千字近く削りました。R18とR15の境界って難しい。
なんだろう。ボーっとする。頭が重くてうまく働かない。あ゛ー、でも起きて着替えて……ご飯は……もうトーストと珈琲でいいや。仕事行かないと……。
何か体が痛い……。
ベッド買い換えたばっかりだった筈だし、こんなに硬いのっておかしくない……?
瞼を開く。ぼんやりする視界に映るものは、少し古ぼけた床板。うーん、キッチンの床で眠っちゃったのかしら?昨日飲み過ぎたんだっけ?そもそも昨日お酒飲んだっけ?
……ん?ウチのアパートの床板、こんなに古かったかな?
視線を少しあげてみる。視界には鉄の棒が等間隔で立ってるのが見えた。こんなの買った覚え無いけど…………は?
鉄……格子……?
え?私の首に何か付いて……金属製の首輪が嵌められてる?そこから鎖が伸びて、鉄格子のうちの1本に繋がれていた。知らない間に何者かに捕まったって事?
冷静になる為に、昨日の事を順に思い出してみる。そうだ、異世界転生なんて非現実的な事があって、ステンノの体を貰って、森の中を彷徨って。親切な旅人が街まで送ってくれるって……。
この鉄格子で囲まれた3畳程度の広さの場所は何?昨日眠るまでの記憶と一切繋がらない。
まさか道中で盗賊とかの襲撃があったとか?
そういえば私が着ている物も麻袋に手と頭を通す穴を開けただけのみすぼらしい格好で、下着すら着ていない。まあ服はいつでも展開できるから良いとして、まさか私の体も蹂躙され……でも今のところ違和感は感じない。硬い床で寝たせいで体の所々が痛いくらいかしら。
「おらっ、飯だ奴隷どもっ」って声が聞こえて、私の位置から最も遠い場所の、錠前の付いた扉のある場所に掛けられていた布が左右に開く。全面を覆われ薄暗かった鉄格子の中に、開かれた布の隙間から日の光が差す。
声の主は、昨日私にパンをくれたゲイルさんだった。ゲイルさんはパンを中に居る私達のそれぞれの足元に向かって投げ入れ、私達……つまり奴隷の様子をニヤニヤと気色悪い笑みで嘗めるように見回す。
「街に着いたら買ってくれる主人にせいぜい可愛がってもらうんだな」
出口から一番遠い私の足元にも、昨日の夜食べた物と同じ種類、同じ大きさのパンが転がった。えっと……つまり、昨日のゲイルさんやピトスさんは実は奴隷商人で、私は彼等に捕まって奴隷として売られるって事?私の異世界転生、ハードモード過ぎない?成る程ね、ピトスさんが『街まで送ってやる』って言ってたのは嘘じゃなかったってわけか。但し奴隷としてだけれど。
私以外に捕まってる奴隷は4人。痩せて髪もボサボサの人間の男性が2人、同じく髪がボサボサ、顔もそれなりの人間の女性が1人、それから性別は分からないけど、茶色の髪に犬耳が付いてて尻尾も生えてる獣人?らしき子供が1人。全員が私同様に首輪を嵌められ鎖で繋がれていた。それに全員の左手の甲に、同じ模様の焼き印がある。形からして恐らく魔法陣の類いだと思うけど、もしや奴隷印とか?でも私の左手の甲には付いてないけど?
奴隷の彼等は慣れた、というか諦めたように床に転がったパンを拾い、手で表面を払って口に運んでいる。奴隷といえども食べなきゃ死ぬ。誰も死にたくはないから分からなくはないけど……衛生には気を使っていた現代日本人の感覚からすると、このパンを食べるのはもの凄く抵抗が……。
そんな私の意思に反してグゥ~、と鳴るお腹。ステンノの体が小さく少食で済むであろう事を差し引いても、昨日口にしたのは林檎数個とパン1個だけ。ここから逃げるにしても何をするにしても、食べておかないと体力がもたない。嗚呼、同じパンならフレンチトーストが食べたい。珈琲が飲みたい。何ならミルクでもいい。
うぅ、やっぱりこのパンを食べるしかないか。注意深く全体を手で払い両手で持って、意を決し口に運ぶ。水分が無いから昨日より一層固いしボサボサして不味い。
必死に口を動かして何とか飲み込んだ。今は我慢しなきゃ。隙を見て逃げないと。隙……があるかは分からないけど。先ずは敵の数を把握して、逃走方法を探さなきゃ。
そんな私の思考を知ってか知らずか、錠前を外しゲイルが鉄格子の中へと入ってきた。私の元へと一直線に向かってくる。私は思わず着ている麻袋の服もどき……股下数cm、ううん、数㎜レベルの超ミニスカート状態の裾を両手で押さえた。陵辱……されるの?こんな所で?
「おらっ、来い」
ゲイルは鉄格子から私の首から伸びた鎖を外し、その先端を持って引っ張る。思った以上に力が掛かり、首が痛い。抵抗なんて出来るわけもなく、引かれるままに鉄格子の外へと連れ出される。超ミニスカートもどきの奥が露になり、奴隷の男共の視線が向くのが分かる。羞恥で赤く染まる私の頬。ゲイルも覗いた男共も許さない……勿論、私をこんな運命に放り込んだ〈
連れ出されて分かったのは、私が拘束されていたのが昨日見た馬車の荷台部分の中だという事と、煌々と幻想的ともいえる炎を湛える焚き火に突っ込まれている焼きごてが見えた事、だった。
高温で真っ赤に染まった円柱型の丸い先端。きっと他の奴隷の甲に付けられたあの魔法陣が彫られているに違いない。あれが私の左手に押し付けられるのか。勿論嫌に決まっている。持てる力の限りに暴れて藻掻くけれど、逃げる事は叶わない。呆気なくうつ伏せにその場に押さえ付けられる。
ピトスがその焼きごてを炎の中から取り出した。ゲイルは私の背中に馬乗りになり、両手を押さえ付けてくる。力の差が有りすぎる。私の口の中に皮で出来た何かが押し込まれた後、全然動かせない左手の甲に焼きごてが近づいてくる。
ジタバタとその場で抵抗を繰り返すも、状況は変わらない。やがて焼きごては私の左手甲に押し付けられて…………。
「ん゛ん゛~!!ん゛ん゛~~!!!」
嫌!嫌!イヤイヤイヤイヤイヤァァァァァァァァアアッッ!!!
とてつもない熱さ。昨日のかまいたちもどきの魔法とは比較にならない、耐えられない痛み。火傷だけじゃ説明のつかない痛みが延々続く。それに奴隷堕ちの屈辱と恐怖に、ボロボロと大粒の涙が溢れて止まらない。少しでも痛みから逃れようと右手は苦し紛れに地面の土を何度も掴む。
やっと焼きごてが離された。まるで左手にもう1つ心臓があるかのように、私の鼓動に合わせて熱と痛みが脈打つ。手の甲には腫れて真っ赤に染まった魔法陣が現れていた。それが一瞬光って、紫色に変化して蒸着。痛みは全然引かないけれど安定したみたい。
痛みとショックで荒い呼吸を繰り返すのみの、うつ伏せになったままの私。ピトスが放心状態の私の左手を見つめて首を傾げた。
「なんか何時もより光る時間短くなかったかい?」
「そうか?俺は何時も通りに見えたけどな。姉御の気のせいじゃねえの?」と答えるゲイルに「気のせいか、まぁそうだよね」とすぐに意識を切り替えるピトス。
そんな二人の会話に、霧散していた私の意識が戻ってくる。何かいつもと違う事があった……?
「ふんっ、確かステンノ、だったね。アンタは今日から晴れて奴隷だ。その刻印にはアンタの魂に干渉して『主人の命令に絶対服従、主人に決して暴力を向ける事ができなくなる』効果があるんだ。アンタはアタシらには永久に逆らえない。いいかい?最初の命令は『自殺の禁止』『他の奴隷に危害を加えるな』『勝手に口を開くな』『逃げようとするな』。これだ、分かったな?」
酷い、って言葉が喉まで出かかった。でも何とかそれを飲み込んだ。魂に干渉……つまりこの刻印が精神干渉系の魔法だとすれば、私の中の『女神の神核』に弾かれて無効化されている筈。だとしたらそれをこの場で気付かれるのは極めて危険だもの。もしバレたら、もっと別の解除不可能な枷を付けられるかも知れないし隠しておいた方がいい。
ピトスがそれだけ私に伝えると、ゲイルが再び私を持ち上げた。今度は何をされるのかと引き攣った表情に変わった私に、ゲイルは「価値が下がっちまうからお前の事はヤるな、って姉御の命令があるからな。変な気さえ起こさなきゃ犯さねぇ。俺だって本当は辛抱たまらねぇんだがな」っていやらしい目を向けてくる。こんな奴に犯されるなんて絶対嫌だし、もう暫くは大人しく様子を見よう。
そのまま鉄格子の内側へと放り込まれて、さっきまでと同様に最奥の格子に鎖を繋がれた。「大人しくしてやがれ」って言葉を吐き捨て外へと出て行ったゲイルが戻ってくるかを気にしながら、私は一番近くに繋がれた獣人の子供……この子男の子か……に本当に小さな声で囁く。
「私の言葉、分かるかしら?」
これで、私に付けられたこの刻印が無効化されているのが確定。誰かに売られるまでには何とかしたい所だけど……脱出の手段は思いつかない。先ずこの鎖をどうにも出来ない。それに私の攻撃手段は、試した結果クールタイムに10分程度掛かる事が判明したガンドだけ。普通にやったらどう足掻いても逃げられない。
驚いて顔をあげたその子は、口をパクパクさせている。多分私と同じように『勝手に口を開くな』って命令されてるんでしょうね。
ん?この子の視線、私の顔から下に動いて……あ、赤くなって視線を私から逸らせた。そっか、この角度だと私の服の中が丸見えだもんね……そっかぁ……ふぅん…………。
獣人なら仲間に引き入れておけば逃げる時に何かと使えるかも知れないし、おねーさんの魅力で篭絡させておこうかしら?私自身に力が無い以上、使えるものは使っていかないと。それにしてもこんな小さな子すら惑わすなんて、私の精神も
「また後で話しましょう」って小声でその子に伝えて、微笑んだ。真っ赤になって俯く獣人の子。
今はここまでね。目立つ行動はなるべく控えないと。どのくらい時間が残されてるかは分からないけど、力技で逃げられない以上はチャンスを待とう。
という訳で、奴隷ステンノたんの回です。
平穏には進まない異世界生活は次回へと続きます。
それとそこのショタ獣人、ちょーっとその場所交換してくれませんかねぇ?