異世界で死にたくない最弱の女神   作:アイリスさん

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42話

魔力の!効率が!圧倒的に!悪い!

 

神の怒りの一撃(ア・ブロウ・オブ・ゴッズ・ラス)を両拳に展開したのはいいけどさ、コレをこの状態で維持するのスッゴイ余計な魔力喰うんだよね。流石に直ぐにワタシの魔力が尽きるって事は無いけど無駄な魔力を垂れ流しっていうのは問題だよね。

 

くっそー、()()()()()()は捕まった時に取り上げられたバッグの中なんだよなぁ。魔法の杖代わりのアレがあればこの非効率な状態も改善できるのに。

 

今更文句を言ってもしょうがない、ええいままよ!踵と肩の風魔法再展開、真っ直ぐ行ってぶっ飛ばーす!

室内だから土煙は上がらないけど、足元に転がってる調度品やら背中側のモノやらを吹き飛ばしながら魔族へ一直線に、当然一瞬で突撃。魔力の篭った渾身の右ストレートを顔目掛けて振るう。当たる、かと思ったけど左手一本で受け止められた。ハァ!?何それ、簡単に防ぎ過ぎでしょ!でも問題無いよ。

 

何体かの魔族と交戦した経験から言うと、魔族に魔法が効きにくいのは、人が息をするのと同じように無意識に魔法防御結界を張ってるせいなんだ。だから魔法を放っても結界で威力を軽減されちゃう。

でも、ならその内側から直接大魔力を撃ち込めばいいんだよ。例えば今のワタシみたいに魔法防御結界の内側に拳で殴り掛かるとかね。だから剣に魔力を込めて直接相手を切り付けるっていう神殿騎士の戦い方も間違ってないんだ。問題は魔族の素の防御力が高過ぎるって所だけど。

 

「このぉ!」

 

ワタシは右拳に纏っていた魔力を解き放って、コイツの左手から体内へと直接流し込む。どうだ、これなら効き目もあるで…………コイツ何で平気な顔してるの!?うっそでしょ!?

 

コイツはワタシの右拳を掴んだまま天井付近まで飛び上がって、ワタシを勢いよく床に向かって投げつけた。

ドゴォン、って轟音と共に床に突っ込んだワタシ。直径5m程のクレーターが出来たよ、あの子の所に落とされなくて良かった。ったくもー。高さ的には三階建てくらいあったけどコッチもバフ盛って物理防御結界も展開してるからこの程度ならそこまで大したダメージでは無い……っ痛ったたた。

もしかして光属性は効きが悪いのかな?それなら今度は雷属性でも試してみるか。

 

『その顔……お前、神の用意した木偶(デク)か』

 

ん?ワタシの顔がなんだって?木偶って……まさか、コイツもしかして、ワタシが幼い頃に神託受けた事知ってるの?確かに10年くらい前に1度、ワタシは神様の言葉を聞いた事がある。確か『お主には才能がある』とか『やがて来る世界の危機にお主の力が必要、精進せよ』とかだった、多分。幼いながらに理解してこうやって戦える所まで努力してきたけど……ん?待てよ?コイツがワタシの事を知ってたとなるとだよ、狙われたのってもしかして聖女様じゃ無くてワタシ?アレ?って事はワタシにソックリなあの子は間違われて攻撃された巻き添えだったりするの?うっわぁ、凄い罪悪感が……。

 

とっ、兎に角だよ?アレを倒せば問題無いわけだよね!あれだけの相手だし、やっぱり杖代わりになるような何かが欲しいね。いや、それより先に戦場を変えないと。このままじゃあの子を巻き込んじゃう。

 

げぇ!?何かあの魔族、右手に黒い魔力の塊を収束させてる!?マズイマズイマズイ、あんなの打ち込まれたらこの建物崩壊するじゃん!あの子を連れて離脱しなきゃ!

 

目眩まし代わり、あわよくばあの魔力の塊を消し飛ばす!

 

「左拳のも喰らえ!『ア・ブロウ・オブ・ゴッズ・ラス』!」

 

 

 

 

 

───────

 

 

 

 

 

ステノ王女の左拳から、巨大な光の槍がブエルに放たれた。同時にステノ王女は私の所へと一直線に飛んでくる。

 

「ええっと、そこの人、離脱するよ!」

 

「えっ?え、ええ」

 

私を抱き上げ、ステノ王女がチラッとブエルの方を確認。「くっそー、やっぱ無傷か」って吐き捨てて宙に浮く。この世界で魔法で空を飛ぶ人、初めて見たわ。なんだか風魔法っぽいのを展開してて、踵と肩甲骨の辺りに小さな竜巻?が発生してるわ。もしかして飛行魔法みたいなモノってこの世界には無かったりするの?

 

「ええっと……怪我はどう?」

 

私は首を小さく横に振った。だって、現在進行形で凄く痛いもの。ステノ王女がさっき掛けてくれた治癒魔法?痛み止め?のお陰で多少は楽になった、っていっても痛いものは痛い。気絶しなかっただけマシ。まぁその、漏らしはしたけど。

 

「そっか……あ、ワタシは」

 

「ステノ……王女様、でしょう?」

 

あ、ちょっと驚いてるわね。まあでも()()()()私と瓜二つの人間なんて居る筈無いものね。彼女がそうだって考えなくても分かる。

 

「……うん、取りあえずちょっとだけ喋らないでね。舌噛むよ?」

 

そう言って、ステノ王女は風魔法をフルに使って、開いた窓から飛び出す。私を抱えてパルテノン神殿モドキから空へと飛んで脱出したのと、ブエルの魔力の塊がさっきまで私達が居た所に着弾したのが同時。

 

あの鳥頭の魔族、何て言ったっけ……兎に角ステノ王女、アイツより速いと思うわ。瞬時にサグラダ・ファミリアモドキの神殿本部内を抜け、目の前の草原へと出た。背中に見える神殿本部は、私達が抜けて来た部分の、丁度正門の裏手側の部分がブエルの魔力の塊の直撃を食らっていて崩壊してる。あの様子だと中央にあったパルテノン神殿モドキは崩れ落ちてるでしょうね。間一髪だったみたい。今の私じゃ、巻き込まれたら押し潰されて挽肉になってた所だわ。

 

……そうだ、ステノ王女が居るのなら、彼女に少しだけ時間を稼いでもらおう。夢幻召喚すれば私にも出来る事はある。例えばスマイル・オブ・ザ・ステンノ、とかね。忘れてたけどステンノの宝具には男性魅了&即死、以外に強化解除と防御ダウンがある。ブエルからの魔力にパイオスのそれが混じってるの、感じるのよね。多分だけど、ブエルはパイオスから魔力供給されたか何かで強化状態にあるんだと思う。だからその強化を強制的に解除して更に防御をダウンさせればステノ王女にも可能性が出てくる、多分。このまま殺されるくらいなら賭けに出た方がいい。

 

「アイツが瓦礫から出てくる前に何処かの茂みにでも連れて行ってあげるよ。だからなるべく見つからないようにじっとしててよ?」

 

「ねえ、私をあそこへ降ろしてくれない?」

 

私が人差し指で示したのは、崩壊した城壁から見える、真っ白に塗られた石畳。平原から見えない、壁の内側の方へ行けば多分大丈夫……本当に大丈夫かしら?でもやるしかない。神殿騎士はブエルの放った影の相手でコッチに手を回せない筈だし、ニュクティ……は、無事かしら。隠密行動には長けてる筈だから無事だと思いたい。

 

「何か考えでもあるの?」

 

ステノ王女の問いかけに私は頷く。「分かった。貴女を信じるよ」って、自分で言っておいて何だけど、そんな簡単に私の事信用するの?

 

「さっきは全然気がつかなかったけどさ、貴女自分の魔力を隠してるよね?それもかなりの量と見た」

 

……ああ、そういう事ね。確かに魔力の量だけなら魔王と同じくらいだけど、別に隠してるわけでは無いのよね。ただ単に全然使いこなせないってだけで。でもステノ王女は私の魔力に気付いたのか。どれだけ優秀なの、この人。

 

「だから貴女の策に賭けるよ。時間なら稼いでみせるから」

 

私のそれとは違ってニカッ、と笑ったステノ王女。ええ、何とかしてみせる。まだ死にたくないもの。

ステノ王女が私を石畳の上へと静かに降ろして、平原の上空へと移動。瓦礫から出てきたブエルは彼女を見付けたようで同様に上空へ。

 

『……まだ時間もある。少し遊んでやる、木偶』

 

「上等だよ!『雷属性最大魔法(サンダーレイジ)』!」

 

ステノ王女は今度は光属性の代わりに雷属性の魔法を両手に展開して、さっきと同じようにそれを両拳に纏わせた。

私も彼女が倒れる前にやらなきゃ。

 

スプーン携帯してて助かったわ。懐から取り出して魔力を通して、それを使って石畳に魔法陣を描いていくんだけど……これが辛い。

先ず、左足の膝から先が無いわけで。当然立てないから座った状態、しかも切断された傷口に触れると激痛が走るから触らないように左足太股を右足の脹ら脛に乗せた横座りのような体勢にしないと痛過ぎて耐えられない。それでもちょっとした弾みで石畳に触っちゃったりするんだけど、全て投げ出して悶えながら泣き喚きたいくらいね。それを必死に我慢して、泣きながら右手を動かす。左腕も無いから体のバランスも全然取れなくて、倒れながら。そうなると当然傷口に当たったりして、その度に激痛が襲ってくる。ハッキリ言って地獄。

 

時々気になって上空に目を向ける。誰がどう見ても、それこそ素人の私が見ても分かるくらいにはステノ王女はブエルに圧されてる。それはそうよね、だってステノ王女の攻撃はブエルには殆んど効いてないし。あ、ステノ王女、撃ち込んだ左手を掴まれてまともにお腹を蹴り飛ばされて地面の方へ吹っ飛んでくわ、痛そう。

 

どうにか加勢してあげたいけど、礼装展開出来ないのよね。やっぱり左手のアザが礼装の設計図か何かなのね、無いと無理みたい。もしかしてブエルが最初に私の左手を切断したのってこの為?

 

 

 

やっと、やっと描き終わりそう。あとはこれをこう……って、また左足が石畳に触った!!痛い!痛い!痛い!!

 

「痛い……痛い……うぅ……」

 

ボロボロと涙を溢しながら、私は左足の膝があった位置より少し上の辺りを押さえる。流石に今患部を触ったら意識を飛ばす自信があるから迂闊に触らないように注意しないと。

 

でも我慢の甲斐があって描けたわ。こんな拷問みたいな事もう二度とやりたくない。

 

さて。それじゃやろうかしら。

 

「………………告げる!」

 

 

 

 

 

───────

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ。化け物」

 

参ったね。まさかワタシとアイツでこれ程力の差があるとはね。防御結界を体全体に展開しててもダメージ防げないから、アイツの攻撃に合わせて一点集中防御型に変えたんだけど、それでもその上からダメージが通ってくる。このままじゃジリ貧だね。あの子、上手くやってるのかな?まさか逃げ……いや、あの怪我じゃ逃げるのは厳しいか。ワタシに出来るのは粘る事、あの魔族があの子の方へ行くのを阻止する事だけ。

 

「このぉ!!」

 

今は向こうの丘の上に立っているアイツに向かって地面スレスレを飛翔して、渾身の力で豪雷一閃(サンダーレイジ)の魔力を纏った右拳を突き出す。今度は避けもせずに顔面に直撃!

……って全然効いてる様子無し。微動だにしないよ。クッソ、ふざけてるなぁ。

 

『その程度か、木偶』

 

コイツ、今度はワタシに向かって左手を振り下ろす。攻撃した後直ぐで反応が遅れたワタシの右腕に黒い魔力の爪が迫る。ヤバッ、防御結界間に合えっ。

 

ぐっはぁ!?

っと、あっぶなー。アイテテテ、何とか切断は免れたけどコリャ駄目だね、右腕折れたっぽい。急いで飛び退いて距離を取る。治癒しながら騙し騙しやるしか無さそう。

 

……ん?何これ?後ろから凄まじい魔力の塊が来る!?まさか敵の増援!?いや、目の前のコイツよりも遥かに上の魔力量だよこれ。まさか魔王が来たとか?いやいやいや、幾らワタシでもコイツとアレを同時に対処なんて無理だよ。詰んだかも。

 

『その状態でも向かってくるか。見上げた根性だが蛮勇と言わざるを得ないな、女神よ』

 

「ホント。スッゴク痛いんだから、これ。貴女にも少しはお返ししてあげないと不公平よね。そうでしょう?」

 

そう答えたあの子が、ワタシの右隣にフワリ、と降りて来た。その表情は痛みのせいで引き攣って見えるけど。

 

……いやいや。え?は??

今ワタシの隣には、その膨大な魔力の持ち主の……あの子が魔力で地面から少し浮いた状態で居る。勿論左手も左足も失ってるままだけど。いや待って、何か凄い神々しいんだけど!?物理的に後光まで差してるんだけど!?いやそれよりあの魔族、この子の事『女神』って……。あれ?そういえば女神様って……確か現在は聖女様と一緒にココに居て……それでステンノっていうワタシのソックリさんが聖女様の傍に……あ、そうか。そういう事か。なーんだ、アハハハハ…………。

ハァ!?!?女神様!?ワタシとソックリの!?うっそでしょ!?

 

あ、待てよ?知らなかったとはいえ、ワタシもしかしなくても女神様の名を騙ったって事?あー、そりゃ逮捕連行されるよ。よし、後でちゃんと謝ろう。そりゃもう全力で。

 

 

 

少し距離があったせいもあるけど、動揺してそんな調子だったワタシも痛みを堪え舞い降りた女神様も。あの目の前の魔族が『概ね予定通りか』って呟いた事には気がつかなかった。




属性最大魔法をホイホイ放つ王女様と、痛みに耐えつつ復帰した女神様。余裕のブエルさんと対峙した所でまた次回。
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