「では治療を始めさせていただきます。左足から失礼します」
カッサンドラさんが、私の左足に巻かれた包帯を丁寧に外していく。右足と比べて幾分腫れた脛に静かに当てられたカッサンドラさんの右の掌は、うっすらと光っている。
触れられた部分が温かい。同時に痛みと腫れが少しずつ引いていくのがわかる。ゆっくりと撫でられるのがちょっと心地よい。
「んっ」と思わず吐息を洩らすと、カッサンドラさんがビクッと身震い。ああ、驚かせたかしら。
「気にしないで続けてもらえる?」
私の問いに間を置いて「……はい」と答えた彼女は撫でる作業を再開。幾ばくもしないうちに私の左の脛の怪我は回復。
「次は右腕を。失礼します」
カッサンドラさんは今度は私の右腕の包帯を外し、全体をまんべんなく撫でる。左腕と比較しても明らかに腫れている私の右腕も、少しずつ元の姿を取り戻していく。
何ていうか、凄く気持ち良い。患部を触られている時は確かに痛いけれど、彼女が丁寧に優しくしてくれてるお陰で辛くはない。
「では次は、御体を。包帯をお取りします。それと、念の為に下着も」
シュルシュルと包帯が外されていく。下着まで外す必要ある?と思ったんだけど、「ブラの下にも幾つもアザがあるようですので」ってカッサンドラさん。まあ、そうよね。でも治癒魔法って服着たままでは使えないのかしら?それともカッサンドラさんの魔法が特別なだけ?今更口を挟むのも変だし。ま、カッサンドラさんは同じ女性だし別にいいか。
上半身裸になった私は、ベッドにうつ伏せに。カッサンドラさんは私の背中をまるで壊れ物でも扱うように丁寧に、ゆっくり、変な言い方をするとネットリ、と撫でる。んー、今度は何だか変な感じ。確かに痛みが抜けていくし温かいけど……こんなものなの?
「ステンノ様、では次は仰向けになっていただけますか?」
仰向けに向き直した私の体には、幾つものアザがあった。確かに胸の辺りにもあるし、太股とか他の部分とかにも沢山。自分の体ながら痛々しい。
カッサンドラさん、大丈夫?何だか息が荒くない?治癒魔法って疲れるのかしら?だとしたらちょっと悪いわね。
……ねぇ、確かに太股にもアザがあるんだけど、ちょっとその……手つきがイヤラシクない?ねぇ?それ本当に必要なの?本当に、んっ……。
「申し訳ありませんステンノ様。必要な治療ですので今暫く我慢していただいて宜しいでしょうか?」
そう……なのね……ええ、確かにアザも消えていってるし効いてはいるんでしょうけど……こう、生温かいのがまた何とも……ちょっと、そっちは胸なんだけど……アっ……え?そこにもアザが?そうなの?
……。
…………。
………………。
傷は癒えたわ。効果はあったのだけれど何ていうか、こう、エステ?オイルマッサージ?これ本当に治癒魔法に必要だったの?結構恥ずかしい声も洩れてたと思うんだけど。
必要?そうなの?なら仕方ないわね。
カッサンドラさん、鼻血出てるんだけど……。
「大丈夫?そんなに体力使うのなら無理しなくても良かったじゃない」
「いっ、いえ。この程度で済むのなら本望です。ステンノ様の御体の方が大切ですから」
まあ私としては完治させてくれたのは助かるけれど。
それじゃいつまでもこの格好でいるわけにもいかないわね。左足首に意識を……。さて、これで元通りのワンピース姿に。
カッサンドラさんの方も落ち着いてきたみたい。さっきまでは荒かった息も整ってきたようね。さて、これで本題に移らないといけない。
「治してもらっておいて悪いのだけれど。私、神殿に行く気ないから」
「なっ……何故です!?」
カッサンドラさんは慌てふためいてる。そりゃそうよ、アムラエルさんは私を保護しろって言ったのに、当の私に否定されたらね。でも私だって自分の命が懸かっているもの。大人しく従う義理なんてない。魔族に引き渡されるとか御免だし。
「ま……さか……先程の私の治癒魔法のせいですか!?もっ、ももも申し訳ございません!」
治癒魔法の?どうして?まあちょっと恥ずかしかったのは確かだけれど、治してもらって感謝はしてるし、一応理由も言った方がいいのは分かるんだけどね。でも……スパイにカッサンドラさんが全く関わって無いって証拠、無いのよね。本人にそういう気が無かったとしても、情報が漏れるシステムが構築されてる可能性もあるし。あの魔族だってスパイに手引きしてもらってたからこそ街の、聖女一行の近くに居たんでしょうし。
「別にそういうわけではないけれど」
「そっ、そそそうですか」
カッサンドラさん何だか凄く安心してるみたいね、ホッと息を吐いたのが見えたわ。
うーん、でもどうしたものかしら。
取り敢えずこの場、というか少し様子を見るべき?カッサンドラさんには私が件の女神だって事は黙ってもらっておいて、魔族、というかスパイ側の出方を見る?
「ねえカッサンドラさん、女神がこの街に居る、って情報は神殿側はどの程度知ってるの?」
「はい?ええと、ゼメリングにいらっしゃるだろう事は私が皆さんに話しましたので、全員知っているかと……ですが、貴女様が女神であると理解しているのは私を含め極少数の信頼できる者だけです」
あー、つまりゼメリングに女神が居る事自体はバレてるのね。
やっぱり聖女一行に気付かれないように街から出るしかない?でももし道中で魔族に見付かったりしたら今度こそ終わりな気もするし……。女神の神核を隠すような術式とか無いの?あーもう、FGOのステンノみたいに『気配遮断』が使えたら良かったのに。
……やっぱり気付かれないようにここから離れよう。あの〈
「少し考えさせてもらえる?申し訳ないけど明日の昼にまた来て。門の入口辺りに居るから。それと、私が女神だっていうのはこれ以上は口外しないで」
「はい、ステンノ様。ではそのように」
今日中にニュクティとこの街を抜け出そう。別の街に入る為の通行税二人分くらいならどうにか有るし。門から……は神殿の人間が居るかも知れないから、深夜に水路から脱出、かしらね。
…………で。私はイオリスさんに黙って深夜にニュクティと一緒に家を一歩出たんだけど、私達の目の前にはカッサンドラさんが立っていた。貴女どうして居るの?いま夜中なんだけど?私、明日の昼に門に、って確かに言った筈だけど?ねぇ?なんで?
───────
「では治療を始めさせていただきます。左足から失礼します」
それらしい事を言って、カッサンドラこと私はステンノ様の御御足の包帯を震える手で外していきます。強引に取り払って左足を舐め回したい欲望を必死に抑えながらハァハァ。
右の掌に癒しの魔力を展開し、腫れているとはいえ美しい足の脛に掌を当てます。ああ~、腫れてらっしゃるのにスベスベしてりゅぅぅ!何コレ凄い~!これが女神様の御御足……!!
「んっ……」
ああ~~、吐息が!ステンノ様の艶かしく甘い吐息がぁぁ!もう私の欲望も限界です、このまま襲ってしまいましょう!
……はっ!?駄目です私!まだここで気付かれるわけにはいきません!今はまだ聖女カッサンドラのイメージを崩すわけにはいきません!
我慢、我慢しながらゆっくりと左足の患部を撫でます。よし、これで左足はもう大丈夫ですね。次は右腕の包帯を外して……。嗚呼、おいたわしや。左手と比べてこんなに傷が、こんなに腫れていらっしゃる……さぞかし痛かったでしょう。今私がprprして差し上げます。では失礼して……って、違う違う。セーフ、舐める寸前でしたがまだセーフです。今度も丁寧に、丁寧にを心掛けて。
よし、これで右腕も治りました。次は御体を……ゴクリ……私の理性は果たしてどこまで持つでしょうか。
シュル、シュル、と慎重に包帯を外して……あ、包帯の下にブラが……これは治癒魔法には邪魔ですよね間違いありません取ってしまいましょうさぁ私にその御胸を確り見せてくださいグヘヘヘヘ。
こっ……これは不味いですね、今にも暴走しそうです。そっ、そうだ!うつ伏せになっていただいて御背中を治癒して気を落ち着かせましょう。
嗚呼、やはり御背中にも痛々しい傷が。早く治癒……いえ、ここはじっくりと癒して差し上げましょう。これはスベスベの御背中を堪能しているわけではありません、決して。
さて、次は前なのですが……流石に不味いですね。理性がもう限界です。ちょっとくらい、ちょっとくらいいいですよね?先ずはその太股も堪能させてもらいましょうハァハァ。
嗚呼、素晴らしい。スレンダーなのにモチモチぷにぷに、素晴らしい感触です!天国はここに在りました!ステンノ様も「んっ」とか「あっ」とか甘美な反応をしていただいてありがとうございます!太股からこのまま上に這わせて襲って……いやいや駄目です、まだ駄目です。先にアザが無数にあるお腹を癒して差し上げないと。そのお肌の感触を堪能しながらですけどね!ついでにお胸もっ!だってアザがあるんですよこれは治癒なんです他意なんてあろう筈がございません!アッアッ
…………ふぅ。
これで治療完了です。堪能させていただきました。うっ、思わず鼻血が……。
「大丈夫?そんなに体力使うのなら無理しなくても良かったじゃない」
鼻血程度が何だというのです!ステンノ様の御体を堪能する事が出来るのならこの程度の出費など無いのと同じです!
「いっ、いえ。この程度で済むのなら本望です。ステンノ様の御体の方が大切ですから」
誤魔化せましたかね。それにしても私の事を心配してくださるとは、これはもうワンチャンいけるのでは……?
って一瞬でワンピース姿に!?嗚呼~、折角のステンノ様の裸がぁ~!一体どうやってそんな事を!?こんな事ならもっとジットリネットリ堪能しておくんでしたぁ~!
でもステンノ様が服を着た事で少し冷静になってきました。これ私のやった事、ステンノ様にバレてませんよね……?ね?
おや?どうやらステンノ様からお話があるようですね。
「治してもらっておいて悪いのだけれど。私、神殿に行く気ないから」
「なっ……何故です!?」
まさか、バ、バ、バレたっ!?
「ま……さか……先程の私の治癒魔法のせいですか!?もっ、ももも申し訳ございません!」
もう駄目です、私はおしまいです、ステンノ様に変態エロ聖女と罵られてしまう……ん?でもそれはそれでアリかも知れない……。
「別にそういうわけではないけれど」
「そっ、そそそうですか」
ふ~ぅ、どうやら大丈夫だったみたいですね。ステンノ様、意外とチョロいかも知れません。これはステンノ様を私専属の雌女神様にする計画も一歩前進、ですね!
「少し考えさせてもらえる?申し訳ないけど明日の昼にまた来て。門の入口辺りに居るから。それと、私が女神だっていうのはこれ以上は口外しないで」
「はい、ステンノ様。ではそのように」
これはいけませんね、この御様子だと私達に黙ってこの街を発たれるのかも知れません。確かに女神様が近くにいらっしゃる状況になれば、自らの努力を怠り何でも女神様を頼ってしまうような不届き者が少なくない数出てくるでしょう。ステンノ様はきっとそういうふうに私達が堕落してしまう事を危惧しておられるのですね。うーん、ですがステンノ様の保護は私達の義務でもあります。ステンノ様のお考えに反する事になりますが、今夜は待ち伏せさせていただきましょう。それに私に考えもありますし。
第一、ここでステンノ様を手放すなんて有り得ませんグッヘッヘッ。
治療中の女神とアレな聖女のお話回。聖女(笑)様の暴走は続きます。