異世界で死にたくない最弱の女神   作:アイリスさん

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次話も早めに投下します。


15話

どうしてこんな夜中にカッサンドラさんが待ち伏せを……。行動を読まれたみたい。きっと周りには警備の人間も居るんでしょうし、下手に捕まって軟禁みたいになっても困るし振り切って逃げるっていうのは得策じゃない。

 

「ステンノ様、こんな夜更けにどちらへ?」

 

「ただの散歩、だけれど」

 

流石に無理があるか。少ないけれど持てる荷物は持って、ニュクティと一緒にだものね。出て行こうとしてるのは一目瞭然よね。

 

「そうですか。ではお供致します。私も丁度散歩がしたい気分でしたので」

 

やっぱり逃がしてはくれないか。どうしよう……カッサンドラさん、このまま明日までここで待っていそうだし。何とか戻ってくれないかしら。

 

「ではステンノ様、少し歩きましょうか」

 

「……そうね」

 

ニュクティに一度視線を送って、私は仕方なく歩き出した。逃がすまいとしているのか、カッサンドラさんは私のすぐ右に陣取り離れないように付いてくる。私とカッサンドラさんのすぐ後ろからニュクティは付いてきてる。

街中だからって治安が良い、ってわけでは決してない。昼間ならまだしも、私みたいな美少女が夜中に一人で出歩こうものならあっという間に……は言い過ぎかも知れないけど、狭い路地裏辺りに連れ込まれる。今はフードで顔を隠してるから絡まれさえしなければ歩く事はできると思うけど。でもカッサンドラさんも居るのよね……まあ聖女が居るなら警護の人も居るんだろうし少しなら問題無いか。

 

「それで、カッサンドラさんは何の用?明日の昼に、って言ったと思うのだけれど」

 

ゆったりとしたペースで歩きながら問う私に「それは……ええと」とカッサンドラさんは一度は言い澱むも、言葉を続けた。

 

「ステンノ様は私達が貴女様に過剰に期待を寄せるかも知れないのと、魔族との争いに私達を巻き込まないように、と考え距離を置こうとしているのではと思いまして」

 

「あら、私、そんな大した事考えてないけど?」

 

なるほど、距離を置こうとしてるのは正解。但し巻き込んでるのは私が、じゃなくて貴女達が、だけどね。

姿を眩ませようとしてたのは見透かされてたわけだし、仕方ない。今夜の所は一度戻って、明日の早朝までになんとか策を考えよう。カッサンドラさんはちゃんと送っていかないとね。泊まってる宿ってどっちかしら?

 

……!?

突然ニュクティが後ろから走って来て、私はうつ伏せに押し倒させた。え?え?待って、なんで?まさかカッサンドラさんも居るのにこんな所で発情でもしたの?そういえば獣人って発情期とかある?……じゃなくて流石にそれは受け入れられないんだけど!?

 

私がそんな事を考えた直後。何かが私の頭上を通過した。そのあと「二人とも早く起きて!」ってニュクティの声。よく見たら隣には同じくニュクティに倒されたカッサンドラさんも居た。

 

「ありがとうございます」ってカッサンドラさんが立ち上がり、ニュクティに御礼を言って私から離れる。え?状況が飲み込めない。「早く、また来る!」ってニュクティの声がして漸く体を起こした私は、正面の空に何かが浮いているのに気が付いた。何あれ?羽ばたいてる……鳥……にしては大きい?何ていうか、人間サイズの……プテラノドン?

 

あ、滑空してこっちに向かってくる。

…………向かってくる!?完全に狙われてるじゃない!夜中とは言えどうしてあんなのが!?

 

「ステンノ、ガンドだ!」

 

ニュクティが叫ぶ。私もやっと我に返って礼装を展開。真っ直ぐ向かってくるプテラノドンもどきに狙いを……焦りと不安で上手く定められない。もしこれを外したらあれが私に……。

 

見かねたニュクティが私の懐に潜り込んできて、左手を支えてくれる。ホント、私ってばこの子無しじゃ何も出来ないのね。人差し指から放たれた赤い球体は、尚も私達へと向かってくるプテラノドンもどきに直撃。ソイツは体の自由を失って地面へと突っ込む。ガンドを放って直ぐにニュクティに引っ張られる形でその場から退避した私がプテラノドンもどきの墜落に巻き込まれる事はなく。ニュクティは動けないソイツの頭にナイフを突き立てた。

 

思ったより呆気無く倒せたのね。それにしても魔物?夜でも衛兵さんが外への監視はしてる筈だけど、何の騒ぎにもなっていない。見逃した?若しくは……予め街中へと持ち込んだ魔物で私を狙った?でも魔族でも石化させるような相手にあんなニュクティでも倒せるような相手をぶつけたりする?立て続けに襲われたら無駄に警戒が強くなるだけって思わない?

 

……そういえば、誰も助けに来なかったみたいだけど聖女の警護は?

 

「カッサンドラさん、貴女警護の人間はどうしたの?」

 

「黙って一人で来ちゃいました」

 

テヘ、って小首を傾げる聖女様。それ同性相手には全くの無意味だから。私には可愛くも何とも無いから。何が「一人で」よ。どうしてそんな自分から危ない事してるの?

でも聖女が夜一人で、って事は、その隙を狙って暗殺……って線もある。つまり、もしかするとカッサンドラさんも命を狙われてる?

 

はぁ……もう。確か宿がある繁華街とかってここから遠かったような……その間にまた襲撃でもあったら堪らない。私まで巻き込まれるしね。仕方ないか。今日はやっぱりイオリスさんの家に戻ろう。カッサンドラさんは……一緒に連れていくしかないか。明日面倒な事になりそうだけど。

 

「今日はもう戻りましょう。カッサンドラさん、貴女も一緒に」

 

「はい、ステンノ様!喜んで!」

 

え?カッサンドラさん、どうしてこんな嬉しそうなの?この人の考えてる事はよく分からないわ。ほら、ニュクティも呆れた顔して……ん?何だか微妙な表情してる?あー、成る程ね。私だけじゃなくてカッサンドラさんみたいな美人の大人の人とも一緒なのが恥ずかしいのね。仕方ないわね、微妙な年頃だものね。

 

イオリスさんの家からそれほど離れてなくて良かった。あの魔物の後始末は……どうしよう?三人居れば運べる?え?重いから無理なの?なら置いていくしかないか。こっちはこっちで騒ぎになりそうだけど。

 

 

 

イオリスさんの家にそっと戻った私達だったけど、流石に家主に黙って人を泊めるわけにはいかない。仕方なく寝ているイオリスさんを起こして聖女を一晩泊める事になった、って説明した。イオリスさん、卒倒しそうになってたけど。

 

「イオリスさん、そういうわけだから。聖女様も一晩泊まる事になったわ」

 

「は?ステンノちゃん?……え?……は?」

 

私と一緒の部屋に泊めるからって説明したら渋々だけど納得してもらえたわ。聖女を一人放り出す事は出来ないしね。

 

部屋に戻った後の問題は一つだけ。ま、部屋に戻る前にも問題はあったんだけどね。ニュクティが私とカッサンドラさんが同室で寝るのを反対してね。一人で寝るのが寂しい、ってわけではないと思うから……多分カッサンドラさんに私が盗られると思ったとか?うーん、あのくらいの歳の子は難しいわね。

 

「ベッドは使っていいから。私は椅子でも充分だし」

 

「何をおっしゃられるのですか。私こそ椅子で充分です。ステンノ様がベッドをお使いください」

 

これ。聖女を椅子で眠らせる、なんて流石に出来ないでしょう。尤も、向こうも譲らないのは同じ理由なんでしょうけど私には関係無い。元々純粋な女神でもないしね。

でも埒が明かないのは確か。さてどうしようかと思っていたら、カッサンドラさんの方から提案してきた。

 

「それではこうしましょう。二人でベッドを使いましょう」

 

……それは盲点だった。カッサンドラさんが男だったら困るけど、女性同士だし別にそれでも問題は無いわね。そうと決まれば早く眠る事にしましょう。明日はカッサンドラさんよりも早く起きて先に抜け出せば大丈夫でしょうし。

 

さて、それじゃワンピースは脱いで……って、視線を感じるのだけれど。そんなに見られると脱ぎ難い。女神の着替えなんて確かに珍しいとは思うけど。

 

「見られるとやりにくいのだけれど?」

 

「はへっ!?もっ、申し訳ございません」

 

カッサンドラさん、やっと私から視線を外した。彼女も着ていたローブを脱いで……ん?中は絹の白いネグリジェ?ああ、ローブだけ羽織って寝室から抜け出してきたらそうなるか。

 

私が先にベッドへと入って、後からカッサンドラさんが入って来る。一人用のベッドだからちょっと狭い。あ、カッサンドラさんが私を後ろから抱き締めるようにしてくっ付いた。確かにその方が温かいけどちょっと近すぎ……まぁ、さっき魔物に襲われたんだし怖くて抱き着いてもおかしくはないか。

 

「ステンノ様、私考えたのですが。ステンノ様が私の従者に偽装して神殿へ行く、というのはどうでしょう?勿論ニュクティさんも一緒にです」

 

「従者になったフリをするの?」

 

「はい」って答えたカッサンドラさん。女神として行くのが不味いのなら、身分は隠して従者として行けばいいじゃない、と。そうすれば私の御業を助けつつ、私を神殿騎士に守らせつつ、女神の立場も隠しておける、って。そんな上手く行くの?

 

……考えてみると〈主神(変態クソ虫)〉の考えを無視してアムラエルさんが独断で神託を授けた、っていうのってどうにも何か引っ掛かるのよね。幾ら事情があるからって無断でそんな事する?〈主神(変態エロ魔神)〉が夢枕に立った時の言い方も引っ掛かるし……ミスリードっていうか、私をこの件に関わらせたいような感じがしない事もないっていうか。何が正しいのか分からなくなってきた。カッサンドラさんも狙われてるかも知れないのに放置するっていうのも後味悪いし……。

 

私が悩んでいると「それに左手の事もありますし」って私の左手甲を握るカッサンドラさん。あ……しまった、意識するの忘れてたわ。見られた、って事よね。

 

「それは成り行きでね。けれど私に精神干渉は効かないから」

 

「そうなのですか。ですが……いえ、何でもありません。けれどそれならその奴隷印、有効利用いたしましょう」

 

カッサンドラさん個人の奴隷、兼、専属従者として神殿に潜入すればなんの問題も無いって言うんだけど……うーん、どうしよう。

 

「浅知恵ですけれど、私にしては良い案だと思います。ステンノ様、どうか御一考を」

 

「……返事は明日の朝でも構わない?」

 

「はい、良いお返事を期待しております」

 

そう言うと、カッサンドラさんは私をギュッと抱き締めて眠り始めた。寝入るの早くない?それに何だか寝息がこう、スーハー、スーハーって何かまるで匂いでも嗅ぐかのような感じが……本当は起きてない?いや、でも仮にも聖女、私の匂い嗅ぐなんてそんな変態ムーヴしないよね?

 

……気のせい、多分気のせい。胸とかおへそとか色々とおもいっきり触られてる気がするけど偶々よね、多分。

 

 

 




聖女に退路を塞がれていくステンノさん。
聖女様ちょっとそこ代わってくれませんかねぇ?

次回は来週頭くらいには投下します。


アーサーのスキルBASTAR強化が地味に嬉しい。今回の天草ピックアップガチャはスルーだな

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