インフィニット・ストラトス ~一人の男と一つの王座~   作:Bradford

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世界はお前が間違っていたと証明するだろう。

あんたらがこの戦争に勝ったとしても。

お前が生きてそれを目にすることはないがな、傭兵。

―クリムゾン1―

(太平洋連邦平和維持軍 クリムゾン中隊 AC 408 8月23日~6月23日 AC 432)



第6話 Uphill, Every Way(上り坂、あらゆる方法)

懐かしい夢を見ていた気がする。

 

自分がこんな世界に来る前の夢だ。

 

自分の恋人、仲間、部下、家族…。

 

色んな人がいた。

 

だが、今はどうだ?

 

自分を愛してくれた姉を殺され、一夏と比べられ、馬鹿にされ…。

 

そんな世界で俺は無理矢理生かされ続けられてきた。

 

死ぬ事も、ISを使わない事も、逃げる事も許されずに…。

 

みんなで一緒に一夏と俺を比べ、俺を虐げる。

 

そんな毎日がまた始まる。

 

 

――――――

 

 

山田「皆さんおはようございます」

 

「「「おはようございます」」」

 

怜也「…。」

 

山田「今日から本格的にISの実習を始めていきます」

 

山田「なので、これからも頑張ってくださいね。」

 

山田「それではまず、健康観察から―――」

 

 

――――――

 

 

IS学園、教室にて...

 

怜也「…。」

 

ただ、ジッと外を見つめる怜也。

 

本音「――――」

 

怜也「…。」

 

本音「――――?」

 

怜也「…。」

 

本音「――――!」

 

怜也「…。」

 

本音「―――い!」

 

怜也「…。」

 

本音「――れい!」

 

怜也「…。」

 

本音「れいれい!」

 

そんなあだ名を呼ばれながら、体を揺さぶられる。

 

怜也「…なんだ?」

 

本音「チョコ持ってない?」

 

怜也「持ってない」

 

本音「え~」

 

分かりやすい反応をする

 

怜也「取り敢えず、今は一人にしてくれ」

 

本音「え~、何で?」

 

怜也「いいからほっといてくれ…。」

 

本音「…分かった」

 

タッタッタッ…。

 

怜也「…。」

 

また、窓の外を見つめる。

 

怜也「…はぁ」

 

 

???「――――!?」

 

一夏「――――、――――――」

 

???「――!?、――――」

 

千冬「―――――、―――」

 

千冬「―――――――――」

 

???「―、――!――――――!」

 

 

一夏と誰かが話しているようだ。

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 

怜也「次はIS実習か...」

 

 

――――――――――

 

 

IS学園、第一アリーナにて...

 

千冬「では、これよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。」

 

千冬「先ずは見学だ。怜也、一夏、セシリア、ISを展開しろ」

 

「「はい」」

「…。」

 

一夏(こい、白式)

 

一夏がそう心の中で念じるが展開できない。

 

一夏「あ、あれ?」

 

千冬「一夏、集中しろ」

 

一夏「は、はい」

 

千冬に急かされる一夏

 

一夏「来い、【白式】」

 

一夏がそうつぶやくと真っ白な装甲を持つISが一夏の体に纏われる

 

千冬「1.6秒か、最低でも1.3秒まで縮めろ」

 

一夏「分かりました」

 

千冬「セシリア、展開しろ」

 

セシリア「分かりましたわ」

 

セシリア(来なさい、ブルーディアース)

 

千冬「1.2秒、代表候補生なら1.0まで縮めろ、いいな?」

 

セシリア「はい」

 

千冬「怜也、展開しろ」

 

怜也「…。」

 

ISを展開する。

 

千冬「1.0秒。この中で一番早いな」

 

千冬「とにかく、無事に展開出来たようだな。三人とも飛んでくれ。」

 

「「はい」」

「…。」

 

三人で一斉に飛ぶ。

しかしその途中、一夏が二人に対して遅れをとった。

 

千冬「何をやっている、一夏。スペック上の出力では白式が一番なんだぞ」

 

因みに、スペック上での飛行性能は高い方から順に

一夏の『白式』、セシリアの『ブルーディアース』、そして俺の『メイヴ』だが、今の飛んでいる状態は『メイヴ』、『ブルーディアース』、『白式』と、なっている。

 

メイヴはISとは(ある意味)別物だし、腰にスラスター付けてるからな。

 

一夏「そんなこと言われても前方に角錐を作るイメージなんてわかるわけないだろ」

 

セシリア「一夏さん。イメージは所詮、イメージ。自分がやりやすい方法を模索するのが一番ですわ」

 

一夏「そう言われてもなぁ・・・空を飛ぶ感覚自体が、まだあやふやなんだよ。何で浮いてるんだ、これ?」

 

セシリア「反重力力翼や流動波干渉の話になりますがよろしいですか?」

 

一夏「やめとくよ…。」

 

一夏「ていうか、怜也はどうしてそんなにうまくできるんだ?」

 

怜也「自分で考えろ」

 

一夏「えぇ、教えてくれてもいいじゃないか」

 

怜也「嫌だね」

 

千冬「怜也、織斑、オルコットは急下降と完全停止をやって見せろ。目標は地表から10㎝だ」

 

「「了解」」

「…了解」

 

セシリア「では、お先に」

 

流石は代表候補生。ISに慣れているだけあり、難なく課題をクリア。地面への帰還を果たした。

 

怜也「…。」

 

黙ってゆっくりと降下していく。

 

一夏「んじゃ、俺も行くか!」

 

そう言って、意気揚々と急降下を開始する一夏。

搭乗者は初心者であるが、機体である『白式』は優秀なようですぐにハイスピードに乗る事が出来た。

 

出来たが…。

 

一夏「うわ、あぁああッ!?」

 

バランスを崩す一夏

 

そしてその先には…。

 

怜也「ん?」

 

バランスを取りながらゆっくり降下する怜也がいた。

 

一夏「れ、怜也!ど、どいてくれー!」

怜也「クソッ!一夏ふざけるんじゃな―――」

 

ドガシャーン!

 

怜也に派手に衝突する一夏。

凄まじい衝突音と生徒の叫び声がアリーナに広がる

 

ドゴーン!

 

ぶつかっただけなら良かったがそのままの勢いで地面に衝突する。

 

箒「一夏!!」

 

箒が土煙の上がる二人の墜落地点へ駆け寄ろうとした…その時。

 

「このクソ野郎が!」

 

キュィィィーン バァーン!

 

聞きなれない音と共にオレンジ色の線ができる。

 

一夏「うわっ!?」

 

一夏はギリギリでよけたが、SEが半分も減っていた

 

一夏「かすっただけでSEが半分も…。」

 

箒「一夏!?、怜也、貴様ッ!」

 

怜也「黙れ!お前ら女が騒ぐな!」

 

「「「ッ!?」」」

 

87式支援突撃砲(得物)を握り一夏に狙いを定める怜也

 

怜也「お前がいなければ、俺はこんな地獄に来ることは無かったんだ!」

 

まるで別人の様になっている怜也を全員が見る。

 

怜也「お前のせいだ!全部お前のせいなんだ!」

 

山田「れ、怜也君、落ち着いて!」

 

怜也「チッ!」

 

舌打ちをした後、自身の得物87式支援突撃砲(得物)をしまい、ISを待機状態に戻す。

 

怜也「ハァ、ハァ、ハァ…少し頭を冷やしてくる」

 

千冬「あ、ああ、分かった」

 

怜也「おい一夏」

 

一夏「な、なんだよ」

 

怜也「二度と俺に話しかけるな、ほかのやつもだ」

 

そんな言葉を吐きながらアリーナの出口へ歩いて行く怜也。

 

「な、なんなのよアイツ!?」

「偉そうに…これだから男ってのは…」

 

怜也に対しての言葉が女子生徒の口から漏れ出す。

 

だが、生徒の口から出てくる言葉は怜也に対する軽蔑や畏怖の言葉ばかり。

 

箒「一夏、大丈夫か!?何のつもりだアイツ!」

 

一夏「大丈夫だ。(な、何なんだよ今の殺気は!?人が出すようなものじゃないぞ!)」

 

山田「大丈夫でしょうか…」

 

千冬「アイツのことだ、また直ぐ元に戻るだろう」

 

千冬(にしても今の言葉遣いに武器の展開速度。0.3秒よりも早かった気がするが、気のせいか?)

 

千冬は怜也からの"違和感"を感じていた。

 

そう…まるで"過酷な戦場を生き延びてきた軍人の様な"手慣れた動き。

 

武器の構えも完璧だった。慣れた手で自分が愛用している筆を使うような風に。

 

 

本音「れいれい…大丈夫かなぁ?」

 

 

怜也の心配をしているのは本音ただ一人であった。

 




というわけで、久々の投稿でした。

あと、UAが1,736も行ってたのは驚きました。

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