・邀撃、空挺部隊
戦艦:金剛 比叡 榛名 霧島 大和 武蔵 長門 陸奥 ビスマルク ティルピッツ フューラー ドイッチュラント 戦艦棲姫 (他戦艦は大破or泊地棲姫の護衛で離脱)
重巡:最上 三隈 プリンツ・オイゲン 提督 (他は大破撤退)
軽巡:天龍 龍田 球磨 多摩 北上 大井 木曾 長良 五十鈴 名取 由良 鬼怒 阿武隈 川内 神通 那珂 夕張 阿賀野 能代 矢矧 酒匂 大淀 (遁走中の敵第一部隊追撃中)
駆逐艦:吹雪以外の全艦艇 防空棲姫 駆逐棲姫 (朝潮型、吹雪、駆逐棲姫以外は軽巡と同行中)
軽空母:艦載機切れで鎮守府帰投
正規空母:グラーフ・ツェッペリン 空母棲姫 (空母棲姫の艦載機は若干消失気味)
潜水艦:全艦艇 (多分どっかにいる)
・対シールド部隊
加賀 蒼龍 飛龍 瑞鶴 翔鶴 雲龍 天城 葛城 大鳳
・対ディグ部隊
鈴谷 熊野 吹雪 赤城 ヲ級改F レ級F ル級改F 北方棲姫
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多大な損傷を被りつつも、提督は姫級部隊との戦いを収束させた。
戦いの舞台は数十キロ先の海域、相対するは敵の切り札の一つ、
対シールド部隊はその名に恥じぬ戦果を挙げられるのか。皇国の荒廃をかけた作戦の第3段階が今、始まる。
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若干時を遡ってのスタートです。
今度こそはネタに走りたい。
〜加賀side〜
「全員準備はいい?」
私は全員に確認し、それぞれの面々はそれに対して力強く頷いた。
不意に機体が水平に直り、立ち上がれるようになった。パイロットがこっちを見ずに叫んだ。
「嬢ちゃん、ハッチを開くぞ!」
言い終わるや否や、鈍い金属音とともにハッチが開き始めた。
突如機体内にくぐもった爆発音が響き、機体がグラッと傾いた。どうやら被弾したようだ。
「急いで出るんだ!早く!」
パイロットの言動からは相当な焦りがみられる。その圧に負けるように私たちは急いで輸送機の外へと出た。
眼下に迫る水面との衝突に一瞬恐怖を覚えたが、それが本格化する前に水面との衝突はやってきた。
予想より小さかった衝撃と抵抗で減速しつつも、私たちは転倒することなく全員無事に着水し、陣形を組み直し体勢を整える。
ふと空を見上げると、私達を運んできた輸送機は黒い煙を吹きながら急上昇をかけている。無事に帰れることを祈ることにしよう。
「なにあれ…」
飛龍が呆然と言ったところで私は前方へと視線を戻し、言葉を失った。
他の仲間たちも驚き、呆然としている。
それもそのはず、その艦の艤装は大和のそれを凌ぐほどの大きさを持っており、その周りに見た感じ直径数十メートル程度で若干流動している球状で透明寄りの半透明のシールドが張られているのだ。
「敵から通信!」
敵からの発光信号を見て大鳳が叫んだ。
『我ハ洋上防衛泊地棲戦姫ナリ。貴様ラニハ消エテモラウ』
「新型ね…発艦、始めなさい」
私はいつもより神妙な口調で指示を出した。
発艦の指示が出された蒼龍の甲板は過去一の忙しさを見せていた。
「3番機!準備はできたか!?」
「第一部隊発艦準備あと少し!」
「おい、誰だ!?今俺の足を踏んだやつは?」
「いいから早くしろ!」
「ちょっ、なにこのエンジン!?」
「知らん、やれ!」
その慌ただしさは異常で、いつも準備がなかなか終わらずにいた。
「どうしたの?みんな。珍しいじゃない」
蒼龍は不思議に思って尋ねた。
「それが…見てくださいこれ」
甲板にいた整備兵妖精の一人が少し小さめの紙を渡してきた。
「んー?どれどれ?」
蒼龍は手紙を受け取って開いた。
ーーー
ーー
ー
蒼龍さんへ
この度、誠に勝手ではありますが対シールド部隊の皆さんの艦載機の搭載割合を変更させていただきました。
変更内容は下記の内容の通りとなります。
変更前
キーンホーク 80%
キ64爆装 15%
焔雷–zwai 5%
変更後
キーンホーク改 30%
焔雷–zwai 70%
以上の通りです。提督の相談を受けて垂直降下攻撃が可能な機体のみで構成しました。
武装の変更点は、無誘導弾を赤外線誘導弾に変更、キーンホークの携帯爆弾に自己推進機能をつけたことが挙げられます。
キーンホーク改は、レシプロがジェットになってその他諸々変わっただけです。二重反転装置の分のスペースを推進機構に回せたのでかなりの速力アップが期待できます。
明石
ー
ーー
ーーー
「あんのピンク頭…!前もって言ってよ!」
蒼龍は驚きと呆れで思わず叫んだ。
「と言うわけなんですよ」
「なるほどね…あはは…なるべく早く飛べるように頑張って頂戴」
「了解!」
整備兵妖精は綺麗な敬礼をして甲板の上をトコトコ去っていった。他の空母はどうなんだろうと思って周りを見渡してみると、皆例の手紙をもらったようで呆れているのが大半のようだ。
「発艦準備完了!」
その声に蒼龍の意識は戦闘へと戻された。
(なぜこうも毎回飛ぶたびに機体が変わるのか…)
江草大佐は前回のフライト時から変わり果てた愛機のキーンホーク改を見た。前回までこの機体の大きな特徴の一つだった二重反転プロペラの姿はなく、代わりに焔雷–zwaiのそれと似たジェットエンジンが取り付けられていた。主翼下にはミサイルが増設され、携帯爆弾のデザインも変わっていた。
「行くか…」
大佐が機体に乗ろうとした時にいつぞやの気弱そうな整備兵がニコニコしながら近づいてきた。
「おや、君は確か…あの機能をつけてくれた整備兵君だね?すまないがまだあれは使ってないんだ」
会うのは前哨戦以来だろうか。あの頃と比べてだいぶ顔色も良くなったように見える。
「はい、分かってます。しかし、今回の戦いでは確実に使うことになると思います。なので、改造された機体に合わせてグレードアップしておきました。発動方法は前と同じレバーなので、頑張ってください」
「効果はどう変わったのかね?」
「それはですね…」
二言三言交わすと整備兵は持ち場へと戻ってしまい、大佐は一人ポツンと残された。
「技術の進歩は恐ろしいねぇ」
大佐は他の機体にはない計器類の右についているレバーを見ながら、コックピットを閉めた。
{エンジン始動ッ!}
無線に艦橋からの指示が入った。大佐は言われた通りにエンジンを始動させた。
重い音を響かせてエンジンに火が入る。プロペラの音とは違う音が大佐に妙な高揚感を覚えさせた。
機体が
「怖いな…、うまく空中点火できるだろうか…?」
ここの鎮守府の空母はジェット・ブラスト・ディフレクターが装備されていない。そのためレールガンで射出後、空中で本点火して飛び立たなければいけないのだ。なんと危険なことか。ちなみに、ジェット・ブラスト・ディフレクターが装備されていないのは予期せぬジェット機配備増加を想定していなかったからである。
{1番機発艦まで、10秒!出力上げ開始!}
指示に従い出力を上げる。先ほどまでの重低音から流れるように中音域まで音が変化した。
{3、2、1、発艦!}
途端に急加速した機体にGがかかり、シートに体がへばりつく。
金属と金属の擦れ合う音が途切れたら点火の時だ。1秒でも間違えれば海へ真っ逆さまだ。
大佐は耳を澄ませた。
音が途切れた。
「点火ァ!」
背後で音が高くなり、ついで爆発音が響き、それと同時に機体は加速した。
{1番機、発艦確認!}
「っし、成功!」
艦橋からの発艦成功のメッセージに大佐は心の中でガッツポーズをした。
(どうだ!初発艦で見事成功させてやったぞ!)
後続も次々と上がってきているようで、無線に続々と発艦確認の報告が入ってくる。皆熟練度が高い証拠だ。
大佐は無線で後続に呼びかけた。
{上空で隊列を組む。全機、私に続け!}
「…よし、全機発艦完了よ」
空を悠々と駆けていく艦載機の群れをみながら、私、加賀は視線を敵の方へと戻した。
「再び通信!」
大鳳の鋭い声に私は洋上防衛泊地棲戦姫…イージスの方をみた。
『私ハ一人デハナイ。艦載機ヲ発艦させた空母ホド戦闘能力ノナイ艦ハナイトイウ事ヲ教エテヤロウ』
イージスの影より複数の影が飛び出してきた。
「護衛…!?やだぁ、もう…」
蒼龍が弱音を吐いた。…提督はこの状況になることを予想できなかったのでしょうか?
「敵…護衛は戦艦1、空母1、巡洋艦2…結構いるわ…」
雲龍が落ち着いて敵戦力を確認した。どう考えても空母艦隊が艦載機なしに相手するものではない。
私は無線で上空の管制機に呼びかけた。
「発艦している航空隊に連絡して。護衛を叩くように言ってもらえる?」
『了解した。直ちに実行する』
そう言って無線は切れた。
「戦艦の一隻でもいれば少しは違うんでしょうけど…今は空母しかいませんし…」
翔鶴のその言葉に私はいつかの提督の言葉を思い出した。
“ 戦艦になれるぞ ”
…この力は、この時のためのものだったのね…
「みんな、私の後ろに下がって頂戴」
私は皆を自分の後ろに下げ、単縦陣を組むように指示した。
「加賀さん、急にどうし…」
「見てなさい、五航戦。私の本来の姿を見せてあげるわ…
私は瑞鶴の言葉を遮って言った。途端に、いつも慣れ親しんできた飛行甲板が短縮され、回転しつつ背後へ格納される。
背後にあったはずの矢筒はいつの間にか武骨な艦橋へとなっており、両脇には連装砲塔がそれぞれ、右に2基、左に3基出現した。服も黒を基調としたものに変わっており、落ち着いた印象が感じられた。
「加賀型戦艦「加賀」、
私は時間を稼ぐだけでいい。あとは航空隊がなんとかしてくれるはず。
「加賀…さん?」
瑞鶴は目を丸くしている。後輩にここまで驚かれるのもなかなか悪くない気分ね。
護衛は突然変わった私に驚き動きを止めた。警戒しているのかもしれない。
「その躊躇いが命取りよ。航空隊、やりなさい」
その頃上空では航空隊が準備を整えていた。
{大佐ァ、整列完了でさぁ}
二番中隊の隊長が呑気に言った。
「指示があるまで待機だ。下手に動くなよ?」
勝手に行動することで定評のある二番中隊長に釘を刺し、指示を待つ。その間に第三、四、五番中隊からも整列完了の報告が入った。
管制機からの指示に従って対護衛、対シールドの部隊に分かれ、指示を待つ。
{…。航空隊、やりなさい}
眼下の母艦より指示が出た。
「ヨシ!二から五番中隊は敵の護衛を叩け!」
{了解!}
中隊ごとに機体を翻し、眼下に消えてゆく。
「一番中隊はこのままイージスを叩くぞ!上空はシールドが薄いらしい。だが無いわけではないから突っ込んだら死ぬ。誘導弾だけを叩き込むように。…誘導弾通るのか…?」
{隊長、まずやってみては?}
二番機の鈴木が意見具申…というより提案に近い物言いをした。
「…そうだな。行くか」
いつの間にかほぼ真下のところまでイージスが来ていた。ちょうどいい頃合いだと言えるだろう。
「第一中隊全機、私に続け!」
機体を回転させて急降下の体勢に入る。
前回まではプロペラの空気抵抗で速度の伸びにムラがあったものだが、ジェット化された今、加速を妨げるものは自身の機体の空気抵抗のみとなっていた。加えて垂直降下が可能になっているため、速度はさらに上がっていった。
「墳進弾発射準備!」
翼下の墳進弾懸架装置が音を立てて降下し、墳進弾の安定翼が展開される。
今回は誘導弾だ。もし射撃コースを間違えても修正が効く。幾分気が楽というものだ。
大佐は急降下中とは思えないような余裕ぶりで現実を分析していた。
発射、と言おうとしたときそれは起こった。
ゆらゆらと陽炎のように揺れるイージスシールドの奥、洋上防衛泊地戦棲姫の箱型の艤装の上部がカメラの絞りを開くように動き、キラッと光を反射したのだ。
大佐は本能的に悟って後続機に呼びかけた。
「全機退避!」
そう言いつつフットバーを蹴飛ばし、操縦桿を左に倒して、攻撃コースより離脱する。
刹那、先ほどまで自機がいた場所を
「何だあれは!?各小隊ごとに被害報告を!」
大佐は急旋回と急上昇の激しいGに抗いながら被害報告を促した。
{こちら九番小隊長、下村。後続の十番小隊以降が墜とされました!}
「なんだと!?半分以上を一撃で!?」
{こちら二十番小隊隊長、小林。自分小隊のみ急降下突入前に退避できたので辛うじて無事です!しかし、自分らより前の小隊は一瞬にして墜とされてしまいました…!それに…墜ちていった僚機の残骸がシールドに触れた途端溶けるようにして消えていったのを見ました。あれは危険です!}
(なんという事だ…一撃で十~十九小隊を失うとは…!敵の情報が圧倒的に不足している。まだ何を隠しているか分からないぞ…)
思わぬ損失に頭を抱えていると、今度は吉報が舞い込んできた。
{こちら第二中隊隊長、斎藤だ。大佐ァ、見える護衛は全て片付けやしたよ。残りはその陽炎みたいなシールド持ちと、いるとしたら潜水艦くらいですぜ}
「おぉ。よくやってくれた!…だが、こちらは半数が墜とされた。急降下攻撃を仕掛けようとすると光を撃ってくるんだ。どうしたらいいのか…」
{大佐ァ、幸いにも敵は守りに特化しているようだ。攻撃はしてこないからじっくり考えてみたらどうだい?焦ってちゃぁ出る案も出ねぇってもんだ}
「…そうだな、それもそうだ。斎藤、お前らしからぬ発言に感謝するぞ」
”おいおい、そりゃねぇぜ”と笑いながら言う斎藤を尻目に大佐は焦る心を落ち着かせて考え出した。その間にも生き残った機体と、護衛を掃討し終わった機体が整列し、空中に大編隊を作る。
(攻撃すれば光を撃ち、恐らく墳進弾ですらも消される、体当たりはもってのほかだ。あの艤装の形状からして旋回機能はもたないはず、つまり横からの攻撃を加えられれば一瞬で勝負はつくはずなのだが、それが不可能なのだ。どうしたものか…)
大佐が頭を悩ませているところにさらなる吉報が入った。
{こちら加賀、邀撃空挺連合部隊が到着したわ。臨時で提督と防空棲姫さんもいらっしゃるわ。提督から指示があるみたいだから代わるわね}
提督なら何かわかるのかもしれない。そう期待して大佐とその一行は指示を待つことにした。
{こちら提督だ。先ほどの戦闘でイージスシールドの対抗策を手に入れた。君たちは今から水平雷撃の体勢に入ってくれ}
「し、しかし提督殿、シールドにあたってしまえばすべて消されて…」
大佐は提督の言葉が信じられなかった。現に十小隊分も墜とされてシールドに消されているのだ、無理もないだろう。
{いいからやれ。態勢を整える間に説明する。この無線を傍受している隊長機以外の皆も心して聞いてくれ。あれは先ほどここに到着する直前でな…}
ーーー
ーー
ー
「姉さん、これなんだい?」
俺は受け取った装置の背面部に見たことない形のソケットがあったのを見つけた。
「あら…これは深海棲艦の艤装追加用のソケットね。ちょっとやってみるから貸してくれないかしら?」
姉さんは装置を受け取って自分のCIC艤装の隣に取り付けた。
「だ、大丈夫なのか?爆発したりは…」
「大丈夫よ、あの人はそういう姑息な手を好まない人だもの…って、あらら…これは…」
「どうした?なんかまずいものだったか?」
姉さんは俺の方を見て笑って言った。
「その逆よ。私に触れてみて」
俺は言われるがままに姉さんの肩に手を置いた。その途端、目の前に青白い半透明のディスプレイが出現し、こう書かれていた。
【イージスシールド減衰装置】
「なん…だと…!?最強…でもないか。消せるわけじゃないもんな」
「最近はこんなものもできたのね~、空中にディスプレイが浮いてて操作できるなんて。もうすぐ到着よね?早速使ってみましょうか」
「着眼点空中ディスプレイなんだ…」
ー
ーー
ーーー
{…と言うわけだ。と言ってもどの程度減衰できるのかは分からないからやっぱり水平雷撃はなしで若干降下気味で攻撃をしてくれ。頼んだぞ。運が良ければ突破できるかもしれない。無傷かどうかは分からないが}
「ふむ…それならいい案があります。無傷で一隻は無力化してみせましょう」
大佐は少し考えた後、そう言った。その言葉は運などに賭けている様子はなく、確固たる作戦が思い浮かんだようだった。
{しかし…どいういう作戦でやるつもりだ?}
大佐は少し笑って言った。
「そう心配せずに見ていてください。うちには優秀な整備兵妖精がいるんですよ」
{…そうか。では一隻は任せよう。突入準備はできているな?}
提督の言葉に”ちょっと待ってください”と言い、無線を部隊無線に切り替えた。
「全機、私の後ろに一列に整列せよ。キーンホークは
途端に全機が一列に重なり、三隻いるイージスのうち一番手前にいる個体に狙いを定めた。
大佐は無線を提督へと繋ぎなおした。
「完了です。いつでもいけます」
{よし、では行くぞ…3,2,1,GO!}
その声とともに無線は途切れた。それと同時に前方で揺らいでいた陽炎のようなシールドの揺らぎが少し収まり、中にいる個体が良く見通せるようになった。
「敵さん驚いているじゃないか…」
表情も読み取れるほど弱くなったシールドは未だに微弱ながらも陽炎のように消えまいと揺れていた。あれに突っ込めばバラバラとまではいかずとも、墜落するレベルの損傷は受けてしまうはずだ。それを知っているのか、敵の表情にはまだ余裕があった。
”愚かな” 敵の表情はそう言っているように見えた。
「その油断が命取りだ…さぁ、絶望の表情を見せてくれよ?」
大佐はそう言って計器類の右についているレバーをグイっとひねって押し込んだ。
ガチャンという金属と金属がグリスを挟んでぶつかる小気味いい音と共に主翼にさらに後退角が掛かり、ノーズコーン内部よりバチバチと言う放電音が聞こえだした。
「本来このレバーは翼の角度を変えて速度を上げるためだけのものだったんだ…だが、あの整備兵はそれのさらに上を行く代物を作ってくれた」
そう小さく独り言を言いながら大佐は先ほど押し込んだばかりのレバーを今度はねじらずに思い切り引き戻した。
「
敵の者と同じように見えるそれが円錐状となって大佐機の周りに生成された。
「目には目を、歯には歯を…」
大佐は敵を目前にしてさらに降下速度を上げた。
「シールドには、シールドを!」
そして、防御シールドに音速を保ったまま衝突した。
敵シールドには円錐状の大佐のシールドと、大佐機の速度の合わせ技をくらって大佐のシールドの最大直径よりもかなり大きめな穴がガラスの破砕音にも似た音をたてて開いた。
「今だ!シールドが修復される前に急げ!」
シールドは大穴の境界部からバチバチと火花を散らして修復が始まっている。急がなくてはならない。
どうやら敵は真上の防衛に特化していたようで、それ以外の向きへの対空兵器は持っていないように見えた。
「散開!そして撃て!」
コンマ数秒後、幾重もの煙の線がイージスに向けて伸びていった。
「コレハ…想定外…ダナ」
イージスが不敵に笑って言った次の瞬間、目を覆いたくなるような閃光と耳が吹き飛びそうなくらいの轟音そして衝撃波が周辺海域を蹂躙した。
「!?なんだこれは!」
接近していた航空隊はモロに衝撃波をくらい、墜ちる機が続出した。だが、運良く衝撃波に乗り、上昇できた機も少なくはなかった。
そもそもなぜここまで大きな爆発が起きたのか。
それはイージスは艦対地(艦)ミサイルで敵基地を破壊するのが目的の個体であり、迎撃用レーザー以外の箱型艤装の中身は全てミサイル、つまり弾薬だったからである。
{航空隊は離脱しろ!あとは任せて着艦作業に入れ!}
提督からの必死さが伝わる無線を受けて大佐含む生き残ることができた機体は疲れた
「提督殿、あとは頼みましたよ」
大佐は眼下の提督を見下ろしてそう呟いた。
ーーーーーーーーーーーー
上空を通り過ぎていく航空隊を見送って俺は目の前の生き残りに視線を移した。
航空隊が仕留めたイージスは一人。残りの二人がいるのだ。
まぁ、仲間の喪失に呆然としてこちらに視線さえくれないのが現状だ。おかげでゆっくり準備ができる。
「戦闘中に過度の余所見は厳禁ってことを教えてやらないとな」
「ですが、どのようになさるおつもりでしょうか。敵はシールドに囲まれておりますが」
加賀が怪訝そうな顔で質問してきた。
それに対して俺は得意そうな顔で人差し指を立てて説明する。
「敵の迎撃用レーザーは薄いながらも自分のシールドの効果を無視して上空の航空隊を掃討していた。つまり高出力兵器ならシールドがあっても通用するんじゃないかと思ってね」
「でもそんなものないじゃないですか」
飛龍が“なーに言ってんですか”とでも言いたげにため息をつき、肩をすくめながら言った。
「まぁ見てろって」
そう言って俺は右足を前に、左足を少し引いて倒れないように立ち方を変えた。
数秒間、その海域に静寂が訪れ、風と波の音がやけに大きく聞こえた。
「艤装複数展開、伊吹、ポリウス!」
次の瞬間今まであった伊吹の小飛行甲板の上面が消え、横幅が大幅に縮み、代わりに見慣れない白色のロケットのようなものが出現した。
「ポリウスって何!?」
「ソ連の軍事衛星だッ!」
瑞鶴が人外を見る目でこちらを見ている。やめてくれよ…心にくるものがある。いやまて、元をただせばお前らも人外だぞ?
部下に負わされた心の小さな傷を無理矢理かき消すように叫んだ。
「俺の攻撃を止めてみろイージス!やれるものならな!」
低周波音が一秒間ほど響き、やがて徐々に音が高くなっていく。まるでジェットエンジンのようだ。
「提督さん、大丈夫なのそれ変な音してるけど」
「ダメよ瑞鶴。提督の邪魔はしちゃいけないわ」
「黙ってみてろ瑞鶴!」
「…はぁい」
瑞鶴の質問に翔鶴と俺のツッコミが同時に入り、瑞鶴はすごすごと引き下がった。
「敵ミサイル飛来!」
大鳳が双眼鏡を覗きながら報告した。
この手が離せない時に!まぁ、一発や二発程度なら俺じゃなくても迎撃できるだろう。
「迎撃開始!」
俺を除く味方が対空掃討を開始した。数々の火箭が小気味好い連射音を立てて飛来する敵弾へと飛んでいった。
その時、準備が整った。
「照射ァッ!」
照射時間はほんの僅かだった。
そのコンマ数秒の間に俺は残りの二隻のイージスを一閃する様に艤装を動かしたのだ。
照射終了とほぼ同時に先ほど航空隊が一隻葬り去った時の倍以上の爆発と閃光、衝撃波が放出され、飛来したミサイルすらも消し去ってあたりを地獄絵図にした。
「っ…!こんなに強いのか!?」
閃光から目を守り、爆風と衝撃波に耐えながら叫んだ。だが、その叫びも爆発音で全てかき消される。
しばらくして辺りが落ち着き、静寂が戻ってきた。
加賀が若干煤けた顔を拭いながら言った。
「提督、次はもっと距離をあけての使用をお願いしますね」
俺も同じく煤けた顔を拭っていった。
「…善処したいところだ。さぁ、残す敵部隊はあと一つだ。気を抜かないで行こう」
俺はポリウスをぽんぽんと軽くたたきながら先の海域を顎で示した。
「…と行きたいところなんですが」
加賀の言葉に俺はクルリと振り返った。
「どうしたんだ?」
「生還した艦載機は私にすべて収納しました。なのでほかの空母たちは一時撤退させていただきたく…」
おい、マジかよ衝撃波。そんなに墜としたのか。
「まあ、そういう状況ならば仕方ないだろう。撤退を許可する」
そう言うと加賀以外の空母は鎮守府へと航行を開始した。帰路に就いた彼女たちの背中にはどこか悲しそうで悔しそうな色が見て取れた。
「私たちが暴れられるのはいつかしら?」
ほとんど空気扱いされていた邀撃空挺部隊の先頭にいるビスマルクが頬を膨らませてぶーたれた。
「ものの数分後には暴れられるさ。次の相手は
「殺す」
俺が発した単語に対して朝潮がほぼ脊髄反射でぼそりといった。
「殺気を抑えろよ…気持ちは分かるが…」
朝潮の周りからはどす黒いオーラが見えそうな雰囲気が醸し出されていた。
「ここまでなんっにも活躍できてないのよ!?こうもなるわ!」
満潮が怒鳴った。
「ごめんよ…急いで編成した俺のミスだ…ま、結果オーライってことで」
「あんた申し訳なくするか開き直るかどっちかにしなさいよ」
やめてくれ満潮、そのジト目は俺に効く。…いい意味で。
突如無線にノイズが入り、報告が飛んできた。
「こちら軽巡駆逐部隊。遁走した敵部隊の掃討が終わったよ!捕虜も数隻いるから鎮守府で色々やっておくね!あ、弾薬不足で帰投しまっす!」
それだけ告げると無線は一方的に切れてしまった。
「川内あの野郎…よっぽど楽しかったと見える…さて、俺らは先に進もう」
「了解!」
さわやかな秋の風に後押しされるように第一~三部隊を駆逐した鎮守府一行はミットシュルディガー部隊の待つ海域へと出発した。
ーーーーーーーーーー
「何だ今の爆発は!?」
ドアを壊さんばかりの勢いで入ってきた男は集積地棲姫に怒鳴った。しかしその怒鳴り声は叫び声に近いもので、だいぶ怯えているようだった。
「イージスが三隻とも逝ったんだ。敵は相当強いみたいだね」
集積地は淡々と表情を変えずに言った。だが、心の中では笑っていた。
(ありがとう泊地棲姫、防空棲姫。これで私の計画が一歩進んだよ)
そんな集積地のことを無視するかのように男は無線を腰のホルスターから抜き取って落ち着いた口調で話し始めた。
「いますぐ
それを聞いていた集積地は心の中で手を合わせた。
(狂った父親のもとに生まれた可哀想な人の子よ。同情するぞ)
男の怒鳴り声が響く。
「さっさと敵を潰せ!」
それ以降も何か立て続けに無線に怒鳴っていたようだったが集積地の耳には入ってこなかった。
(さて、私も始めますかね…)
集積地は男にちょっと見回り、と告げてどこかへ歩いて行った。
長かった…(書く期間が)
誤字脱字等あれば報告をお願いします。
一応ポリウスの説明を置いときますね
ポリウス(ソ連)
ソ連が冷戦期に開発した軍事衛星。1MWの出力を誇る炭酸ガスレーザーを搭載している攻撃衛星。一機のみ作られ、打ち上げには失敗した。この失敗は故意ではないかと言う噂もある。
炭酸ガスレーザーだと伝導効率が、とか言わないお約束だ。これはロマンなんだ。
(伝導効率20%でこのくらいだからね、うん、100%のやつ書いてみたい。)
船にレーザーなんて、と言う人のためにちょっとした豆知識(?)を。
現在アメリカやイスラエル、ドイツでは主に迎撃用のフッ化重水素レーザー兵器が搭載され始めているぞ。つまりできないわけではないのだ。