「各員被害状況を報告しろ!」
俺は無線に向かって怒鳴った。
先程、50機を優に越すJu87によって目の前で利根が大破するのを見た。被害が利根だけのはずがない。
散開してバラバラになった艦から複数の報告が飛び込む。
「こちら大和、長門共に被弾なし、というか敵機が来ませんでした」
(とりあえず主力は無事のようだな…)
俺が安堵しているとさらに報告が飛び込んできた。
「こちら一航戦、両方とも被害なし」
「よし」
「こちら吹雪、綾波ちゃんとイムヤちゃん共に被害なし、です!」
(よし…被害は利根だけで終わらせられたか…?)
俺のそんな淡い期待は次の瞬間に飛び込んできた報告によって見事に消しとばされた。
「北上さんが大破!撤退しました!」
「ダニィ!?」
(重雷装巡洋艦が居なくなった…これはかなりの痛手だな…あとは武蔵だな…)
そう考えながら、武蔵からの報告を待つも、一向に報告がない。
(っかしぃなぁ…無線機がやられたか?)
1分、2分、いくら待てども武蔵からの打電はない。
「全艦集合、隊列を組みなおせ!」
俺は一旦艦隊を集合させることにした。
その言葉で全員が元の場所へと戻ってくる。
「提督、武蔵はどうしたんだ?」
戻ってきた長門が怪訝そうな顔で尋ねてきた。
「分からないんだ。無線での報告がないんだ…」
そう返した時、無線にノイズが走った。
「…ら…ん。…を……た!」
俺は無線機を引ったくるように取り、怒鳴った。
「武蔵か!?応答しろ!」
だが、俺に突きつけられた回答は無慈悲なものだった。
「こちらは救護班!大破した武蔵さんを保護しました。以上!健闘を祈ります」
空気が凍ったようだった。誰も喋らず、微動だにしない。聞こえてくるのは波の音と風切り音だけだった。
「武蔵が…大…破…?」
大和が絞り出すようにか細い声で呟いた。
「なん…だと…」
長門が呆然としている。
武蔵が大破して戦列を離れた事は痛手ではあるが、数ではまだ勝っており、勝機もある。問題は…
「あの武蔵さんが…?嘘でしょう?」
「吹雪ちゃん落ち着いて…」
「……」
「か、加賀さん、まだ負けたわけじゃ…」
士気低下である。尋常じゃないまでの士気低下だ。
失礼ではあるが、駆逐艦や軽巡がやられるのならさほど士気低下には繋がらない。
だが、戦艦、それも大和型が大破に追い込まれたのだ。まぁ…
「奴らは…沈める」
武蔵の姉妹艦である大和は復讐心に駆られているが。
「大和、一応味方だからね!?沈めちゃダメだぞ!?」
本気で味方を殺しかねない眼光をしている大和に声をかけるが、聞こえていないようだ。
そんな俺の苦悩とは裏腹に海上は涼しい風が吹き、とても気持ちいい天候だった。
(もう演習やめて帰りたい…空はこんなにも蒼いのに…)
俺がそう悩んでいた時、無線が入った。
「こちら伊168、敵艦隊を射程圏内に捕捉。敵艦にこちらを攻撃できる艦は認められず。攻撃許可を」
また凶報か、と一瞬身構えたが、そんなことではなかったので安心した。
「許可する。空母はもう残存機数がないはずだ。戦艦から狙え」
「了解したわ」
無線が途切れる。俺は気を取り直して皆に向き直り、話し始める。
「武蔵がやられたが、まだ負けたわけではない。それに、イムヤが敵艦隊を発見、位置情報をこちらへ送ると共に攻撃もしてくれるそうだ。我々も負けては居られない。皆が落ち込む気持ちはわかるが今はやる時だ。これより敵艦隊への突撃を敢行する…いいな?」
みんなは無言で頷いてくれた。大和以外は不安げな顔ではあるが、覚悟は決まったようだ。
「全艦、大和の速度に合わせろ。前進!」
「了解!」
士気がある程度回復したことに俺は満足して前進を開始した。
だが、俺たちは忘れていた。
不意に吹雪が顔をこわばらせた。
「どうしたの?吹k…」
神通の声に被せるように吹雪は悲痛な声で叫んだ。
「う、右舷よりスクリュー推進音!魚雷…6本きます!」
なんだろう…なんか上手く書けない…