魔改造提督の鎮守府ライフ   作:Jeep53

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ごめんなさい遅刻ですごめんなさいネタがありません

この話…と言うか番外編は元の世界線の設定を引用してはいるものの、本編には一切かかわってこないはずなのでまぁ適当に読んでいてください。

あと全員、生きて、楽しくやってます。はい。



番外編
番外編「クリスマス」


肌を貫くような寒い風が吹く。

ここ(鎮守府)は今、冬の真っただ中にいる。

日常業務(デイリーミッション)もほとんどやり終わった午前八時。俺はと言うと…

 

「あ^~あったけぇんじゃぁ^~」

 

執務室に炬燵を持ち込み、どてらを着てぬくぬくと暖をとりながら残った執務をこなしていた。いやぁ、本当に暖かい。

 

「あれ、またか。万年筆の調子がおかしいな…」

 

俺は最近執務の途中に不具合を起こす万年筆を恨めしそうに見た。こちとら早く執務終わらせて手も温まりたいんだから勘弁してくれよ。あ、直った。

そして執務室には俺とあと一人、秘書艦の鈴谷…おいそこの君、こいついっつも鈴谷秘書艦にしてんなとか言うんじゃない。いいな?…で、だ。鈴谷がいるわけだが…

 

「……」

 

何故か知らんがむくれている。俺は何か怒らせるようなことをしたのだろうか?朝早く起きて執務をほとんど終わらせただけじゃないか。むしろ仕事が無くなったのだから喜んでほしいくらいだが。

”今日はもう終わったからみんなと遊んで来ててもいいよ”って言っても頑なに帰ろうとしないし。

俺なんかしたかなぁ…

 

しばらくして、鈴谷が口を開いた。

 

「ねぇ提督。今日は何の日だか知ってる?」

 

お?何かの記念日か?それに気づかなかったから怒ってるんだな。どれどれ、今日の日付は…

 

 

ーーーーーーーー

カレンダー   |

 

12/24(金)    |

 

クリスマスイブ |

ーーーーーーーー

 

 

あー…やらかしたよ俺。めっちゃやらかしたよ俺。今日もう24日じゃん。忘れてたよ。あれの日じゃん!

「…ごめん、休暇あげるの忘れてた。今日24日だったね。うん。早く言ってくれればよかったのに…待ってろ、今全館放送で休暇の旨を伝えるから」

「えっ、あ…」

 

俺は思い立ったが吉日、と行動を開始し、多分全員自室待機しているであろう子たちにも聞こえるよう、全館放送を入れた。

 

『こちら提督だ。今日はクリスマスイブだという事を失念していた。それでだ、少し遅い気もするが今から全員休暇という事にする。町に繰り出すもよし、外で雪で遊ぶもよし、何でも好きに過ごしてくれ。以上だ。メリークリスマス!』

 

 

 

放送を終え、炬燵に戻ると、先ほどよりは表情が和らいだ鈴谷がいた。えっ、まだ怒ってんの?

俺は意を決して理由を聞いてみることにした。

 

「なぁ、鈴谷」

「ひゃいっ!?…あー、えーと、何?」

 

そんなに驚くことないじゃないか。傷つくぞ…

 

「俺なんかやらかしたか?さっきから怒っているようにしか見えなくてな…」

「別に…クリスマスなのになぁって思ってただけ…」

「ん?別に今から休暇だから、姉妹たちと町に行ってきてもいいんだぞ?お小遣い渡そうか?」

「そうじゃなくて…ッ!…はぁ…提督と出かけたいのに(小声)…」

「ん?なんて?」

「…何でもない」

 

めっちゃため息つかれた。めっちゃため息つかれたよ今。

さらに詳しく尋ねようとした時、廊下からドタバタと走る足音が聞こえてきた。

 

ドアバァン!「しれぇーかん!」

 

暁だ。この声は絶対暁だ間違いない。

声の主はずかずかと部屋に入ってきてこう言った。

 

「今日はクリスマスイブなのよね?…今年私はいい子だったかしら?」

「あ、あぁ、いい子だったんじゃないか?」

 

目をキラキラさせながら尋ねてくる暁の意図が読めずに適当に返したが、次の瞬間その意図を読み取ることとなった。

 

「じゃあサンタさんもきっとプレゼントくれるわよね?」

「あっ…そ、そうだな!きっとくれるさ。…それで、何をお願いしたんだい?」

「えーとね…」

「これだね」

 

不意に暁の後ろから響が顔を出して紙を差し出した。

その紙にはここの鎮守府全員の名前と、それに対応する欲しいものが書かれていた。

 

「これは…一体…」

「鎮守府の正門にこれを張っておけばきっとサンタさんがみんなに届けてくれると思ってね。駆逐艦の皆で色んな人に聞いて回ってリストにまとめたものさ。それで、最後に提督に掲示許可を貰おうと思ってね。こうしてきたわけだよ」

「ちょっと響、私のセリフをとらないでよ!」

 

いつもクールな響が目を輝かせて掲示許可を求めている。あかん、これ届かなかったら泣くやつや。

 

「ちょっと見せてくれるかな?」

「はい」

 

響から紙を貰い、ざっと目を通す。

暁は”ティーポットセット”、響は…”ウォッカ”…、待て、不知火の名前もあるぞ。あの普段は睨んだら人を殺しそうな眼をしている不知火の名前が…えっと欲しいものは…”テディベア”………霞は…満潮は…長門は…え?長門!?…えぇっと…赤城ィ……

 

「しれーかん?貼っていいの?ダメ?」

「!」

 

ちょっとメンツと欲しいものギャップがすごすぎてつい熟読してしまった。あかん、この鎮守府ピュアッピュアやぞ!?…これなんもなかったらマジで落ち込むやつや。戦艦とか空母まで書いてあるし…

 

「あ、あぁ、いいぞ。貼ってきなさい」

「司令官、ありがとう!」

「暁、待っておくれよ」

 

許可すると、途端に元気な駆逐艦二人は執務室から飛び出し、あっという間にいなくなってしまった。

また鈴谷と二人になった執務室の中には妙な空気が流れていた。

俺は話を切り出す。

 

「鈴谷、休みで姉妹と出かけたいのかもしれないが、俺と町に行ってはくれないか?」

「えっ!?…それって…」

「あぁ、プレゼントを買いに行かねば…これは由々しき事態だぞ…」

「あっ…まぁそうだよね…はは…うん、いいよ、行こ」

「マジ?ありがとう鈴谷!じゃ…あと三十分後に正門前でいいか?」

「おっけ~、んじゃ、あとでね」

 

そう言って鈴谷は執務室を出て行った。

 

さて、俺もいろいろと、用意しなければ。

 

ーーーーーーーーーー

 

提督ってば…ちょっとは察してくれてもいいんじゃない?まぁ、鈴谷だって…この気持ちに気づいたのは最近になってからだけどさ…ほんっとに鈍感なんだから!

 

「ま、提督と出かけられるので良しとするかあ~」

「あら、出かけるんですの?提督と?」

 

聞きなれた四番艦の声が後ろで響いた。

 

「!?い、いつからそこに…」

「今ですわ」

「そ、そう…」

「さしずめその感じだと…提督になかなか誘ってもらえなくて」

 

うっ

 

「自分から言いだそうにもなんか気恥ずかしくて言い出せずに」

 

う…

 

「悶々としていたところに何か別な理由でお出かけ…多分買い出しでしょうけど…それに誘われて結果オーライ、と自分に言い聞かせていた感じかしら?」

「…もしかして熊野ってエスパー?」

「あら、私は当てずっぽうで言っただけよ?」

 

私ってそんなに分かりやすいのかなぁ…

 

「そっ、それはそうと熊野、こんな廊下で何してるのさ。休暇なんだからだれかと出かければ…」

私は必死にごまかそうとする。恥ずかしいから早くこの場を去りたいぃ…

「貴女を誘おうと思って探していたんですの。先約があったようなので私は引き下がりますわ」

そう言って熊野はにっこり笑った。自分で自分にとどめさした気がするよ…

不意に、熊野が思いついたように口を開いた。

 

「そういえば鈴谷、貴女サンタさんには何をお願いしたんですの?」

「…はい?」

 

くまのんマジで言ってんのこれ?それとも冗談…

「私は、高級茶葉セットを頼みましたわ。ん~、もう、明日の朝が待ちきれませんわぁ~」

マジのやつだ。相棒がめっちゃピュアだった件について。これどう反応したらいいの…?

「へ、へぇ~、届くといいね!鈴谷は特にお願いはしてないから何が来るかは分からないかなぁ…」

乗り切れた?私乗り切れた?

「あら、何かが届くといいですわね、それじゃ、私は今日の夜に備えなければならないのでこれで」

乗り切れたぁぁぁ!いや…身近にいるとは思わなかったよ…うん。

 

さ、気を取り直して準備しなきゃ。服は何着て行こうかなぁ~

 

 

 

 

三十分後、私が正門に行こうと部屋を出ると、ばったりと提督に出くわした。

 

「お、鈴谷。ちょうどよかった…行こうか」

「う、うん」

 

もうちょっとなんか言ってくれてもいいんじゃない?出会い頭に目をそらさなくてもいいじゃない?がんばってお洒落したのに!鈴谷不貞腐れるぞ―――!…ほんとにもう…あ、提督が私服‥‥‥かっこいいじゃん?

でも言ったら何言ってんのコイツみたいなこと言われるかもしれない…それは嫌だ。うーん、どうしたら…

 

ーーーーーーーーーーーー

 

ちょっとまって?可愛すぎん?直視できないんだが。えっ何これ。俺との買い出しのためにこんなにお洒落してくれたの?いや待て、それは自意識過剰だぞ自分よ。これで間違った接し方をしたら提督失格だ。かわいいねとか言ったらセクハラ扱いされて憲兵沙汰かもしれん。落ち着け俺、落ち着くんだ…!あ、似合ってるよ、なら別にいいんじゃないか?よしこれだ!

 

「あー、鈴谷…」

「ん?なぁに?」

 

落ち着け俺の心臓。落ち着けもちつけ…言うぞ、言うんだ。

 

「その…服、似合ってるな」

「ッ…」

 

待って恥ずかしい、恥ずかしいって!

 

「ありがと…提督も、私服にあってるじゃん?いいと思うよ」

「そうか…ありがとな」

 

このままじゃ俺どうにかなっちまいそうだ。

俺の理性はいつまで持つのかな…

ーーーーーーーーーーー

 

言えた!提督に言えた…!しかもありがとって言ってもらえた。あ…そろそろ正門につくじゃん。めっちゃ長く感じたんだけど…あ、正門から暁ちゃんと響ちゃんが入ってきた…

 

「あら、しれーかん?鈴谷さんとデートに行くのね!行ってらっしゃい!」

「いや、暁、デートと言うわけでは…」

「ふふ、暁、邪魔しちゃだめだよ。…行ってらっしゃい、楽しんできてね」

「お、おう…」

 

ちょ、ちょっとあの子たちなんてことを言ってくれるの!?提督押されてるし…!こっちはせっかく意識しないようにしてたのに…待ってなんか顔が熱く…あぁもう!こうなったらやれるところまでやってやる!

 

暁たちが去った後、提督の顔を覗き込むようにして私は言った。

 

「提督、デートだってさ。手でも繋ぐ?」

 

ーーーーーーーーーーー

 

俺の思考は今停止している。いや、脳内緊急会議が行われているといった方がいいかもしれない。

手をつなぐという事象に関して、脳内の俺、どう思う?

ポンっと脳内に悪魔の角をつけたデフォルメ俺が出てきた。きっしょ。

 

{やっちゃいなよ。相手から言ってるんだぜ?ここでやらなきゃ男じゃないし、満更でもないんだろう?}

 

今度は天使のわっかが付いたデフォルメ俺が(以下略

 

{つなぎなさい。お前、女子の気持ちを無下にする気か?というか嬉しいんだろう?}

 

この間僅か0.3秒。脳内の意見は即決まった。

 

「そうだな、繋ぐか」

「ッ!…はぃ」

 

恐る恐る鈴谷の手を取る。もちろん両者手袋をつけているため素手同士ではないが、恋愛なぞしたことない俺にとって、鈴谷の小さくて細い手はだいぶ刺激の強いものであった。理性消し飛ぶぞ、これ。

 

あ、そうだ。正門の紙回収して行かないとな。

 

ーーーーーーーーーーー

 

提督が欲しいものリストを私と繋いでいる方ではない手で取った。…そう、手をつないでいるのだ。ふざけ半分で言ったことが現実になっているという事実に私は今戸惑っている。うれしいのだが、提督が繋ぐと言った時の反応があまりにも無感情に思えたのでちょっと不安だ。提督…今何を考えているの?

 

ーー

ーーー

ーー

 

提督と手をつないだまま、道中両者とも一言もしゃべらずに町にたどり着く。町は雪がうっすら降り積もってはいるものの晴れており、寒い風が吹き抜けていた。

不意に提督が口を開いた。

 

「なぁ鈴谷。町で提督、と呼ぶと軍関係者だとして変に警戒されるかもしれないから名前呼びしてくれないか?」

「えっ!?」

 

待って待って待って?いきなり名前呼び要求はハードル高すぎない!?

 

「…すまない。嫌だったか」

「いっ、嫌なんてことはなくてむしろ嬉しい…あいや、なんでも…あぅ…」

「?…いやでないなら、お願いするぞ」

「分かったよ提t…防…さん?」

 

勇気を振り絞って私は提督の名前を口にした。心臓が破裂しそうなくらいに早鐘を打っているのがよく分かる。

 

「”さん”はつけなくてもいいぞ。鈴谷」

「ッ…防…これでいい?」

「あぁ。それでいい、大丈夫だ」

 

もうこれ完全デートじゃん。ただの買い出しのはずだったのに、傍から見たらこれもう完全にデートだよ!嬉しいけど!

 

 

 

町中は賑やかで、店という店にツリーが綺麗に飾られていた。商店街のイルミネーションは昼間から点灯しており、地面から屋根に至るまで、たまに来る商店街の雰囲気とはかけ離れていた。

 

「うわぁ、めっちゃ賑やかじゃん!それで提t…じゃなかった防、何を買うの?」

「…ここに書かれているもの全てだな。量が量だから二手に分かれたいのだが、いいか?」

「うん…わかった」

 

まぁそうなるよねー、デートじゃないもん。そう、これは買い出し買い出し。

そう自分に言い聞かせ、提督からメモの半分を渡された。結構あるなぁ…ダンケルクさんの名前がある…えぇ…

 

「それじゃあ、買い出しが終わったら…そうだな、あそこに集合にしよう。買ったものはコインロッカーに預けてから来るようにしようか」

 

提督は商店街の中心部にある、屋根に届きそうなくらい大きな、クリスマスツリーを指さした。

 

「了解了解~、買いものも、鈴谷にお任せっ!じゃ、また後でね!」

 

提督に手を振って、私は別行動を開始した。

 

ーーーーーーーーーーー

 

っはぁー、あー、恋人感半端ねえ…さーて、俺も行動を開始するとするか。買い出しと…今は買い出しだけか。

まずは、吹雪たちだな…えーと、小説、ペンケース、スケッチブックと色鉛筆…みんな比較的小さいものだなぁ、楽で助かるよ。

あとは……

 

ーー

ーーー

ーー

 

かれこれ一時間半くらいたっただろうか。俺はようやくメモに書かれたもの全てを集め、コインロッカーへの預け入れを完了した。今日だけで金をいくら使ったのだろうか…全部経費で落としてやる。

さて、あとは集合するだけだな。鈴谷はもう来てるかな‥‥‥お?

 

ーーーーーーーーーーー

 

「ねぇ、今君一人?俺らこの後喫茶店に行くんだけど良かったらお茶しない?」

「え、えっと…その…」

「いいじゃんいいじゃん、行こうよ」

 

私は今、絶賛ナンパされ中だ。用事を早く済ませて一人で待っていたらチャラ男数人に絡まれて今に至る。

はぁ~、ほんとにやめてほしいんだけど。いい断り文句思いつかないし…それにつき飛ばしたりしちゃうと力の差の関係で相手が重症になっちゃうし…あぁもう、どうしたらいいの?

 

その時だった。私の前に見慣れた人影が割り込んできたのは。

 

「すまないが、こいつは俺の連れなんだ。下がってくれないか?」

「チッ…連れがいたのか」

 

提督だ。提督が私の肩を抱いて目の前のチャラ男を追い払ってくれた。

 

「助かったよ。ありがとね」

 

私がそういうと、提督は目をそらして”当然のことをしたまでだ”といった。目を見て言ってくれてもいいのに。

 

ーーーーーーーーー

 

間に合って良かった。ほんとに良かった。あのバカ者たちが鈴谷に手を出して居ようものならバカ者が病院送りになっていたかもしれないからな。いやぁ、いい人助けをした。

それはそうと鈴谷、ほんとにうれしそうな顔だな。俺の理性を消し飛ばす気か?

 

鈴谷から目をそらすようにして時計を見ると、もうすでにお昼を回っていた。

 

「鈴谷、買い出しに付き合ってくれたお礼と言っては何だが、一緒にお昼でもどうだ?」

「おっ、いいじゃん、t…防、さーんきゅ!」

 

鈴谷が笑った。名前呼びの破壊力が高すぎたせいで俺はもう死にそうだ。

 

ーーーーーーーーー

 

提督からお昼の提案があって、そこから数分、私たちはとある喫茶店に来ていた。

まぁ、普通にお昼を食べるだけだったから特に何もなかったんだけどね。強いて言うなら食事中提督がずっと上の空だったってことかな。もうちょっと会話してくれればいいのに。

食事が終わり、会計の時になった。

 

「合計は3500円ですが、カップル割引適用で3000円です」

 

レジの人がニコニコしながらそう告げた。あ、提督が真っ赤になってる。かわいい~

 

店を出たところで提督が振り返っていった。

 

「なぁ鈴谷。今から帰っても何を持っているの?と聞かれてバレて計画がおじゃんになるかもしれない。だから…その、もう少し二人で店とか見て回らないか?」

「おっけ~、デート延長ね!」

 

提督からアクションを起こしてくれるなんてとてもうれしい。正直このまま終わりかな、と思ってたからさらに嬉しかった。

 

ーー

ーーー

ーー

 

あれからいろいろなところを見て回り、辺りはすっかり暗くなってしまった。イルミネーションが本格的に点灯をはじめ、町中を煌々と照らしている。途中外出していた艦娘たちに遭遇したりしてからかわれた事もあったが、それは傍から見たら私たちはそういう関係に見えているということで、恥ずかしかったけれども嬉しかった。今まで生きてきてこれほどうれしい日はなかったかもしれない。提督と一緒に町を回り、一緒にスイーツを食べ、おそろいのマフラーを買って。今が戦時中ということを忘れそうになる日で、それと同時にこの町の人たちがここまで平和に過ごせるレベルで敵を食い止めている自分たちの仕事が誇らしくなった日だった。

買い出しの後集合したクリスマスツリーの前まで来た。もちろん手はつないでいる。

昼間のあの時とは違ってツリーは輝いており、周りにいる人の数も倍以上に増えていた。

 

「防、離れないようにしっかり繋いでいてね」

 

私は人ごみに巻き込まれないようにしようと提督の手を強く握った。

 

「…あぁ、しっかり繋いでおくよ。もう少しこっちにおいで」

 

提督が私の手を引き寄せ、お互いの肩と肩がくっついた。私は提督の肩に頭を預けた。

自分の体温と心拍数がどんどん上昇していくのが感じられる。周りは人ごみで、うるさいはずなのに、私の耳には提督の心音だけが響いていた。

今日一日で、私と提督はずいぶん距離が近くなったように感じる。体の距離は日ごろから私のスキンシップでほかの人よりかは近かったが、心の距離も近くなった気がする。

二人そろってツリーの近くのベンチに腰を下ろした。そこで私たちはしばらく無言で、ツリーを眺めていた。

 

「あ、雪じゃん」

 

道理で寒いと思った。雪は強すぎず弱すぎない、ちょうどいい密度で降ってきた。

横の提督は、白い息を吐きながら言った。

 

「ホワイトクリスマスだな。いいじゃないか」

 

雪は私たちを包み込むようにしんしんと積もり始める。

提督が腕時計を確認していった。

 

「そろそろディナーの時間だ。さぁ、行こうか」

「えっ、あぁ、うん!」

 

ごく自然な流れでディナーに誘われ困惑したが、そりゃそうだ。今この時間に変えたらみんな食堂にいて鉢合わせになるじゃないか。帰るとしたら九時くらいだろうか…あと三時間も何する気なの?

 

レストランに着いた。落ち着いた雰囲気が漂うその店で私たちは普段拝めないようなステーキやワインなどで食事を満喫した。提督は終始緊張した顔をしている。恐らく今夜のことがうまくいくかどうか心配なのだろう。

 

「防、きっと大丈夫だって!うまくいくよ」

「あ、あぁ。そうだな」

 

励まそうとしたが、提督の緊張はまだ解けないようだった。本当にどうしたのかな…

 

そのまま時は流れ、食事も終わり、もう一度商店街や町中を見て回り、いよいよ鎮守府に帰る時間になった。外の雪はあれから数センチ降り積もり、道は真っ白にコーティングされていた。

 

「ほら、手、繋ご?」

「あぁ」

 

私たちは慣れた手つきで手をつなぎ、鎮守府への帰路に就いた。

 

ーーーーーーーーー

 

俺たちは九時くらいに鎮守府にたどり着いた。朝早くから出てきたのにもうこんな時間か。今日はなぜか時間がたつのが早く感じられた。

鎮守府の電気はもう大体消えており、駆逐艦寮は完全に真っ暗だった。

俺たちはこっそり玄関から入り、執務室まで誰にも会うことなく到着した。

執務室の電気をつけ、ストーブを焚き、部屋の寒さを払拭してからプレゼントの分配に入る。

俺が駆逐軽巡重巡、鈴谷が戦艦空母潜水艦を担当することになった。

 

「それじゃ、防サンタさん、頑張ってね!」

 

サンタ帽をかぶった鈴谷が小声でそう言った。

 

「おい、もう鎮守府内なんだから呼び方戻してもいいんだぞ」

「いいじゃん、これからも二人きりの時はいいでしょ?」

「まぁ、構わないが」

 

その返答に鈴谷は微笑み、執務室から出て行った。

 

「はぁ…俺も覚悟決めねえとなぁ」

 

そう呟いてサンタ帽をかぶった俺は袋を担いで担当の場所に向かった。

 

ーー

ーーー

ーー

 

いやはや、大変だった。寝ぼけた不知火に殺されかけるし、野戦バカ(川内)が起きそうになるし、なんか青葉いねぇし、あいつ外泊許可取ったんかな…

いろいろなことはあれどとりえず無事にプレゼントを配り終えた。俺が執務室に戻ってきたのは大体11時くらいだ。

 

「鈴谷は…まだいないか」

 

鈴谷とはプレゼントを無事渡せたかどうかを確認するために一度執務室に集まるように言ってある。つまりもう一度来るのだ。

俺は手の中の小箱を見た。握れば手の中に隠れそうなほどの小箱は今日買ったものではない。前々から今日のために準備していたものだ。‥‥緊張で手が震えている。大丈夫だ、何も問題はないはずだ。

 

ドアが静かに開かれ、鈴谷が入ってきた。

 

「ただいま、防。無事にプレゼント配り終わったよ…それで…」

 

鈴谷は持っていた袋の中から小さな包みを取り出した。

 

「はい!今日一日鈴谷を楽しませてくれた防にプレゼント!開けてみて?」

 

鈴谷に言われるがままに開けてみると、そこには小さな革のケースに、真新しい万年筆が入っていた。

万年筆を取り出してみると、軸には俺の名前が彫られており、グリップも手にもぴったりとなじむデザインのものだった。

 

「最近よく万年筆の調子がおかしいって言ってたから、今日別行動の時に注文しておいたの。どう?気に入った?」

 

鈴谷はやさしく笑って言った。サプライズが成功して嬉しいのだろう。俺はもっと嬉しいが。

 

「あぁ、ありがとう。とっても気に入ったよ。それで…俺からもプレゼントがあってな…」

「ん~?なに?」

 

俺は意を決したように小箱を体の前に持ってきて開けて言った。

 

「俺と付き合ってくれないか?鈴谷。今まで上司と部下の関係として頑なに自分の気持ちを否定してきたのだが、今日過ごしてみてわかった。やっぱり俺は鈴谷が好きだ。この気持ちは本物だ。これはケッコンカッコカリの指輪だが…受け取ってくれるkぐっふ…」

 

鈴谷が俺に抱き着いた。表情は見えないが、おそらく泣いているように感じられる。

 

「やっと…やっと言ってくれた…!ようやく言ってくれた!…ずっと、ずっと待ってたんだからね!」

 

鈴谷が声を絞り出すように言う。俺もつられて泣きそうになってしまった。

 

「それじゃあ、受け取ってくれるんだな?」

 

ようやく俺から離れた鈴谷は、涙目で頷いた。

俺は鈴谷が差し出した左手の薬指に、そっとカッコカリの指輪を嵌めた。

鈴谷のからだが一瞬淡い光に包まれ、すぐまた戻った。これでケッコンカッコカリは完了、強さが飛躍的に上がることとなった。が、今の俺たちにとっては戦闘力の上昇など些細なことであった。

 

お互いに抱き合い、思いが通じ合ったことを喜び合った。

 

 

ーー

 

「それじゃ防、また明日ね」

「あぁ」

 

それからしばらくして、今日はもう遅いから、という理由で解散することになった。鈴谷と俺は執務室を出てそれぞれの自室に向かうことにした。

 

自室に戻り、電気とストーブをつけてベッドに腰かけ、ひとりでガッツポーズをしていると、部屋の扉がノックされた。

 

「誰だ?消灯時間はとっくに…鈴谷?」

 

俺は体裁を整えてから扉を開いて言うと、そこには先ほど解散したはずの鈴谷がいた。

 

「熊野が…部屋のカギ閉めてて…それで私鍵持ってきてなくて…泊めてもらってもいい?」

 

鈴谷が先ほどの泣き顔とは打って変わって、いたずらっぽい笑みを浮かべて言った。

 

「…それはしょうがないな。泊まっていけ」

 

どうやら今夜は長くなりそうだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌日、プレゼントに沸き立つ艦娘と、鈴谷の朝帰りが青葉の新聞で発覚して鎮守府がちょっとしたお祭り騒ぎになったのはまた別の話である。

 

 

Fin




あ^~書いててほんわかするんじゃあ
というわけで、今回はクリスマス短編という名の筆者の自己満足回でした。いやはや楽しかった。

誤字報告等、ありましたらお願いします。
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