魔改造提督の鎮守府ライフ   作:Jeep53

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「ここは…どこ?」

私が目を覚ますと知らない場所に座っていた。

そこは、広いのかも狭いのかも分からず、ただただ白い空間が広がっている場所だった。

ふと耳に懐かしい声が聞こえてきた。

「お…い、吹雪ぃ〜!」

「…艦長?」

振り返ってみると鋼鉄の船時代の艦長と思しき人物が向こうで手を振っていた。

「行ってみよう」

私はゆっくりと立ち上がり、艦長の元へ歩き始めた。

だが、同時に私の心に疑念が生まれた。

“私はいつからここにいるんだろう…私は戦っていたはずなのに…”

その疑念は艦長の一言で止まることになった。

「止まれ!!」

私は驚いて立ち止まる。十数メートル先で艦長は「下を見ろ」というジェスチャーをしていた。

「…え?」

艦長の指示のままに下を見ると、そこには渓谷が広がっていた。

白く、切り立った無表情な渓谷。底の方は視認できず、水の音も聞こえない。

全てが白い空間の中でそこだけ、黒く染まっていた。

渓谷の向こう岸にいる艦長の方へ視線を戻すと、彼はゆっくりと口を開いた。

「吹雪、お前はまだこちらへ来てはいけない。お前にはまだやることがあるはずだ」

はっ、となった。心の中でもやもやしていた霧が一気に晴れたようだった。

私はゆっくりと口を開く。

「私には、守るべき人がいる」

突如、風が吹き始めた。強く、だがどこか優しい風が私の周りを吹き抜けた。

艦長は、笑っていた。その後ろにはいつの間にか副艦長や、その他懐かしい人たちが勢揃いしていた。

艦長が口を開いた。

「その目標を成し遂げたなら、こちらへ来なさい…ほら、後ろで君を呼んでいる人がいるぞ」

艦長に言われ、後ろを振り返る。

「おーい、吹雪〜」

限りなく白い空間の中でその人影だけがはっきりとしている。

「行きなさい」

背後から艦長が言った。

私は振り返らずに頷き、走り出した。

その人影が少し大きくなってきたところで、私の体は柔らかな光に包まれる。

その光はだんだんと強くなり、視界をぼやけさせ始めた。

不思議と驚きの感情は感じられず、私はその光に身を任せ、目を閉じた。

 

 

 

 

私は目を開けた。目の前には無機質な暗い天井があった。

どうやら私は横になっているようで、おそらくここは医務室らしい。

部屋の中は暗く、窓から差し込む月明かりだけが部屋の中をうすらぼんやりと照らし出していた。

窓から見える夜空を眺めていると、ふと、視界の端に何か動くものが映った。

「司令官?」

司令官が医務室の机に突っ伏して寝ていた。机上には書類が山積みにされており、どうやらここで執務をしていたようだ。

司令官はゆっくりと起き上がり口を開いた。

「…あ、吹雪か………ん!?吹雪!?」

呆けていた司令官の表情が一気に真面目な表情になる。

「どこか痛いところはないか?気分は!?」

「いや、無いですけれども」

「即答!?」

「そんなことより「そんな事って…」…あれからどのくらい経ちました?」

あの戦いは日が暮れ始めた時に始まった。あれほどの怪我なら数日は経ってるはず…

「あれからどのくらい経ちましたか?」

「一週間だ」

「そんなに長い間…すみません」

「気にするな、吹雪が戻ってきて来れたことの方が嬉しい」

司令官の言葉に嘘はないようだった。

安堵とともに、疑問が湧いてくる。

「そういえば…どうやって助けに来てくれたんですか?どうやって敵主力艦隊を沈めたんですか?それと戦場で気を失う前に司令官の後ろに誰かいたような気がしたんですけれど、あれは誰ですか!?」

「え、えっとな…」

「教えていただけないと、気になって夜しか寝れません!!」

「落ち着け!」

そのあと司令官は一通りのことを話してくださった。

 

〜7日ほど前(吹雪との無線断絶直後)〜防(提督)side〜

「吹雪!吹雪!……なんてことだ…」

無線の切れ方からして、戦闘に巻き込まれたのは言うまでもないだろう。報告の通りならば中規模の主力艦隊と見て間違いはないだろう。そんな艦隊相手に駆逐艦一隻で勝てるわけがない。

普通の鎮守府ならここで増援を送るのだろうが、あいにくうちの鎮守府には吹雪以外の戦力がいない。どうしたものか…

そう考えていた時に、工廠から電話が入った。

「出撃できるよー」

「………誰?」

まだ他に艦娘は着任してないはず…?

「工廠の整備妖精ですー」

「…はい?妖精に出撃はできないはずだ。今は非常事態なんだ、ふざけるのはよしてくれ」

「違うよー建造したんだよー」

「なんだって!?」

勝手に建造しやがったのか…まあいい。今は助かったからな。

「それで、誰を建造したんだ?」

ここで駆逐艦や軽巡だったら焼け石に水だ。

「電話変わるねー……お電話変わりました、航空母艦、赤城です」

「おお!赤城か。すまないが一緒に出撃してくれ。哨戒部隊を殲滅に行った吹雪が敵主力とエンカウントして通信が切れたんだ」

「…分かりました。埠頭にて待機しておきます」

赤城の声が少し強張ったように聞こえた。無理もないだろう、これが初めての出撃……あれ、これ吹雪の時も言った気がする。

 

 

埠頭に着いた。時刻は午後6時過ぎ、辺りは日が落ちて暗くなっており、空は紫と青のグラデーションとなっていた。

そこには1人の白を基調に赤をモチーフとした袴姿の女性が艤装を展開して待機していた。

彼女はこちらに気づくとお辞儀をしてからゆっくりと口を開いた。

「お待ちしていました」

透き通るような声、風に吹かれてたなびく黒髪も綺麗だ。これが大和撫子というやつなのだろう。

「提督はどうされるんですか?」

「俺も行く」

そう言って俺は停泊させてあった小型ボートを指さす。赤城は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに元に表情に戻った。

俺が船の艤装を利用しない理由は簡単で、俺が慣れていないからだ。

慣れていない艤装で出撃して死のうものならそれこそ愚の骨頂だ。

小型ボートへ足をかける。地上とは全く違う感覚が足を通じて伝わってくる。そのまま乗り込み、エンジンをかけた。

「一航戦赤城、出撃します!」

隣では赤城が滑るように大海原へ漕ぎ出していた。沈みかけの夕日にかすかに照らされた彼女の横顔は、どこか儚さを感じさせた。

この時俺は、“こんな大人しい性格の女性(ひと)に戦闘ができるのか”と思っていた。

 

だが、それは杞憂に終わることになった。

 

 

 

 

数分後、俺たちは戦闘海域へと差し掛かっていた。

そこでは、吹雪が今にも沈められそうになっていた。

「赤城、いけるか?」

「はい!戦闘(コンバット)モード、起動!」

「へっ!?」

赤城の口から出た言葉に困惑していると、目の前で信じ難いことが起こった。

白かった服は黒を基調としたものに変わり、服装の赤い部分は淡く、黒く透き通っていた瞳は強く、そして(あか)く発光している。

変化を終えた赤城は敵に向き直る。

先程の可憐な雰囲気は何処へやら、一変して鋭い眼光を持つ戦闘狂(バーサーカー)へと化していた。

「えっ、ちょっ、赤城さん?」

俺に背を向けていた赤城(黒)がこちらを見ずに言った。

「提督、危ないので下がっていてください。二度は言いません」

その言葉は冷たく、重かった。

俺は何も言えず、ただ後方から照明弾をあげることしかできなかった。

 

「照明弾ダト!?」

 

戦闘が、始まった。

 

 

 

「第一次攻撃隊、派手に暴れてきなさい!」

赤城は“陸上機”である“ドイツの”Ju87を発艦させた。急降下時の“悪魔のサイレン”が敵の注意を引くのに効果的だと考えたからだろう。

彼女の予想は的中し、敵は上空を見上げ、突如として出現したJu87の対処に追われていた。

 

「敵機上空!」「対空掃討急ゲ!」

 

ここに、隙が生まれた。上空を見ている間は、水平面ギリギリのところの注意はおろそかになるものだ。

「第二次攻撃隊、出番よ」

彼女は見たことのない形状をした雷撃機を発艦させた。

その雷撃機は小振りながらも双発ターボファンでノーズがやたら尖っており、腹の下には大型の魚雷を抱えていた。

そいつらは従来の雷撃機とは比べ物にならない速度で敵へと向かっていった。見ているこっちが恐怖を覚えたるくらい速かったのを覚えている。

あとから聞いたが、どうやら景山(けいざん)という新型雷撃機だったらしい。

雷撃部隊は水面を這うように進み、目標近辺で魚雷を投下した。

迫り来る魚雷を視認したのか、敵がようやくこちらを発見したようだった。

 

「回避急ゲ!」「無理ダ!間ニ合ワナイ!」「敵艦一時ノ方向!」

 

ここはまさにこの世の地獄ともいえる場所と化していた。

被弾する敵艦。こだまする絶叫。吹き上がる爆炎。吹き飛ぶ艤装。

「先ほどまであれほどの余裕があったというのに…フフッ」

そして不敵にほほ笑む赤城。

もはやどちらが敵かわからないほどだった。

 

「反撃開始ッ!」「撃テェ!」

 

敵艦が反撃を開始する。

敵戦艦の第一射。最初から斉射で応戦してきた。

一発目の斉射にもかかわらず、砲弾は赤城の船体ぎりぎりの海中へ着弾する。

敵の練度も見せかけではないようで、確実に赤城を追い詰めてきていた。

ここで巡洋艦が放った砲弾の一発が甲板に着弾した。

「飛行甲板に被弾!…敵もなかなかやるわね…」

だが、被害を受け、砲弾の雨にさらされながらも、彼女はその笑みを口元から絶やすことなく、大胆不敵に振舞っていた。

だが、そこで問題が起きた。

敵戦艦の放った砲弾が赤城の機関部に命中、大破させた。

赤城の笑みが絶えた。

「!?機関大破!航行不能…!フッ…」

だが、彼女はまたすぐに笑った。

「こんなことで、一航戦は、沈まないっ!」

現実では慢心で沈んだけどな!?と、俺は心の中でツッコミを入れておく。俺が馬鹿げたツッコミにうつつを抜かしている間にその変化は起こった。

 

艤装交換(コンバート)!!!」

 

照明弾だけが頼りの暗い戦場に、凛とした声が響いた。

その声が響いた瞬間、あたりは時間が止まったように感じられた。

 

それはほんの十秒ほどの時間だった。

赤城の飛行甲板が短縮され、回転しつつ背後へ格納される。

背後にあったはずの矢筒はいつの間にか武骨な艦橋へとなっており、両脇には連装砲塔がそれぞれ、左に2基、右に3基と付いている”戦艦の艤装”へと変化していた。

「天城型巡戦「赤城」、艤装交換(コンバート)完了。これより敵の殲滅を開始します」

そこの場に居合わせた誰もが自身の目を疑った。空母が戦艦に艤装交換(コンバート)するなんて聞いたことがない。そもそも艤装交換(コンバート)は戦闘中はできないはずだ。

それを戦闘中にやってのけた赤城。…こいつは一体何者なのだろうか…

 

「ヒ、ヒルムナ!撃テェ!」

 

深海棲艦は我に返ったのか砲撃を開始する。が、

「効きませんよ」

赤城はそう言って迫り来る砲弾を手で薙ぎ払い軌道をそらした。

背後に水柱が高くあがる。

 

「ナッ!?」

 

「フフフ…」

赤城は笑い、こう告げる。

「死ぬ準備はできましたか…?」

ゆっくりと前進する。

「撃ち方、始め!」

 

 

 

 

~現在~

「…ってことがあったんだ」

「」

吹雪は石像のように固まっている。

「はっ!」

「戻ってきたか。…今日はもう遅い。明日から通常業務も始まるし、寝ておくことを勧めるぞ」

「…はい、司令官…あの…司令官のお話だと赤城さんはいったん被弾して攻撃を中断したんですよね?私の記憶が正しければずっと攻撃は続いていた気がするんですけれども…」

「俺も少しばかり加勢してたんだ。…もう寝ろ」

吹雪はベッドに横になり、こう言った。

「司令官、ありがとうございました」

「…あぁ、おやすみ」

俺はあの時照明弾しか放っていないんだがな…おそらく吹雪の記憶違いだろう。




Ju87 シュトゥーカ
ドイツの陸上爆撃機。ルーデルさんが乗ってたことで有名。なぜか艦載機運用している。
景山(けいざん)
本作オリジナル雷撃機。推進機関はターボファン2基で、最高時速は550km/hほど。航続距離は500㎞ほどしかない。武装は機首に20mm機関砲4門、コックピット後部に12.7mm機関砲2門、吊り下げ型の95式酸素魚雷一発。増槽は魚雷よりやや後部に装着可能。後退翼を採用しており、高速性が増している。魚雷投下後は戦闘機としても運用可能。なぜか艦載機運用している。
天城型巡洋戦艦 赤城
主砲 41cm連装砲5基、14cm副砲16門、12cm高角砲4門、61cm水上魚雷発射管2基8門、3年式機砲という高火力に加え、舷側254mmVC鋼(傾斜12度)、甲板95mmNVNC鋼、主砲塔前面305mm、同側面152-190mm、同上面127mm、司令塔側面254-330mmVC鋼という長門型を凌駕する装甲も持つ戦艦。ワシントン海軍軍縮条約によって破棄された八八艦隊の計画案の一つである天城型巡洋戦艦の一隻である。なぜかコンバートできる。
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