Re:ロクでなしに憑依した   作:山羊次郎

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子供時代の話?水に流してくれないか?
……嘘です別に忘れないように保存していたデータが破損したとかじゃないんですホントもう勘弁してください


一話

 唐突だが、俺は転生者である。名前は忘れた。

 ……いや待ってくれ。ブラウザバックはしないでくれ。えっ、そこまでしない? いや、そうじゃなくて話を聞いてくれ。

 俺はある時、記憶を失った状態で異世界に転生していた。しかも、二次元の世界だ。

 なんでそんなことが分かるのかと言われれば、俺がその世界の原作をよく知っていたからだな。

 

『ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード)

 

 最新刊で禁忌教典についてちょっと触れられたが、未だにその明確な正体は不明。

 そんな中、主人公のグレン=レーダスがアルザーノ帝国魔術学院で女の子とキャッキャうふふしながらなんやかんやですげー授業してみんなからちやほやされる作品………などと! その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ!

 この世界はそんなに甘くはない! 一巻からチート級の魔術師と対決し、二巻では帝国の英雄の爺と真っ向勝負(ほとんど戦ってないけど)。

 三巻ではかつての同僚であり主人公の上位互換のような小娘と戦いを繰り広げ死にかけ、四巻で奇跡の復活&逆転!

 五巻ではかつての思い人の仇(未来を数字で予測するイカレ野郎)と私闘(誤字ではない)を繰り広げ、六巻ではおとぎ話のボスキャラと対決。

 どこぞのギリシャの英雄を思わせる能力に加えどこぞの幻想殺しを思わせる刀とか色々盛りまくりな野郎と死闘を繰り広げ、七巻ではかつてのブラッククソ上司(ツンデレ)にこき使われ、八巻では女体化して女子高潜入(裏山)。

 九巻からはインフレが加速し、何故か復活を遂げた一巻のチート野郎どもが本気を出してきて、さらには公式チートな人も生死不明⁉ おまけにかつての英雄が敵として現れる⁉

 十巻では世界一固い金属で肉体を覆うまたしても無敵なボスキャラとの戦闘。街全体を守る為に戦うとかやべー。

 十一巻でインフレを緩和したいのか、そこまで危なく……いや、やばいわ。うん、霞むけど普通にこれもやばい。

 十二巻ではドラゴン退治。十三巻ではかつての相棒との死闘。十四巻ではループする世界から脱出するために天使と戦闘。

 ……もうやめよう。これ以上考えると鬱になる。

 

 ……だって、俺はその主人公になっちゃったんだもん。

 

 そう、俺はよりにもよってグレン=レーダス、主人公に憑依したのだ。

 これは酷い。今までの惨状を知っているからこそ泣きそう。

 とりあえず、グレン=レーダスとして目覚めた時は、丁度セリカに拾われる少し前だった。

 セリカとは先ほど言った公式チートさんである。俺はこの人に魔術を習い、アルザーノ帝国魔術学院に入学し見事卒業。

 本来なら、ここで魔導士に引き抜かれるはずだ。

 だが! しかし‼

 

 ありえない。

 帝国宮廷魔導士団とかありえない。そんなの絶対やらない。死ぬし、殺すのも嫌だし。

 という訳で、俺は少し早いがアルザーノ帝国魔術学院の講師になった。

 ホント頑張ったよ俺。滅茶苦茶勉強難しいんだモン魔術って。魔術式には文法があるって言うけど、その文法すら危ういんだから。

 覚えるだけなら大したことないんだよ。使うことも出来る。ただ、本当に即興改変とか、そういうのは魔術式の根本的な理解が必要になるんだ。

 それが辛い。でも耐えられた。だって、これが出来ないとマジで終わる。世界が。

 多分、俺が頑張らないと世界が終わる。だって俺、主人公だし? いやー辛いわー! 主人公辛いわー(涙目)。

 

「で? 何か用っスか学院長」

 

 俺は何故か学院長に呼び出されていた。

 えっ、別に何もしてないっスよ?()

 

「うむ、実はのう、二年次生二組のセラ君なんじゃが……かつて担任だった君には話しておこうと思う」

「臨時っすけど……何かあるんっスか?」

「実は彼女は……帝国宮廷魔導士団の人間なんじゃよ」

 

 おっと、ここでそのことを俺に話すのか。

 今言った通り、セラ=シルヴァースは帝国軍の人間で、しかも本来なら一年ほど前に死んでいるはずの人物である。

 なぜ生きているのかはその場に立ち会ったわけではないので分からないが、死んでないならいないで利用させてもらおう。

 正直先の展開が怖いけど、セラがいればきっと何とかなる(無責任な信頼)。

 

「帝国宮廷魔導士団? そんな人間が何で……」

「詳しい事は話せないんじゃが、帝国軍宛てに、犯行予告が届いたんじゃよ」

「……犯行予告?」

 

 えっ、何それ知らない。どういうことマジで。

 多分天の智慧研究会だと思うけど……えっ、知らないんだけどそんな展開。何が起きてんの?

 

「うむ。時期は丁度魔術学会の日じゃな。あるテロリストが学院を襲撃し、生徒を誘拐するという声明があった」

「……もう既に意味分かんないっスけど」

「気持ちは分かる……じゃが、帝国側としてもこれを見過ごすわけにはいかない」

「この学院の結界を破れるとは思えないっスがね……」

「それでも、じゃ。とにかく、軍は万が一に備えて、セラ君を配備した」

「なるほど……」

 

 犯行声明については意味不明ではあるが、帝国軍側に増援の意図があるのはありがたい。

 正直俺一人で天の智慧研究会と戦えるかと言われたら、まず無理だ。魔導士の経験がない俺じゃ、どう足掻いても抵抗できない。

 だが、本場で活動するセラが居れば話は別だ。

 

「君には教師として不慣れのセラ君をなるべくサポートしてほしいんじゃ」

「……はぁ、給料上げてくださいよ?」

「では、頼むぞ」

 

 あ、無視しやがった。

 内心舌打ちしつつ、俺は学院長室を後にする。

 

「グレン=レーダス」

 

 忌々しそうな声色で、背後から名を呼ばれる。

 

「おっ、ハーメルン先輩じゃないっスか。何か用っすか?」

「ハーレイだ、ハーレイ=アストレイ! 貴様わざとやっているだろう!」

「ええはいわざとっすね。それで先輩どんな御用っすか?」

「くっ、貴様と言う奴は……学院長から話は聞いたのだろう?」

「あれ? もしかして先輩も?」

「ふん、下らぬテロリスト共がこの由緒ある学院を襲撃など、甚だ図々しいが、この学院の結界をそう簡単に破れるはずがない。何も心配することはないだろう」

 

 フラグ立てんなよと密かに思った。

 

「どうせ貴様のことだ。魔術学会には出席するつもりはないのだろう?」

「あ、そこまで分かっちゃいます?」

「……はぁ、とにかく、妙なことにならないようにしろ。私が言いたいのはそれだけだ」

「結局はこっちの心配してくれてるってことっすか? よっ、ツンデレ!」

「黙れ! 大体、貴様はいつもいつもいつもいつもいつもいつも――――」

 

 先輩の御小言を軽く聞き流しながら、俺は二年次生二組の教室を窺いに行った。

 

 




なんかもう完全に別物だなコレ……。
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