―――パパとママが現実世界へ帰って来てから早一週間。
ようやくALOの世界へ帰って来れた二人を見ながら、私はほっとしました。
AIが誰かを心配する、という事についてはおかしい事なのはわかりますが、それでも私は心配したのは事実です。
下手をすれば戻って来なかったかもしれない、私の両親。
今はこうしてこの森の家に戻って来れてますが、もしもあの世界から戻って来れなかったら……。
そう考えると、私の身体の震えが止まらなくなります。
「……!!」
私は自分の震える手を見て、咄嗟に空いた手で無理やり掴んで止めようとする。
しかし、彼女の手は止まる気配はない。それどころか震える手を抑えている手も震えてきた。
両手も震えてきて、少女は思わず口に出す。
「なんで……なんでですか?」
私の戸惑いの声は誰も答えるはずもなく、ただ虚空に消えていく。
その間にも震えは両手を伝わり肩、さらには身体にも伝わってくる。
震えが止まらない事に恐怖感を覚え、私は思わず助けの声を漏らした。
「パパ……ママ……!!」
「「ユイ(ちゃん)!」」
誰かが呼ぶ声がして、そこで私……ユイの意識が覚醒した。
目を覚ますと、そこはあのログハウスのリビングだった。どうやら私は揺り椅子で眠っていたそうで、周囲を見渡すとゆっくりしているパパとママの二人の姿があった。
私が目覚めた事に気づいた二人は、不思議層のこちらの顔を覗いてくる。
「ユイ、おはよう。よく眠れたか?」
「アップルパイ出来上がったよ。食べてみてね」
「あ、はい。パパ、ママ、おはようございます」
パパとママに挨拶をした私は、二人の元へ向かうべく揺り椅子から立ち上がろうとする。
だけど、床に足をつけた途端、ゆらりと視界が回転する。
「ユイッ!!」
パパの呼ぶ声と共に、視界が真っ黒に染まる。
すぐにパパの胸元に収まっている事に気づいた私は、自分の状況を確認した。
今私はパパに抱えられており、上を見上げると安堵した様子の顔が見れた。
それで自分に何が起きたのか理解した……足がもつれて倒れそうになったのだ。
地面へぶつかる寸前、パパは寸でのところで私を受け止めたのだ。
「ええっと、あれ?」
「ユイ、大丈夫か?」
「大丈夫ですよパパ、私は無事です」
そう言いながら、パパから降りて、床へ足へ着けようとする私。
ですが上手く歩けずよろけてしまう。
今度はママに受け止められて、心配した顏が視界に入った。
「ユイちゃん、本当に大丈夫?」
「あれ、おかしいですね。私、こんなはずじゃ……」
いつもなら普通に歩けるはずなのに、今はバランスすら保てない。
一体何が起こったのか、そう思う私は何処か不安になってしまう。
そんな私の顔を伺った両親は顔を見合わせると、一緒に私を抱き上げた。
「ユイ、こっちに来てくれ」
「ふぇ?パパ、ママ?」
「大丈夫、信じてね」
パパとママの微笑みを向けられながら、私はリビングから二人の寝室へと運ばれる。
ベットに座った私を見て、パパとママは話し出した。
「ユイ、自分が何が起こったのかわかるか?」
「いえ、全然……」
「ユイ、落ち着て聞いてくれ。ユイの身体が震えていたんだ。それも尋常じゃなくな」
「私が震えて……」
自分が震えていたなんてこと、最初は理解できなかった。
でも、何故震えていたのかはだんだんとわかってきた……わかってしまった。
―――怖かったのだ、パパに続いてママも囚われて、このまま戻って来ないまま自分が独りぼっちになってしまうのが。
今は無き浮遊城の頃の、感情がないまま誰かの負の感情を観測するだけの私のように孤独になってしまったら……。
それ以上考えると頭の中が真っ白になり、その先を考えることを自ら拒んでいた。
自らの原因が分かった時、私はいつのまには湧き上がる感情のまま思いのたけを口走っていた。
「ごめんなさい、パパ。ママ。私、怖かったんです。二人がもし戻って来なかったらどうしようって思って……」
「ユイ……」
「私、嫌です。パパとママの二人が離れ離れになるのはいやなんです……また独りぼっちになるのが怖くて怖くて」
私は二人の前で見っともなく泣き出してしまった。目から大粒の涙を零しながら、泣いてしまった。
今の私にとってこの涙を止めるすべはなく、湧き上がるこの感情が収まるまで泣くしかなかった。
そんな私を、二人はおいでと言わんばかりに手を広げて、抱き寄せた。
「おいで、ユイ」
「パパ……」
「心配かけさせてごめんな。あの時、ユイが一番頑張ったもんな」
「ユイちゃんのおかげでアンダーワールドに助けを送れたもんね。ありがとう。本当にありがとう」
「ママ……」
「今はゆっくり泣いて。私達がユイちゃんを独りぼっちにはさせないから」
「うぅぅぅ……あああああああああっ!!」
二人の言葉を聞いて、私の中の何かが弾け、今まで我慢していた涙が決壊した如く流れ落ちていく。
パパとママは私の両頬に口づけをすると、私を包み込むように抱きあった。
今は暖かなぬくもりがある。二人がここにいると証明する暖かさが。
―――私もパパとママの力となって戦いたい。
―――家族の幸せをこれからも守るために。