インフィニット・ストラトス ~一人の男と一つの王座~ 作:Bradford
そこに生きる者一人一人が国を成しているのだ
線をまたぎ戦争をする傭兵に守るべき国などない。
そんな相手になぜ私は負けたのだ
ただ強さだけを求めていたような奴に
国を背負わねば速く飛べるとでもいうのか。
―デトレフ・フレイジャー、通称:赤いツバメー
(ベルカ公国、ディンズマルク大学、戦闘機パイロット、歴史学教授)
IS学園、第1アリーナにて…
本音「ねぇねぇ、れいれい。」
怜也「なんだ?」
本音「この試合、どっちが勝つと思う?」
怜也「さあな」
「なんであいつがここにいるのよ?」
「知らないわよ」
「専用機持ちのくせに弱いなんて」
怜也「ハァ…。」
本音「ため息ばかりついてたら幸せが逃げるよ?」
怜也「はいはい、わかってるよ」
そう返すが心の中では別のことを考えていた
怜也(なんとなくだが、嫌な予感がする…)
―――――――
観客席から声援が巻き起こる中。第一試合、一夏と鈴から始まるの戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。
鈴がオープン・チャンネルを開き、一夏に話しかける。
鈴「一夏、今謝るのなら少しくらい痛めつけるレベルを下げてあげても良いのよ?」
一夏「そんなもんいらねぇよ、全力で来い!!」
そう言いながら、雪片を構える一夏。
鈴「言っておくけどね一夏、ISの絶対防御だって完璧じゃない。シールドエネルギーを突破する攻撃力があれば、本体にダメージを貫通される事は出来る。なにより命は守られても痛みは感じるんだからね」
そして鈴自身も戦闘態勢に入る。
睨み合う二人。
何時の間にか、あんなに騒がしかった観客席は静まり返り、固唾を飲む音だけが聞こえる。
『それでは両者・・・試合を開始してください』
『『ッ!!』』
試合開始の号令と共に同時に両者が動き出す。
一夏「ハアァァァァァ!」
まずは一夏が一直線に鈴の元へと突撃する。
しかし、鈴の専用機『甲龍』の浮遊部位の装甲が一部スライド。その進路の途中で何かに当たったかのように一夏が大きく仰け反って止まり、大型スクリーンに映された白式のシールドエネルギーか減少した。
怜也「…。」
セシリア「!?今のは一体」
本音「え!?今の何!?」
怜也「"衝撃砲"だ」
本音「しょうげきほー?何それ?」
怜也「空気に圧力を掛けて砲弾として打ち出す中国の第三世代兵器だ」
本音「へー」
鈴を真下から攻撃を仕掛けようとする一夏がまた吹き飛ぶ。
このまま一方的な試合展開が行われるかと誰もが思う中・・・
怜也「チッ、段々とだが、衝撃砲のクセや仕草を無意識に察知し始めてる」
怜也の言う通り、一夏は鈴から繰り出される衝撃砲を把握していっていた。
怜也「…クソッ、何故アイツがいつも俺の上に立つんだ。」
そんな恨みの混じった言葉をよそに、一夏と鈴の戦いは更に激しくなる。
鈴『やるじゃない! どんどん行くわよ!』
鈴の荒い声と共に今度は一夏の僅か右の地面がハンマーで叩き付けられたように窪む。
調べた際に、衝撃砲は連射速度と弾の大きさもコントロール出来るというのを知った。
箒「なにをやっている一夏! お前の力はそんなものなのか?!」
一夏『ッく! ウォオオオオオ!!』
観客席からの箒の応援に答えるように雪片を構え直し、鈴に攻撃しようとする一夏。
その時だった…。
ガシャァァァン!!
怜也「…。」
本音「え!?なになに?!」
凄まじい爆音と衝撃と共に空から光の柱がステージ中央に降り、アリーナのシールドを突き破った。
一夏『な、なんだッ?』
鈴『あれば・・・あれは何・・・!!』
土煙が上がっている中心には何かがいるようで、近くにいた一夏と鈴は視線を外さなかった。
その土煙から出てきたのは、全身装甲に身を固めたISだった。
千冬『試合中止! 織斑、凰はただちに退避しろ!!』
警報が鳴り響く管制室から、千冬の声が通信を通して聞こえて来る。
一夏「なんだ!? 一体何が起こってるんだよ!?」
鈴「一夏、試合は中止よ! すぐピットへ戻って!」
いち早く状況を飲み込んだ鈴は一夏に声をかける。
だが、白式からロックオンアラートが鳴り響く。
一夏「俺がアイツにロックされているのか?」
鈴「一夏、早く逃げなさい!」
一夏「逃げるったって、鈴、お前はどうするんだよ!?」
鈴「私が時間稼ぎするから、その間に逃げなさい!」
一夏「逃げるって・・・女を置いてそんな事出来るわけないだろ!」
鈴「一夏、アンタバカじゃないの?! アンタの方が弱いんだからしょうがないでしょッ!!」
一夏「なにを!!」
山田『喧嘩しないでください二人とも! 今すぐ脱出してください! すぐに先生たちのISが駆けつけます!!』
こんな状況にも関わらず言い争う二人に管制室から山田先生は逃げるように指示を送る。
だが一夏はそれを素直に聞く程、素直な性格ではない。
一夏「でも、みんなが逃げるまで食い止めないと!!」
山田『そ、それはそうですけど・・・でも、危険です!!』
山田教諭が一夏の言葉に否を唱えた次の瞬間、正体不明機が腕を突き出し、そこから出た光の帯で一夏と鈴を貫こうとするも何とか回避に成功するが。
その所属不明機が放った光はいともたやすくアリーナのバリアを貫通する。
『『『キャぁあアアア―――ッ!!?』』』
阿鼻叫喚の大混乱の坩堝となる観客席。
一夏「待ってる場合じゃないッ、行くぞ鈴ッ!!」
鈴「ああもう!一夏!、どうなっても知らないわよ!!」
痺れを切らした一夏が突っ込み斬りかかり、鈴がそれを衝撃砲で援護する形となった。
―――――――
「あ、開かない!」
「何でッ、何でよ!?」
「いやだ!こんな所で死にたくない!」
一方で正体不明機の攻撃に大混乱となった生徒達は出口へと詰め寄る。
だが、開いていた扉は何故か閉ざされていて一人も逃れられない。叩けど叫べど、扉は動く気配すらない。かなりまずい状況だ。
怜也「慌てず騒がず急がず…そんなこともできてないのか?」
本音「そんな他人事みたいに言わないでよ?!」
さすがの本音も今は声を荒くする。
怜也「そんなこと言われてもなぁ…焦らず冷静に周りの状況を確認する。基本中の基本だ。それぐらい出来なかったらISなんて乗れないぞ?」
本音「それとこれとは関係無いでしょ!?」
怜也「はいはい悪かったよ。で、本音。どうすんだ、この状況?」
本音「え・・・えっと・・・取りあえず、管制室にいる織斑先生に連絡をとって避難指示を仰ぐしか…」
怜也「通信どころかIS学園全体にジャミングがかかってる。それもかなり強力なやつがな。どれだけ強い電波を出してもジャミングにかき消されるだろうし…。」
怜也「どうするか…」
怜也「本音、ドアの手動開閉スイッチとかないのか?」
本音「あるにはあるけど…」
怜也「なんだ?」
本音「この状態じゃドアが開いた瞬間一気に人が出てって大変なことになると思うよ」
怜也「兎に角このままじゃ埒が明かない。スイッチは何処にある?」
本音「ドアの近くのパネルの中にあるよ」
怜也「分かった。取り敢えずこの騒ぎを沈めてくれ」
本音「うん、分かった」
「何であかないのよ!?」
「どうにかしなさいよ!」
「うるさいわね!ならあんたがしなさいよ!」
「嫌に決まってんじゃない!」
後ろで騒ぐ生徒を無視して怜也はパネルを探す
怜也「パネル、パネル、パネル…」
怜也「ん?"ドアオーバーライドパネル"?これか!」
怜也「でも固くロックされてる。どうやって開ければいいんだ?」
怜也「ん?」
怜也が隣を見ると大きなガラス張りのケースの中にメンテナンスジャックが入っていた。
怜也「これ使うか」
ガシャン!
ケースのガラスを割る。
「えっ!?何?!」
ドアをたたいていた生徒の一人が声を上げる。
怜也「…!」ガン!べキン!
パネルにジャックを突き刺し、パネルを剝がす
怜也「このレバーか」
怜也がそう言ってレバーを引くとドアが開く。
「ドアが開いた!」
「早く逃げましょ!」
「早く!急いで!」
全員がドアをくぐり抜けてシェルターににげていく。
怜也(さて、他のドア開けて俺も避難しないとな…)
ドアを開けながらそんなことを考えていると突然本音が声をかけてくる。
本音「れいれい~!」
怜也「あ"あ!?何してんだ本音?!早く逃げろ!」
本音「それよりも大変なんだよ~! しののんが、箒が皆とは逆方向に走って行っちゃったんだよ~ッ!」
怜也「あの馬鹿野郎…!あいつはどこに行った!」
本音「あっちのほうだよ~!」
怜也「分かった!お前も早く逃げろ!いいな!?」
本音「分かってるよ~!」
タッタッタッタッ!
怜也「クソッ!面倒なことしやがって!」
―――――――
一夏「なぁ、鈴・・・あのISって何かおかしくないか?」
鈴「はぁ?何言ってんのよ?」
一夏「いや、何て言うか・・・あのIS、機械的って言うか・・・本当に人が乗ってんのか?」
鈴「はぁ?」
確かに言われてみれば機械のような動きしかしてこない。
鈴「何言ってんの一夏?ISってのは人が乗らないと動かない…」
鈴「確かに、そう言えば、私達が会話してる時は確かあんまり攻撃してこないわね」
一夏「だろ?」
鈴「ねえ、一夏」
一夏「なんだよ?」
鈴「仮に無人機だったとして、だからなんだって言うのよ?」
一夏「ああ・・・人が乗ってないなら遠慮なく『零落白夜』で攻撃出来るからな」
鈴「それができてたらこんなことになってないわよ!」
鈴の言う通り。
目の前のISが無人機でも攻撃が当たらなければ意味がない。
一夏「大丈夫だ。次は当てる!」
鈴「あんたねぇ…」
「はぁ」とため息をつく鈴。だが、この状況では白式の零落白夜に頼るほかない。
一夏「なに、ちゃんと俺に考え―――――『一夏!!』―――――って、え!!?」
突然アリーナに響き渡る聞き馴染んだ声に振り返って驚く一夏。
視線の先にあるガラス窓の放送室には、逃げた筈であろう幼馴染の姿があった。
一夏「ほ、箒!?」
鈴「あの馬鹿、一体何やってんのよ!?」
箒『男なら、そのくらいの敵に勝てなくて――『お前!こんな所で何やってるんだ!』――お前!?』
「「れ、怜也!?」」
怜也『何やってるんだ!自分がどれだけ迷惑かけてるかわかってるのか!?』
箒『うるさい!私にはやらねばならん事があるんだ!』
怜也『馬鹿げた事を言うな!早く逃げろ!』
無人機が放送室を見つめ、ビーム兵器を向ける。
一夏「ッ!?鈴、早くやれ!」
鈴「はぁ!?やれって何をよ!?」
一夏「良いから俺の背中を撃て!!」
鈴「どうなっても知らないからね!!」
ドウン!と訳も解らず、一夏の背中に衝撃砲を撃つ鈴。
至近距離からの射撃に身体は大きく前へとのめり、その衝撃を利用してそのまま一夏はゴーレム目掛けて突貫する。
一夏「ウォオオオオオーッ!!」
ザギィンと金属を叩き切る音がアリーナ内に響き渡る。
ドガッ!
一夏「ぐわァッ!!?」
だが、彼の斬撃は正確さに欠けた為にゴーレムの左腕を斬り落としただけに過ぎず、途端に足蹴を喰らい吹き飛ばされる。
そして、無人機のビーム砲撃が二人のいる放送室に向かって放たれた。
―――――――
怜也「クソッ!」
箒「お前、急に何を!?―『バシィ!』ーッ?!」
怜也が箒を容赦なくビンタする。
箒「何をする!?「うるさい!黙れ!」ッ!?」
怜也「お前!ふざけるなよ!他の生徒を殴ってまでこんなことしやがって!自分の行動がどんだけ危ないことかわかってないのか!?」
箒「わ、私はただ一夏を応援しようと!」
怜也「それがほかのやつに迷惑かけてんだろうが!」
怜也「ていうかあと少しで崩落しちまうじゃないか!」
クソッ!
何でいつも面倒ごとに巻き込まれるんだ!
いつもそうだ!
面倒なことばかり俺に飛んでくる!
なんでなんだ!
クソックソックソッ!
あいつがいけないんだ!
あの馬鹿が素直に撤退していればこんなことにはならなかったのに!
元はと言えばあの無人機がいけないんだ!
あんなものが存在しなければ!
そんな憎しみの籠った感情だけが湧いてくる。
あんなもの…
バラバラにしてやる…!プツン
心の中で何かが切れたような気がした。
―――――――
一夏「そ、そんな…」
一夏「箒ィ!!」
一夏「クソォ!」
鈴「馬鹿!一夏!!」
激昂に駈られ、雪片を構えて無人機に対して突撃する一夏。
だが、その動きは余りに直線的過ぎる。
ハイスピードで突撃していく一夏にビーム砲を向ける無人機。
その時だった。
「このくそ野郎がァ!」
ドガシャーン!
「「ッ!!?」」
一夏の真横から凄まじい速さで無人機にタックルをかます。
その勢いでアリーナの壁に無人機ごと突っ込む。
箒「一夏ァ!」
一夏「っ!?箒!?」
鈴「あんた、よく生きてたわね!?」
崩れたがれきの中からひょっこりと顔を覗かせる箒に安心する一夏。
しかし、彼女と共にいた筈の怜也の姿がないことに気づいた一夏が怜也の場所を箒に聞くと無人機の墜落地点へ指を差す。
一夏「れ、怜也!?」
鈴「な、なにあれ!?」
一夏と鈴はその状態に驚愕する。
怜也「クソが!クソが!クソが!」
そこにいたのはISを纏った状態でメンテナンスジャックでただひたすらに無人機を殴り続ける怜也の姿が。
無人機も抵抗するためにビーム兵器を怜也に向け、発射しようとする
怜也「そんなことできると思ってんのか!!」
やらせないと言わんばかりに無人機の腕をメンテナンスジャックで壁に突き刺し固定する
一夏「お、おい怜也、お前」
鈴「何もそこまでやらなくても――」
怜也「クソが!バラバラにしてやる!バラバラに引き裂いてやる!」
憎しみの籠った言葉を2人の言葉の返答として投げつける。
XAMWS-24を背中のハンガーから取り出し、無人機に向け引き金を引く。
ダダダダダダダダッ!!
怜也「死ね!死ね!死んじまえ!」
マガジンに入ったケースレス弾を全て撃つ。
弾丸の残量を示すカウンターの数字がどんどん減っていく。
1100…1000…900…
600…500…400…
300…200…100…
0…
カチッカチッ
怜也「チッ!クソがぁあぁぁ!」
XAMWS-24の銃剣を無人機に何度も突き刺す。
胸部の装甲板の隙間に銃剣を刺し、剝がしていく。
そして装甲板がすべて剝がれ配線がむき出しになると、手当たり次第に切り裂いていく。
怜也「見つけたぞ!お前のコアを!」
胸部から腕を抜き取り、配線だらけのコアを握る。
無人機も残った力を込めてコアを奪い返そうとするが
怜也「とっととくたばれ、この鉄くずが!」
怜也が言葉を放つと同時にコアを思い切り引っ張り配線を引きちぎる。
怜也「ハァ…ハァ…ハァ…」
そして怜也はコアを
一夏「れ、怜也?」
怜也「話しかけるんじゃねぇ!お前があの時後退してたらこんなことにはならなかったんだぞ!」
怜也「それかお前がもっと早く倒せてたらこんなことには…なって…なかったんだ…」
目の前が暗く始め、意識が朦朧とする。
鈴「救護班、早く救護班を呼んで!!」
一夏「お、おい怜也!?」
莫大な疲労に負け、意識を手放す怜也。
彼が意識を手放す寸前、「この学園の奴らは全員使えない。」そう思った。
ぬわぁぁぁぁん疲れたもぉぉぉぉん!
(5000文字超えは)いやーきついっす