ぶっばぁぁあ!!」

 「うりゅっ?!」

 

 

 遅かった!!

 いや、近すぎたから避けれなかった。

 しかもだいもんじに突っ込んだから狙われたんだ。

 

 あーっ!くっそ!

 カウンターされたのムカついたから自分らは殴られる前に殴るってか?!

 てかタマゴ技じゃん!!

 ロケットずつきじゃなくてばくれつパンチ覚えてる感じかな?!!

 

 あーっ椿さんこんらんしてる!

 そりゃしてるよね!

 確率100%でこんらんにする技だもんね!!

 

 

 「っごめん椿さん!戻って!!」

 「りゅ?りゅう?!んりゅりゅ??」

 

 

 バトル中じゃ無かったらかわいい!!って叫んで撫で回すくらいにフラッとしてる椿さんを戻して、フィールドに呼ぶのは当然。

 

 

 「松ちゃん!トリックルーム!!」

 「せやろなぁ…!」

 

 

 ほのおのうずで削られた体力がいい感じに回復したであろう、とても頼もしい相方。

 最早職人と言えるレベルでボールから出た瞬間にはもう、トリックルームは完成していた。

 

 つまり、これで、先制はこっちのもん!

 

 

 「みずのはどう!」

 「ばくれつパンチ!」

 

 

 そう何度も食らうかっての!

 そもそも命中50のばくれつパンチが!

 スナイパー松ちゃんに目潰し()されて!

 当たる訳が無いでしょ!!!

 

 案の定、盛大にスカッた。

 その隙だらけな背中に向かって!

 

 はい!トドメのみずのはどう!!

 

 いえーーいっ!!!

 

 

 「ブーバー戦闘不能!よって勝者、オレンジ諸島のフルーラ!」

 「っしゃあ!!松ちゃんサイコー!!!」

 

 

 審判の判定を聞いてから、速攻で松ちゃんに抱き着いた。

 

 はうわ!

 ほのお技の熱気で火照った身体が涼まる…!

 ひやもちぷにマジサイコー…!

 でもいつもよりちょっと体温高いね?

 やっぱ熱かったよね??

 

 だいもんじに飛び込ませてさらにばくれつパンチをも食らわせちゃった椿さんには後でじっくりケアしないとだな…

 

 と。

 

 まぁ!そんな訳で!!

 

 

 「ほれ受け取れ。これがクリムゾンバッジだ」

 「ありがとうございます!」

 

 

 炎の形を模したした、クリムゾンバッジ。

 ちょっとチューリップみたいな形だなと前から思ってるんだけどここはお口チャック。

 

 さて、

 

 

 「ヒビキくん、頑張ってね!」

 「おう!俺もゲットしてやる!」

 

 

 選手交代、ってね。

 

 やる気満々なヒビキくんを、後ろから観戦。

 

 

 …うん。

 

 

 「ねぇ松ちゃん」

 「なんや」

 「海神様、マサラタウンまで乗せてくださるつもりなのかな…?」

 「………」

 

 

 おいこら松ちゃん。

 沈黙は肯定だぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 






投稿できて、なかったです、ね
おかしいな…
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