時刻はだいたい深夜の2時ぐらい、午後10時ぐらいまで人が多く賑やかだったスラムもこの時間帯になれば人の数も減り静けさが漂う。
そんな深夜のスラムの大通りを走る人影が2つ
「ハァッ...ハァッ...!?」
追いかけられているのであろう男は息を荒らげ、両手にくしゃくしゃになった2、3枚の紙幣を手に血管が浮き出るほど強く握りしめている。
その男を追いかける黒いマントのフードを深く被った人物は全く息を荒らげず、まるで獲物を狙う蛇のように落ち着いた様子で追いかける。
徐々に距離を詰めてくる黒マントにプレッシャーを感じたのか、スラムの大通から裏路地へと男が逃げていく。
ようやく息が途切れ裏路地の奥で男は立ち止まった。
「ハァ...ハァ...ここまで来れば....さすがに...」
次の言葉を口にする前になにかに気づいた男は頭上に目を向け両目を大きく見開いた。
さっきの黒マントが頭上から右手にナイフの様な刃物を持って降ってきたのだ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
驚愕と恐怖によって体が動かない男は上から降ってきた黒マントに押し倒され身動きが取れなくなる。
「クソッ!!全部あいつが悪いんだ!俺の金を奪って逃げたあいつが全部悪いんだ!なのになんで俺がこんな目に....!」
そう涙声で訴える男に対して黒マントは少々幼さが残る低い声で答えた。
「悪いけど、これも仕事なんでな。」
そう言い放ち右手のナイフを男の心臓の位置に無慈悲に突き刺した。
「あ......がッ.......」
男が完全に息絶えたことを確認し盗まれた金を回収すると共に他に金になりそうな所持品がないか確かめて、その場を後にした。
死体は次の日には誰かが通報して警察が勝手に回収していくだろう。
「さぁ、帰るか...」
歩きながら返り血で汚れてしまったマントを脱いでできる限り小さく折りたたんで腰にぶら下げた袋の中に無理やり押し込む。
男を追いかけて走ってきた道を戻り暫く歩いて一つの建物の前で立ち止まった。辺りを見渡して人がいないことを確認し、火事で黒焦げになったコンクリート製の二階建てビルの中に入る。
1階はなんの家具もなくすっからかんだが俺が住み着いている二階にはボロボロではあるがソファやテーブルが置いてありしっかり家として機能している。
腰にぶら下げた袋をテーブルの上に放り投げてソファに倒れ込む。何やら今日は普段より疲れたようで、自分はそこまで辛く無いのだが体は限界を迎えているらしく体を横にするなり、睡魔が眠りを誘ってくる。
壁に掛けた壊れかけの時計が指す時間は午前3時を回っていた。
(寝るか...)
両腕を頭の下に置いて枕替わりにして目を閉じる。
やがて無意識のうちに夢の中に沈んでいった
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