とある日の事。
桐ヶ谷家にて二人きりで過ごすことにした和人と明日奈。
和人は明日奈と共に、レンタルショップにて借りてきた映画を見ることにした。
再生プレイヤーに映画が記録された円盤を入れ、明日奈が不思議そうに訊ねてくる。
「和人君、借りてきたその映画って一体?」
「意外か? 変身ヒーロー物だよ。昔のTVであったものでな。クラインから聞いた作品でちょっと気になってな。いい機会だし」
和人が借りてきたのは、巨大な怪獣と戦うとあるヒーロー物の映画。
元々は和人達が生まれるずっと前にTVで放映されていた地球を守るヒーローの、戦いを終えたその後の物語。
戦いを終えてヒーローへ変身する力を失い、ヒロインと共に平和に暮らしていた主人公が復活した闇の脅威と再び戦う内容だった。
自分自身が変身するヒーローが元は闇の勢力だった事。
再び戦いへ赴こうとする主人公がヒロインが説得するやりとり。
かつての仲間であった闇の勢力の敵との死闘。
そして最後は巨大な怪獣を倒し、主人公とヒロインは再会。
自分達の夢のために遠く離れ、新しいヒーローを激励するという所でこの映画は終わる。
数十分の観賞の後、見終えた和人は感想を口にした。
「なんていうか、いい映画だったな。こういう映画も存外悪くないんだな」
「……」
「どうしたんだよ、明日奈? 泣いているのか」
「あっ……ご、ごめんね」
和人の言葉に返さなかった明日奈の方に振り向くと、目から一筋の涙を流す光景が目に入った。
心配そうに見つめる和人に気付いた明日奈は涙を拭い、理由を話した。
「なんというかこの映画の主人公がね、君と何処か重なっちゃって」
「えっ……お、俺と?」
「映画の中の主人公はかつて怪獣から人々を守るためにヒーローとしてたった一人で戦ってきたよね。自分が傷つくことも恐れず、苦しんでることを隠しながら、戦って、戦って、戦って……」
「……」
「ほら、誰かのために戦い続けるキミとどことなく似ているって感じちゃって……キミは誰かのためなら傷つく事っを恐れず、苦しむことも受け入れて戦ってきたじゃない」
笑いながらそのヒーローと和人を重ね合わせる明日奈。
その笑顔はいつものように見えるが、何処か物悲しそうに和人は感じた。
「だからね、あのヒロインさんの気持ちが少しわかるの……傷つき苦しむ大切な人の姿をも生みたくないって」
「明日奈……」
「和人君はSAOでも、ALOでも、GGOでも、オーディナル・スケールの時でも、アンダーワールドにだって誰かのために戦ってきた。私達ですら適わない敵を一人で戦ってきた。だからかな、さっきのヒーローと何処かおんなじだなと思って」
「そうだな、思えばいろんな世界で戦ったもんだな」
俯きながら悲しそうに話していた明日奈を、和人はその身を抱き寄せて安心させるように頭を撫でる。
彼女の腕が脇を回して抱き返すと、和人は言い聞かせるように語っていく。
「大丈夫だよ、明日奈。俺も、このヒーローも、ひとりじゃないよ」
「ひとりじゃない……」
「このヒーローには、共に戦う仲間もいた。それだけじゃない、話によると別の作品で後輩のヒーローを助けてるそうだ。俺もこのヒーローと同じく明日奈やみんなに助けられて、だから困ってる誰かを助けにいけるんだ」
「……うん」
「だからさ、俺は大丈夫だよ明日奈。こんな頼りない鍍金の勇者だけど、君のヒーローでいられるように頑張るよ」
「うん。ありがとう、嬉しい」
明日奈は感謝の言葉を口にしながら和人の胸板に顔を沈める。
自分の事を想ってくれている愛らしい彼女を抱き寄せながら、和人はチラリと視線を落とす。
手元には先程見たヒーローの姿が映っていた。
赤と紫で彩られたボディを持つ、銀色の光の戦士。
昭和の頃の時代に誕生した特撮のヒーローの名をついだこのヒーロー。
平成に入って復活し、令和の世になった今でも最新作が作られているこの人気シリーズに何処か通ずるものを感じた。
光の使者とも呼ばれる光の超人、誰かのために戦うヒーロー。
空想の中の存在である彼らに和人自身も何処か縁を感じながら、次の映画を見るまで大切な人のぬくもりを感じていた。
二人が見た映画は『劇場版ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』という作品。
ダイゴもレナも、キリトもアスナも、幸せになってほしい。それが私の願い。