「う、右舷よりスクリュー推進音!魚雷…6本きます!」
吹雪の叫びに皆が凍りつく。
「回避行動急げ!」
急いで回避行動を取ろうとするも、舵が効き始めるにはまだかかる。
吹雪がまた叫んだ。
「全弾、赤城さんと加賀さんに向かっています!」
それを聞くや否や、赤城と加賀が何かを悟ったような顔をし、弓を構えた。
「な、何を…」
「「艦載機、全機発艦!」」
刹那、空気を押し除けながら艦載機達が飛び出していった。
全機発艦を見届けた2人は、俺の方を向いてこう言った。
「提督」
「後は、頼みました」
俺が声をかけるよりも早く赤城と加賀の舷側に至近弾のそれとは比べ物にならない大きさの水柱が上がった。
「…ッ!」
その衝撃波に思わず俺は目をつぶった。
水柱が消え、視界が確保出来た時、もうそこには救護班が到着しており、曳航を始めていた。
不意に後ろからくぐもった爆発音が聞こえてきた。
「!?…あぁ、爆雷か」
どうやら駆逐艦が爆雷の投射を始めたようだ。
(これでもう大丈夫だな)
俺はそう思った。なぜなら吹雪と綾波の対潜能力は
が、現実はそう甘くはなかった。というより、U-511はかなりのやり手であった。
「スクリュー音遠ざかります…逃げられました…」
「う~ん…当たった気がしたんだけどなぁ…」
二人は残念そうな顔をしていた。
どういったテクニックを使ったのかは知らないが、逃げられたのは事実だ。また急に襲ってくる可能性もあるが、それの警戒のためにここで立ち止まっていてはドイツ水上艦隊に接触できない。なので、
「対潜警戒しつつ前進!少しでも水中聴音機に異変があったら知らせろ!」
「了解!」
~ドイツ艦隊側~
「水中聴音機に感あり!U-511ではない、伊168だ!」
ドイッチュラントが報告した。
「…来たわね…敵はこちらに対潜攻撃能力がないと思っているはず。だから絶対至近距離から当てようとしてくるわ。そこが狙い目よ…見せてやろうじゃない、敵を良く調べずに侮ってかかるとどうなるのか…」
目深にかぶっていた軍帽を指で押し上げ、ビスマルクは不敵に笑った。
「ドイッチュラント、
「了解!」
~海中~
「相手艦隊には戦艦や空母のみ。一方的に攻撃できるわ…」フフッ
伊168は完全に油断していた。それもそのはず、対潜攻撃が可能とされる艦が元より一隻も編成に入っていなかったからである。
「提督は油断はするなって言ってたけど、まぁ、大丈夫でしょ!どうせなら至近距離から魚雷を撃って驚かせちゃおっと」ニシシ
伊168は前進を開始した。その先に地獄が待っているとも知らずに。
~水上~
「伊168接近、至近距離から撃とうとしているな、これは」
ドイッチュラントが呆れを含んだ声でそう言った。
「容赦はするな。殺れ」
ビスマルクがノールックで言い放った。
「味方だっての…よし、Lgel発射ァ!」
ドイッチュラントがそう叫ぶと同時に、軽い金属音と射出音がコンマ数秒置きに断続的に続いた。
「さぁ、どう避ける…?」
「…伊168も可哀そうだな…」
グラーフが苦笑いでつぶやいた。が、その余裕はドイッチュラントの報告よって消えることになった。
「グラーフ!伊168が魚雷発射!航跡が見えない、酸素魚雷だ!」
「なっ…!回避…」
回避行動、と言い終わらないうちに魚雷は到達し、グラーフの舷側に艦橋より高い水柱を上げた。
伊168が至近距離で放った魚雷は装甲区画をいともたやすく食い破り、大穴を穿つ。やがて、浸水が始まった。
「機関室に浸水!まずい…私の機関に浸水は…」
グラーフが青ざめた。次の瞬間、機関室付近で青白い火花が二、三度散り、大爆発を起こした。
ドイツ本国で速力上昇のためにハイブリッド機関に換装したことが仇となったようだ。爆発に加え、燃料漏れによる大火災が始まった。判定は、大破だ。
「グラーフ!………ドイッチュラント、Lgelは着水したか?」
ビスマルクがまだ少しの余裕を残した表情でドイッチュラントの方を振り返った時、ドイツ艦隊にさらなる凶報が舞い込んだ。
「こちらU-511。補給のため深度潜航状態を解除し、そちらの付近に浮上する。
今度こそ、ドイツ艦隊から余裕が消えた。
「まずい!同士討ちになるぞ!」
「今から発射したLgelを撃ち落とせたりは…
「できない!今着水した!」
…そんな…」
「U-511!U-511!…無線封鎖してやがる…こんな時まで徹底するんじゃねぇよ!」
ドイッチュラントが無線で呼びかけるも反応はない。
爆雷と違い、Lgelは着水してからの展開が早い。
「まずいな…戦力差が…」
次の瞬間、数十発のくぐもった爆発音が海上に届いた。伊168に逃げられないよう、広範囲にばらまいたのでU-511も被弾は免れないはずだ。
爆発音がやんだ海上には重苦しい雰囲気が漂っており、そのせいかやたらと風が強く感じられた。
「ドイッチュラント…結果は…?」
数秒の沈黙の後、ドイッチュラントが口を開いた。
「敵、味方ともに潜水艦の反応が消滅…まぁ演習だから沈みはしないが…やっちまった…同士討ちするとは…」
「やはりだめだったか…この教訓を実戦に生かせ。U-511とはもう少し連携をとる必要がありそうね」
ビスマルクは蒼天を仰ぎ見た。
「快晴…U-511がいなくなった今でもやれるかもな…
「はぁ!?誰がU-511の役目をやるんだよ!もうこちらは三隻しか…」
ドイッチュラントがまくしたてる。
「私がやる。貴女は生き残ることに専念しなさい。一隻でも多く残っていた方が勝ちだ」
「‥‥私の誤射でこうなっちまったんだ。私が行こう」
「…許可できない。この役目を果たせるのは…」
「私だってできる!そうだ、いつもこうだ…」
ドイッチュラントは俯いた。ビスマルクは表情を変えずにそれを見守っている。
「いつもこうなんだ!作戦の要所は必ず他の奴らに任せる。本国にいたころからそうだった。私だって…私だってみんなの役に立ちたいんだよ!まして今回の作戦の要所を破壊したのは私だ。私を行かせるのが筋じゃないのか!?」
ドイッチュラントの心の叫びにビスマルクは多少眉を動かすも、肯定する気はないようだった。
「私はもう…私はもう役立たずなんて言われたくないんだよ!」
「あなたは役立たずなんかじゃ…」
咄嗟にフォローに入るが、ドイッチュラントは止まらない。
「黙れ!あんたに何が分かる!?先の大戦では大活躍だったじゃないか!あんたに…ろくに戦果も出せずに貶されながら放棄された私の何が分かる!」
海上に沈黙が訪れた。
やや強めの海風が二人の間を吹き抜けた。
ビスマルクがゆっくりと口を開いた。
「そうね…確かに私と違って貴女はすぐに沈んだ」
「…ッ!」
「でも、今こうして第二の生を与えられた。今の私たちの強さ、つまり能力値は艦艇時代の戦訓に左右されているわ。…つまり、まだ貴女には要所を任せられるほどの強さは…」
「またそれだ!まだ早い、まだ早いって…私はこの体で目覚めてから人一倍頑張ってきたつもりだ。能力値だって前と比べれば格段に上がっている。どうして…どうしてそこまでして俺を後方にとどめておきたいんだ!?」
「あなたが心配だからよ」
「!?」
ビスマルクの一言に、半泣きで捲し立てていたドイッチュラントが固まった。
「…え?」
「貴女は竣工直後イギリス軍の航空攻撃によって成すすべなく沈められた。作戦の要所は航空機が多く、敵艦も多い。あなたのトラウマが誘発するんじゃないかと思って、これまで前には出さなかったのよ。それに、本当に役に立たないと考えているんなら、遣日艦隊に貴女を編成したりはしないわ」
「え…あ…」
「それに、今回の作戦は本当に難易度が高い。私も大破判定を受けるかもしれない。演習の勝敗はどれだけ稼働可能な艦が残存しているか、よ。勝利ためにも、貴女は第二の作戦要所に合流して頂戴。それと、貴方が努力してきたのは私がよく知っている……ごめんなさいね、もう少しあなたの気持ちを考えてあげればよかった」
「…こっちこそ、自分の事ばかり言ってごめん…分かった。ビスマルクの案に従おう!」
そう言って二人は微笑みあった。
「さぁ、時間がないわ。私はもう行く、貴女も気をつけるのよ」
「あぁ、心配かけたな。”戦艦”ドイッチュラント、前進!」
~数分前、日本艦隊~
「酸素魚雷命中!グラーフさんが大破よ!」
「よし、よくやった!」
まだ敵艦隊が見えないため、今は艦隊全員で明石特製ライブカメラでの伊168視点を楽しんで(?)いるところだ。
「敵艦隊には対潜装備がないのか?」
長門が聞いてきた。
「そりゃおめぇ…相手は重巡…もとい戦艦二隻だぞ…持ってるわけが…」
ないだろう、と言い終わる前に伊168からの叫ぶような報告が飛び込んできた。
「敵重j…戦艦が対潜装備発射!それとU-511が接近!…爆雷じゃない!?これは…」
言い終わるよりも早く、俺らの目の前のディスプレイには-OFF LINE-の文字が表示された。
「…持っていたじゃないか」
「…そうだな…全艦!体勢を立て直せ!恐らくU-511はあの対潜攻撃に巻き込まれた。対潜警戒を解いて砲雷戦用意!残りはビスマルク、ドイッチュラント、フューラーだ!要注意はフューラー。あいつは何者だかがわからない。注意しろ」
「提督なのにわからないの!?」
「資料にも載ってなかったんだぞ、仕方ないだろ!?」
素早く陣形を整えることが出来た。日頃の演習の成果と言えよう。
「前方に敵戦艦!ビスマルク、単艦です!」
「…単艦?残りは…」
不意に無線にノイズが走った。
「admi‥l、聞こえ…か、こちらはビスマルク。そちらの座標データをフューラーに送った。刮目せよ!H45級戦艦の威力を!」
「H45ってなんだ…?」
「さぁ…私にはさっぱり…」
日本艦隊がきょとんとする中、俺だけが黙って俯いていた。
「提督…?どうしまs
「全艦、作戦海域より離脱しろ!特に駆逐艦、演習で死ぬことになるかもしれんぞ!」
…えぇぇぇ!?」
俺が言い終わった時、弾体の飛翔音が鈍く響き始め、さらに38㎝級の砲弾の音も交じりだした。
「全速前進、止まるな!進み続けろ!」
刹那、轟音が響き渡り、綾波、吹雪、長門が巻き込まれた。
「無事か!?」
水柱が収まるより早く、無線で呼びかけるが、返事がない。十中八九、というか確定で大破だろう。
{駆逐艦綾波、吹雪、戦艦長門、大破!}
アナウンスが響き渡る。
「たった一回の射撃で命中させて、全艦大破ですって!?H45級…何者なの…」
大和が驚愕の声を上げ、その後呻くように呟いた。
「H45級…80㎝連装砲四基8門…速力を除くすべてのステータスが大和型を超越している艦だ…勝ち目が…ない…!」
「80㎝…」
「連装砲…四基!?」
残存する日本艦隊側の艦娘が目を見開いた。
日本艦隊、伊吹(提督)、大和、神通
ドイツ艦隊、ビスマルク、ドイッチュラント、フューラー
日本艦隊は今、窮地に立たされていた。
なにしろ目視で確認できるのはビスマルク一隻のみ。だがフューラーの砲弾は飛んで来ており、ドイッチュラントの姿は見えない。演習は敵より大破が少ないことで勝利が決まる。今は絶望的に不利な状況だ。
「ハハハ…今回は…俺らの負けだな。降参しよう」
「!?提督、何をおっしゃるんですか!?」
「一矢報いないんですか!?」
神通と大和に猛反対される。まぁ当たり前か。
「よく考えろ。今見えるのはビスマルクのみ。対してこちらは全艦フューラーの砲撃にさらされている状況だ。演習は相手を大破判定にしないと勝利にならない…あとは分かるな…?」
「「……」」
二人は理解したようだった。
俺は無線を取り、ビスマルクに連絡する。
「ビスマルク、聞こえるか、こちらは提督。勝ち筋が薄いと判断し、降伏の申し入れを要請する」
数秒後、返事が返ってきた。
「貴様それでも大和男児か!?根性を見せろ!」
「根性論でどうにかなる状況じゃねぇだろ!?分からんのか!?」
「分からん!」
「分かれ!」
ビスマルクの落ち着いた雰囲気が一変、いつものビスマルクが見えてきた。
たがいに無線越しに言い合いをしていたところにアナウンスが入った。
{演習終了!時間切れ!ドイツ無傷艦3、日本無傷艦3、よって引き分け!}
「‥‥‥終わっちまったよ」
「‥‥‥どうせなら全艦大破に持っていきたかったわ‥」
微妙な終わり方だな?と思ったそこの方、一航戦の艦載機どこいった?と思った方。モチベが下がってきたのでいったんここまでにしただけです。次回に少しつながる予定です(予定)
最後まで見てくれてありがとうございました。
Lgel Mk.15
ドイツ版ヘッジホッグ
スタビライザーと旋回性能を持つ。
単艦が敵艦隊の座標を送り、そこに向かって支援砲撃をするという作戦(大雑把)