異世界で死にたくない最弱の女神   作:アイリスさん

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45話

あ……ありのまま今起こった事を話すぜ!

部屋に呼ばれた俺は椅子に座ろうと思ったらステンノにあすなろ抱きされてそのままベッドに腰掛けたステンノの膝の上に座らされた。

何を言っているのか分からねーと思うが俺も何でこうなったのか分からねー。

後ろから抱き締められてるからステンノの程よい二つの膨らみが背中に当たって気になって俺の心臓と理性がどうにかなりそうだ……催眠術だとか魔法だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ………………神様、これでいいのか?なんだコレ?何かの魔法なのか?

 

『ウム。ニュクティよ、バッチリじゃ。なに、意味などお主の気にする事ではないぞい』

 

神様の考えは良く分からないけどまーいーか。そんなわけで今俺はステンノの膝の上だ。なんか神様が頭の中で『ステンノたんの膝の上とか羨まけしからん!』とか喚いてる。神様って思ってたより俗っぽいんだな。それにそんな事言ってもステンノの膝上は譲らないからな。ステンノがそんな事してる理由だって何となくは分かるしな。神殿に来てすぐに魔族がいきなり現れてあんな事があった上に聖女様があんなだからな。それにステノ王女様達とも何か面倒があったみたいだし。そりゃ気持ちに安らぎも欲しくなるよ。今の俺はステンノの愛玩動物的な感じになってるけど、ステンノの心の安寧の為ならそれも吝かじゃない。ま、胸が当たってるのはそりゃ気になるけどな。

 

『ぐおおお、ステンノたんの胸が当たってるとか羨ましいぃぃ!……そうじゃ!ニュクティよ、ステンノたんの際どい場面を集めた映像をお主の脳内で再生してやる代わりに一時的に感覚をワシと共有するというのはどうじゃ?』

 

どうじゃ、って……それいいのかよ神様?後でステンノに怒られるだろ。それに際どい場面って、俺ステンノの水浴びする所とか着替えの場面とか見えたら駄目な所とか見ちゃってるしなぁ。

 

『そうじゃった!おのれニュクティ、何と羨まけしからん奴じゃ!こうなったら……ファッ!?アムラエル!?お主何でここに……いや違うぞい、決して邪な考えは……あっ止めあばばばばば』

 

……聞こえなくなったみたいだな。で。話を戻すけどな、俺はステンノに割り当てられた部屋に居る。場所は神殿の最南にある関係者用の居住区画にある三階建ての一室だ。あの魔族……ブエルだったか?の襲撃でも無事だった建物だから崩壊の危険は無いし、勿論神殿の城壁内にある上、外周りは神殿騎士達がぐるりと囲んで警戒してるからまた襲撃とかがあっても直ぐわかる。

 

神殿関係者用の部屋だから質素だ。って言っても壁は頑丈そうな白い石を幾つも積み重ねて磨かれてて綺麗だし、椅子やテーブルなんかも落ち着いた濃い色の赤で塗られた高そうなヤツ。ベッドもミュケーナの城にあったような大層なものじゃないけど平民にはとても買えないような代物だ。神殿って儲かるんだな……。

 

「聞いてると思うけど、この子がニュクティ。私の大切な眷属だから」

 

ステンノが俺の事をそう紹介する。俺達の目の前で膝を付いて頭を下げた状態の右手側の、赤髪の女の人が口を開いた。

 

「女神様の眷属……お初にお目に掛かります、ニュクティ様。私はエニュと申します。ステノ王女殿下と共に旅をしているハンターです」

 

それに続いてステンノとソックリな、エニュと違って立ってる女の人が話す。何か変な感じだな。

 

「ステノ・アミュクラース・フォン・ラケダイだよ。宜しくね、ニュクティ君」

 

ステノ王女様の自己紹介を聞いたエニュ?は酷く慌ててるな。「ちょっ、ちょっと!女神様の眷属であらせられる御方にそれは不味いって!」って言ってるな。それに対して王女様は「えー?だってステンノちゃんは『もっとラフに話して欲しい』って言ってたもん、大丈夫だよ」ってさ。まあ俺も変に畏まられても困るからその方がいいんだよな。俺だってあの時奴隷商人の馬車の荷台で偶々ステンノの隣に座ってた、って縁だからな。

 

「アッ、アッ、アナ!?!?女神様に向かって『ステンノちゃん』って!?もっ、ももも申し訳ございません女神様!この子ちょっと世間知らずでおバカなだけなんです!何卒、何卒御許し下さい!」

 

「エニュ、おバカは酷くない!?ワタシそんなに馬鹿じゃ無いもん!」

 

「どの口が言うのよ、どの口が!これまで私がどれだけフォローしてあげたと思ってるの!」

 

「それはそうだけどさぁ!ステンノちゃんは本当に『タメ口で話して』って言ったんだから!なのに畏まってたらそれこそ不敬じゃん!」

 

「だからってアンタねぇ!相手は女神様なのよ?少しは考えなさいよ!」

 

あー、話が進まないなコレ。ステンノがヒトコト言ってくれないと終わりそうにないな。

 

呆れたステンノの「二人とも、話を続けてもいい?」って一言で二人は一時停止した。ったく、喧嘩ならステンノの居ない所でやってくれよ。

 

「二人には暫く私に同行してもらうから。これは主神が決めた事だから変更も検討の余地も無し。いいかしら?」

 

「うん、分かった。護衛とか荒事なら任せてよステンノちゃん」って右手の親指をグッと立てて返事をした王女様と、その王女様にジト目を向けた後に「はい、女神様。全て御心のままに」って如何にも硬い返事をしたエニュ。やれやれだな。あ、でもこの二人って一応平民と王女様なんだよな?何だかんだやってるけどきっと本来の仲は良いんだろうな。

 

それに彼女達が居れば俺じゃ相手に出来ないような魔族からもステンノを守れるだろうしな。自分の力不足が不甲斐ない。もっと強くなって俺一人でもステンノを守れるようにならないと。

 

それから、ステンノそろそろ離してくれないかな。我慢してたけどさっきから背中に押し付けられてる二つのスライムが気になって仕方ないんだよ。それと密着してるとスゲー良い匂いがするんだよな。だからってステンノが嫌がるような事はしないけどさぁ、俺だって一応男なんだけどなぁ。

 

 

 

 

───────

 

 

 

 

今後の方針を決めておかないとね。魔族に居場所が割れてるのは良くない。やっぱり此処に留まるのは危険だし、身分を隠して何処かに身を潜めた方がいい。となると向かう先は……どうしようかしら?それにステノ王女と私、全く同じ顔の絶世の美少女が二人、っていうのは物凄く目立つだろうし……はぁ、面倒事ばかりね。せめて夢幻召喚しなくてもサーヴァントのステンノの力が使えれば少しは違うのに。例えばこう、限定展開(インクルード)みたいにステンノの力を展開できれば違う…………ん?

 

何となく左手の甲に夢幻召喚の時のイメージで魔力を集中させてみたら、『女神のきらめき』が顕現したわ……。嘘、こんなアッサリ?前よりも魔力の扱いが上手くなってきてるのかしら?それは喜ばしい事だけど……そっか、『女神のきらめき』かぁ。不意打ちや目潰しには使えそうだけど、もう少し直接攻撃力のあるものが良かったわ。魔力弾が強化された!とか。それかせめてガンドを連発出来るようにとか。

 

ん?……ガンド?そういえば、魔力は扱うのに練習が必要だったのにオダチェン礼装は何の練習も要らずにすんなり使えたのは何故かしら?まあ転生特典と言えばそれまでなんだけど。

そもそもパイオスと私の持ってる魔力炉?だっけ?その強さの元って何なんだろう?異世界に行くと転生者は漏れ無く強くなるように出来てるとか?でもそれだとシュリーマンさんの力の具合とパイオスのそれとが違い過ぎるし。パイオスと私の魔力は明らかに大き過ぎてバランスブレイカーだし。そもそも転生特典無しでもパイオスみたいなのが横行してたら異世界はぐちゃぐちゃになってる筈よね。だとしたら……パイオスって、私って何なんだろう……。

 

膝の上に抱えたままのニュクティが何かを訴えるように、私の顔を覗き込むように視線を向けてきた。ちょっと余計な事考え過ぎたわね。どうせ考えても分からないし〈主神(アイツ)〉は聞いても答えてくれなさそうだし。今は目の前の問題を片付けていこう。

 

「ねぇねぇステンノちゃん、ワタシも筆頭騎士さんみたいな神様の武器が欲しい!」

 

「武器?アルトリウスの天羽々斬みたいな、かしら?」

 

「そうそう!アメノナントカ、みたいな!女神の守護者!って感じでカッコいいでしょ?それにワタシ、神様から武器を貰う!みたいなのに憧れてたんだよね!」

 

武器、ねぇ。そうは言われてもね。ステノ王女の戦い方って魔力を拳に纏って殴るアレよね?メリケンサックみたいな神様の武器って何かあったかしら?エニュさん用に弓とかなら何かは用意出来そうだけど。

神から授かった……あ、そうだ。そういえばアレがあったわ。ボロック・ダガー。形はアレだけど正真正銘〈主神(あのヘンタイ)〉から貰ったものだし、加工すれば使えるよね(目逸らし)。

 

「そういえば『身を守る為に』って私が主神に貰った武器があったわ。それを貴女にあげる」

 

「えっ!?いいの!?神様から貰った武器!?」

 

王女、スッゴく喜んでるわ。ちょっと申し訳ない気がするけど良いよね?嘘ついてる訳じゃないもの。

 

ニュクティ、何?「前にステンノが話してたアレか?」って?ええそうよ。呆れても変更は無し。それに久し振りに食べたいの、林檎が。どうせならあの木ごと此処に移植させようかしら。そうすれば森の中にあるよりは手に入れやすいしね。

 

そうと決まれば。

 

「ええ。でも今手元には無いの。場所は少し戻るけど、ゼメリングの方にある山の中。先ずはそこを目指す。武器を入手してから再度方針を考える、って事でどう?」

 

「異議無しだよ!」

 

「ったくアナ、アンタは……。では女神様、そのように」

 

エニュさん、相変わらず硬いわね。彼女にも言っておかないと駄目みたい。

 

「エニュさん、硬いわ。ステノ王女みたいにもっと砕けた話し方にして欲しいのだけれど?」

 

「えっ!?いや、しかしですね……」

 

止めにニュクティが「ステンノが良い、って言ってるんだから良いんだよ」って言ってくれたわ。それでやっと折れたエニュさん、「後で駄目だっておっしゃらないで下さいよ?」って前置きして立ち上がった。

 

「ええっと、ステンノさん?これでいい?」

 

「ええ。『さん』も要らないわ。宜しくね」

 

それじゃ、休憩したら準備を整えてボロック・ダガーを探しに行くとしましょうか。そうだ、ミュケーナに行って私とステノ王女が別人だってあの王子に知らしめるのも悪く無いわね。それにミュケーナならドーリス大陸からも遠いし、ステノ王女の事を公表しなければ流石にブエル達にも気付かれないんじゃないかしら?

 




ボロック・ダガー「お  待  た  せ」

ニュクティ「大事な事だから三回言ったぞ」

また次回お会いしましょう
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