ソードアート・オンライン キリアス小話詰め   作:地水

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 去年の10月ごろに書いたハロウィン話。
時間軸的にはアリシゼーション編後。


その4:ハロウィンイベントで不思議な体験

 10月31日。

一般的にはハロウィンと表されるこの日。

元は古代ケルトのドルイドの信仰が発祥のこのお祭りは日本でも定着して早数十年。

無論、北欧神話の妖精たちがベースの世界観のALOでもハロウィンに関わるイベントが行われていた。

 

「さーて、今回も楽しく狩らせてもらいますか」

「みんなで楽しめるといいね。キリト君」

 

キリトとアスナの二人はいつもの仲間達と共にハロウィンイベントに参加していた。

このイベント限定だけでドロップする素材アイテム目当てで、特にリズペットは『鍛冶職人として腕がなる』と張り切っていた。

今回のイベントの特徴として一チームに数体のボスを相手することになる特殊なレイド戦になっており、二人の目の前にはジャック・オー・ランタンの被り物をした大きな骸骨のモンスターが立ちふさがっていた。

 

「久しぶりだな。アスナと二人でコンビ組むのは」

「そうよね。最近は後方で支援ばっかりやっていたからね」

「その割にはいい顔をしてるけど、もしかして嬉しいのか?」

「うん、そりゃアインクラットにいたあの頃と同じ感じでちょっとね」

 

アスナはへにゃりと緩んだ笑顔をキリトに向けられ、彼女の暖かな笑顔を見てキリトも思わず笑みを零す。

そんな二人に無視するなと言わんばかりにジャック・オー・ランタンの骸骨モンスターが咆哮を上げた。

二人は表情を切り替えると、それぞれ片手剣と細剣を手に持って、地面を蹴り上げて戦闘を開始した。

 

~~~~~

 

結果はキリトとアスナの圧倒で終わった。

二人が同時に放った最後の一撃によって、ボスモンスターはポリゴンとなって消えていく。

互いに地面へ着地をすると、互いに顔を見合わせる。

 

「お疲れ、キリト君」

「おう、お疲れさん」

 

労いの言葉をかけた後、二人はステータスウィンドウを開き、ドロップアイテムを確認する。

目当てのドロップ品の他にも、見慣れないアイテムがあった。

キリトがそのアイテム名を読み上げる。

 

「『常闇の蜃気楼』?なんだこれは」

「なんか変なアイテム出ちゃったね」

 

オブジェクト化して現れたのは、カブで作られたジャック・オー・ランタンのようなアイテムだった。

確かにカボチャが使われる前はカブが主流だったと聞いてはいるが……。

 

「どんなアイテムなのか使ってみるか?」

「ちょっと、迂闊に使っちゃダメでしょ」

 

早速手に入れたアイテムを使おうとするキリトをアスナが止める。

仕方がなく効果内容を確認しようとしても、『過去の貴方を映し出す』という意味不明な内容しか書かれていない。

一体どんな効果なのか……どうしても気になるキリトは好奇心に負けて使ってみることにした。

 

「みんなが来る前にちょっと使うだけだって。よっと」

「あ、ちょっとキリト君!」

 

片手に持ったランタンを前に突き出すと、強烈な光が照らし出される。

虚空へと光に映されたのは、二つの人影。

二つの影は平面から三面へと変わる様に実体化すると、キリトとアスナの前に現れる。

 

「キリト君、これって……」

「ごめん、アスナの言う通りだった」

 

キリトはアスナと共に剣を構えると、人影の出方を窺う。

だが、人影はじっとしたままで動かず、その場に佇むのみ。

何がしたいのか……?そう思ってる二人は人影を見ていると、ある変化が訪れる。

人影の顔に当たる部分に口のような赤い割れ目が開き、そこから言葉を発する。

 

『『何故、アノ時助ケナカッタ?』』

「「えっ」」

 

その言葉を聞いた瞬間、二人の意識が暗転する。

 

 

次に目が覚めた時には、キリトは暗雲立ち込める真っ暗な場所に佇んでいた。

辺りを見回しても自分以外には誰もいない。もちろん、アスナの姿もない。

 

「……アスナ?何処だアスナ!!」

 

キリトはアスナの名前を呼ぶも、その呼びかけに返ってくる声はない。

代わりに聞こえてきたのは、誰かがすすり泣く声。

キリトが誰かの泣く声に気づいて振り向くと、そこにいたのは……その場に蹲る栗色の髪色の少女。

キリトは信じられない顏で驚き、その名前を口にする。

 

「アスナ……!?」

 

そこにいたのは、そのすすり泣く少女……アスナの姿。

だがおかしい、先程まで隣で戦っていたアスナはウンディーネの種族特徴である水色の髪と尖った耳ではなく、現実世界と同じ栗色の髪色に人間の耳だった。

そして服装は……アインクラッド時代で共に相棒として戦っていた時の装備だった。

 

「アスナ……?」

『―――君と一緒にいたかった』

「!?」

 

目の前で蹲るアスナの言葉にキリトは感づいた。

―――もしかしてこのアスナはアインクラッドにいた頃の……。

 

『例え周りがあることないこと言われても、私は君と一緒に戦っていたかった。最後の一瞬まで』

「……」

『君の隣は心地よくて、強い君と並びたかった……』

 

キリトの目の前にいるアスナは今まで隠していた顔を上げる。

その顔は悲しみに暮れており、大粒の涙をぽろぽろと流していた。

 

『でも、君は離れていった……私の元から離れていった』

「アスナ……」

『君が離れていったことを忘れるために、私は……戦って、戦って、戦い抜いて!……でも、やっぱり君がいないとダメだよ。私は』

 

アスナは再び両目から涙を流しながら、この場にいるキリトではない『彼』を求める。

キリトは一息つくと、目の前に蹲るアスナの元まで近づき、彼女に腕を回して抱き寄せた。

一瞬驚いたような表情を浮かべるアスナだったが、見知ったぬくもりに気づくと身をゆだねた。

 

「……そっか、そんなに思い悩んでいたんだな」

『キリト君……』

「大丈夫。これからずっと一緒だし、俺もアスナから離れたいしないよ」

『……うん』

 

アスナはキリトの言葉を聞いて、何処か安堵した表情を浮かべる。

その瞬間、眩い光が世界を包み込む。

キリトはアスナをしっかりと抱きしめながら、心の中である光景を思い出す。

 

―――ああ、アインクラッドが崩れ往く時と同じだな……。

―――今度は離れ離れになったりするもんか……絶対に。

 

 

~~~~~

 

 

誰かに呼ばれる声に気づいて、キリトの目が覚める。

ゆっくりと瞼を上げると、そこには心配そうに顔を覗かせる愛娘……ユイの姿があった。

 

「パパ!ママ!大丈夫ですか!」

「ああ、ユイか。……俺、一体どうなっていたんだ?」

「合流時間になっても戻って来ないパパ達を探しに来たら、ここで倒れていたのです。覚えてないんですか?」

「ごめん、今記憶が混乱していて……そうだ、アスナ!」

 

キリトはアスナを探そうと身体を起こそうとすると、そこで自身の身体に重みを感じる。

違和感に気づいて視線を向けると、そこにはこちらの身体を抱きしめるアスナの姿があった。

愛する人の無事を確認すると、キリトは深い息をつく。

 

「よ、よかった……無事だったのか」

「う、うぅん……キリト、君?」

 

キリトに続いてアスナも瞼を開けて起きた。

愛する彼の顔が視界に入ると、目を見開いて勢いよく彼の胸元で飛び込んで抱きついてきた。

思わず驚くキリトだが、構わずアスナは口を開く。

 

「キリト君!」

「うぉ!?」

「私、心配したんだよ!?いきなり真っ暗になったかと思えば泣いているキリト君がいて……『俺が死んでおけば』とか『あの時、俺が犠牲になれば』なんて言って!」

「……えっ?」

「私、思わず君に抱き着いて言ったんだよ!『君は生きていていい』って、『君がいる世界で私は生きていけるんだ』って……」

「そっか……俺も、またアスナに助けられたのか」

 

キリトは泣きついているアスナの水色の髪を撫でる。

あの頃のアスナの栗色の髪もよかったが、ウンディーネのアスナの髪色も悪くない。

今にも泣きそうなアスナに言い聞かせるようにキリトは彼女に言った。

 

「言っただろ、俺の命は君のものだ。最後の一瞬まで傍にいようって」

「キリト君……」

「だからさ、あの時……25層でコンビ解消した時とは違って、二度と離れ離れにはならないさ」

「それは私もだよ。今度は悲しい時も辛い時も一緒にいるんだから」

 

アスナは顏を埋めたまま、キリトの身体に腕を回す。

対してキリトもアスナの身体を両腕で抱える、

キリトとアスナは互いに抱きしめ合った二人は、しばしの間互いのぬくもりを確かめ合う。

―――二度と君だけに不幸を合わせないために、未来を二人でつかみ取るために。

 

 

 

「あの、パパ、ママ。仲良しなのはいいんですが……」

 

 

なお、キリトとアスナはその光景を見て苦笑いや怒りの表情を浮かべている仲間達の存在に気づくのはユイに言われてからであった。

 

 

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