Re:ロクでなしに憑依した   作:山羊次郎

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画集とか新刊とか、その他いろいろ発売されるので初投稿です。
まだ新刊買ってないんですよね……画集は金ないし。
全然投稿出来てなかったの申し訳ありません。しばらくデアラのssの方に集中していまして……。
それでは八話、どうぞ!

ファンリビ……琴里司令、全然でないよォ~~(嘆き)



八話

 セリカと連絡を取るために、俺は三人のもとから少し離れる。

 通信用魔道具の金属音が数回木霊し、やがて停止して、声が聞こえた。

 

『……グレンか』

「よう。今の俺がどんな状況か分かってるか?」

『大体な』

「オッケー。そんじゃ、こっちからちょっと頼みたいことがあんだけどよ」

『私は何も出来ない』

 

 ……まあ、分かってるけどさ。

 ここまではっきり言われると逆にムカついてくるんだが。

 

「ふざけてる場合じゃねえんだぞ?」

『私は何も言えない。もう一度言う、何も出来ないし、何も言えない』

 

 この感じだと、今回は妙な事は起こってねえみたいだな。

 なら、あとはもう少しだけ話を聞いて通信を切るだけ。

 

『そして、()()()()()()()()()()

「は?」

 

 唐突に告げられた言葉に、俺は絶句する。

 言葉を返さない俺に構わずセリカは、

 

『死なないでくれ。……今の私に言えるのは、これだけだ。じゃあな』

 

 ぶつっ、と。

 通信が切られる。

 

「……あ、そうか」

 

 俺の【愚者の世界】が完成してないもんな。そりゃどうにもならないよな……そうなんだよな?

 

(変なフラグ立ってないといいけど)

「どうかした?」

「うおっ⁉」

 

 急に話しかけられたので、ビックリして変な声が出てしまった。

 慌てて振り返ると、不思議そうな表情で小首を傾げるリィエルがそこに居た。

 

「き、急に話しかけんな、ビビるだろうが……」

「? そうなの?」

「そうなの。ったく、面倒クセェ」

 

 苛立ちから、思わず髪を掻きむしる。

 どうしてこうも上手くいかないのだろう。いや、人生なんて上手く行くもんじゃないのは分かってるが、それでももうちょっとなんかあるだろう。

 

「ルミアたちはどうした?」

「向こうにいる。それより、何かあったの?」

「……実はな」

 

 俺はセリカから話されたことを包み隠さずリィエルに話した。

 リィエルは僅かに思案するように顎に手を当て、

 

「……【愚者の世界】が完成してないからじゃない?」

「だよなー。いっその事、ペンダントの呪いは封殺じゃなくて解呪(ディスペル)にするか……?」

「そんなことが出来るの?」

「分からん。実際にペンダントの術式が読み取れればどうにかできそうだが……条件起動式ってのがネックなんだよなぁ。解呪(ディスペル)しようとしたら発動なんて事もあり得るわけだし」

「まあ、そうじゃなかったらセリカがとっくに解除してる」

「だよなぁ。となると、やっぱ封殺……待てよ?」

 

 どうやって起動の封殺を行おうか考えていたら、名案が浮かんだ。

 

「そうか、俺の【愚者の世界】は完成していない……けど、起動を遅らせればそれでいいんだ。その間に解呪(ディスペル)しちまおうぜ」

「? どうやってそんなことを……? 貴方の【愚者の世界】は領域全体に効果を発揮する。同時になんてほぼ不可能だと思う」

「そうだな、ソイツはアルベルトたちにも伝える。だから、そっちで話すか」

 

 俺とリィエルがアルベルトとルミアたちのもとへ向かう。

 しかし、我ながら本当に名案だなこれは。よくこんなの考え付いたぜ。

 

「来たか」

「えっ? あ、先生!」

「よ、ルミア。状況は大体わかったぜ。多分、何とか出来る」

「えっ⁉」

「ほう。聞かせてもらおう」

「ああ。まずは―――」

 

 俺はアルベルトたちにやってもらいたいことを伝える。

 しかし、意外にも作戦を伝えた時、ルミアが難色を示した。

 

「でも、それじゃあ先生が危険な目に遭うってことですよね? そんなの……」

「アホか。どちらかと言うと危ねえのはお前だろーが。……はぁ、ったく、教師失格だな。生徒を放っぽりだして知らねえ男に預けるなんて」

「そう。グレンはもっと自分を危険に晒すべき」

「嫌だよ⁉ もっとこう、安全策を立てて、優雅に椅子にくつろぎながら、ワイン片手に余裕綽々な感じで過ごしたいんだよ俺は!」

「死亡フラグね。優雅たれの典型よ」

「ファック」

「……珍しいな」

 

 俺とリィエルの言い合いを横目で眺めていたアルベルトが、そんなことを言い出した。

 

「は? 何がだよ……?」

「いや、こちらの話だ。気にするな」

「? あっそ。じゃあ、さっさと始めますかね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いたぞー!」

「追え、絶対に逃がすなァァァーー!」

 

 王室親衛隊が大声で叫ぶ。

 彼らの視線の先には、ルミア=ティンジェルとそれを抱えるグレン=レーダスの二人が映っていた。

 

(ああ、本当に珍しい事だ)

 

 しかし、彼はグレン=レーダスではない。

 実際はグレンに【セルフ・イリュージョン】で変身したアルベルトだ。

 そんな彼は、建物の天井を駆けながら、つい先ほどのリィエルとグレンの様子を思い出していた。

 

(リィエルがあそこまで人と会話するというのも中々ない。奴はいつも、特務分室(おれたち)に対し壁を作っていた)

 

 だが。

 あの時のリィエルは……ほんの僅かだが、グレンに対し心を開いている。少なくとも、アルベルトはそう感じた。

 あんな風にジョークを言う彼女も珍しいので、つい思考が漏れてしまったほど。

 それほど、アルベルトは驚いていた。

 

(グレン=レーダス、か)

 

 不思議な男だ、とアルベルトは思った。

 特別何かを為したわけではない、ただの三流魔術師。講師としてはそれなりの実力はあるらしいが、実戦経験は皆無だろう。

 にも拘らず、全てを見透かしているかのような推察力。行動に迷いのない度胸。そして、発想の穴を突くような機転。

 それらすべては、本来戦場にいてこそ身に付く物。しかし、彼は平穏な世界にいて、それらを取得している。

 才能、と言えば聞こえはいいが、アルベルトは若干の薄気味悪さを感じた。

 まるで、常に戦うことを視野に入れ、イメージをし、備えていたかのようだ。

 

(探り……は難しいだろうな。……奴については後回しにするとしよう)

「跳ぶぞ」

「……はい」

 

 腕の中のルミアが小さく答える。

 それを聞いたアルベルトが頷き、宣言通り十メトラほど跳躍する。

 空中に跳んだことで発生する浮遊感に身を預けながら、落下に備え重力操作の魔術を行使した。

 着地、と同時に振り返る、追手に対し指先を向ける。

 

「《雷針(らいしん)よ》」

 

 黒魔【ライトニング・ピアス】の即興改変。微弱にして鋭利な一閃が、アルベルトの指から放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、魔術競技祭会場にて。

 二年次生二組のクラスに、二人の人物が顔を出していた。

 

「はーいそういうわけでー、このボク、アルベルトがこれから君たちを担当するよー」

「まったく似せる気が無いの草」

「えぇ……?」

 

 アルベルトとリィエル。

 そう名乗った二人の男女の申し出に、システィーナは内心頭を抱えた。

 二人の言い分を要約するとつまり、グレンとルミアは所用で会場にはこれなくなったので、自分たちが監督をするということだ。

 しかし。

 そんな、あまりにも身勝手な言い分にはいそうですかと納得できるはずがない。

 

「……ここにいる以上、学院関係者として認めて貰えているんでしょうけど、流石に怪しいです」

「信用無いのね」

「泣きそう」

「?」

 

 至極当然のことを言ったと思っていたシスティーナは、アルベルトが若干涙目になっていることに首を傾げる。

 

「……と、とにかく、お前たちには何が何でも優勝してもらう。というか優勝しろ、してくださいお願いします」

「ちょっ⁉」

 

 九十度に曲がる直角。余りにも綺麗すぎるお辞儀に、システィーナは動揺を禁じ得ない。

 それはそれとして。

 優勝してくれ、とはどういうことだろうか。

 確かに、優勝を目的に頑張っては来た。だが、アルベルトの言葉には、自分たちが考える優勝とは、何か、意味が違う……そんな、いまいち釈然としない重みがあった。

 それこそまるで―――人の命でも掛けられているような、そんな迫力。

 あと情けなさ。大の大人が子供にお辞儀して敬語使ってまで優勝乞うってどういう状況? と、システィーナは呆れ交じりに嘆息する。

 こういう気の抜けた雰囲気は―――いかにもグレンの友人と言った感じだった。

 呆れたようにため息をつき、額に手を当てやれやれと首を振ると、システィーナは動揺するクラスの方を振り返り、

 

「みんな、もうすぐ次の競技が始まるわ。次は確か――『変身』だったわね。リン、お願いできる?」

「えっ、そ、それは……っていうか、システィ、もしかして――」

「ええ。この人に―――私たちのクラスの指揮を任せるわ」

「「「――ッ⁉」」」

 

 クラス中に驚愕が走った。

 それはそうだろう。いくら怪しい者ではないと言っても、見ず知らずの他人に指揮官を任せるなんて前代未聞どころではない。

 全員がシスティーナに困惑の視線を送ると、彼女は憮然と己の意見を述べる。

 

「私たちが誰の指揮下に入ろうと、目的は変わらないわ。”優勝”―――それは、みんなで決めた事でしょう?」

 

 そのために、今日まで特訓してきたでしょう? と彼女は当然のように語る。

 確かに。前年の競技祭で日の目を見ることのなかった生徒たちも、グレンの方針でクラス全員で競技に出ると決まってから。

 全員が全員、努力を重ねた。グレンに教えを乞い、中には自主練をしたりと、意識を高く持って取り組むものも少なくなかった。

 不安はあるはずだ。

 それでも。

 

「大丈夫よ、あともう少しなんだから。先生結構席外すこと多かったけど、そんなにひどい負け方はしなかったじゃない!

 ――むしろここで優勝できなかったら、私たちは先生がいないと何もできないダメ魔術師呼ばわりされるわよ? みんなは、そんな魔術師になりたいの⁉」

「「「――っ!」」」

 

 その、システィーナの問いかけに。

 生徒たちが皆、顔を見合わせ――

 

「ああ、そうだよな……くそっ、何弱気になってたんだ俺!」

「まあ確かに、一人で何もできない子供呼ばわりされるのは我慢ならないしね」

 

 一人、また一人と。

 生徒たちが着実に士気を高めていく。

 その様子を満足げに眺め、システィーナは改めてアルベルトに向き直る。

 

「じゃあ、私たちのこと、よろしくお願いします。アルベルトさん」

「……ったく、しゃーねえ。しっかり見といてやるよ」

 

 得意げな顔で、アルベルトは答える。

 そんな二人の様子を。

 眠たげに目を細めるリィエルが、今だけは、眩しい光を見ているかのように、目を伏せるのだった。

 

 

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