鈴谷と青葉が執務室から出ていった後、俺は頭の中の整理&陸海軍親睦会の下準備に追われ、心身共に燃え尽きる寸前だった。
「あ、あかん…知恵熱出そう…」
そう呟くも応える者はいない。そんな状況が俺の思考をさらに複雑にしていった。
(そう言えば…父さんは分からないことはあきつ丸に聞けと言っていたな…せや!)
「提督殿、お呼びでしょうか?」
数分後、執務室にはいつも通りの明るい表情を浮かべつつ直立しているあきつ丸の姿があった。
「うむ、このテープについていくつか聞きたいことがあってな?」
そう言って俺はテープを手に持ってフリフリした。
その途端、あきつ丸の表情が若干ではあるが曇り、俺はそれを見て確信した。
「コマンド{UNLOCK }…どうだ?」
それを聞いた途端あきつ丸の表情から生気が失われる。
「性格プログラムを秘書モードへ変更、何か御用でしょうか?」
淡々と定型文であろうセリフを喋るあきつ丸に少々心が痛んだ。が、今はテープについて、何個か聞かなければならない。
「なぜ俺にこのテープを渡した?」
俺が聞くと、すぐに答えは返ってきた。
「ドクターに海軍の関係者に渡すよう言われたからです。あなたへと渡ったのは偶然です」
ふとここで疑問が浮かび上がってきた。
「なぜドクターは逃げなかったんだ?あきつ丸が逃げられたのならドクターだって逃げられただろう?逃げなかった結果、殺されてしまったじゃないか」
そう俺が問いかけると、あきつ丸は一瞬“何言ってんだこいつ”みたいな顔をした後、答えた。
「ドクターにはやることがあったので、私のみ脱出したのです」
「いやだから…ほら…」
そう言って俺はテープをステレオにセットし、連行部隊が登場したところから最後までをあきつ丸に聴かせた。
「…な?」
“殺されただろ?”と言わんばかりにあきつ丸の方を見やったが、彼女は驚くべき事実を口にした。
「あの銃声はドクターの九四式拳銃の発砲音です。音から判断してドクターは両脇を抱えられて地上へ連行されました。その後、憲兵達は射殺のために間合いを取ったはずなので、その時を狙って発砲したのでしょう」
言葉が出なかった。
(ならば、ドクター(以下、提督目線では父さん)はまだ生きていると言うのか?)
そう言った希望を少し持ったところで、あきつ丸の説明の内容に疑問が生まれた。
「なぁ、なんで憲兵達は距離を取ったんだ?そのまま至近距離で殺せばよかったじゃないか…」
その通りである。なぜ銃を突き付けながらではなく両脇を抱えて地上へ行ったことも疑問だが、それよりも反撃の余地を与えた憲兵は何を考えていたのだろうか…
「…恐らくですが、憲兵隊の標準装備が三八式歩兵銃で、間合いを取らなければ安全に撃てなかったことと、ドクターが武装していると言う事象を想定していなかったからだと思われます」
あきつ丸は少し悩んだ後そう答えた。
俺は後から後から湧いてくる疑問を解消するため、さらに質問を続ける。
「陸軍は父さんの装備を把握していなかったのか?」
その問いに対して、あきつ丸は即答した。
「書類上ドクターは非武装状態で研究のみ行なっているとなっていました。あの九四式拳銃は、ドクターが密造し、改良を加えた…いわば九四式改とでも言いましょうか、そんな立ち位置の銃です。なので、陸軍は把握していなかったはずです」
なるほどな、と俺は納得したが、疑問は尽きない。
「…だが、憲兵を殺ったところで上官が1人いただろう、あれはどうしたんだ?」
「それに関しては…わからないです。上官をどうしたかは。あの後すぐ脱出してしまいましたから」
あきつ丸は困ったように答えた。
「父さんが残ってまでやらなければならなかった事ってなんだ?」
「それも…分からないです。教えて頂けませんでした」
「そうか…ありがとな、大体の疑問は解決したよ」
俺のその言葉にあきつ丸は少し笑って、“それならよかったです”と言った。
〜〜〜〜
その後、あきつ丸の今後について話し合い、これまで通りの生活を送ることで合意した。秘書モードの性格は徐々にいつもの性格に統合し、裏表を無くすつもりらしい。“このことはみんなに話すのか?”と尋ねたところ、“今はまだ黙っている”との事だった。
あきつ丸が部屋へと戻り、俺は来たる陸海軍親睦会中の鎮守府守備艦隊の編成を始めることにした。
(親睦会は明後日から始まる。それまでに編成と装備を整えよう…編成は…要らねえな、第一艦隊から第四艦隊まで全部を警戒にあたらせよう。残るは装備、これは………」
そこまで考えて俺は顔を上げ、立ち上がって伸びをした。
「
次回は久々装備回、やったね
何かわからないことがあれば感想まで