魔改造提督の鎮守府ライフ   作:Jeep53

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いろいろ書くのがめんどくさいので、演習があった日の翌日の朝まで、スキップ!
異論は認めない!


22

現在時刻は朝の五時前。この時期はかなり冷え込み、起きるのが億劫になってくる時刻である。だが、俺の朝は早い。特に今日は早かった。この時期は走り込んでも空気が涼しいせいであまり不快に感じない。その空気を感じたくて、早く起きてしまったのだ。

(さすがにまだ誰も起きてないな…)

そう思いつつ、いつものランニングを始める。空は少し白みがかっており、朝靄がそこら中に大量発生している。

走る俺の口から白い息が漏れ、靄と一緒になって消える。

(靄がかなり濃いな……あれ…ここはどの辺だ?)

今日はやけに靄が濃かった。濃霧に引けを取らないレベルの靄に視界を遮られ、自分が今どの辺を走っているのかがわからなくなってしまった。

(鎮守府の角はこの辺…あぁ、あったあった。一瞬迷ったかと思って焦ったよ)

見慣れた鎮守府の角を発見し、俺はそちらへと体の向きを変えて走り出す。

やたら濃い靄に悩まされながらもノルマ分の周数を走り終え、鎮守府の中へと入ろうとしたとき、視界の端の靄の中にある人物が映り込んだ。

海軍の軍服とは違う軍服に身を包み、艶やかな黒髪をショートカットにしている艦娘。

つい最近ドイツ艦と一緒に転属してきた揚陸艦”あきつ丸”だ。陸軍所属の艦娘という事で皆となじめるかどうかが心配の種だったが、持ち前のサバサバした性格と人懐っこい笑顔で皆の輪の中に溶け込んでいたのでそれは杞憂に終わったのだった。

そんな彼女がこんな朝早くに鎮守府の外で何をしているのだろうか。走ってはおらず、歩いているのでランニングではないだろう。

「おーい、そこにいるのはあきつ丸か?何をやっている?」

俺は不思議に思って声をかけた。が、

「…」クルッ…フイッ

「ッ!?」

彼女は一瞬だけこちらを振り向き、また向こうを向いて歩きだした。

下半身が靄にかき消され、上半身と顔だけが何とか視認することが出来た。

その一瞬だけ見えた顔が、いつものあきつ丸ではなかったことに俺は戦慄した。

(眼に光がなかった…あんな冷たい表情は初めて見たぞ…)

俺は何か背筋に冷たいものが走るのを感じた。

(行ってみよう…)

俺は不安な気持ちを抑え込み、あきつ丸が消えた靄の中へと歩き出した。

靄の濃さは先ほどの比ではない。数メートル先を視認するのが困難なレベルだ。

(おかしい…明らかに不自然だぞこの靄…)

不自然だとは思いながらも、なぜか俺は足を進める。戻ることはできるはずなのに。

靄…と言うより煙と言った方が正しい表現かもしれない。その中で俺はあきつ丸の背中と思しき動くものを見つけた。

「あきつ丸!」

俺が大声で呼ぶも、あきつ丸は振り返らない。

あきつ丸が鎮守府の角を曲がった。彼女の姿が建物の陰に消える。

俺は小走りになって追いかけ、角を曲がったところで立ち尽くした。

「……い、いない…?」

先ほどまで確実に見えていた彼女の背中が、見当たらない。

「靄は…?靄はどこへ…?」

それどころか、鬱陶しいほど自分にまとわりついて来ていた靄がきれいさっぱり消え去り、いつも通りの涼しい早朝の景色に戻っていた。だが、今はそれがひどく不気味に感じられた。

(俺は…何を見ていたのだ…?鳥肌がやばい…)

今はただこの場から離れたかった。先ほどから鳥肌が治まらない。

その時、後ろからカサッという草を踏みしめる音が聞こえ、俺の本能が”死ぬぞ”と警鐘を鳴らした。

「ッ!」

咄嗟に俺は反転して距離を取り、腰のホルスターに入れてあった九四式拳銃を抜き取って違和感を感じた方へと構えた。

てっきり俺は何者かが俺の命を狙いに来たとばかり思ったのだが、そこにいたのは…

「て、提督殿!?私が後ろから声をかけずに近づいたのは悪かったですけれど…拳銃を収めてください!」

いつも通りの眼をしておびえるあきつ丸だった。

「あきつ…丸…?お前さっき此処の角を曲がっていったんじゃ…?」

俺は湧き上がる恐怖心を無理やりに抑え込み、平静を装って尋ねた。

「…?いえ、私は朝早く起きたので外の空気を吸おうと思い、外に出てきたところ、提督殿が落としたであろう物が落ちていたので届けようと思って近づいた次第であります」

あきつ丸はビシッと敬礼をし、話した。

「俺が落としたもの?何だそれは」

何も落としてないはずだが…

「これであります。提督殿が歩いたであろう場所に落ちていたもので、提督殿の物かと」

そう言ってあきつ丸は一つの古びたカセットテープを俺に差し出してきた。

「いや…俺のじゃないな…まぁ、預かっておこう」

そう言ってあきつ丸の手からカセットテープを受け取った。先ほどの不気味な一件のせいか、やたらとあきつ丸を警戒してしまう。

「提督殿?手が震えておりますよ?」

あきつ丸に指摘されてしまった。

「あ、あぁ、何でもない、ありがとうな」

俺はぎこちなくお礼を言った。

「それでは私はこれで!」

あきつ丸は綺麗に敬礼をし、ここから見える埠頭の方へと走っていった。

俺は手元に残ったカセットテープをまじまじと見た。テープの表側には”最終記録”と書かれており、それ以外の記述は見当たらなかった。

(大方青葉のデータだろう。あとで彼女に届けるか)

俺は先ほどの事を忘れるように自分に強く言い聞かせ、逃げるようにその場を去った。

 

埠頭の方へ行ったはずのあきつ丸の姿が見えないことに気づかないまま。

 

 

俺は執務室に戻る前にシャワーを浴び、いつもの白い軍服に着替えた。

現在時刻は午前六時前。そろそろ皆が起きてくる時刻なので、鎮守府内が少し騒がしくなる。

姉妹艦を起こす者の怒鳴り声が大半だが。

(いつも通りの朝だな…)

そう考えつつ、長い廊下を急ぎ足で執務室へと向かった。

その後は何事もなく(それが普通なのだが)時は過ぎ、鎮守府の始業時間となった。

 

~執務室~

ドアバァン!「ごめーん、提督!待ったあ?」

「ノックをしろ、口調をなんとかしろ、そして結構待った。何とかならんのか?鈴谷」

今日の秘書官は鈴谷だ。まぁ、こうやって入ってくるのはいつもの事なのでもう慣れたが。

「まぁまぁ、いいじゃん、別にさ。それよりほら、大本営からなんか手紙来てたよ」

そう言っていい笑顔で手紙を差し出してくる鈴谷。

「あぁ、あとで読んでおく。ありがとな」

俺は書類の方に目を向けたまま鈴谷から手紙を受け取った。

「むー、提督ぅ?お礼を言う時は相手の目を見て言うもんだよ?」

鈴谷がむくれて指摘してきた。正論なので何も言い返せない。

「…悪かったな。手紙、ありがとうな」

俺は顔を上げ、鈴谷の方を見て微笑みながら再度お礼を言った。

「え…あ…うん、ありがと…」

すると鈴谷はそっぽを向いてしまった。なぜだ。俺の顔がダメなのか(泣)

「まぁ、午前はまずこの書類の山を片付けるのを手伝ってくれ。昼までに終わらせないと、午後の仕事が出来なくなる」

俺はそう言って文字通り山になっている書類を指さした。

「鈴谷には簡単な書類を割り振っておいたから、楽にできると思うぞ」

それを聞くや否や、鈴谷の目が輝いた。

「マジで!?提督、あざーっす!」

どんだけ仕事したくないんだよ、この航空巡洋艦…

「さぁ、始めるぞ!」

「最上型重巡、鈴谷、いっくよー!」

かくして、怒涛の書類整理が始まった。

 

朝飯?間宮さんの所で食べてきたんだよ。描写がない?気にしたら負けだ。

 

 

あれから数時間、鎮守府に正午を伝える港町の鐘の音が伝わった。

「終”わ”っ”た”あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”…」

「し、死ぬかと思ったマジで…」

そんな中、俺たちは机にぶっ倒れていた。

なぜこんなに疲れたのかというと、駆逐艦の子に演習を見に来てくれ、とせがまれ、断れずに観戦に行ったからである。おかげで1.5倍のスピードで仕事をする羽目になったのだった。

「昼飯…行くか?」

「さんせーい、もちろん提督の奢りね」

鈴谷がにやっと笑って言った。

「うっ…仕方ねぇ、奢ってやるよ」

この激務は半分俺の責任なので、断れなかった。

「よぉし、じゃあ食堂いこっか!」

「ウィッス」

俺は鈴谷に急かされ重たい腰を上げ、食堂へと向かった。

 

~食堂~

お昼時という事もあり、食堂は艦娘でごった返していた。

「いやぁ~、混んでるね~!提督、何食べんの?」

鈴谷がメニューを見ながらこちらに話を振ってきた。

「んぁ?俺は日替わりランチセットだ。毎日違う味が楽しめるからな」

俺は券売機で券を買いながら答えた。”じゃあ私もそれで~”と鈴谷が言ったので、追加でもう一枚食券を買った。

 

~数分後~

 

「お待たせしました、日替わりランチセット二つです。あら、提督でしたのね」

間宮さんが料理をカウンターに出してくれた。

「どうも間宮さん。仕事、辛くないですか?」

俺はふと心配になったことを聞いた。この食堂は間宮さん、伊良湖、鳳翔さんの三人だけで切り盛りしているため、いささかオーバーワーク気味だと思ったのだ。

「そんなことありませんよ。毎日やりがいがあって楽しいです。提督も、体調にはお気をつけくださいね」

だが、杞憂だったようで、笑顔で返されてしまった。

「あぁ、気をつけるよ。では」

俺はそう言ってカウンターを後にし、鈴谷が待っているテーブルへと歩き出した。

 

~提督、鈴谷昼食中~

 

「はぁ~、美味しかった~!」

鈴谷が満足そうな顔をしてのびをしている。

俺は午後の大量の執務を思い出して呆然としているところだ。

ふと俺は、鈴谷のほっぺたに米粒が付いているのを発見した。

そして俺は無意識のうちに手を伸ばして米粒を取り、自分の口の中へと入れた。

「ちょっ、提督!?な、な、な、何やってんの!?」

赤面した鈴谷に大声で言われ、ようやく我に返った。

「あっ…すまん…無意識で…すまんかった」

「…まぁいいけどさ。…提督だし」(((ボソッ

「ん?なんか言ったか?鈴谷」

「い、いや、何でもない…///」

ヤバい、怒らせたぞこれは。そっぽを向いてしまった。そりゃそうだよなぁ…何やってんだよ俺…

不意に軽快なシャッター音が響き、見覚えしかねぇ重巡が顔を出した。

「…何しに来た、青葉」

青葉は二カッと笑って言った。

「面白いことがあるところに青葉あり、ですよ司令官!先ほどはかなり大胆な行動をとりましたねぇ!」ニヤニヤ

いつもならこのニヤニヤ顔にイラついて一言二言言い返すところだが、今はそれよりも気になる事を思い出した。

「あ、そういえば青葉、鎮守府の外周にカセットテープが落ちていたんだが、お前のか?”最終記録”と書かれていたが」

青葉のニヤニヤ顔が消えて真剣な表情になった。

「フーム、最終記録?私のではありませんねそれは。よろしければ私も後で聞いてみてもいいですか?そのテープ」

青葉のじゃないのか…意外だった。

「いや、まだ聞いていないんだ。よければ後で執務室で聞かないか?鈴谷も一緒に」

「いいですねぇ!そうしましょう」

「意義なーし」ムスッ

青葉は乗り気で、鈴谷は若干不満げに答えた。鈴谷よ、すまなかった。許してくれ…

 

 

 

~執務室~

 

結局道中で吹雪と赤城が「暇だから」という理由でついてきた。

お前ら…娯楽はないのか…と考えつつも執務室へ到着し、ステレオにテープをセットしたところだ。

「何の曲が流れるんですかね?」

「吹雪ちゃん…絶対曲じゃないと思うよ…」

「私もそう思うな~」

「何が流れるんですかね?楽しみです!」

各々楽しみにしているようだ。…俺は楽しみというより嫌な予感しかしないんだが…

「なぁ、聞いてくれ。実はこのテープな…」

俺は青葉らに今朝体験した出来事を事細かに説明した。最初こそ笑って聞いていたものの、後半になるにつれ、その笑みは消えていった。

「…とまぁ、そういう経緯で俺の下へ来たテープなんだよこれは。それでも聞くか?俺は正直言って怖い」

「き、聞くしかないじゃぁないですかぁ…こ、怖くなんか…」

震えてんぞ青葉。

「す、鈴谷ちょっち怖いかな~…なんて…」

めっちゃ怯えてんじゃねぇか。いつもの威勢はどうした。

「ちょっと不気味ですね、それは」

赤城は割と平気…でもねぇな、目が泳いでやがる。

「……」

吹雪だけが押し黙って震えている。

「吹雪、大丈夫か?」

俺が聞くと、小さい声で、吹雪が話し出した。

「提督…そのテープあきつ丸さんに渡してもらったって言いましたよね?」

不思議なことを聞くな、どうしたんだ?

「そうだが、どうした?」

「いえ…何でも…」

(あきつ丸さん…今朝は私が起こしに行ったはずなんだけどな…)

吹雪の不安げな表情が気になったが、結局、みんなで聞くことにした。

 

「行くぞ…」

俺は恐る恐るステレオの再生ボタンを押し込んだ。

 

カチッ…ジー…

 

〈…最初っから分かってはいた…〉

 

「男の人の声?」

「だな」

 

〈実験が成功すれば…私はもう…〉

 

カチッと俺はそこでいったん止めた。

「提督、どうしたんですか?」

青葉が不思議そうに尋ねた。

「すまんがみんな、これは軍の記録である可能性が高い。秘書艦を除いて全員、出て行ってくれないか」

俺がそういうと、青葉は渋々、赤城と吹雪はいそいそと出て行ってくれた。そして…

「なんで鈴谷は残すのさ!怖いんだけど!?」

鈴谷が半泣きで俺に突っかかってきた。

「うるせぇ!軍に関して漏らしちゃいけないのは分かってるけど俺だって怖いんだよ!お前は道連れじゃ!」

俺も負けじと言い返す。

「ひっど!?…まぁ、それだけ信頼されていると受け取っておくね…怖いけど…」

 

俺は、再びステレオのスイッチを押し込んだ。

 

カチッ…ジー…

 

〈…数日前に書類が軍部に回収された。この実験についての書類、およびデータは陸軍元帥の部屋の金庫だ。回収されるときに小型カメラで追わせたから間違いはない…これから起こるであろう大きな衝突の原因は、この私だ。だがもうじき私はこの世から消えるだろう。…この情報を伝えることは私が出来る一番の罪滅ぼしだ〉

 

「ちょっと待って、話のスケールでかくない?ヤバいんだけど…」

「…黙って聞いてろ。俺が一番怖い」

 

〈…近々、陸軍主催で開かれるであろう集まりでの新兵器紹介、それに気を取られるな。そして…敵襲に、気をつけろ。決して沖合の戦力に主戦力を割くんじゃない〉

 

「陸軍主催の…?まさか、さっきの手紙か?鈴谷、取ってくれ」

「ほーい、はいどうぞ」

俺はいったんステレオを止め、手紙を空けた。

手紙には、”陸海軍親睦会”と書かれていた。

「…ビンゴだな。それに…敵襲…?沖合に割くな?どういうことだこりゃ…」

「鈴谷、一応メモっておくね~」カキカキ

「頼んだ」

 

再度再生ボタンを押す。

 

〈…そして海軍、貴様の敵は深海棲艦だけではない……直に深海棲艦など脅威にならなくなるだろう…陸軍は、ずっと(おか)にいるわけじゃない…〉

 

話しぶりからして陸軍の関係者だろうか、それにしてはかなり事態が深刻そうだが…

 

〈私が開発した……私が…開発してしまったものは………神の盾(AEGIS)……だ…〉

 

「陸軍の技術者かな?この人」

「そうみたいだな」

 

〈…AEGISは革新的な防御システムだ。特殊シールドを地球の大気のように使用者の周りに球状に張る代物だ。後世にこれが残ることの無いよう、シールドの細かい構成要素については一切明かさない。陸軍の上層部も複製することは不可能だろう…ハハハ……さて、そのAEGISだが、こいつは迫り来る敵の攻撃をすべて消す能力、と言うよりは分解する能力が備わっている。人間などの生命体も分解されてしまう…実験済みだ。そして私は過去十数年にわたって人体実験を続けた。陸軍の命令で海軍の艦娘に対抗し得る兵器を作り上げるためだ。そして先日…2XXX年X月X日現在、完成した。近々陸軍は自慢するために親睦会を開くだろう。その時、海軍は近海からの襲撃に気をつけなければならない。襲撃者は深海棲艦だ。私から言えるのはそれまでだ〉

 

「陸軍…人体実験…うっ‥‥」

「て、提督、大丈夫?」

俺は急な偏頭痛に襲われた。

「だ、大丈夫だ…何でもない」

(まさか…この話してるやつが俺を作った張本人…?いや、まさか…)

ステレオは無表情に再生を続ける。

 

〈陸軍の要求を満たすためにAEGISはほぼ完ぺきな状態に仕上げた。だが絶対的な防御装備とは言えない。いや、言えないようにデチューンした。ヒントは…オゾン層、だ〉

 

「オゾン層…?何を言ってるんだこいつは…」

「一応メモっておいたよ」

「お、おう…」

まだこの時は驚いてはいたものの、どちらかと言うと困惑の方が強かった。しかし、次に述べられた内容で俺は驚き一色に染まることになった。

 

〈時間がない。最後にいくつか言わせてくれ…度重なる人体実験の試作No.1…あれは私のたった一人の息子だった…妻を人質に取られて泣く泣く行ったんだが…終わったころにもう妻は殺されていた。私はそれに気づいてわざと息子は失敗だ、として特殊機能を備え付けて…ダストシュートから捨てた…ようになってしまうが、逃がしたのだ。もしこの録音を誰かが拾い…多分海軍のだれかだろう。兵器No.251”あきつ丸”に持たせるからな。それで、もし私の息子に心当たりがあったりした場合は…”こんな父親ですまなかった”と伝えてほしい…これで許されるとは思っていない。それに私は陸軍の奴隷のようにこき使われ、膨大な数の人を実験という形で殺めた。到底許される人間ではないのだ……それに最初にも言ったが、私はもうすぐ始末されるだろう…私の説明で分からないことがあればあきつ丸に”コマンド{UNLOCK}”と言えば分かるはずだ。…コマンド…{OVER}〉ジ―――…

 

テープが終わった後、俺はしばらく放心状態だったが、やがて絞り出すように声を出した。

「嘘だろ…父…さん…?父さんなのか?俺にも親が、肉親がいたのか!?」

「‥‥」(放心状態)

「待ってくれ…頭ん中がグルグルしてやがる…どういう事なんだつまりは!?」

俺は頭を抱えて机に突っ伏した。驚き、困惑、悲しみ、嬉しさ、色んな感情が俺の中でごうごうと渦を巻いており、どうしてよいか分からない。

「呼ばれて飛び出て、どうも青葉です!天井裏で全部聞いてましたよ司令官!お困りのようですね!私の出番ですk」

「青葉!あんた提督の状況察してあげて!?」

いつもは軽い口調の鈴谷にガチトーンで怒鳴られた青葉はビクッ、となった後、話し始めた。

「すみませんでした。一応自分なりに聞こえた部分は整理したんですけど…言いますね」

「た…頼んだ…」

俺は今にも消え入りそうな声で答えた。

「はい、まずこの人の言っていたことが正しいのなら確定していることがいくつかあります。一つ目は親睦会中の深海棲艦の侵攻です。二つ目は陸軍が海上戦力を手にしたこと、三つめはヤバいレベルの防御システムを陸軍が手にしたことですね。それでこれのヒントがオゾン層。そして四つ目はあきつ丸さんが実験で生まれた生命体であること、そして…この人は司令官の実の父親で、十数年にわたって人体実験を繰り返し、海上戦力を作り上げた人、ってことですね」

「俺は…どうしたら…」

そう頭を抱えたとき、ステレオから小さく声が響いた。

その声は、薄い壁越しに響いて来ているような声だった。

〈…ドクター、ご同行を……〉

〈あぁ、分かった…〉チャキッ

〈……連れていけ…お前は知りすぎた…我々の事も、世界の事も……〉

その声が途切れると同時に、二発の乾いた銃声が聞こえてきた。

神の盾計画(イージス・プラン)、始動せよ〉

 

「父さん…殺されたのか…父さんが発言した後になんかやたらでかい金属音してたけど…何だったんだろうか…」

「…恐らく殺されましたね…金属音はやってきたやつらが銃を持ち上げた音では?」

「それにしては音がでかくなかったか?なんか録音機の近くでなっているように思えたが…」

「真相は神のみぞ知るってところですかね…」

「……鈴谷こういう空気苦手なんだケド…」

テープが完全に終了したとき、執務室にはこれまでにない重さの空気が漂っていた。

いつもなら静寂が到来したとき、何かしらの音が聞こえるようなものだが、今回ばかりは何も耳に入ってこなかった。脳で考えるだけで精いっぱいだったのだ。そしてさんざん悩んだ結果、俺が出した答えは、

「とりあえずその親睦会に向けての準備をしよう。警戒艦隊編成もしなければな」

「鈴谷、ちょっと休んでいい?」

「あ、青葉はこれで失礼します~」

「……いいよいいよ、休め休め。俺一人でやるから…」

疲れた表情をした二人を見送り、俺は一人で作業を始めた。




久しぶりに書いたら文章力が著しく低下していた件



何か変なところあったり文章が破綻してたりした場合は指摘をお願いします。


あきつ丸がどのような扱いなのかは後日説明するんで、暫くお待ちください

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