魔改造提督の鎮守府ライフ   作:Jeep53

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~陸軍地下実験室~

じめじめとした地下空間。コンクリートで固められた壁。天井にはLED蛍光灯が設置されており、煌々と、そして寒々とした色の光を放っている。

その部屋では今、医者と一人の男が一人の人物を前に話し込んでいる。

 

「…それで、実験の結果はどうだったんだ?ドクター」

ドクターは顔色一つ変えずに返答する。

「成功だ。被験体No.1991が深海棲艦に打撃を与えることに成功した」

男は顔色を変えずにまた尋ねた。

「どこで実験したんだ?」

ドクターはぶっきらぼうに言った。

「海軍のやつが苦戦しているところにバレないように支援砲撃を行った。成果は上々、敵艦撃沈だ」

その結果を聞いた男は、肩の荷が下りたように大きく息をついた。

「…ようやくか。長かったなぁ…何年だ?”被験体No.1”の失敗からは」

ドクターは少し虚空を見上げる動作をした後、悲しそうに答えた。

「…およそ18年だ。…俺もすっかり虐殺者になってしまった…」

「あんたは上層部からの命令をこなしただけだ。気に病む必要はない」

「…そうか…”被験体の量産体制”はできているんだな?」

男は少し俯き、頭を振った。そして、目の前のNo.1991を指さして言った。

「まだだ。まだ整ってはいない。近々海軍の奴らにそいつをお披露目してから整えるらしい。上層部には何も言えないからな。私は」

ドクターはそれを聞いて驚いたように言った。

「このタイプの奴らは”X-1計画”に使うんだろ?海軍なんかに見せて大丈夫なのか!?」

「まあまあ落ち着け…海軍に見せるのは”俺らは海軍の援助なしでも海でやっていけるぞ”っていう事を表明して海軍を牽制するためらしい」

ドクターは不安と安堵が混じったような表情をしていた。が、諦めたように言った。

「…分かった。くれぐれも此処がバレることの無い様にしてくれ」

ドクターは男に書類を渡した。

「あぁ、善処する」

男は片手でそれを受け取り、回れ右をした。

「じゃあな。また仕事を持ってくるよ(また人体改造させるからな)

軋む鉄製のドアを開け、男はドアの向こうの階段に姿を消した。

男の姿が完全に消えてから、ドクターがぽつりと言った。

「…もう…来ないでくれ…!」

 

 

 

 

 

 

 

~防の鎮守府(名前未定)~

時刻は午前10時ごろ。日が高くなり始め、厚さがピークへと向かってぐんぐんと上昇し始める時刻だ。そんな中、俺は…

「あぢぃぃ~…何だよこの気温…」

「ですねぇ~…暑いです…」

執務室で吹雪と一緒にのびていた。

「提督…冷房はお付けになられないのですか…?」

赤城がそう言いながら執務室へ入ってきた。

「エアコンが壊れたんだ。今朝方大本営に新しいクーラー配給を頼む書類は送ったよ」

俺は机の上に突っ伏したまま言った。

「それはそうと…提督、大本営から書類です」

俺は飛びあがるように起きて言った。

「クーラーか!?」

「違います」

「だぁぁぁぁぁぁぁぁ…」

そしてまた突っ伏した。

吹雪がけだるげに赤城から書類を受け取り、そして

「提督!超重要書類ですよ!?」

素っ頓狂な声を上げた。

「内容は?」

さすがに超重要書類となっては突っ伏したままで処理するわけにはいかない。俺はバネ仕掛けの人形のように飛び起きた。

「えっと…この間近くの鎮守府…と言っても100㎞ほど離れてますが‥そこがどうやらいわゆる”ブラック鎮守府”というものだったらしく、憲兵隊の監査が入って鎮守府が解体したそうです‥‥‥それで、そこに在籍していた艦娘ほぼ全隻をこちらに配備したいと…」

吹雪が読み上げた後、蒸し暑い執務室の中にしばしの静寂が訪れた。窓際に吊るしてある風鈴が透き通った音を立て、弱い風が部屋の中へ吹き込んだ。

八月の晴れ渡った空、真っ白い雲が悠々と流れている。

セミの鳴き声がやけに大きく聞こえた。

「冗談でしょ?」

「本当ですよ!」

「いや…でも…まあ人員が増えるならいいか…それで、いつ来るんだ?」

まあ、そんなすぐには来ないだろう…うん。

「今日の正午ですね」

赤城がすかさず言った。

「書類来るの遅すぎだろ!?!?」

俺は思わず立ち上がって叫んだ。

「…提督、どうします?」

「んなもん、今から準備するしかないだろう…よし、部屋の準備に行くか」

俺が部屋から出て行こうとすると、二人は驚いたような顔をした。

「司令官が行くんですか?」

「私たちでやっておきますよ?」

「いや…人手が足りないだろう…二人で約百人分の部屋を用意するのか?」

さすがに無理だろう。だってあっちの方全く手つけてないし…

「私が先週暇を持て余していたので全部屋の掃除、片付けやっておきました。あと準備と言えば誰がどこに入るのかを決めることですね」

執務室に本日二度目の静寂が訪れた。吹雪が驚愕の目で赤城を見つめ、俺はフリーズしている。風鈴が鳴った。

「冗談だよな?」

「本当です」

あれこのやり取りさっきもやった気が…

 

 

 

~一時間半後~

「…よし、これで全員の部屋割りも終わったな」

俺たちは相変わらずうだるような暑さで蒸し焼きにしてくる執務室と格闘しつつ、部屋割りを終わらせた。

「お疲れ様です。麦茶飲みますか~?」

吹雪が氷のカラコロという音を響かせながら麦茶とコップをお盆に乗せて運んできた。

「ありがとうございます」

「ありがとうな」

お礼を言って麦茶を受け取り、飲んだ。

冷たいお茶が喉を伝わって腹の中に入っていき、体が冷やされるような感覚に陥る。

「ぷはぁ、うめぇぇぇ」

「ごちそうさまでした」

コップをお盆の上に置く。当の吹雪は未だお茶を抱えてだらけていた。

赤城がふと言った。

「そういえば…あと少しで異動の皆さんが到着する時刻ですね」

「そうだな。そろそろ正門前に移動しようか」

「了解です!ちょっと待ってください。麦茶飲んじゃうので!」

そう言って吹雪は急いで麦茶を飲もうとした。が、

「ングッ!?ゲッホゲホゲホ…」

むせた。

「大丈夫か!?」

「あらあら…急いで飲もうとするから…」

「だ、大丈夫です!ゲッホ…」

「…落ち着いたら行こうか…」

 

 

~正門前~

 

太陽がじりじりと照り付け、影法師が最も短くなる時間帯、正午。

空は青く澄み渡り、海風が吹き付けているという、字面だけなら涼しそうに見える状況だが、風が吹いても熱気を運んでくるだけなので、とても涼しいなんてものではない。

そんな中、俺たちは正門の前で異動してきた艦娘らと対面していた。

一人の艦娘が手を差し出しながら前へ出てきた言った。

 

「私は長門型一番艦長門。提督代理だ。よろしく頼む」

「俺はここの提督の栗田(まもる)だ。こちらこそよろしく頼む。見ての通り、これしか戦力がいないのでな。歓迎する」

俺も手を差し出し、微笑みながら言った。

 

「これから食堂で歓迎会を兼ねて昼食会を行おうと思う。全員食堂に移動してくれ‥‥‥まぁ、クーラーが今壊れていてな。そこは少し我慢してくれ」

 

俺が言った瞬間、艦娘らがざわつき始めた。

「ど、どうした…俺何か悪いこと言ったか…?」

「えっと…私らなんかが提督と一緒に食事なんかしてもいいものなのか?」

「…はい?」

俺らの苦労はまだ始まったばかりである。




ブラック鎮守府
・ブラック鎮守府とは、艦娘に人権を与えず、ただただ兵器として運用し、補給や入渠などもろくに行わずに過酷な労働を長時間強いる鎮守府である。大体の場合そこの提督の性格は腐っている。
・ブラック鎮守府の艦娘らは病んでいること、または曲がった思考を持っている艦が多い。
(個人の独断と偏見による考察です)
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