巫女ってガラじゃない!!   作:山乃庵

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君の声帯がファンタジー

 ポケモンの所持を許可された。

 

 苦虫を噛み潰したような、という表情はああいう顔なのだろうなと思いながら、その言葉を聞いた。

 例え渋々と言った声であっても、それでも、その言葉は嬉しかった。

 

 長老からの言葉を受け、ニッコリと笑ったワタルさんより手渡された赤と白のボール。

 夢にみた本物のモンスターボールを受け取って、聞かれた。

 

 自分で捕まえられるかい?と。

 思わず頷き返したら、とても()()笑顔を向けられてナニカが漏れそうになった。

 そして、じゃあ捕まえておいで、と送り出されて、はたと気付いた。

 

 

 所持ポケモンゼロでポケモンを捕まえることになったぞ、と。

 

 

 つまりバトルは出来ない。

 所謂友情ゲット、というモノをしなければならない。

 

 期待されているのか、はたまた面白がられているのか。

 どうであれ、出来ると示してしまったからにはやるしかないのだけど。

 

 なお、ワタルさんは長老達とこれからについての話し合いがあるからまだ帰らない、とのこと。

 しかも巫女殿のポケモンと会うのを楽しみにしているよ、と言われたので早急に戻る必要がある。

 

 バトルせずにポケモンを捕まえ、しかも長老達との話し合いが終わる頃には戻ってこい、と。

 冷静に考えると難易度高いな。

 なんというか…ワタルさん、なかなか人が悪いな?

 気付くのが遅い私も私だけどさ。

 

 一応念の為、護衛としてリーグスタッフが一緒についてくれてる。

 誘拐されかけた時に何度か助けてくれた人だったので、感謝を伝えつつ、私は守られてたんだなぁと改めて思った。

 

 

 そうこうして訪れたのは、島の主ポケモンのヤドキングの住処の洞窟。

 リーグスタッフさんは入口で待ってもらってる。

 

 で、目の前にはヤドキング。

 のほほんとしたその顔に、怒涛の展開で荒んでいた心が落ち着いてきた。

 ついでに相談。

 

 

 「そんな訳で自衛の為にって許可されたんだけどさ、コレってそれなりに強いポケモンを捕まえて来いよって試されてるよね」

 「まぁそうだろうなぁ…」 

 「だよね。どうしようか…」

 「んーー…困ったなぁ」

 「ほんとにねー」

 

 

 なんとなく似たようなやり取りをした気がするけど、まぁいつもこんな感じの会話しかしてないので意味はそんなにない。

 

 だってこの口癖を聞くのが、ちょっと楽しみだったりするわけで。

 けどまぁ理想を言うならもう少し返事にレパートリーが欲しい。

 というかその声でツッコミとかして欲しい。

 

 と、思考を脱線させるのはやめよう。

 

 

 「いつか旅に出てもいいよって子いない?」

 「うーん。せやなぁ…うぅん困ったなぁ…」

 

 

 ダメ元で聞いたけれど、この反応はどうしようかと悩んでいるっぽい。

 島の主であるヤドキングなら周辺に住んでいるポケモン達に顔がきくからと訪ねたのだが、これはアタリだろうか。

 

 

 うーん、うぅーーん、とのほほん顔で悩む姿に、ほっこり癒やされる。

 

 だってヤドキングが好きなので。

 このフォルムが、たまらなく好きなので。

 触れるようになって、そのモチプニ感に心奪われるくらいには好きなので。

 

 とっても簡単な案を言うなら、このヤドキングが手持ちとなればとても心強い。

 でも、残念ながら流石にそれは出来ない。

 

 このヤドキングは、島の主ポケモンだから。

 島の周辺に生息しているポケモン達の頂点に立ち、それぞれの縄張りが荒れないように棲み分けを徹底させている、実はとても偉い存在なのだ。

 正直に言ってしまうとこの島のトレーナー達が野生のポケモン達と争いなく共生出来ているのは、ほぼこのヤドキングのおかげである。

 

 エスパータイプ所以の賢さだけでなく、喋れるという特異性で人とポケモンの渡し船が出来る、とても貴重な存在。

 このヤドキングを手持ちとして連れて行こうものなら島周辺の生態系が崩れることは明らかなので、捕まえるなんて絶対に出来ないし、しない。

 とっても残念だけど。

 

 

 「んー…ま、ええか。フルーラ、ちょっと着いて来ぃ」

 「え?うん、わかった」

 

 

 結論が出たようで、のそのそと歩き出したヤドキングと手を繋ぎ、進む。

 洞窟の奥に案内されるのは実は初めてなのでドキドキしてる。

 

 だってこの先は、ヤドキングの縄張りだから。

 

 明かりはなく、手を引いてもらわなければ歩けない道をゆっくりと進むと、少しの光がみえた。

 涼しい風が流れてくるから、おそらくこの先は外と繋がっており、光は太陽のものだろう。

 

 そうして出た先はなかなかに拓けた場所。

 丸く空いた穴から光が降り注ぐ水場で、ヤドンとヤドランの楽園だった。

 

 モチプニしかいない…

 のほほん顔の癒やし空間…

 これなんて天国…?

 

 そして今、私の目の前にいるのは一匹のヤドン。

 ヤドキングから紹介されたこのヤドン、普通のヤドンではない。

 

 

 「いやマジか」

 「ホンマやでぇ」

 「君もその喋り方なのね」

 「そうなんやでぇ」

 「てかヤドンから松ちゃんボイスが聞こえるとか嘘すぎない?」

 「松ちゃんちゃうで、わしヤドンや」

 「うんそだね、知ってる。でもそうじゃない」

 

 

 こんな偶然(奇跡)あっていいの?

 

 浜ちゃんと松ちゃんの声がここにあるとか…え、まじすげぇな?なんというか贅沢ですね??

 漫才始まったりしません???しませんか…そうですか、残念すぎる。

 

 と、まぁ衝撃的現実は置いておいて、だ。

 どうもヤドキングに弟子入り(?)してたらしく、喋ることは勿論、現時点でそこそこ強いし、将来的にこの島に戻って来るのであれば旅に着いてくのも吝かではない、とのこと。

 ただし、条件付き。

 

 

 「ヤドキングに進化するにはおうじゃのしるしが必要なんだけど…」

 「ここにあるで」

 「あるんかい!」

 「せやけど、進化するにはトレーナーが必要やねん」

 「あー…通信進化。え…どうしようか」

 「なんや友達おらへんのか」

 「いますけど!?」

 

 

 こいつ失礼すぎないか?

 

 けど、まぁ、うん。

 

 

 「今は無理だけど、その条件のむよ」

 「ほなこれからよろしゅうな」

 「うん、よろしく松ちゃん!」

 「まって。わしの名前、松ちゃん決定なん?」

 「私の為にお願いします」

 「…変わった子やなぁ」

 

 

 強引な名付けでごめんなさいね!

 いやだってこれは仕方ないと思うの…

 

 

 

 

 

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