魔改造提督の鎮守府ライフ   作:Jeep53

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残存洋上戦力

戦艦:比叡 霧島 大和 武蔵 長門  ビスマルク ティルピッツ フューラー ドイッチュラント 戦艦棲姫 レ級F ル級改F  リシュリュ― ダンケルク アルザス ノルマンディー 加賀 赤城

重巡:プリンツ・オイゲン 提督 

駆逐艦:吹雪 朝潮 大潮 荒潮 満潮 霰 防空棲姫

正規空母:グラーフ・ツェッペリン 空母棲姫 ヲ級改F

陸上施設(曳航中) 北方棲姫

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深海側の企みにより主戦力の一部が抜けることとなった一行。
その前に立ちはだかるのは謎の黒い機体。
残り戦力も少ない中でどう切り抜けるのか。
戦いが、始まる(始まってる)。
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こんなに長引くとは思っていなかったんだ…何だよ決戦の5って。決戦の意味わかってんのかよ自分。こんなところまで読んでくださっている皆さん、ありがとうございます。不肖JEEP、頑張ります。

今回は提督視点でっす。前回は何の予告もなしに第三者視点になってたけどついて来れてたかな?


39 決戦〜5〜

「それで、(まもる)ちゃん、私たちはどうすればいいのかしら?」

 

 鈴谷が去ってから十数秒、姉さんは(Mitschuldiger)の方から目線を外さずに俺に近づいてきて言った。

敵の数は俺らよりも多い。中には中破レベルの損傷を負っているとみられる個体も見受けられたが、それはこちらも同じだ。大潮、荒潮がかなりの傷を負っている。俺も無傷と言うわけではない。大潮達の事は朝潮が撤退させようと試みたらしいが聞く耳を持たなかったらしい。いや、沈まれたら困るんだが。

現在敵戦力とは数十メートル離れたところでお互い様子をうかがっている感じである。熊野が豹変した際、敵は突っ込んでくることなく、むしろ引いて行ったように見えた。なぜだ?間違いなく熊野のあれは敵方の作戦のはず。もし俺が敵の司令官だったらあの隙を攻めさせない手はないだろう。その点を含めて今回の敵は前まで戦ってきた敵とは何かが違う気がする。特にあの黒い機体だ。ただひたすらにこちらを殲滅しようとしてくるのではなく、こちらを窺っているようにも見える。…何かあるな。

 

「いったんは全員待機。各自艤装点検を済ませろ。自身の最大のパフォーマンスを引き出せるようにな。全員、俺から突撃指令があるまで発砲をしないこと。いいな?…赤城、加賀、管制機と連絡は取れるか?」

 

緊張しているのか、いつもよりも尖った言い方になってしまう。

目を少しでも逸らせば殺される、そんな雰囲気が敵にはあった。こんなに距離があるのにそれを感じてしまうのだ。

自分のからだ中に変な汗が浮き出るのが実感できる。いやな気分だ。

 

「通信は良好、ただ雲のせいで視界不良との事です」

 

赤城の返答に俺は恐る恐る空を見上げた。幸い、目線を外しても敵が襲ってくるという事はなかった。

先ほどまで清々しいほどに晴れていた空には薄暗い雲がかかり始めていた。雲量5と言ったところだろうか。あの雲は低空に発生するタイプで、今のような初秋には発生しにくいのだが…まああるものは仕方ない。上空からの眼が不完全なら地上にも見張りを増やせばいいだけだ。

 

「北方棲姫、戦闘行為を最小限にし、敵の動向を報告してもらえるか?俺じゃなくて、鎮守府にな」

 

俺は少し意地悪そうに笑って言った。とある作戦があるのだ。ディガー相手に効くか…と言うか当たるかは分からないが。

当の北方棲姫は戦えずにぶすくれているようだ。君の役目が今後の戦局を左右することになるかもしれない重要な役割という事を教えたら逆に目を輝かせ始めた。かなり単純である。

即座に敵戦力の位置、集まり具合などを空からの情報と洋上からの情報、目視とレーダーのデータを照合して、限りなく正確だと言える座標データが完成し、鎮守府に送られた。

 

「提督、データなど送って何をする気だ?」

 

ダンケルクがこちらに寄って来て言った。

その目には疑いの色が含まれていたように見える。ほー、俺を疑うか。ならその疑惑、さっさと払拭しようじゃないの。

 

「今回は戦闘に二段階の作戦があった。一つ目は君たちフランス艦隊の空挺投下による戦力増強、二つ目は…」

 

俺はそこで間を置いた。

指先をペロッと舐めて湿らせ、上空にかざした。

 

「二つ目は、なんだ?」

 

ダンケルクが苛立って答えを催促した。

当の俺は何食わぬ顔で手を戻し、鎮守府に無線をつないだ。

 

『明石、第2段階作戦施行、左に5度旋回』

『了解、左5度』

 

ダンケルクをはじめ、ビスマルクや姉さんまでもが不思議な顔をした。いや、なかなかこの雰囲気好きだぞ、俺。

俺は一旦無線を切って艦隊の皆にもう一度確認した。

 

「俺が突撃って言ったら突撃だからな?」

 

皆は何が何だか分からないというようなあいまいな表情を浮かべつつ頷いた。

それを確認すると俺はまた無線をつなぎ、叫んだ。

 

『明石、やれ!』

『了解!ついにこの時が…っしゃぁ!』

 

次の瞬間、無線越しに大きいとまではいかずとも、質量感を感じさせる砲撃音が響いた。

 

「提督、今のは…!?」

 

加賀が無線の爆発音を聞いて俺に尋ねた。

俺は心配そうな加賀に向かって笑って言った。

 

「戦いにはきっかけが必要だろう?明石に沿岸砲製作を頼んでおいたのさ」

 

敵は依然として白い通常個体を前列に、例の黒い奴は最後尾に陣取ってこちらを睨んでいた。こちらが姿勢を変えたのを見て相手方もまた、グラップルを構えた。

俺はニヤッと笑って言った。

 

「うち自慢の明石(エンジニア)が頑張って作ってくれたんだ。たんと味わいな」

 

程なくして砲弾(対深海棲艦弾頭)が山なりの軌道を描いて飛来する。えーと、1,2,3,4,…何発あるんだ?え?

瞬時に数えることが難しい数の砲弾は我々艦隊を通り越し、敵艦隊に着弾した。

 

「!?」

 

敵は突然降ってきた砲弾に戸惑い、逃げ遅れた。

対深海棲艦弾頭は普通の沿岸砲のサイズであれば艦娘比での80㎝級の砲弾の威力を余裕で出すことが可能だ。つまり…

 

「て、提督…これはあまりに火力オーバーでは…敵が減ることに越したことはないのだが…」

 

 長門が顔を引きつらせてそう言った。まぁ無理もない。着弾と同時に弾頭は爆ぜ、周囲を揺るがすほどの衝撃波と熱波を放ったのだ。直撃したディガーは跡形もなく融解し、周囲にいた個体もまた大なり小なり、傷を負った。まともに逃げおおせたのは例のボスと数十機と言ったところか。手負いを無視できる存在とすれば、数の差はかなり縮まった、勝利への道は開かれたのだ。

 

「全軍突撃!敵の手負いは無視して動ける奴から始末しろ。油断はするな!」

 

俺は高らかに宣言し、我先にと混乱している敵へと突撃を開始した。

俺が目指すのは黒いボス。あいつの正体を確かめたい。もしかしたらコミュニケーションが取れるかもしれない。

そんな期待を胸に抱きながら俺は機関を酷使し、出せる全速力をもって奴に肉薄した。

奴が不意に無感情な目でこちらを見た。そして、こちらへと高速で向かってきた。

(まずい…接近戦用の武器はないぞ…?)

 瞬時にそんな考えが浮かんだが、自分の速度はそう簡単に止められる次元の速度ではなくなっていた。

ブースターを焚き、赤色の炎を勢いよく噴出しながら、奴は俺に砲ではなく拳を向けた。

(接近戦をお望みか…?ならば!)

俺は艤装を手から離し、素手で構えた。

次の瞬間、拳と掌底…もう少し簡単に言えばグーとパーが相対速度100㎞/h超の速度でぶつかり合った。

金属と金属が、戦闘機と戦闘機がヘッドオンの姿勢のままぶつかったような音と衝撃波が辺り一帯を襲った。

 

「…いってぇ…」

 

 俺は受け止めた拳を離さずにそう呟いた。並の人間なら…いや、多分普通の艦娘でもこれを受けていたらお陀仏だっただろう。これを耐えられるのはウチの艦娘たちだけだな。

 まるでアニメのワンカットのように手を突き出した格好のまま暫し静止していた黒いディガーは静かに顔を上げた。ほかのディガーと違って顔が独立稼働するようだ。手の痛みにとらわれて今まで敵の姿を注視していなかったが、改めてみると普通のディガーとはかなり異なっていた。前述にもあるとおり、ヘッドパーツは独立して動いているが、しかし紅い単眼は変わらず、キョロキョロと動いている。外装はゴツく、ブースターの補助が無ければ到底機敏に動けそうもないような見た目だった。今突き出している右手には主武装と思われるコの字型の細長いものが二本ついていたが、拳を突出させるために手首辺りを軸にして180度回転し、先端を肘の方に向けて収納されていた。俺は視線を後ろに引かれている奴の左手に向けた。

(やはり、上位互換でもそこは変わらないのだな)

左手には…左手の甲には形状こそ違えど、グラップルと推測できる鉤爪が光っていた。だが通常個体とは違い、そのグラップルの下にしっかりと左手があった。現在何も持っておらず、握りしめられて、腰の後ろに引かれている手だ。そして、胸部装甲には機体名が書かれていた。

足は通常ディガーと比べると太く、姿勢制御用のブースターが搭載されているようだった。全体的に重々しい印象を与える黒時々赤の個体は俺の顔を見た後、呟いた。

 

「お久しぶりです、提督殿」

 

俺は目を見開いた。その声は直前まで散々目の前の敵の情報を得ようといろいろ探っていた俺の戦闘意欲を削るのに十分すぎる物であった。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「沈めッ!雑兵めが!!」

 

ダンケルクがバックステップで距離を取り、そこに生まれたわずかな距離で自慢の四連装砲を斉射。

しかしその弾丸は僅かにディガーの側面を掠り、背後の水面にたたきつけられ、豪快に水飛沫を上げる。

ダンケルクは軽く舌打ちをし、二番砲塔を一番砲塔とスイッチして切り替え、照準を開始した。しかしディガーはそれを逃さず、背中に背負った一基のブースターを爆発的に起動させて距離を詰める。ほぼゼロ距離まで一瞬にして移動したディガーは、自慢の連装砲をダンケルクに叩き込んだ。

ディガーは勝利を確信していた。ゼロ距離で砲弾を叩き込んだのだから。だが、その確信は数秒後に絶望へと変容する。

 

「この程度か?」

「!?」

 

気が付くとディガーはダンケルクの右手によって空中に持ち上げられていた。いったい何が?ディガーにはそれが理解できなかった。

 

「本来なら首を持ちたいが、生憎そちらさんには首と呼べるものがないようだから、適当につかませてもらっているよ、勘弁してくれ」

 

ダンケルクはディガーの正面装甲を握力のみで歪ませ、取っ手を作っていたのだ。まぁ、ディガーの軽装甲と戦艦の握力を考慮すると無理なことではない。

 

「確かに機動性はとても高い次元のものだった。だが、火力が足りなかったな。私の装甲は並大抵の砲じゃ貫けないんだ」

 

第二砲塔が静かにディガーの方へと向けられる。必死に逃げようもがくが、戦艦の握力と、威圧するような眼差しがそれを許さない。

 

「君は幸運だな。高火力を体験して死ねるのだから。辞世の句は…読めないか」

 

ダンケルクは薄く笑い、さらにもう少し高くディガーを持ち上げた。

 

「Adieu、ディガー」

 

そのまま主砲を斉射し、身動きが取れないディガーに33cm砲弾を四発ゼロ距離で叩き込む。ディガーは四散し、燃え盛る残骸は着水の後ゆっくりと沈んでいった。

ダンケルクは手元に残る変形した正面装甲を一瞥し、燃える海面に投げ捨てた。

 

「さぁ、次に行こうか」

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「なぁ、ティルピッツ」

 

洋上でビスマルクは傍にいる妹に声をかけた。

 

「なんだ?姉さん。珍しいじゃないか戦闘中に話しかけてくるなんて」

 

ティルピッツは若干不思議に感じつつ聞き返した。

 

「さっきちらっと赤城から聞いたんだがな、第一波のディガーはこれと比べ物にならないほど弱かったらしい。今になってこそ私たちと戦えているが…さっきまでは素手で抑えることができたらしい。これを聞いてどう思う?」

 

思ったよりも真面目な話題が返ってきてティルピッツは少し驚き、主砲で敵を牽制しつつ答えた。

 

「多分中身が違うんだと思う。どう違うかと聞かれたらわからないが…、なんか、そんな気がする」

 

ビスマルクは少し笑い、正面を見据えながら言った。

 

「お前らしからぬ曖昧な答えだな…

「だって私たち戦ってないじゃない」

………そうだな…まぁ」

 

ビスマルクは飛んできたグラップルを艤装で弾き飛ばし、向かってきたディガーを正面から粉砕し、笑顔で言った。

 

「私達が今やるべきことは敵の殲滅だ。強かろうが弱かろうが真摯に相手してやろうじゃないか」

「…やっていることは一方的な殺戮だがな…」

 

苦笑いでティルピッツは向かってきたディガーを相手に取る。

ブースターで加速しながら馬鹿正直に突っ込んで来るように見えるそれは、ティルピッツの主砲斉射をブースターとステップで躱し、さらに距離を詰めてくる。グラップルを放ち、ティルピッツの艤装に突き刺そうとするが、体を捻ってそれを回避する。すかさず装填を終えた主砲を叩き込み、今度こそディガーを黙らせた。

 

「…ふぅ。意外と危なかったな」

「さすがは我が妹。ここら辺はもう掃討できたな」

 

ビスマルクに言われて辺りを見回すと、周囲には燃える残骸複数ある程度で、元気に動いているディガーの姿は近くにはなかった。

 

「姉さん、この後は…」

 

ティルピッツがビスマルクに今後の動向を尋ねようとすると、ビスマルクは食い気味に答えてきた。

 

「さぁ、新たな敵を探しに行くぞ!ようやく出番なのだからな!」

 

ティルピッツはこの時思った。ビスマルク(姉さん)はやっぱりビスマルク(姉さん)だ、と。

 

ーーーーーーーーー

 

「ハッハッハ!効かぬ!たかが重巡級の砲身で何ができる!!」

 

高らかに笑いながらフューラーがディガーを3体相手取っていた。ディガーは主砲を懸命に撃ち込むが、ことごとくその装甲に弾き返されていた。その勢いに任せてフューラーが自慢の80cm連装砲をディガーに向けて斉射するが、ディガーの機敏な動きによって躱される。先ほどからディガーが撃ち、フューラーが弾く。フューラーが撃ち、ディガーが避ける。これをずっと繰り返していたのだ。なんと不毛なことか。

だがその無意味すぎるループにも終止符が打たれることになる。

 

「沈めッ!!」

 

不意にディガーの背後で発射炎が3閃煌き、一体のディガーを海の藻屑へと変えた。

 

「戦艦!ドイッチュラント、見参!」

 

そこには小さな装甲k… 「おい」 …戦艦がドヤ顔で立っていた。たった今ジト目になったが。

ディガーは突如として現れた新たな敵に注視し、“コイツならやれそうだ”と言わんばかりに襲ってきた。まぁ、今まで相手にしてきた戦艦からしたらものすごく小さいから当然だろう。

 

「ひぅっ…」

 

突然こちらへ向かってきたディガー2体の圧力に押され、ドイッチュラントは萎縮してしまった。が、その体が傷つくことはなかった。

ディガーは忘れていたのだ。今自分が向けた背の先には世界最大級の戦艦がいたことを。

本日何度目かわからない大気を揺るがす轟音は、初めて戦果を挙げた。連装砲から放たれた2発の砲弾はきっちり一発一体ずつを捉えた。

ドイッチュラントに対してルパンダイブのように突撃していったディガーはその体を粉砕され、ドイッチュラントの背後に落ちた。

 

「大丈夫だったか?…助かったよ、ありがとう」

 

フューラーは尻もちをついたドイッチュラントに手を差し伸べ、お礼を言った。

 

「か…」

「うん?」

 

ドイッチュラントはフューラーに起こされながら言った。

 

「かっこいい!」

「お、おう…ドイッチュラントもカッコ良かったぞ」

「ほんと!?」

「あ、あぁ、本当だ」

 

フューラーは思った。娘ができたらこんな感じなのだろうな、と。

 

ーーーーーーーーーーー

 

「アルザス姉様、後方の掃討は完了しました」

 

ノルマンディーがアルザスに近づいてそう言った。彼女らは2人1組で戦っており、それぞれお互いに背中を預けると言うまぁバトルで言ったらテンプレのような戦い方をしていたのだ。

 

「こっちも完了よ。…暇ねぇ、リシュリュー、そっちは?」

「もういないわ。どんな敵かと思えば意外とあっけなかったわね」

 

ディガーがいない。周辺にいる奴らは狩り尽くしてしまったようだった。

ノルマンディーはアルザスとリシュリューに提案する。

 

「他の人たちに合流しましょう。そうすればまだ仕事はあるかも…」

「それもそうね、そうしましょう」

「異論はないわ」

 

こうしてフランスの最新鋭二人組はその活躍を描写されることなく(作者の怠慢)、半分沈んでいる残骸が多数燃え盛る海域を後にした。

3人が去った後、残骸の中で、火花を散らしながら動き出すものがあった。

 

「…本部二…打電ヲ…“我々部隊はホボ壊滅、防衛体制ヲ…”…」

 

最後の力を振り絞って無線で報告したそのディガーは、直後崩れ落ち、それっきり動くことはなかった。

 

ーーーーーーーーーー

 

「赤城さん、そっちに敵が行ったわ。気をつけて」

 

加賀が41cm連装砲の砲撃で敵を砕きながら赤城に注意を促した。

赤城と加賀は先程の突撃指示より2人で行動してはいたが、2人の距離は遠くもなく近くもないと言った距離を保っていた。お互いの戦いに過度に干渉せずに、しかし連携は取れている戦い方をしていたのだ。過度な干渉は相方には不要、絶対にやってくれるという信頼があるからこそできる戦い方であろう。

 

「大丈夫、もう捕捉してるわ」

 

そう言って赤城は猛スピードで突っ込んできたディガーを避け、すれ違った直後の無防備な背中に砲撃。敵を黙らせた。

 

「流石ね。他の個体はいるかしら?」

 

加賀が赤城と合流し、辺りを見回す。

すぐに攻撃できそうな範囲にはディガーはおらず、少し遠方の方にちらほら居るだけだった。

 

「あちらへ行きましょう。…ってあら、もう見方が交戦を開始しちゃいましたね」

「そのようね。あれは…朝潮達かしら?」

 

ーーーーーーーーーーーー

 

「吹雪ッ!そっちよろしく!」

 

満潮がディガーの一体を指し示して言った。

先程から味方が押しているせいか、ディガーたちの動きが若干引き気味になってきているのが感じられる。この戦い、意外と楽に勝てるかもしれない。

 

「了解!それっ!」

 

吹雪は言われたディガーの頭部を狙って射撃。しかしその砲撃は敵には当たらず、背後の水面を切り裂くのみであった。

 

「しまっ…」

 

途端にディガーに距離を詰められる。いくら連射力の高い駆逐の砲であったとしても、コンマ数秒で詰めてくる敵に対応はできない。したがって吹雪は逃げの一手にかける事になる。

ディガーのグラップルが音を立てて射出され、吹雪に向かう。が、それを体をひねることで間一髪で躱し、即座に距離を取ろうとする。しかし、ディガーはブースターでその速度を殺すことなく進路を変更する。

 

「くっ…このっ!」

 

装填が終わった主砲を構える。ディガーも右腕を構える。

 

ディガーと目が合った気がした。

 

「…ッ」

 

刹那、ディガーの主砲が火を噴き、吹雪の構えていた主砲艤装に直撃する。

これまでに無い鈍い振動を腕に受け、吹雪はよろめき、倒れた。

 

(なぜ…なぜ撃てなかった?)

 

分からない。何故かは知らないが、ディガーを撃つことを一瞬躊躇ってしまった。

不意に目の前のディガーが横に吹き飛ばされた。

 

「しっかりして!大丈夫?」

 

大潮が手を差し伸べてきた。

 

「う、うん、大丈夫…」

「どうしちゃったのよ…」

「さっきまで戦っていたディガーと何か違う気がして…」

「何言ってるの。敵は敵よ。シャキッとして!」

 

大潮に背中を叩かれまた艤装を構え直す。先程の被弾で片方の砲身が使い物にならなくなったが、まだ一門ある。十分にやれるはずだ。

 

「増援を確認!」

 

防空棲姫からの報告。艦隊のほぼ全員がそれを聞き、臨戦態勢へと移った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

時は遡る事十数分前。敵のボスの意外な発言に提督は大いに混乱していた。

 

「お久しぶりです。提督殿」

 

機械音が入ってはいるが、若々しく、少し頼りなさげな声。俺はこの声をよく知っている。俺は突き合わせていた手を離し、お互いに向き合った。

 

「花田…少尉…?」

 

遅かったか。もう少尉は狂った父親…はもういないから陸軍の手によって改造されてしまったか…

しかしここで死ぬ前に花田(父)が言っていたことを思い出し、問いかけた。

 

「なぜ喋れるのだ?君の…父親の話だと意識はあれど喋れないはずでは…」

「先ほどの衝撃波で少し異常が起きたみたいです。それに通常でも少し行動に干渉するくらいなら出来ます…微々たるものですが。この状態も長くは続かないとは思います。今は辛うじて自分の動きを抑えて喋っているだけなので、またすぐに殺戮機に戻ってしまうでしょう…それに」

 

少尉は周りを見るように促し、俺はそれに従った。

 

「今周りで戦っているミットシュルディガーも中身は陸軍兵士なんです。階級が低い人たちを無理くり改造してあるんです」

「なんだって!?…少尉や、兵士たちを救うことはできないのか?」

 

少尉は黙って頭を振った。表情は読み取れない。

 

「不可能です…一つ言うなら、死は救済と言ったところでしょうか…それと、そろそろ時間のようです」

「…そうか」

 

周囲に響く砲撃音や破砕音。それと比べてここは静かで、まるで別世界だった。世界に自分たちだけが取り残されたような感覚が俺を襲う。

 

「はぁ…」

 

俺は大きなため息をついた。今俺が感じているこの感情は何だろうか。

無力感だ。救いの手を差し出したいのに、それは相手を殺すことでしか成り立たないというこの事実に無力感を覚えているのだ。

だがここで呆けていても終わらない。

終わらせるためには、やるしかないのだ。

俺は少尉…じきに少尉であって少尉でない者に戻る機体に主砲を向けた。

 

「提督殿、どうか私を…殺して(助けて)ください」

 

少尉がそう言い終わると、モノアイが一度消え、すぐにその紅い煌めきを取り戻した。

その機体はもう、喋ることはなかった。俺は少尉を本当の意味で救えなかった悔しさで一度歯を食いしばったが、すぐに表情を消して言った。

 

「今からお前を殺す(助ける)。覚悟しろ、復讐者(Rächer)

 

黒い胸部装甲に唯一の白色で書かれた機体名「Rächer(レイシャー)」。その名前の意味するところは一体何なのだろうか。それを考える間もなく、俺たちは戦闘に突入した。




終わると思った?終わると思った?
ごめんなさい終わりません。
次で終わらせられるように頑張ります。

Rächerは、レイシャーだかレイヒャーだかレッヒャーだか、カタカナに直そうとするとまぁ色々あるんですけど、この小説ではレイシャーで行こうと思います。

深海棲艦も活躍させたかったけどごめん。キャパオーバーなんだ。
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