巫女ってガラじゃない!!   作:山乃庵

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そりゃそうじゃ

 松ちゃんに急かされてグレンジムからスタコラサッサと退散して、ポケセンでさくっと回復させて、観光することも許されずに再びやってきました人気の無い寂れた岸。

 そして流れるように一仕事終えたと言わんばかりな清々しい雰囲気の海神様が待機していらっしゃったので小舟にライドオン。

 

 ザザンっと畝る波に揺れながら、めざせ、まっしろなまち。

 

 

 いや滞在時間。

 一日どころか半日も居なかったやん…

 温泉饅頭…温泉玉子…あったかグレンプリン(ポケモンじゃないよ!)とか気になってたのに…

 なんなら温泉に入ってすらいない…

 

 …ってか待って?

 今もう夕方なんだけど。

 流石に寒いんだけど。

 

 んーつまり、陸地着くの深夜じゃない??

 凍え死ぬのでは???

 

 え??

 (直接)ライドすればひとっ飛びで着くって?

 

 推しに引かせてる現状ですら恐れ多いのにそんなこと出来る訳ないじゃないですか(真顔)

 

 あっそんなションボリしないで下さい!

 そんな顔されたって乗れないです!!

 無理です!!

 あぁああぁぁすみませんでもほんとムリなんですってばぁあぁああぁ!!!

 

 

 「おい、落ちるぞ?つか何変な動きしてんの?」

 「ヒビキくんは私のこの感情を理解してから発言して?」

 「???」

 

 

 パンピはヲタクの心情が理解できない。

 知ってた。

 

 ところでさ、

 

 

 「ヒビキくんさ、今向かってる町どこかわかってる?」

 「うん?いや田舎町ってことくらい」

 「おい今すぐ土下座しろこのスットコドッコイ」

 「うぉわっ?!」

 

 

 おっと失礼。

 私の発言にビビリ散らかしたギャラドスが跳ねた所為で盛大にバランスを崩したもよう。

 でも流石にこれはないって。

 

 

 「タマムシ大学の名誉教授でポケモン研究の権威でいらっしゃるオーキド博士が研究所を構えてる町で!伝説のチャンピオン連続交代事変のトレーナーであるグリーンさんとレッドさんの出身地だよっ!!」

 

 

 現役時代は元四天王のキクコさんのライバルだった実力者だし!

 っていうかヒビキ君はオーキド博士に会ったことあるんじゃないの?!!

 ゲームストーリーで出てきたよね?!ね!?

 

 

 「おーきどはかせ…?…あっ!あのじぃさんか!ラジオやってる人だろ?!」

 「うそだろ…」

 

 

 今絶対私間抜け面してるわ…

 

 

 これは失礼があってはいけない、と。

 寒さなんて気力で吹き飛ばして熱の入ったオーキド博士の解説スタート。

 

 あの人アニメじゃおちゃらけキャラだけどリアルだとめちゃくちゃすごい人だかんね?

 歳を理由に現役トレーナーは引退したけど、旅で培ったフィールドワークを存分に発揮して長期の現地で観察やら研究できる研究者ってことでフットワーク軽いから色んな地方に出没するのはアレだけど!

 

 貴重なんだよ!

 バトルできる研究者!!

 

 トレーナーに理解あるからバトルや育成のアドバイスとかしてくれるし。

 なにより論文が読みやすいんだよ!

 堅苦しい文じゃないし図解もわかりやすいしグラフの数字も表記が簡潔で理解しやすいの!

 論文だからって疎遠しがちな脳筋トレーナーの為に簡略化してる本とか安く売ってるの有難いし!

 

 私が持ってるやつ貸すからちゃんと読んで!

 特にタイプ別ポケモンの特徴とか面白いから!

 みずタイプとドラゴンタイプの鱗の差異についてとかさ!

 同タイプ別特性、別タイプ同特性の検証とか!

 他にもケアの仕方とかマッサージの仕方とかまで書いてあるんだよすごくない?!

 触るのに注意が必要などくタイプについて最初に発売されたらしいんだけど、それでトレーナー事故減ったんだとか!

 

 ヒビキくんに教えてるタイプ分類とかオーキド博士が提唱したんだよ!!!

 覚えておけよなっ!!

 

 

 怒涛の勢いでオーキド博士トークした。

 なんか推しを布教するヲタクみたいになってたわ。

 

 いやでも仕方なくない?

 トレーナーなら知っておくべき人でしょ??

 ねぇ???

 

 

 ふと、ポケモンのことならまだしも研究者を覚えるキャパはないのか、お目々ぐるぐる状態なヒビキくんに気付いて口を閉じる。

 

 ありゃりゃ、パッチールみたいになってるぅ…

 なんかごめんね?

 でも覚えておいて損はないから…

 

 あとギャラドスの方が話聞いてるっぽいの気の所為?

 きみオーキド博士気になるの??

 

 

 と、まぁ、うん。

 冷静になったところで。

 

 

 「わーい、陸地見えるてるぅ…」

 

 

 深夜に入りかかった時間帯ながら、無事に到着。

 

 つまりグレンタウンからここに着くまでオーキド博士についてほぼずっと語ってた訳で。

 我ながら良くここまで喋れたな、って。

 どうりで喉乾いてる訳だな、って。

 

 …なんか、ほんと、ごめんねヒビキくん。

 でも後悔はしてないよ…

 

 愉快愉快、とわらってらっしゃる海神様。

 ごめんヒビキくん、愛玩具認定から脱することは出来なさげだわ…

 

 ほら、正気になって…

 あ、面白いからいい?

 そうですか…

 

 あっはい、楽しく旅してますよ。

 アーシア島は…ふふ、平和そうなら良かったです。

 …えっほんとですか嬉しいです!

 島に戻る時にはもっとバトル上手くなります!

 はい!頑張ります!

 ではまた!

 どうぞご自愛くださいね!

 

 

 にこにこと、満面の笑みで海に帰る海神様をお見送り。

 

 月光に照らされる白銀の姿もやっぱり神秘的で…

 真っ暗な海に深く沈んでいくのも幻想的で…

 いつも陽の下で拝見してたけど夜の姿も綺麗だった…

 

 うちの海神様がこんなにも美しい…

 きっと明日も明後日も、来年だって美しい…

 

 

 ほう、と軽く息を吐く。

 目に焼き付けた光景は心のアルバムに永久保存。

 

 さて!

 流石に今から歩いてマサラタウンに行くのは無謀なのでね!

 野営の準備しなきゃね!

 

 未だこんらん状態なヒビキくんの手を引きつつ良さげな所をシミズさんと散策。

 案外早く見つけたので、自分のテントをちゃちゃっと設営。

 晩御飯は冷えた身体を温めようとカレーを作成。

 レトルトカレーをきのみで味を整えるだけの簡単な調理。

 ちなみに私は激辛派、ヒビキくんは甘口派。

 

 なので。

 

 

 「いい加減目ぇ覚ましたら?」

 

 

 はい、あーん()

 

 

 「んぐっ?!

  〜~~っ○△✕□☆◇!!!?!!?」

 「吐いたらど突くかんな★」

 

 

 わぁ!

 真っ赤な顔が真っ青になって必死に頷きながら飲み込んでとってもおも…偉いねー!

 じゃあ正気に戻ったところでテント立てようねー!

 

 えっ?

 大丈夫大丈夫、ちゃんと甘口のカレーも用意してあるよ、モモンの実入れたやつ。

 ちなみにヒビキくんの手持ちの子達、まだ食べてないから早く出してあげて?

 私達はもう食べ終わるし先に寝るね!

 あと片付けよろしく!

 

 口を押さえ涙目で困惑してるヒビキくんを尻目にテントに入る。

 そしてカイロ代わりにシミズさんと一緒に寝袋入っておやすみ3秒でスヤァした。

 

 

 セキチクシティからグレンタウン、ジムバトルして即出立、怒涛の一日だったもんね。

 

 

 おかげで寝坊した。

 

 もうぐっすりと、寝たよね。

 ジムバトルの後は頭も身体も疲れきってるから、これは致し方ないことなのだ…ってね。

 シミズさんが野生ポケモンが襲ってこないように周辺警邏してくれてたので、ほんと、もう、頭が上がらない…

 いっぱいブラッシングさせていただきます…

 

 そしてお陽様はもうてっぺん過ぎてるけどこれは朝食。

 起きてすぐのご飯だから朝食なんだ…!

 

 ちなみにヒビキくんも爆睡かましてた。

 なんならまだ覚醒しきってないのか頭揺らしながらサンドイッチ食べてる。

 器用だね??

 

 そんなこんなでお腹を満たし、支度を整えて出発。

 

 自然豊かで長閑な道に沿ってゆっくり歩けば、夕方前にはマサラタウンに到着出来た。

 

 …ふぅ。

 

 

 「ここが、聖地マサラタウン…」

 「え?」

 「あそこがオーキド博士の研究所かな…?」

 「おう?」

 「夢にまでみた始まりの町…っ!」

 「…おーい?」

 「過疎ってるけど荒れてないし、整備されてるのは人の出入りがある証…」

 「……もしもーし??」

 「いや、でも…たしか…」

 「あ、これ聞こえてねぇやつ…」

 

 

 自然に近い環境でポケモンを保護して観察するには最適な場所…なのか…?

 

 まぁアニポケでも言われてたけど、どう見ても限界集落なんだよね…!

 畑挟んで隣の家とか絵に書いた田舎の風景じゃん…?

 

 あ、あの家サトシくんの家に似てる!

 赤い屋根に白の外壁!庭のガーデニングとか!

 

 ふくよかなおばさんに明るく挨拶したり、元気よく駆けていくドードリオを見かけたり、おじいさんが撒く餌に群がるポッポに癒やされたりしながら歩き続けてはい到着!

 風車が目立つ大きな建物だよ!

 

 そう!つまり!!

 

 

 「すみません、オーキド博士はいらっしゃいますか?」

 

 

 来ちゃいました!オーキド研究所!

 まぁアポとってないから会えるか分かんないんだけどね!

 

 でも会いたいじゃん?!

 ここまで来たら会いたいじゃん!!!

 

 

 心の向くままインターホンに呼びかけて、ガチャリと扉が開いて、姿を見せたのは、そう、

 

 

 「わしに何か用かのぉ、お嬢さん」

 

 

 石塚○昇さん…!!!

 

 ハッ!じゃなくて!

 

 

 「お初にお目にかかりますオーキド博士!急なのですがお渡ししたい物がありまして、お時間頂けないでしょうか!!」

 「うわうるさっ」

 

 

 うるせぇだまれヒビキくん。

 こっちはガチで会えたことにテンション荒ぶってんだよ!

 これでも落ち着こうと頑張ってんの!

 

 

 「ほほ!元気じゃのぉ、かまわんよ。入ってきなさい」

 「ありがとうございます!」

 「そっちの子は…たしか、ジョウトの…ヒビキくん、だったかな?久しぶりに図鑑を見せてくれんかの」

 「っす」

 

 

 あぁああぁぁ!

 ずるいヒビキくん認知されてるー!

 私は初対面だから仕方ないんだけどお嬢さん呼びなのにー!

 

 

 「ふむ…ところでお嬢さん、ケーナという人を知っておるか?」

 「ふぇっ」

 「いや、わしの尊敬するトレーナーでな?わしが現役のトレーナーとして旅をしていた時に知り合ったんじゃが、まぁとにかくバトルの強い人でのぉ」

 

 

 君に顔がそっくりなんじゃ。

 と。

 優しい顔で見られて、

 

 

 「あっあの、ケーナは、大伯母様の、名前です…」

 

 

 一気に鎮火した心の内で、一言。

 

 そう言えば同世代になるな、と。

 

 

 えっ。

 

 つまりオーキド博士はかの伝説()の巫女様を知ってる人??

 

 

 …………マ?

 

 

 

 

 




けーきわんほーる…いもたれ…
めりぃくるしぃみました…
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