チュン‥チュン‥チチチ…
「…ッ……ふわぁ…」
小気味よい小鳥の鳴き声とともに俺は目覚めた。
そこまではよかったのだが…
「…ッ!?ぐぁ…あ、頭がいてぇ…」
頭の中がグワングワンとしていた。
完っ全なる二日酔いである。
そして……
「ここ…食堂じゃねぇか…」
そう、食堂で目を覚ましたのである。
周りには同じように艦娘らが倒れて熟睡しており、誰かが起き上がる様子はない。
大騒ぎした後疲れて眠ってしまったのだろう。食堂がほんっとにひどい状態である。
缶チューハイの空き缶、からになった日本酒の瓶、空の熱燗の山。そして料理が入っていたであろう皿たちが散乱しているのだ。
「片付けが大変だなこりゃ…」
この空間に俺一人だったならばすぐにでも片づけを始めていたことであろう。だがここに居るのは俺一人ではない。と言うかほとんどの奴らが酔いつぶれて寝ているのだ。机に突っ伏して寝ているやつ、床にひいた茣蓙の上で大の字に寝てるやつ、茣蓙から転がり落ちで床で寝ているやつ、様々だ。
問題なのは彼女らの服装で、大騒ぎした後だからだろうが、多少はだけている者が多数なのだ。目のやり場に困るとはこのこと。
こんな状況を誰かが見たら絶対変な方向に勘違いされそうなので…
「よし、俺は何も見ていない」キリッ
二日酔いでくらくらする体を引き擦りながら、俺は逃げることにした。
俺の逃亡s…ゲフンゲフン、移動先は工廠。
昨日は夕張や明石も飲んでいたので、艤装の修理、メンテを俺がやっておこうと思ったのだ……のだが…
「あ、提督。おはようございます」
黒ずんだ油汚れが目立つ作業着を着た明石がこちらに気づいて挨拶をしてきた。
「明石…?こんな朝っぱらから何を…?二日酔いは大丈夫なのか?」
俺の問いに明石は笑って答えた。
「そこまで飲んでませんよ。自分がお酒に弱いの分かっているんで、昨日は早めに切り上げたんです」
「明石ってこんなに物事を考えて行動できる娘だっけ?」
「その評価ひどくありません!?」
俺が真顔で発した疑問に明石は驚愕と呆れが混じった表情でツッコんできた。
「うっ…あまり大きな声を出さないでくれ…頭が死ぬ…」ボー…
明石のツッコミは俺にはデカすぎたようで、数秒間目の前の景色がゆがんだ。
「アハハ…すいません。それはそうと、艤装の点検、整備は終わらせておきましたよ」
「おぉ、そうか、ありがとうな」ナデナデ
俺はごく自然な動作でいつも駆逐艦の子たちにやっているように明石の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「ふぇっ…/// 提督…何を…?」
明石がびっくりして反応してきたことで、俺はようやく我に返った。
「あっ、すまない。まだ寝ぼけているようだ…」
俺はすぐに手を引っ込めた。
「あ…ハイ…」
明石がなぜか残念そうな表情だったのは気のせいだろう。うん。
ふと俺の頭の中にある疑問が浮かび上がった。
「そういえば明石、援軍が到着したときに紫電改二や彗星、流星とかのまだウチでは開発していないような艦載機が多数見られたんだが、それはどうしてだ?」
「え”ッ…とぉ…それはですねぇ…」
とたんに明石が口ごもった。まさか…
「なぁ明石、現在の鎮守府の資材の備蓄量はどのくらいだ?」
「サ、サァ?ワタシハナニモシリマセンヨ」
「深海棲艦になるなオイ」
目が泳いでいる。川登りしている鮭みたいに泳いでいる。
「開発資材はどのくらい余っている?改修資材は?」
「な、何のことやら…」
ちょうどそんな結末が見えている質問攻めの現場に、夕張が到着した。
「あ、提督、おはようございまーす…って明石さん、なんでそんなにおびえた目でこっち見てるんですか…あっやべ(察し)」
明石の視線に夕張は何かを察したみたいだったが、時すでに遅し。
俺は夕張の方へ、精いっぱいの笑顔を保ったままゆっくりと、一定速度で首を旋回させ、表情を変えずに言った。
「おう、おはよう…ちょっとこっち来ようか?ん?」
「ヒェッ…ハイ」
夕張はおとなしく明石の隣に来た。
俺はゆっくりと口を開いた。
「さぁ、資材の現状を言ってみろ」
「燃料3000…弾薬4590…鋼材2870…ボ、ボーキサイト…980…(アカン…殺されてまう…)」
「開発資材12…か、改修資材…2…です(ここが墓場か…)」
言い終わった彼女らの顔面は血の気が引いていた。
まぁ、彼女らがここまでおびえるのも無理はない。が…
「よくやってくれた。感謝する」
俺の怒る気はないし、怒る資格もない。
「…へぁ?」
「…ほへ?」
予想外の言葉に二人とも間の抜けた声をだしている。
俺は続ける。
「明石や夕張が開発してくれた装備が無かったらあの戦いは負けていたかもしれない。まぁ、ちょっと資材を使いすぎたのはあるけれど、おかげで助かった。沈まずに済んだよ。ありがとうな」
俺が言い終わると、二人は満面の笑みを浮かべていた。
「お役に立てた様で何よりです!」
「良かったぁ…ここで
「いや殺しはしないよ!?」
早朝の静かな工廠に3人と、周りにいた妖精さんたちの笑い声が響いた。
~陸軍地下実験室~
「…完成だ…」
薄暗い実験室で男が一人呟いた。
男がうつろな目で見つめる先には、軍服に身を包み、滑らかな黒髪をショートカットにした女…いや、兵器があった。
かつてこの実験室の壁には、そこそこ大きめのコルクボードがあり、そこには所狭しと書類や図面が張られ、デスクの上には資料が山積みにされていたが、今はそれらは忽然と姿を消している。
今、この部屋の中にある物は、簡素な机、椅子、手術台のみである。
男は大きなクマがある目を無表情な兵器に向け、語りだした。
「コマンド…{RECORD}…最初っから分かってはいた…」
兵器は無表情のまま男の方へ顔を向けた。
「実験が成功すれば…私はもう……」
男は悔しそうに俯き、そのまま話をつづけた。
「数日前に書類が軍部に回収された。この実験についての書類、およびデータは陸軍元帥の部屋の金庫だ。回収されるときに小型カメラで追わせたから間違いはない」
男はそこまで喋った後、ゆっくりと大きなため息をついた。
「これから起こるであろう大きな衝突の原因は、この私だ。だがもうじき私はこの世から消えるだろう。…この情報を伝えることは私が出来る一番の罪滅ぼしだ」
男は傍らに置いてあった水入りのコップをつかむと、グイっと飲み干した。
「近々、陸軍主催で開かれるであろう集まりでの新兵器紹介、それに気を取られるな。そして…敵襲に、気をつけろ。決して沖合の戦力に主戦力を割くんじゃない」
男はそこで一息つき、何度目かわからないため息をつき、話を再開した。
「そして海軍、貴様の敵は深海棲艦だけではない……直に深海棲艦など脅威にならなくなるだろう」
「陸軍は、ずっと
「私が開発した……私が…開発してしまったものは…
……だ…」
男は、絞り出すように言い切った。
「それに…」
男はこれまでため込んでいた何かを吐き出すかのように沢山、色々な事、自分の知っている事全てを喋った。
「コマンド…{OVER}…お前はこれからここのダストシュートから海へ出ろ。どこでもいい、海軍の鎮守府に行け。そうすれば、お前の中のプログラムが働くはずだ」
兵器は表情一つ変えずに歩きだし、ダストシュートの中に消えた。
カッ…カッ…
コンクリートの階段を革靴が叩く音が聞こえた。それも一つではない。最低でも3人はいる。
さび付いたドアを軋ませながら開け、半笑いのいつもの将校が入ってきた。
「ドクター、ご同行を」
それと同時に、後ろの兵士が銃を構えた。
「あぁ、分かった」
男は腰に手をやりつつ立ち上がった。
「連れていけ」
将校がぶっきらぼうに命令すると、兵士は私の両脇を抱えて階段を昇って行った。
将校は男が連れ去られたのを見て呟いた。
「お前は知りすぎた…我々の事も、世界の事も…」
刹那、乾いた銃声が二発、晩夏の空に響き渡った。
それと同時に、将校が無線を入れた。
「
前半と後半の温度差、火傷するねこりゃ