少し時間は遡って、午後六時頃……
超短編〜未知との遭遇by花田少尉〜
花田少尉は夕飯を食べるために食堂へ向かっている最中であった。少尉のことは事前に全員に話しておいたのですれ違う艦娘も変な顔をしたりはしない。
(食堂まで後どれくらいだろうか…)
少尉がそう考えて歩いていると廊下の角から1人の艦娘(?)が出てきた。
「ア、ドウモ」
「どうも〜………うん?…深海棲艦!?」
「ア…ハイ、敵デハナイノデ。私ハ空母棲姫デス。以後オ見知リ置キヲ。デハマタ」
「えっ、あっはい…」
そう言って空母棲姫は呆然とする少尉の前を通りすぎ、その後をまた別の深海棲艦が追っていく。
「何がどうなってんだこの鎮守府…」
現在は(昨日の)午後六時半頃、食堂にほぼ全員が集まったところだ。
俺はいつも通り式台のようなものの上に立ち、「いただきます」をした。
途端に食堂が騒がしくなる。戦時中とは思えない雰囲気だ。
俺は花田少尉の所へと向かい、隣に座った。
「少尉、食事はどうだい?」
俺がそう言うが、花田少尉は深刻な顔をしている。
「提督殿…あなたは人類の味方ですか?」
その質問で察した。姉さんたちの誰かを見たんだろうな、うん。
「もちろん。まぁ疑うのも無理はないな…うん、紹介しよう。付いてきてくれ」
俺がそう言うと少尉は無言で付いてきた。
姉さんの所へ着くと、真っ先に姉さんが声をかけてきた。
「防!どうしたの?」
「あぁ、今日明日あたり泊まるお客に説明しておこうと思ってね。自己紹介して貰えるかな?…少尉、大丈夫だから、彼女達味方だから、ほら逃げない逃げない」ガシッ
「やめろォ!死にたくなァい!死にたくなァい!」ジタバタ
少尉は逃げようとするが、俺は掴んで離さない。無駄な抵抗である。
「んー、それじゃ私から。私は防空棲姫。防の育ての親で、訳あってこっち側についた感じよ」
「私ハ駆逐棲姫。防空二付イテキタ」
「私ノ名前ハ戦艦棲姫。敵の深海棲艦ハ全テ沈メルツモリダ」
「私ハ空母棲姫。先程ハドウモ」
「私ハヲ級改Flagship。短イ間デスケドヨロシクオネガイシマスネ」
「私ノ名前ハレ級Flagship!ヨロシクナ!」
「私ハル級改Flagship。ヨロシク頼ム」
「私ハ北方棲姫ッテ言ウノ!ヨロシク!」
一通り深海棲艦達の紹介が終わったのを確認して少尉の方を見ると…
「提督殿は、顔が広いんですね…」
「あれ、納得したの?」
納得された。もう少し動揺するかと思ったんだが…
「なんかもうどうでよくなってきたんです。この事は上層部には黙ってますのでご安心を!」
「そりゃ助かる」
こうして少尉の誤解(?)は解けたのだった。
〜超短編、[完]〜
次回はようやく陸海軍親睦会です。
期待せずに待っててください。