魔改造提督の鎮守府ライフ   作:Jeep53

14 / 45
12

蒼天の下、俺たちは一路鎮守府へと向かっていた。

夏の海風が艦隊の間を吹き抜ける。

深海棲艦たちも時折喋りながら、笑い合いながら航行していた。

彼らの人間的な一面に驚きつつ、俺は鎮守府と連絡を取ろうとしていた。

「…ダメだ、応答がない。まだここからでは繋がらないみたいだ」

「大丈夫ですよ、すぐに無線の圏内に入るでしょう」

青葉が軽いノリでそう言ってきた。

「そうだといいな」

物事は順調に進んでいた…かのように思われた。

…ゥゥン…

「!」

不穏な爆音が後方より聞こえだした。

「僚機…イヤ、敵機襲来!数ハ凡ソ五十!艦攻艦爆隊ダ!」

後方の深海棲艦が報告する。おそらく俺らの動向を察知したのであろう。偵察機ではなく攻撃機を送ってきやがった。

姉さんの方を見ると、”指揮を執ってくれ”と言わんばかりに頷いた。

俺は敵に向き直った。

「対空戦闘用意!重巡以上は三式弾、軽巡以下は高角砲用意!VT弾を使え!空母は発艦を始めろ!」

俺は指示を飛ばす。ここで全滅なんてことは許されない。姉さんのこともあるが、何よりも情報だ。俺らが帰還しなければ陸軍の所業が闇に葬り去られてしまう。

だが、姉さんの基地も資源が枯渇していたため、先日の演習から補給を受けていない。

実力を十分に発揮することが不可能な状態だ。

「青葉、無線機を持って当海域から離脱しろ!」

「えっ!?」

青葉が困惑した声を上げた。”どうして?”と目が問いかけてきている。

「鎮守府に連絡を取って応援を要請してくれ。頼む!」

青葉はしばし困惑していたが、やがて覚悟を決めたのか、無線機を俺から受け取った。

「重巡青葉、離脱します!」

青葉が離脱するのを確認して敵機に向き直った。

艦攻は低空飛行、艦爆は急降下の体勢に入っている。時間がない。

「掃討射撃開始ッ!」

蒼天へ、乱反射する海面へと幾重もの火箭が伸びる。

敵爆撃機の一機が火箭の一つに絡めとられ、翼端から黒煙を噴きながら錐揉み上に墜落していく。

その過程で僚機に衝突し、計二機が爆弾を投下することなく消えた。

「敵機左舷前方!」

艦爆にばっかり気を取られてはいられない。双発の大型雷撃機が獰猛な唸りを上げて迫り来る。

敵の目標は味方の空母。対空戦闘能力を奪う(艦戦を使用不可能にする)つもりのようだ。

「やらせるかッ!」

俺は空母と敵機の間に割り込んだ。実際の海戦のように回頭に時間がかかるというような概念はないため、行動しやすい。

俺が割り込んでもなお、敵機は速度を緩めるそぶりすら見せない。それどころか加速したようにも見えた。

伊吹の舷側に設けられた13mm連装機銃と25mm連装機銃が火を噴く。

一機の艦攻が被弾の衝撃でせり上がった海面に衝突し、飛沫をあげて消えた。

続けて舷側から伸びる火箭がもう一機を捉えた。

コックピットを打ち抜いたのか、エンジンが快調に回っているにも拘らず海中に消える。

敵艦攻艦爆の残数は二十数機。とてもこの距離で墜としきれるものではない。

「ここまでか…ッ!」

俺は歯ぎしりをした。

「敵機爆弾投下!」「敵機魚雷投下!」

僚艦から悲鳴に近い報告がなされた。

「全艦回避行動、急げ!」

回避行動をとりつつも俺は対空射撃をやめない。

「勝ち逃げは…させん!」

深海棲艦の艦載機は密集する傾向があるため、一機でも被弾してバランスを崩すと、僚機を巻き込む可能性が非常に高い。

俺は機銃弾を反転離脱途中の艦爆に放つ。

一機が被弾した。左翼を全損して左へと回転しながら僚機へ激突する。

不意に今まで響いていた軽快な射撃音が途切れ、手に射撃音より一回り大きな金属音が響いた。

「チッ!」

機銃弾が底をついた。味方の機銃弾も残り少ないようで、射撃開始時と比べて火箭の量が激減している。

突如、自分の周り、味方艦の周りで水柱が聳え立った。

「機関部二被弾!火災発生!」

僚艦からの悲痛な叫びが聞こえる。

艦爆隊も空母を狙っていたようで、空母の周辺にいたやつらへのダメージが多い。

「我左舷二魚雷命中多数!航行不能!」

「何ッ!?」

雷撃が到達した。味方軽巡が一瞬で無力化されてしまった。

刹那、被弾音より遥かに壮大な爆発音があたりに響く。

先ほどの軽巡が誘爆したのだ。

甲板の板材が剥ぎ飛び、砲身や機銃座がねじ切られて吹き飛ばされた。

「ガ、ガァァァッ!!」

悲痛な叫び声とともに、軽巡ホ級は海の底へと消えた。

「ホ級ッ!クソッ…本部ノ奴ラメ…!」

味方の残数は俺含め八名。うち一隻は炎上、二隻は小破となっている。

かく言う俺も右肩付近に直撃弾を受けた。航行に支障はないが、戦闘能力が低下してしまった。

「各艦応急修理を開始しろ。すぐに敵艦隊が到着するはずだ!」

通常艦船と艦娘(俺は男だが)はここがかなり異なる。俺らは人型なので包帯での止血や艤装の簡易修理で処置が完了するのだ。おかげで物の五分程度で応急修理を終えた。

「応急修理ヲ終エマシタ!」

僚艦からの報告が飛び込むと同時に、不気味な飛翔音が聞こえ始めた。

敵弾飛来!回避行動!(避けろ!)

水柱が聳え立つ。敵艦は戦艦クラスのようだ。

「後退しつつ反撃開始ッ!」

俺らは発砲を開始した。発射の反動が右肩に伝わり激痛が走った。

「…ッ!」

もう撃てない。次撃った場合、俺は沈むだろう。

ガガッ…ガッ…

簡易無線機にノイズが走った。

「…ら…ば、…せよ!」

「!?どうした!?」

俺はひったくるように無線機を取って呼びかけた。

ガッ…「こちら青葉、応答せよ!」

ノイズが途切れて鮮明な声が聞こえた。

「こちら提督、敵艦隊が出現、応援を求む!」

「もう向かわせてあります!」

青葉の声が途切れると同時に頭上を僚機が駆け抜けていった。

「あれは…紫電改二と彗星!?助かった…!」

紫電改二が残存する敵機を打ち落とし、彗星が敵艦への爆撃を敢行する。

味方の砲弾が着弾した。多くは空振りだが、中には夾叉弾や直撃弾があったようだ。

何隻かの敵が一気に海の藻屑と化した。

「提督~!大丈夫~!?」

鈴谷の声が聞こえた。戦場でも相変わらずのしゃべり方だ。

「大丈夫だ。それより味方の手当てを…」

「もう始めてるよ~」

鈴谷に言われて振り返ると、駆逐艦たちが傷ついた僚艦の救助にあたっていた。

「…こんなこと言うのもなんだが…見た目で嫌悪感を抱いたりはしないのか?」

いくら敵意がないとはいえ姿はいつも見ているはずの敵だ。嫌悪感を出さない方がおかしいというものだ。

「ん~、私たちは深海棲艦の殺気に反応して戦うって感じだから、殺気の無い深海棲艦には嫌悪感は一切持たないんだよね~でしょ?」

鈴谷が軽く答え、救助中の第六駆逐隊に声をかけた。

「そうなのです!」

「この人たちからは殺気が感じられない。だから大丈夫だ」

「はわわ…こんな近くで見たのは初めてです…」

「暁に任せなさい!」

(おい、後半二人、質問への回答になってないぞ…)

味方が来たから大丈夫、俺はそう慢心していた。

不意に視界の端に黒い影が映りこんだ。

「コノママ帰スト思ッタノカ?」

「なっ!?」

敵戦艦が猛スピードでこちらへ突っ込んできた。”戦艦は遅い”という常識は通用しない。人型での速度は艤装の重さにのみ左右されるため、ステータスを強化すれば戦艦でも機敏な動きが可能なのだ。

もちろん、ステータスが及ぼす効果は速力に限定した話ではない。

「とぉ↑ぉぉう↓!」

視界の右から黒い影が迫り、敵戦艦が左側に吹き飛んだ。

爆風に思わず目を塞ぐ。

「提督、お助けに参りましたわ!」

コンマ数秒前まで敵戦艦がいた場所には、熊野が自慢げな表情で立っていた。

そう、重巡でも、鍛えれば戦艦以上の火力を出すことが可能なのだ。

振り返ると鈴谷が”あちゃー”というような表情をしていた。…まさか戦闘ではいつもこうなの…?

敵戦艦が一撃で吹き飛ばされたのを見て敵艦隊が後退を始めた。

「提督、もう大丈夫ですよ。帰りましょう」

追いついてきた赤城が笑いかけてきた。

「あぁ…そうだ、青葉から深海棲艦については何と報告されいる?」

俺はふと気になったことを口にした。あの青葉の事だ。盛って通達しているかもしれない。

「それなら、ちゃんと伝えられていますよ。手を出したら提督に殺される、と」

「俺そんなことしないよ!?」

予想的中、俺は頭を抱えた。あいつの口は何とかならないのか…

「…とりあえず帰ろう、話はそれからだ」

俺は鈴谷と熊野に支えられながら帰路に就いた。




多分次回は半分ネタ回かと思われます(予定)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。