魔改造提督の鎮守府ライフ   作:Jeep53

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書ける気がしねぇ…


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現在は午前六時ジャスト、鎮守府全体が動き始めようとしている時刻だ。

俺はと言うと、いつも通りのランニングを済ませ、シャワーを浴びて親睦会に向けての準備をしているところだ。

「今日着ていくのは…こっちの制服…いやこっちかも…」

クローゼットの前で年頃の乙女のように、さほど見た目が変わらない制服を選びあぐねているのにはれっきとした理由がある。

きょう開催される親睦会(以下牽制会)において、海軍が陸軍とつまらない小競り合いをするためのメインカードとして俺を設定しているからである。そんな俺が適当な格好で行ったが最後、陸軍の連中が揚げ足を取りに駆けつけるので服選びですら慎重になるものなのだ。

コンコン、とドアがノックされた。

「おはようございます提督、入ってもよろしいでしょうか?」

赤城だ。今俺は下着姿なので入ってこられては困る。

「ちょっと待ってくれ。すぐに着替える」

「あっ…はい」

状況を察したのか、赤城は扉の前で押し黙った。

訪れる静寂。俺が着替える音と外の鳥のさえずりだけが響いている。

数十秒後、俺は着替えを終えて執務机についた。

「いいぞ、赤城。待たせてすまなかったな」

扉を開けて赤城が入ってくる。

「おはようございます…提督。え、えぇと、今日の件で話がありまして…」

なぜか若干顔を紅潮させながら赤城が話を切り出した。

「なんだ?言ってみろ」

赤城が一枚の紙を取り出した。

「はい。この予定表では本日午前十時より陸軍・海軍親睦会があることになっているのですが、なぜその三十分後より大規模近海演習の予定が入っているのですか…?」

赤城の疑問はもっともだ。いつもの規模の演習は艦娘のみでやる事もあるが、大規模演習となると提督も観戦もしくは随伴することになっているのだから。

「あぁ、それについては今日の朝礼で話す。それでいいか?」

「了解しました。では食堂の方へ先に行ってますね」

そう言って赤城は部屋を去っていった。朝食が楽しみなのか、若干スキップ気味だったのがなんともかわいらしかったのをここに明記しておく。

 

 

十分後、俺はいつも通り食堂の式台に立って挨拶を始めた。

「皆、おはよう。いつもならここでもう”いただきます”だが、今日は少し連絡がある」

そこで俺は少し間を置いた。食堂の各地で様々な反応が起こる。

静かになるのを待って話を再開する。

「俺は秘密裏にある情報を入手した。それは今日行われる陸海軍親睦会の最中に各鎮守府が襲撃される、というものだ。上層部に言っても妄言扱いされるだけなので、報告はしていない。そこで、だ。もし襲撃があってもいい様に大規模演習と銘打った迎撃作戦を実施する」

食堂がざわつき始める。久々の戦闘か?と目を輝かせる者、うっわめんど。と顔をしかめる者、様々である。

「ちなみに俺はその間居ないので、艦隊の指揮権は長門に移譲することにした。そして敵の情報だが、これまでの敵ではなく、数段クラスアップした強さを誇るらしい敵である。そして全く新しい防御システムも採用しているらしい、との噂がある。気を引き締めてかかるように。それと、各艦種の代表は食後執務室まで来るように。以上だ。…それでは、いただきます!」

「「「いただきます!」」」×多数

全員が食べ始めるのを見届けた後、俺は食堂を後にした。

 

 

「拳銃…よし、ハンカチよし、ティッシュよし、…荷物はこのくらいかな…」

俺が荷物の最終確認をしていると、執務室のドアがノックされた。おそらく各艦隊の旗艦メンバーだろう。

「入れ」

ガチャリ、とドアが開いて複数人の艦娘が入ってきた。

先頭は空母部隊より、「赤城」。

続いて戦艦部隊より、「長門」。

重巡部隊より、やや頼りなさげな「利根」。

軽巡部隊より、みんなの統括役「大淀」。

駆逐部隊より、苦労人「吹雪」。

潜水部隊より、狙撃手「伊168」。

ドイツ艦隊より、鉄血宰相「ビスマルク」

深海部隊より、姉さんこと「防空棲姫」

海防艦は駆逐艦の部隊下にあるのでこの場には参列していない。

 

「よし、みんな揃ったな。それじゃあ今回の作戦の説明をするぞ。まず敵は従来の個体ではなく新しい個体もしくは既存のeliteやflagshipが出てくると思われる。そこで、だ。戦艦や重巡と言った装甲があるものが前衛として攻撃を受止め、敵が進んできたところを水雷戦隊や群狼艦隊で叩くと言った寸法だ。出来そうか?」

俺の半ば無茶とも言える要求に代表達は臆せずに頷いた。

「そうか、そう言って貰えると助かる。だがまだ心配の種があってな…どうやら敵は全く新しい防御シールドを採り入れているらしい。これは砲弾等を無効化するだけでなく触ると酸化して消えるとかいう恐ろしい代物らしい。多分オゾン系の何かで構成されているのだろう…まあそれはそれとして、このシールドの弱点が真上らしい。なので、急降下爆撃もしくは迫撃で対応することになると思う。空母部隊はこの後工廠にて明石から新型機を受け取ってくれ。戦艦部隊は…頑張ってもらうしかない。艦隊全員分の艤装には夕張が改良を加えていてくれているはずだから、いつもより使いやすいはずだ。…それと、今回の作戦の目標は敵の完全撃滅だ。一体でも残すと厄介な事になると思われる。だが、1人も沈まないことを大前提に行動してくれ。…おい、利根」

俺は半分居眠りをしていた利根を呼び止めた。

「ひゃい!?な、なんじゃ…?」

利根は慌てて姿勢を正した。

「今回の作戦中は、青葉には写真撮影班として参加してもらうように伝えてくれ。新型の写真が撮れ次第、俺のところへ送るように言ってくれ。いいな?」

「了解なのじゃ!」

「戦艦重巡部隊は鎮守府の正面に展開、水雷戦隊、群狼艦隊は敵の側面に回り込むように行動してくれ。健闘を祈る」

俺がそう言うと、代表らは敬礼をして執務室を出ていった。

(本部の車が着くまであと十数分か…それまでに準備を整えて…あ…)

そこで俺はひとつ大事なことを思い出した。

随伴艦の事である。

随伴艦とは、艦隊の中でも主力級に相当する艦娘を牽制会などの集まりへ連れていく習慣である。まぁ自慢のためだな…嫌な習慣だ。

今回の牽制会は主力カードが俺なだけに俺の随伴艦も特に注目される。上層部からは

『練度が高く、自慢のカードとなるような艦娘を連れてくるように』と厳命されている。

「参ったな…みんな上官と出かけるのなんて嫌だろうし…渋々行ってくれそうな奴は…毎日執務室に遊びに来ている……」

ーーー

ーー

 

「えっ?鈴谷が随伴!?」

「すまない、上層部からの要求を満たすのが鈴谷くらいしか思いつかなくて…」

俺は絶賛出撃準備中だった鈴谷に頭を下げて頼み込んでいるところだ。

「いや…高練度の娘たちなら他にもいろいろいるじゃん…」

「みんな上官と出かけるなんて嫌だろう?その点毎日執務室に遊びにきている鈴谷なら渋々行ってくれるかなぁと思ってね」

俺がそう言うと、鈴谷は頭を片手で押さえてため息をついた。

…やはりダメだったのだろうか…

“この鈍感…”と聞こえたのは気のせいのはずだ。

「すまない、嫌ならいいんだ。他を当たってみる」

「いや、別に提督とならイヤじゃないケド…」

鈴谷が若干食い気味に返してきた。

「良かった、引き受けてくれるんだな…すまないが10分後くらいまでに正門前に集合できるか?」

「はいは〜い、急いで準備するね」

そう言って鈴谷はスキップ気味の小走りで自室へと戻っていった。…そんなに喜びながら行く所ではないのだが…

何はともあれ、1人目で随伴艦が決まったのでとても安心した。自分自身、そこまでコミュニケーションが得意な分類ではないため、あまり多くの人と話すのは苦手なのだ…

 

 

 5分後、俺は少し早めに準備を終え、鎮守府正門前に来た。

鈴谷はまだ来ておらず、通行人もいなかったため、そこには俺1人しか居なかった。

「上層部からの迎えはまだか…うん?」

何気なくあたりを見渡したその時、ポストに投函されている何かが目に入った。

それは少し大きめの茶封筒で、その膨らみから察するに何かの書類のようだ。

上からの資料かな、と思いその封筒を手に取ると、予想していたよりかなり重く驚いたが、それよりも封筒に書かれていたやや乱雑な文字に気がひかれた。

「“役立てろ”…?中身は何だ?」

ベリベリと封を切っている所に鈴谷がきた。

「ごめ〜ん、提督、待ったぁ?」

「あぁ、鈴谷か。なんかこれがポストに投函されていてな。中身を見ようとしていた所だ」

そう言って俺は中の資料を封筒より半分ほど引き出し、固まった。

「…“陸軍の生体実験の過程とデータ”…嘘だろ…?写真まである…」

「うぇ、またその重い話ぃ?…てかさ、この資料届けたのって提督のお父さんじゃない?」

鈴谷が“天啓を得た”と言うような顔で言ってきた。

「なぜそう思う?」

俺が問うと、鈴谷は自信満々に答え始めた。

「だって、今日の襲撃の可能性を提示したのも提督のお父さんでしょ?それで襲撃があると分かったら鎮守府は迎撃と共に情報収集も行うでしょ?そこでの写真とこのデータを今日の集まりの陸軍の奴らに突きつければ犯行が明らかになるじゃない。それをやって欲しいのかも」

「たしかに…その可能性もあるな。なんで父さんが行かないんだ?」

俺が言うと鈴谷は呆れ顔で返した。

「だって提督にお父さん、陸軍にマークされてるんでしょ?会場に入れるわけないじゃん」

「あっそっかぁ…まあこれが父さんからの物とは決まって…いやまぁ、ほぼ確定だが…とりあえずこれは有事の際まで俺が持っておこう」

俺が書類を封筒ごとカバンに入れるのとほぼ同時に、上層部からの迎えの車が来た。

「ほら鈴谷、乗るぞ」

「う…うん…」

俺らは車の後部座席に2人並んで座った。乗車から降車まで、終始鈴谷の顔が若干赤かったのは暑かったからだろう。うん。

 

 

 

 親睦会の会場前へ到着した。

公民館を一回り大きくして豪華にした感じの会場である。

車から降りると、一般兵が近づいてきた。

「ようこそいらっしゃいました。こちらへどうぞ」

兵士に案内されるままに建物内へと入る。鈴谷は俺の後ろであたりを物珍しそうに眺めている。

やや高めの天井にはシャンデリアチックな電灯が掛けられており、あたりにはどちらかの軍の楽団が奏でているであろうクラシックが小音量で流れている。床にはレッドカーペットが敷かれていたりと、さながら中世の舞踏会だ。

「栗田提督のお座席はこちらになります。ごゆっくりどうぞ」

そう言うと兵士は足早に去っていってしまった。

俺はまだ座らない。と言うか今座ったら何やってんだコイツと言う目で見られる。今はまだ開始前、席に座っていいと言われるまでは立っていなければならないのだ。

「おぉ、栗田君、久しぶりだなぁ」

不意に後ろから声をかけられた。

「これはこれは、大将殿ではありませんか。ご無沙汰しています」

俺に声をかけてきたのは海軍の大将で、訓練兵だった俺を提督に推薦してくれた人の1人だ。

「君に活躍は聞いているよ。深海棲艦の大型前線基地を一つ丸ごと潰したんだって?すごいじゃないか!」

大将は周囲にいる陸軍将校にまで聞こえるような大声で俺の功績を褒めた。

「お褒めに預かり光栄です。今後も艦娘の皆と精進して参ります」

(言えねぇ!姉さん達が味方になることになったからお遊び感覚で姉さん達の合意の下、基地を吹き飛ばしただけなんて言えねぇ!!)

俺は引き攣りそうになる顔の筋肉を抑え、精一杯笑って返した。

このやりとりの後、周囲の陸軍将校の視線が一気に俺に向く。…やめてくれ…分かってはいたけどさぁ…これだから牽制会は来たくなかったんだ…

大将の話は続く。

「艦娘と言えば、今日は誰を連れてきたんだい?」

大将がアイコンタクトで“できるだけ大声で陸軍を牽制しろ”と言ってきているのがよく分かる。

「今日の親睦会にはうちの主力の一角を担っている重巡洋艦の「鈴谷」に随伴してもらいました。現在は改二で、練度は89ですね。うちの工廠メンバーのおかげで火力値と雷装値が100を超えています」

俺はできるだけ大きな声で鈴谷を紹介した。

「おぉ!それは頼もしいな!これからも頼むぞ」

そう言って大将はハッハッハと笑いながら俺の元を去った。

ちょうどその時、初老の陸軍のトップが式台の上に立ち、咳払いをして話し始めた。

『静粛に。皆着席してくれ。私は陸軍のトップ、花田純一郎だ。………今日はこの重要な集まりに忙しい中集まっていただいたこと、誠に感謝する。この会は陸軍海軍間の親睦を深めると共に技術共有をする場でもある。打倒深海棲艦を目標に、この会を有用なものにしてくれたまえ。以上だ』

パチパチと拍手が起こり、皆机の上に用意された軽い食事を摂りながら自身の近況を話し始める。

この食事の前までは静かに牽制しあっていたが、この後からは新型兵器の紹介などで大っぴらに牽制し始める。だがその兵器を紹介するだけで提供はしないので、現状この世界で最も無意味な時間だと言えるだろう。

 

 海軍のトップ(以下元帥)が式台の上に立って兵器の紹介を始めた。

「今日のこの会に私たち誇り高き海軍が持参しました新兵器は、新しい艦載機でございます!」

そう言って後ろの方に待機していた部下が艦載機に被せられていた厚手の布を一気に取り去った。

布の下から現れたのは、俺にとって実に懐かしい物だった。

「景山-改です!こちらがスペックとなります」

雷撃機 景山-改

武装:12.7mm機銃2門

   魚雷1本もしくは水跳爆弾2個

巡航速度:400㎞/h

最高速度:750㎞/h

航続距離:5000㎞(増槽あり6000㎞)

特徴:・逆ガル翼採用によるランディングギアの短縮

 

なんと、兵器紹介のトップバッターはうち考案の景山-改であった。…提出したの忘れていたぜ…

元帥はそのままペラペラとしゃべり続けた。

「スペックを見てもらうと分かるようにこの攻撃機は航続距離がとてつもなく長いところが特徴です。武装に関しては機銃こそややひ弱なものの、元々格闘戦をする機体ではないので十分でしょう。逆ガル翼によるランディングギアの短縮は意外と有効で、整備性が大幅に向上しました。景山-改については以上です!」

元帥は”どうだ参ったか”とでも言いたげな表情を陸軍側のテーブルに向けた。

陸軍側からは社交辞令の拍手とやや殺気がこもった視線が向けられている。…ここから逃げ出したい…

「次に紹介するのは…」

張り詰めた空気感の中、元帥がただ喋って自慢するだけの海軍の兵器紹介はこのあと30分ほど続いた。航空機をはじめ主砲、雷装、機関などの画期的なアイディアがいくつもあった。だが俺は話の五割くらいはウトウトしながら聞いていたので細かいスペックは覚えていないものが多い。

 不意にいつもより大きな拍手によって俺のフラフラしていた意識は突如として現実に戻された、元帥が式台を降りたのだ。それはつまり、陸軍の自慢パートになるという事を指す。

(注意して聞かねば…)

俺は耳をそばだてて陸軍のトップ(以下花田元帥)の話を聞くことにした。

陸軍のトップはとても自信満々な顔つきで式台へと上り、咳ばらいを一つしてから話し始めた。

「我々誇り高き陸軍がこの度海軍の皆様にご紹介しようとしている物は通常の兵器ではありません!我々もついに洋上戦力に対抗しうる()()を手に入れたのです!」

海軍側でどよめきが起こる。花田元帥はそれを満足そうに見ると話を続けた。

「それがこちらです。高機動型海上火力支援兵器、ミットシュルディガー(Mitschuldiger)!」

 そいつは艦娘よりひと回り大きく、容姿はだいぶ違っていた。まず人とは認識できない。さながらロボットであり、表面の合金であろう装甲板は白色で、首はなく、蛇のように三角形の頭部が胸部前面と一体化しており、単眼だった。胸部のすぐ下には足の付け根からは足がすらっと伸びており、がっしりと地面を捉えている。艦娘の靴のように船底を模した物ではなく、いかにも戦闘ロボットというような足だった。そして奇怪な頭部のほかにも目を引くところがもう一つ。腕である。腕は普通に二本だが、足同様金属質のロボットアームで、右手は重巡クラスの大口径砲が腕を挟んで連装装備されており、右手の甲には一門の小口径砲が設けられていた。左手に手のひらはなく、代わりにグラップルと思われる燻銀の銛とも鏃ともいえないものが不気味に光っていた。そして、左腕にはでかでかと黒文字で”大日本帝国陸軍・01”と書かれていた。

 海軍は目の前に現れた奇怪なものに困惑し、驚愕していた。”こんなものを陸軍が?”とでも言いたげな表情があちこちで見られる。

「この()()は海軍さんの艦娘とは似て非なる物と言っていいでしょう。仕組みは酷似していますがこちらは戦闘するうえで()()()()()感情を一切持ちません。命令を遂行するのみの個体となります。この個体が海戦に登場する暁には海軍さんのお手を煩わすようなこともなくなるでしょう!」

花田元帥は声高にそう言い切り、式台を降りた。

「それでは、各軍に対しての質疑応答を開始します。質問や意見がある者は手を挙げて発表してください」

司会が淡々と決まったセリフを言い、まばらに手が挙がり始める。

陸軍は海軍に対して”そんな装備で大丈夫か?”と遠回しに言って煽り、

海軍は陸軍に対してミットシュルディガーの事を聞きまくっていた。

 そんな中、突如俺の携帯に電話がかかってきた。

室内の視線全てが俺の方を向いた。俺は気にせず電話をスピーカーモードにして机に置き、電話に出た。

「どうした?」

「提督ですか!?青葉です。深海棲艦と思われる勢力からの大規模侵攻がありました!新型と思われる個体の写真は今そちらに送りましたので確認をお願いします!」

()()()()()。この言葉でその場にいた海軍の提督たちは一気に青ざめ、各々の鎮守府へと連絡を取り始めた。陸軍の連中も焦っているようだ。恐らく”写真を送った”というところに焦っているのだろう。

俺は青葉から送られてきた写真をチェックした。

「予想通り…いや、予想以上だな…」

会場のざわつきが大きくなった。どうやらほかの鎮守府にも攻撃が行っているらしい。

「質問があるのだが、よろしいだろうか?」

俺は手を挙げ、大きな声でそう言った。司会が”どうぞ”と短く言った。

俺はその場で立ち上がり、話し始めた。

「これまで、深海棲艦の侵攻は今回のように複数の目標に対して一斉にまとまった行動をとるという事例は見られなかった」

会場のどよめきがだんだんと小さくなる。

「しかし今回に限って、この陸海軍の指揮官ほぼ全てが集まるこの会の日に限ってそれは起きた。これは敵にも明確な指揮系統が出来た事を指します」

会場は静まり返っていた。

「何が言いたいのだ!?」

突如、花田元帥が立ち上がり、俺に向かって怒鳴りつけてきた。

「意見は私の話を最後まで聞いてからにしてください」

俺がそういうと、渋々そいつは席に着いた。

「先ほどうちの鎮守府の広報担当が”新型と思われる個体”と言っていた。俺はその個体が登場したことと今回の大規模侵攻が関係していると考えた。そして…その新型個体の写真が、これです」

そう言って俺は会場のスクリーンに青葉から送られてきた写真を複数枚映し出した。

刹那、会場は再びどよめきに包まれた。

海軍のお偉いさんの一人がスクリーンをふるえる指で指しながら叫んだ。

「こっ…これは…っ!陸軍のミットシュルディガーじゃないか!?」

そう、その画像に写っていたのは先刻陸軍が偉そうに自慢していた高機動型海上火力支援兵器、ミットシュルディガーがル級はじめ、見覚えのあるメンツを引き連れて戦闘しているものだった。相手はもちろん艦娘で、どうやら苦戦している様子が見て取れた。

周りの景色がぼけていることから、相当なスピードで動いているのだろう。ひざ下の裏からはジェット推進を思わせる炎が出ていた。

俺は陸軍の方へと向き直り、睨みつけながら言った。

「これは一体……どういう事なのか、説明してもらいましょうか?」

俺は精いっぱいの怒気を込めて言ったつもりだったのだが、陸軍はひるむ様子もなく、食い気味に答えた。

「これは偶々、深海棲艦も同じような物を開発しただけでしょう。我々が完成させたのはこの一機のみ。我々の仕業ではありません!」

花田元帥は”反論できないだろう?”とでも言いたげな顔でこっちを見て笑っていた。

「そう来ると思ってましたよ」

俺は半笑いで言った。

「じゃぁこれは…なんです?」

俺は青葉から送られてきた画像で、まだスクリーンに映していなかった一枚を映し出した。

「なっ!?」

「これは…」

会場は喧騒に包まれた。俺が今映した写真、そこには…

艦娘に向けグラップルを発射しようとしている個体。伸ばされた左腕には”大日本帝国陸軍・02”の文字がくっきりと、写っていた。青葉の撮影技術には感謝しかない。

「陸軍ッ!貴様いったいこれはどういう事だッ!?」

元帥をはじめ、海軍のほとんどが陸軍側へと詰め寄った。

「元帥殿、参謀殿、追加でこれをご覧になっては?」

そう言って俺はあの封筒を元帥に渡した。

元帥はひったくるようにして俺から封筒を取り、中身を確認し始めた。

しばらくすると元帥は固まった。

「なんだこれは…“陸軍の生体実験の過程とデータ”…写真まで…」

その言葉を聞いた花田元帥が俺に怒鳴った。

「貴様っ!ドクターとグルなのか!?…いや、あいつは死んだはず…」

俺はどこ吹く風という顔で答えた。

「はて?私は鎮守府に投函されていた資料を渡しただけですが?誰ですかね?ドクターとは」

陸軍の奴らは顔を顰めた。

元帥がさらに詰め寄る。

「どういうことなのだこれはッ!?お前らは敵だったのか!?」

元帥に詰め寄られた花田元帥は押し黙った。

「おいっ!答えr…」

刹那、乾いた破裂音が会場に響き渡り、元帥が崩れ落ちた。

「うるせぇ奴だ…知らなければよかったものを」

花田元帥の右手には青白い煙を立てる九二式が握られていた。

「全員武装だ!こうなったからにはここで海軍を潰す!ミットシュルディガーを起動しろ!」

花田元帥がそういうや否や、陸軍将校全員が拳銃を取り出して武装し、ミットシュルディガーのモノアイが紅く光った。

「逃げろ!」

海軍の誰かが叫び、次々と海軍関係者が会場から逃げようとした。

随伴艦として連れてきた艦娘たちは簡易艤装展開(装甲のみを展開状態)で拳銃弾を防ぎ諸鎮守府の提督たちを守りながら撤退していく。

会場は混乱していた。銃声、断末魔、ミットシュルディガーの金属的な歩行音。先ほどまでの静かな様子とは打って変わって戦場のようだった。

「鈴谷!新型機を頼む。モノアイに砲弾を命中させれば視界不良で行動不能になるはずだ!」

「り、了解!提督はどうするの!?」

俺は逃げながら鈴谷に向かってミットシュルディガーの無効化を頼んだ。鈴谷は若干戸惑っているみたいだが彼女ならきっとやってくれるだろう。

「俺は、深海側の指揮系統を断つ!」

深海棲艦がまとまって行動し始めたのは恐らく陸軍が深海側の指揮を執っているからだ。つまり、陸軍の上層部を潰せばその指揮能力は大幅に下がるだろう。今を逃したら圧倒的な物量でやられてしまう。ミットシュルディガーがどこまで量産されているかも気がかりだが、まずは目の前のことに集中することにした。

 

「艤装展開!VK16.02 leopard!」

俺はドイツの試作軽装甲偵察戦車であるレオパルドを艤装として纏った。30mm機関砲は大勢を相手するのに役立ってくれることだろう。

 

 俺は親睦会が行われていた会場の前まで引き返してきた。

陸軍が逃げた後だったらどうしようかとも思ったが、それは杞憂だったようで陸軍の連中の話し声が聞こえた。

俺はそれをチャンスとばかりに会場へ乗り込んだ。陸軍しかいないだろう、とタカをくくって。

陸軍(裏切り者)めっ!覚悟…ッ!?」

機関砲を構え、意気揚々と乗り込んだ俺を目の前で待ち構えていたのは、白色の金属機体だった。

「なっ!?」

とっさの判断で俺は右方向へと飛んだ。

そして、コンマ数秒前まで俺がいた所は跡形もなく消し飛び、大きなクレーターが出来ていた。

「三号機、止まれ」

不意に聞き覚えのある声が響き、目の前の機体は俺に砲口を向けたまま静止した。

「花田…元帥…ッ!」

俺はその場で絞り出すような声でその人物の名を呼んだ。

花田元帥…花田はうすら笑いでこちらへ話しかけてきた。

「最初の一撃で()るつもりだったんだけどねぇ、よく避けた。それの報酬と言っては何だが、少し話そうじゃないか」

俺は身動きが取れず、ただ黙って花田を睨みつけた。

「いいねぇ、その悔しそうな顔。それはそうと…その艤装は何だ?」

「貴様らに…答えるつもりはない…」

俺は辛うじて口だけを動かして答えた。今下手に動けば目の前の三号機に殺される。いくら艤装展開中だとはいえ、軽戦車が戦艦クラスの砲弾をくらって無事なはずがない。

「そうか…それは残念だ。栗田提督、息子は元気かね?」

突拍子もない質問に俺は眉をしかめた。

「俺に息子はいないが…」

「君の息子ではない。私のだ。花田優樹少尉の事だよ」

俺は目を見開いた。少尉に初めてあった時、苗字が同じだな、とは思っていたが、まさか陸軍の元帥の息子だったとは…なぜ海軍に…?

「元気ですよ…素直ないい子です」

「そうか…」

そう言って花田はニヤリと笑った。

その時、俺の携帯電話に電話がかかってきた。どうやら青葉からのようだ。

花田は顎でクイっと指して俺に電話に出るように促した。

「もしもし、俺だ」

「提督、大変です!近海で戦闘中に手薄になった鎮守府が襲撃されて花田優樹少尉が誘拐されました!」

「なんだと!?鎮守府の被害状況は!?」

「こちらも忙しいのですみませんが切ります!では!」

青葉からの電話は一方的に終わった。電話の背後で砲撃音らしき音が聞こえていたことからまだ戦闘中なのだろう。

俺は薄ら笑いを浮かべている花田に向き直り、言った。

「何をする気だ…?」

すると、花田は得意げに話し始めた。

「先程の機体や、今目の前で君に砲口を向けている機体は中身が機械だ。だが、この中身を人間からとって組み込むとより高度な命令をこなせたり、より高度な戦闘スタイルで戦えたりするのだよ。栗田提督よ」

そこまで言って花田はニヤリと笑った。目に光はなかった。

「テメェ…まさか…実の息子に手ェ出す気なのか!?」

俺が怒鳴りつけると花田は笑って言った。

「その通りだ。あいつ…優樹は昔から兄弟の中で唯一私に対して反抗的だった。恐らく私のやり方が気に食わなかったのだろう。何度罰を与えてもめげずに反抗してくる。まるで自分が正義の味方だと言わんばかりにな。軍に入れる年齢になった途端、優樹は海軍になると言ってきた。花田家は代々陸軍の家系だったから、そんなことは認められないと言ったのだが、あいつは家を飛び出してまで海軍に入ったんだ。実に気に入らない。そこで、だ。少しばかりお灸を据えてやろうとしているって事だ」

俺は唖然とした。自分に従わないからと言って実子を殺し兵器に改造するだと…?気でも狂っているのではないだろうか。

花田はさらに続けた。

「もちろん、意識を奪って改造したのではただ殺しただけになってしまう。意識は残しておき、命令は絶対にこなす機体に改造するのだよ」

俺は目の前に砲口を突きつけられていることを忘れるくらい、憤りを感じた。

改造されたが最後、花田少尉は自分の意思を保ったまま目の前で繰り返される殺戮を見続けなければならないのだ。

「それが人間のすることか!?」

怒鳴りつけるが、相手は動じない。

なんとかしてここの陸軍連中を殺してやりたいと思ったが、現状手段がない。少しでも動けば俺が殺されてしまう。

「栗田提督よ。君と話せて楽しかった。だが楽しい時間はいつかは終わらなければならない。終わりがあるからこそ楽しいのだ。…じゃあな」

そう言って花田は三号機にGOサインを出し、三号機が艤装を構え直した。

(万事休すか…)

そう思い目を瞑った。

刹那、轟音が響き渡り俺は跡形もなく消し飛……ばなかった。

「なっ!?」

花田の驚いた声に恐る恐る目を開けるとそこに三号機は居らず、数メートル離れたところへ吹っ飛んでいた。

俺が何が起こったか分からず目を白黒させていると聞き慣れた声が会場の入り口の方から聞こえてきた。

「提督がピンチだなんて、らしくないじゃん?」

その声の方を見ると、外の光を後光のように纏い、ご自慢の203mm砲から白い煙を靡かせた鈴谷が立っていた。

「鈴谷…!助かった!」

他にもいろいろ言いたいことはあったが、まずやるべき事は目の前の連中の掃討だ。

「ここからは俺のターンだ。行くぞ!」

ミットシュルディガーが吹き飛ばされてから数秒後、俺らは行動を開始した。

俺は30mm機関砲で陸軍…もとい、敵に向かって発砲し、鈴谷はミットシュルディガーの足の付け根やモノアイなどの弱点への砲撃で無力化を図った。

敵の断末魔や鉄と鉄のぶつかり合う音が暫く響き、やがて静寂が戻った。

その結果、会場は赤く染まり、ミットシュルディガーは火花を散らしながら崩れ落ちた。

「…艤装収納」

それを見届けた俺は、鈴谷の方に歩み寄って頭を下げた。

「鈴谷、本当に助かった。ありがとう」

「ふふーん、褒めてくれてもいいんだよ?」

鈴谷は得意そうにして言った。

「あぁ、鈴谷は本当にすごいな。命の恩人だ」ナデナデ

「ふぇっ…そういうのはもっと大事な時にやってよ…」

鈴谷は顔を赤らめて俯いた。

その時、後ろで音がした。

「ッ!?」

咄嗟に俺は後ろを向いて、固まった。

「花田…テメェ生きてたのか…」

花田は満身創痍になりながらも俺に向けて九二式拳銃を向けて立っていた。艤装収納している今、俺はただの人間だ。拳銃弾一発で死ねる。鈴谷も収納状態のため人となんら変わらない。

花田は笑いながら譫言のように繰り返し言った。

「俺の野望はまだ終わらない…こんなところでは終われねぇ…あと少し…やることが…」

花田の手に握られた九二式に力が入る。

だが、その後の発砲音で崩れ落ちたのは、花田の方だった。

驚き、発砲音の方を見ると、初老の、薄汚れた白衣に身を包んだ男性がややバレルが長く、拡張マガジンなどが付属している九二式を構えていた。

「ドクター…死んだはずじゃ…?」

花田が床に倒れながら絞り出すように言った。

それに対してドクターは嘲笑うように言い放った。

「残念だったなぁ、トリックだよ」

それと同時にさらに2発撃ち込み、花田はこときれた。

俺はあまりの急展開に驚きつつもなんとか言葉を発した。

「父さん…?」

それに対しドクター…もとい、父さんは慈愛のような表情を浮かべ、言った。

「ただいま…我が息子よ。そして…すまなかったな」

父さんが手を広げる。

俺はその中に飛び込んだ。

すると、自然に涙が溢れてきた。まるでダムの堰を切ったように、とめどなく。

俺ら親子は暫くそのまま、再会を分かち合ったのだった。

 

 

 

ひとしきり終わった後、父さんからの謝罪ラッシュがあったのはまた別の話だ。




どーでしたでしょーか。数週間暇な時間を見つけては書き、見つけては書きを繰り返していたので文法等が破綻しておらずちゃんとした文章になっているといいのですが。
誤字脱字、ここの表現がおかしいな、などありましたら誤字報告またはコメントにてお知らせください。

次回は今回の時間軸の鎮守府視点になるかな〜と思っております。海戦かけるかなぁ…

こちらはミットシュルディガーのイメージです。下手なのは許してください。

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