先日の村正ガチャ爆死したアイリスと申します。今回はステンノ様を主役に据えてみました。
3話程度投稿しておきます。
4話以降は月イチ程度で投稿(予定)。
1話
舗装された現代日本の道路とは程遠い、山中の荒れた地面を往く馬車。
私はその3畳程度の広さの荷台の上で、天井をボーっと見つめていた。
荷台いっぱいの大きさの、私達を逃がさないよう周りをぐるりと取り囲む鉄格子。その上から布が張られ外からは見えないようになっている。出入り口には鉄で出来た錠前が付けられていて、私の力ではどう足掻いても脱出は不可能ね。
奴隷用の荷台にサスペンションなんて付いている筈も無く、ガタンガタンと大きく揺れてお尻が痛い。私の周囲に座っている奴隷達はどうなんだろう。みんなずっと項垂れたままだから表情は窺えない。
「はぁ」と小さく溜め息をついた私は、自身の左手の甲に付けられた『奴隷の焼き印』に視線を落とした。
この魔法陣型の焼き印には『主人に決して逆らえない、主人を傷つける行為が出来ない』という精神系の魔法が込められているらしい。まぁ、精神干渉系はEXクラスの『女神の神核』を持つ私には全く効かないから奴隷印なんて無意味なんだけど。
そんな私でもここから脱出出来ないのは、単に私が弱すぎるから。この山には獰猛な魔物も多く居るらしいし私一人で下山するよりかは命の危険は小さいけれど、奴隷っていうのはいただけない。『処女じゃないと商品価値が下がる』って理由で犯されなかったのだけが救いかしら。私、見た目は絶世の美少女だし。私は次の街で売る奴隷の中でも目玉商品らしいし。
……安易に〈
……何かしら。外が少し騒がしい。馬車が突然止まった。聞こえてくるのは雇われている傭兵共の怒号と、魔物らしき獣の唸り声、それも複数。あ、これは聞き覚えがある。あの時のヤツね、熊かと思う程の巨体を持つサーベルタイガーみたいなヤツ。ホント、踏んだり蹴ったり。〈
─────
ちょうど2日前の事だったかしら。
気がつくと私は宇宙に居た。正確には、四畳半くらいの半透明な部屋の中で、周りに宇宙が延々と広がって見えていた。何、ここ何処?
『さて、もう話をしても大丈夫かの?』
声の方を見てみれば、皺はあるけど精悍な顔つきの、長い白髪に白いチョビ髭の、ギリシャ神話のようなローブを着た老人……?が居た。その姿を見て私は本能的に理解した。あ、私、これ死んだのか、と。
『理解が早くて助かるのう。そうじゃ、お主は死んだ。覚えておるか?』
どうやら向こうは私の思考を読めるらしい。じゃあ貴方が地球の神様?
『地球の神ではないぞ。お主らの言うところの異世界の神じゃな』
あー……そういう……まさか自分が異世界転生する事になるなんて。
『地球の神……お主の国の黄泉の神、イザナミに話は通してあるぞい』
イザナミ?ああ、伊邪那美命か。へぇー、実在してたんだ。それで?なんで私が異世界転生?
私が亡くなった経緯はどうでもいいとして。その異世界の神様は私に概要を説明してくれた。なんでも、今までなら地球以外のあちこちにある世界は魔王とかの大きな悪が現れても自分達の世界の勇者が解決できるレベルだったらしい。それが、最近自分達の世界の勇者では対処しきれない悪が現れる世界が出てきた。そこで、異世界から転生させた勇者に対処させる事にしたらしい。だけど一つ問題があって、チートスキルを与えた異世界の人間の魂が別の世界に行くとバグが発生してすぐに死ぬケースが多いんだとか。じゃあチートスキルを自分の世界の人間に与えればいいじゃんと思ったけど、それは神様でも何故か無理らしい。
それで、最近開発したそのバグ対策を施した魂が異世界でも正常に生きられるかを観測した上である程度安全が確認されてから異世界転生勇者を運用する事にしたんだとか。そりゃそうだよね、勇者として異世界に送り込んだはいいけどすぐ死んだら意味無いし。
で、私の役目はその『異世界でも正常に生きられるかを観測する為のテスター』。長く生きられるに越した事はないようなので、ある程度の能力もくれるらしい。ま、治験みたいなものか。第二の人生と思って精々楽しむしかない。話を聞くに転生先はファンタジー世界らしい。
『やはり日本人はその辺飲み込み早いのう。お主のやっておったアプリ『FGO』のサーヴァントとかなら簡単にしてやれるぞ?』
マジですか。FGOのサーヴァントとか星4以上のレア度ならほぼチートじゃないですか。やったね次の人生イージーモードだ。
それなら、と少し考える。頭(霊体なので頭と言っていいかは微妙)に浮かんだのは、お気に入りに登録された、レベル上限Max、スキルMaxまで育てた女神ステンノ。そう、あのギリシャ神話の、メデューサの姉のステンノ。男性の憧れとして完成された超絶美(少)女のステンノ。完璧美少女で強いとか次の人生勝ったも同然。ありがとう、異世界の神様。
『礼には及ばんよ。お主がそう言うと思ってもう体は作っておいた。勿論、お主の言うところのチートスキルである『女神ステンノと全く同じ女神の神核』も与えるぞい』
FGOのサーヴァント、女神ステンノの持つ女神の神核。『不老不死であり、可憐であり男性の憧れの具現。完成された超絶美(少)女であり、どんなに怠惰な生活を送ろうが馬鹿みたいに膨大なカロリーを摂取しようがその容姿は永遠に変化しない、成長しない』ステンノという女神を象徴するスキル。更には精神干渉系の一切を退けるという力も持つ。つまり。
『ワシの世界の女神の一柱として迎える、という事じゃ。まあテスターじゃしな。構わんじゃろ。お主の世界にメタトロンという例もあるしのう』
マジですか。まさか自分が神様になれるとか。なんか変な感じ。本当に良いのかな?
『構わんぞ。では最終確認じゃ。転生先はワシの世界、転生する体と能力はFGOの女神ステンノ。これで大丈夫じゃな?』
はい、大丈夫です。
『よし、では転生させるぞ。そうそう、ワシの『主神の加護』も付けておくぞ。定期的にお主を覗k……ゲフンゲフン、観測する必要があるからのう』
神様の言葉が終わると、瞬時に私の体が形成された。二次元のあのステンノを三次元にした姿……。
それと同時に私の周囲に現れた鏡で自分の姿を眺めてみる。実際こうして三次元になって見てみると、ステンノって凄まじい絶世の美少女。妖艶さと可憐さを兼ね備え、ツインテールに纏めた薄い紫色の長い髪は輝き、朝露の珠のような美しく透き通るような肌、スレンダーながらも女性らしいボディラインと柔らかさと両立したスタイルの良さ。胸は大き過ぎず、かといって小さ過ぎず程よい美乳。それだけで世の男性を惑わすであろう微笑み。
うーん、これが新しい体……凄い。私の魂の中心に光輝く『女神の神核』があるのが感じられる。本当にステンノと同等の存在になったんだ……。
『満足したか?では現世へとおろすぞい』
異世界の主神がそう言うと、私の視界は真っ白に染まっていき、私の体が薄くなっていく。これから異世界生活が始まるのか……。
『グヘヘ……ステンノタン……ハァハァ……prpr』
ちょっと、今のって……何かあの異世界の主神の変な声が聞こえたんだけど……何だか嫌な予感が……。
次に瞼を開いてみると。私は深い森の中、幹の直径が私の身長の倍はあろうかという巨木に寄り掛かって座っていた。お尻の下には芝生……芝生よね?感触は芝生だけど葉が丸い。そう言えばこの背中の巨木も地球では見た事もない種類。本当に異世界みたい。
正面に見える、陸上競技のトラック程の大きさの泉に映った私の姿は、あの宇宙空間で見たステンノそのものだった。FGOと違うのは身に付けている服。真っ白なシルクで出来たシンプルな膝丈迄の長さのワンピース。
魂の中心に女神の神核の輝きを感じる事が出来る。どうやらあの神の言っていた事は本当だったみたい。
それじゃ、この世界をゆっくり楽しませてもらおうかしら。
というわけで。ステンノ様(仮)なお話です。暫しの間お付き合いしていただければ幸いです。