インフィニット・ストラトスJ~ジューダス・レクイエム~ 作:味薄紅茶
第一話
大小の機械に囲まれたこの一室に光は少ない。
部屋を照らす存在は、作業テーブルの空中に平面出力されたディスプレイとキーボード、後は多種多様な機器の稼働を通知させる発光部品だけだ。
出力されるディスプレイには、中心に小さくNo signalと表示されている。
そして、それを静かに見つめる四つの人影がその部屋にはいた。
部屋の中央にあるひと際大きな機材の周りを、四人は囲むように座っている。
光に照らされた影を見ると、三人が女性で、一人が男性という形で構成されているのがわかる。
ディスプレイに照らされる顔達は、言葉を漏らさず、淡々と画面に向けられていた。
それは不気味な光景であった。
状況を知らぬ者がこの光景を目の当たりにするものならば、間違いなく関わりたくないと考えるであろう。
少なくとも逃げられるのであれば十中八九逃げだす。
そんな薄気味悪い雰囲気がそこには存在していた。
そしてその雰囲気は、この中で一人だけは間違いなく感じとっていた。
「そろそろだな」
一人の男が沈黙に耐えかねたのか、ぽつりと声を漏らす。
ディスプレイを見つめる彼の顔は、緊張のせいで少し強張って見える。
それもそのはず。
これから彼らが成そうとしていることは、間違いなく法に反することだからだ。
どんな国家、いかなる組織であろうと一切の干渉が許されぬ土地。
そのように世界に制定される奇妙な場所が、極東の小さな島国、日本に存在する。
その名はIS学園と言う。
この世に僅か467機しか存在しないインフィニット・ストラトス。
世界の新たな力として登場したこの通称ISという特殊兵器を操縦、整備、またはそれに関する者を養成するのが目的の特殊国立高等学校だ。
ISはその軍事性の高さから国家防衛の要として機能している。
現在の各国は、国家の防衛のためのIS開発を最優先事項としていた。
だが開発したISを試す相手、その場所の少なさから、開発が遅々として進まないのが現状だ。
それを解決させる為、国家間は一つの安全地帯を設けることにした。
それがIS学園だ。
国家間の安全、もとい実験地帯であるIS学園は様々な国、企業の合同で成り立っている為、そこには国家間のしがらみが存在しない、いや、出来ない場所である。
IS学園は表向き、IS関係の人材養成施設となっているが、上記の通り、実際は開発したインフィニット・ストラトスの実験地としての意味合いが強い為、そこに配備される教師陣も特殊だ。
各国の重要施設でもあるIS学園には、様々な国からISのエキスパートと呼べる者が招集され、教師という形で就いている。
彼女たちは、この学園の生徒を指導するのが主な務めだったが、各国の『見えない』敵へのカウンターとしての役割こそが本命であった。
そんな場所を、彼らは強襲し、『その学園への干渉はいかなる者にも許されない』という不可侵の規約を破る。
不可侵の規約。
厳密に言えば、それが全てにおいてそうなのかと言えば違う。
このルールは公的に役立つのは表までであり、裏の世界では暗黙の了解程度にしか効力を持っていない。
それでもこのルールはまだ、世間一般では不文律として機能している。
それは何故か。
かの学園は、創立以来一種の緊張状態を維持し続けられている。
この場所の持つ特殊性、IS、各国の機密データ等を多種多様な国家が、組織が、人々が欲しているからだ。
極上の餌が目の前に存在する。
出来るものなら今すぐ頬張ってしまいたい。
それが力を欲する者たちの共通理念だ。
だがその餌につばをつけようとする邪魔者がハイエナのように辺りを渦巻いている。
つばををつけられたら自分の大事な餌が台無しだ。
そんな躾のなってない馬鹿者には、自分が優しく躾直さなければならない。
これが力を保有する者たちの共通理念だ。
こういった状況が今まで在り続けていたからこそ、学園は誰にも手出しをされずに済んでいた。
その膠着状態が今日で終わる。
世界の憤怒の眼差しが、一斉に彼らへと向かうだろう。
有りたいに言ってしまえば、世界を敵に回す如き振る舞いを、ここにいる者たちは今まさに行おうとしているのだ。
ー失敗。
そんな言葉が男の頭に過るが、彼はすぐにそのイメージを頭から消す。
ここにいるメンバーで考えるに、その言葉は余りにも現実味のないものだと思えたからだ。
(そんなことはあり得ない)
今日、この秘匿されたIS研究所に集まっている者は、彼を含め世界に、宇宙に誇る最高の科学者たちだ。
特にチーフである女性は素晴らしい。
彼女が手掛ける作戦は、いかに突拍子もなく荒唐無稽に見えても必ず成功し、いつも多大な研究結果を叩きだしていた。
今回の作戦もその有能な彼女が主体で計画されたものだ。
(そうだ、チーフの計画に不備などありえない)
ただ、頭ではそう考えていても心の奥底には、やはり隠しきれぬ不安というものがこの男にもあったのだろう。
静けさに包まれた部屋に、彼の堅いデーブルを指で小突く音が部屋に鳴り止むことはない。
そんな男に見かねたのか、右隣りにいた女性がゆっくりと男の独り言に続いた。
「……そうですわね。良きデータが手に入ることを切に願いましょう」
ゆるくウェーブのある、分けられた前髪を右手で払いながら話す女性の仕草は実に優美に見える。
少なくとも、隣にいる男よりは余裕を持ち、この緊迫した現場に臨んでいることがわかる言い様だった。
「というより、貴方、緊張しているのかしら。やることはやったのよ」
鳴りやまないテーブルの音に嫌気がさした彼女は、ふう、と小さくため息をつく。
「ありえないでしょうが……。不足の事態というものが仮に起きた場合は、貴方のような者がいるだけで、事態の収拾が悪くなりますわ」
「ね、姉さん…」
男は隣の女性、彼によれば自身の姉に当たる存在に窘められると、少し恥ずかしそうに分かっていると呟く。
よく見ればこの二人、目つき以外はウェーブのある髪質や、淡い緑色をした髪色、雰囲気などといったものがとても似ている。
ちなみに姉弟の目つきは、姉がきりっとしたもので、弟は垂れているように見える。
そんな垂れ目な彼は、注意されたことで罰を悪くしたのか一つ、小さな咳をつく。
「んんっ、あの白式とか言うIS、ちゃんとやってくれるのか。以前のデータ、見たけどさ。
動かし方がこう、バラバラじゃあないか。ああもデータに斑があると解析が面倒だよ」
「操縦者が、他にケースのない存在ですから。それは仕方のないこと。そこは腕が鳴る位の気概を見せなさい。このご時世、それ位も言えなくて何が男か」
情けない、そう彼女は口からこぼす。
「姉さん、それはあんまりな言い方だろ」
彼の姉が、男性に対する偏見とも言えるこの言いようには、理由がある。
そもそも偏見というのは、ある一つの集団を観察した時に生まれるマジョリティー、マイノリティーのことを指す。
では、この話の集団とは何か。
マジョリティーとは、マイノリティーとは。
それは、男女のパワーバランスである。
この時代の男女の優劣は、過去の時代背景のそれと比べると決定的に変化していた。
それも圧倒的に、だ。
言葉巧みにどちらが優れているかを論議する以前の、もっとプラス・マイナス位はっきりとした形でそれは表れている。
「それはあいつらがISを操縦できないからだろう」
この世界に突如として現れた新たなマルチフォーム・スーツ。
インフィニット・ストラトス。
このスーツは、従来の物と比較するのが馬鹿馬鹿しくなるほどの高性能化を一遍に果たしおり、果たして従来の物の比較対象にしてよいのかと疑問に思えるほど、画然とした物となっている。
そのあまりの性能の高さに、ISは軍事利用にも転用される程だ。
現在は条約でISの軍事開発禁止され、その身を競技種目の一機具に落としているが、そんなものを律義に守る者はこの世界には存在しない。
このスーツ一つで、この世界はどれほどの科学的ブレイクスルーを成したのだろうか。
恐らく100年程度では到底埋めることができない所まで、今の人類は叡智を高めたはずだ。
「あんなスーツが、そのISが、女性しか着られないというのなら、男だって弱くもなるさ!」
この驚異的なスーツが登場したことで人類は大きな恩恵を受け、特に女性はその恩恵を余すことなく受けることが出来ていた。
もし、このスーツの数多く有している特異性の中で、あえて一つを挙げようとするなら何か。
それは間違いなく、男女間に大きな歪みを生みだした、このスーツの代名詞とも言える機能であろう。
ISは、『女性』にしか起動することが出来ない。
この真実が、男女のパワーバランスを見事なまでに崩壊させた。
人類の男性という本質は、矛である。
力を振るう、外へ放出することに特化して来た男という性は、骨格的にも、筋力的にも、精神的にも「力」という分野で、常に女性の上に立ち続けて来た。
人類の女性という本質は、盾である。
力を振るうのではなく、内包することに特化した女という性は、いかに力を振るおうとした所で、男には敵いはしない。
そもそもの土俵が違うのだ。
張り合う時点でそれは詰みである。
両者の間に、答えは永遠に訪れないであろう。
そんな両者の関係が、ISの登場で一気に変貌する。
永遠に訪れないはずの答えが、ISという形で表れてしまったのだ。
存在しないはずの答え。
持てないはずの矛。
女性は、ISを手に入れることにより、その身に「矛盾」を孕むことを可能にしたのだ。
その結果、どうなったか?
仮にこの現代で、『男は尊まれ女は卑しまれる』という思想を男性が街中で説いたとする。
一昔なら、その男性は世間の女性からの非難轟々の嵐を受けることになっていただろう。
それが今となっては、非難どころか、何とも驚いたことに世間の女性から擁護が出る始末。
彼の姉が言ったセリフには、そんな悲しい擁護の匂いがあったのを男は感じたのだ。
「だからもう一度言うさ。俺はあいつらと違うだろう!」
語気が荒れる弟を見て、姉はまた小さくため息をついた。
「違っても違わなくても。そういう肝の小さい所が女々しいと言っているのです」
「何をっ!」
「お二人とも、姉弟喧嘩はそこまでにしてください。間もなく作戦開始予定時刻となります」
いよいよ姉弟の会話が、喧騒に発展しようとする所に二人目の女性が静かな声で中断させる。
「……」
「……っく」
あれほど部屋の中に喧騒の兆しがあったのにも関わらず、止めに入った女性の声が辺りに響くと、喧騒は瞬く間に静寂へと変わった。
別に驚くことではない。
今回の作戦の第一目的は、「世間的には」女性にしか扱えないはずのISを、男性であるにも関わらず動かすことが可能にしている特異な存在の検査、及びその操縦ISの正確な情報収集なのだ。
今の所、世界に一人だけの男性IS操縦者である織斑一夏と彼に寄与されたその男性専用IS、白式。
普通、専用のISを持つ者とは国家を代表する操縦者や専門的なIS企業に所属する人間を指す。
そのどれにも属さない彼がどうして専用ISを持ってるかと言えば、理由は簡単だ。
彼は世界的にも、この研究所的にも非常に稀有な存在だ。
他に類を見ない男性IS操縦者にどうして通常ISを支給できようか。
彼にはISの更なる発展の為に、特別なISを用いて調べる必要がある!
という単純明快な理由を元に、彼は専用ISを保有するに至る。
ちなみに彼の専用ISはここの研究所が製作し、与えた物だ。
どうして作成、寄与した研究所が彼を襲うのかというと、それは作成したISのワンオフ・アビリティーという固有の技が原因だった。
ISが操縦者と最高状態の相性になったときに自然発生する固有の特殊能力がワンオフ・アビリティーと呼ばれるものだ。
彼の装着する白式は、零落白夜という攻撃対象のエネルギーを消失させる能力を発現させている。
この技は使用の際、自身のISのエネルギーを莫大に消費する非常に燃費が悪いものだが、対IS戦では最強の攻撃力を発揮することが研究の結果わかっている。
ISには操縦者の生命を守護する絶対防御という特殊シールドが備わっている。
通常のIS同士、もしくは通常兵器との戦闘があったとしても、少なくともこのシールドがあれば、即死という事態だけは回避できるのだ。
そのシールドを完全に破壊出来るのが、彼の発現した特殊能力という訳だ。
つまり、対象ISの絶対殺傷能力なのである。
この高すぎる攻撃力を彼は今まで一度も全力で行使していない。
出来なかったと言っても良いだろう。
決して試合相手が弱いから手を抜いて、という理由からではない。
彼の戦闘技能の上昇は驚くものがあるのは確かだが、驚く程度位にしかない。
そんな人物は、この世を探せばいくらでもいる。
一夏が全力を行使できない理由は、自分のIS操縦の未熟さ故というものだった。
彼がISを操縦し始めてから、まだ一カ月も経っていない。
絶対の自信を持って相手を殺傷させずに戦うということが出来ないからこそ彼はいつも試合では逃げ腰で、下手を打てば相手を殺してしまうようなこの能力を恐れていた。
だからであろう。
彼の白式のモニタリングデータはいつもちぐはぐなものになっていた。
これではいつまで経っても、彼とそのISの正確なデータが採取出来ないと業を煮やした彼らは、今回そのちぐはぐさを払拭出来るような環境を彼に提供することで、今までの研究の遅れを取り戻すことにしたのだ。
一夏を本気にさせる環境を構築させ、正確なデータを採取する。
この二つをIS学園で実現させることで今回の作戦は完了となる。
言うは易く、行うは難しと言える困難な作業が、これからの彼らには待ち受けているのだ。
こんな所で喧嘩をしている暇などないのは、誰が見ても明らかだった。
「失礼」
「っ、すみませんでした」
「かまいません」
みっともないことをしたことで素直に謝罪する二人に彼女は素知らぬ顔で答える。
謝罪を受けても女性の顔は微動だにしない。
女性は顔を二人に向けることなく、彼女の顔は何も映していないディスプレイに向けらたままだ。
その佇まいと堅く閉じられた二つの瞼、長く艶のある銀髪は、まるで出来の良い人形を連想させる。
どこか現実離れした女性だが、決して彼女は二人を無視しているわけではない。
その閉じられた目の奥で、しっかりと彼らを見ていた。
「……」
部屋が、以前の静かなものに戻ろうとしていると思えた時、ピー、と小さなアラームが部屋に鳴り響いた。
アラームと同時にディスプレイのNo signalの文字が消失し、On lineの文字が右端に浮かび上がる。
「…ッ!」
部屋に緊張が走る。
その文字は彼らにとって開幕を告げるものだった。
銀髪の少女が素早くキーボードに指を走らせる。
「ゴーレムⅠ及びシーカーカメラのステルスモードから通常モードへ移行。それに伴う通信の回復を確認。バイタルデータ照合、各部問題なし」
簡略化されたゴーレムⅠの全体像がディスプレイに浮かび上がる。
肩から腕が異様に肥大化した人型がそこには映っていた。
そんな不格好な人型こそ、今回の作戦の為に開発された新型のISだ。
このISの特筆すべき点は、人間を搭載せず、無人化させた上で運用できるということにある。
従来のISでは不可能であった無人化を成功させたことで、この作戦の構想が生まれたと言っても過言ではない。
無人ISを使用することで、彼らの望んだ一夏の憂いを断たせる環境が整う準備が出来たのだ。
「ディスプレイ中央にゴーレムⅠ、シーカーカメラからのリアルタイム映像を出します」
銀髪の女性は空中に出力された二つのディスプレイを指でなぞり、画面を拡大させる。
一つは広大なIS学園が上空から見下ろす形で、もう一つは更に上空から下を撮影する形で映し出される。
「うんうん、IS学園がばっちり見えるね~。」
ここで、なんとも強烈に場違いな声を最後の女性が発した。
緊迫した空気なぞお構いなしな、実に間の抜けた高い声だ。
中央に拡大された映像のお陰で光源が大きくなったせいか、その女全貌が明らかになると、更に違和感が増す。
比較するための例として、他の三人の風貌を紹介すると、彼らはいかにも科学者が着そうな白衣を身にまとい、ディスプレイに目を向けたままキーボードにデータを入力している。
では問題の女性はどうなのか。
端的に言うと女性は頭がおかしかった。
予め断っておくが、これは語弊ではない。
まず何故おかしいのかを説明する為に、彼女の服装に注目しよう。
この女性が着る服、実は今世界を賑わせているISとほぼ同等機能が付随しており、特に演算機能には目を見張るものがある。
物凄い、更にもう一つ物凄いという服なのだ。
頭にはその服の機能をブーストさせる補助機器が装着されており、それらの機能だけを見れば、実に素晴らしい一品である。
事実、彼女は他の三人では捌ききれない仕事を一人でこなしている。
これが彼女の主観的な事実だ。
だがそこに客観的な視点を持ってきたらどうなのかと言うと。
超ド級の性能を誇る服は、青を基準としたひらひらのゴシックロリータ系で固めたデザインをしており、頭の補助器具はウサギの耳のような形をしている。
「お、あそこにいるのはいっくんじゃな~い。やっほ~、いっくん聞こえる~?」
ついでに、栗色の長髪を揺らしながら頭上に両手を置き、ウサギの耳を作り、ぴこぴこと動かす徹底ぷりである。
後お尻もふりふり。
こんなことを、うふふ、あははとやっている女性がいたら誰がどう見ても頭がおかしいとしか思えない。
というか考えられないであろう。
そう、これがこの女性の真実なのである。
先ほどの銀髪の女性が、自身の放つ人間味の少なさが現実離れしたものを感じさせたのなら、
こちらの女性は、人間味溢れる、いやむしろ氾濫しちゃって洪水を起こしているのを目の当たりにした人が、こんなの普通ありえないだろうと考える的な意味で、現実離れしたものを感じさせていた。
これが、現代最高の頭脳の持ち主にして、ISの構築から実証まで一人でこなし、この世で唯一ISコアを製作することが出来、かつ、これから世界に喧嘩を売ろうとしているこの研究所のチーフの姿だった。
「データ送信に異常なし」
「受信のほうも問題はないみたいね」
それを証明するように、周りはこの奇妙奇天烈な存在に対して特に反応を示さない。
傍から見れば幻覚のような光景であった。
「現在、ゴーレムⅠは待機状態を維持。束様、現在音声出力は行っておりませんが、出力しますか?」
「いらな~い。雰囲気だよ、ふ、ん、い、き」
「そうですか」
「そんじゃ行ってみましょー。クーちゃん、戦闘AI let's go!」
束と呼ばれるウサ耳の女性の指示に、クーちゃんと呼ばれた銀髪の女性は小さく顔を縦に揺らす。
「了解。ゴーレムⅠ、自動戦闘モードへ移行。アリーナへ突入させます」
「アリーナの通路遮断もよろしくね~」
「了解しました。突入と同時に遮断シールドのレベルを4へ変更、アリーナへ続く各通路の遮断を行います」
ディスプレイに赤文字で大きく『COMBAT!』と表示されると、無人ISはその巨大な双腕をゆっくりと前方に向けた。
狙いはIS学園第二アリーナ。
現在、そこでは学年別トーナメントが開催されている真っ最中だ。
カメラから送られる映像にも、それを観戦する生徒の興奮が伝わるかのようにアリーナは大きな熱気に包まれている。
そんな熱気にゴーレムⅠは特に気にする様子もなく、強大なエネルギーを腕部の砲へチャージする。
漏れ出る紅い光が最大に膨れた後、それは空を焼く音と共にアリーナへ吸い込まれていった。