前話が2022年だから……3年前!?うわぁ……
ゆっくりと。瞼を開いた。
目に飛び込んで来たのは雲一つ無い青空。それと平原。どのくらいか分からないけれど寝てたみたい。太陽の位置からしてそれ程は経ってなさそう。
夢、見ていた気がするんだけど、思い出せない。何だか重要な内容だった気もするけど……まあ仕方ない。
胸、痛くないわね。あ、傷が完全に無くなってる。治ったのか…………あっ。
私は慌てて上半身を起こした。それでニュクティが私の覚醒に気付いたみたいで。眠っている間私はこの子の膝を枕にしてたみたいね。
「ルリカ!?大丈夫か!?」
条件反射的に「ええニュクティ。大丈夫」って返しながらも、彼の姿を探してキョロキョロと周りを見渡す。居ない、か。
「アーサーなら光になって消えたぞ。『マスターを頼んだよ』って言ってた」
ニュクティは少し不貞腐れた様子でそう語る。起きて最初に気にしたのが彼だったから嫉妬したのかしら。はぁ、仕方ないわね。
「退去したのね……それはそうと、ニュクティもありがとう」
私はニコリと微笑んで、右手でこの子の頭を撫でてやる。ニュクティは一瞬表情が緩んだけれど、直ぐに不貞腐れたものに戻った。あら、もしかして私がアーサーにキスをした事を根に持ってる?そうよね、舌も絡めたディープキスだったものね。
「私はニュクティの事も好きよ?」
「ったく、俺はついでかよ」
やっと空気が緩んだわね。それじゃ女神瑠璃華の名において戦後処理といきましょうか。
パイオスなら確認するまでも無く討伐確定。自身の魂が倍以上に増大してるのは感じ取れてるし。恐らくパイオスが死んでその魂の大部分を取り込んだんでしょうね。歯抜けだった記憶も殆どが思い出せるし。
フッ、と魔力を全身に回す。私の姿が白のワンピースからステンノ第三再臨へと一瞬で変わる。夢幻召喚も必要無い。この姿が私の本来の姿かのように自然に切り替えられる。これは助かるわ。
「いきなりかよ、ビックリしたな」
「ごめんなさい。でもこれでこれからはニュクティに迷惑掛けずに済みそうね」
「……そうだな」
あら、あんまり嬉しそうじゃないのね……ああ、そうか。これでもうニュクティは御役御免、みたいに思ってるのかしら。あのねぇ、人間……いや私はもう女神だけれど……は孤独では生きていけないんだし簡単にハイさよなら、なんてしないから。それにニュクティは私の眷属なんだからいきなり放り出すなんて事しないけど?
「やっと女神らしくなったんだもの。今まで以上に仕え甲斐があるでしょう?」
「…………そうだな!」
はー、やれやれね。やっと笑顔が覗いたみたいね。それじゃあそこに見える馬車まで行きましょうか。みんな中に居るんでしょう?
「……いや、私さっきからココに居るんだけど。空気読んで瑠璃華様達に話し掛けなかっただけだけど?」
後ろからそう声が聞こえた。あ、エニュはそこに居たのか。そりゃそうか。護衛も無しに平原に寝かせるとかあるわけ無いものね。にしてもエニュも胸に風穴空いてたのに完治してる。
「護衛ありがとう。エニュも無事で何よりだわ」
「ありがと。そりゃお互い様よね」
エニュはニカッと笑って、馬車へと歩く私達の後ろを付いてくる。
馬車へと乗り込んだ私を待ち受けていたのは「うわーっ、ルリカちゃん!!無事!?大丈夫!?」って大袈裟に抱き着いて喚くステノ王女と、その様子を苦笑いしながら見守るアルゴリス王子。それと……。
「王女殿下、何度言わせるつもりですか。もう少し優雅に振る舞って下さい」
「痛ぁっ!?拳!?ダナエ、脳天に拳は酷くないかな!?ワタシが馬鹿になったらどうするの!?」
「大丈夫です王女殿下。それ以上馬鹿にはなりませんから」
「不敬!前から思ってたけどダナエは不敬が過ぎないかな!?ワタシ王女!王女だからね!?」
相変わらずのダナエさん。うーん、これはこれで気安くていい関係なんでしょうね。王族なんて本来こんな素を出せるような相手出来なさそうだしね。
やっと落ち着いて話をしてみたら、どうやらアルゴリス王子とステノ王女は正式に婚約するらしいわ。ステノ王女はそれで良いの?コイツ絶対貴女の容姿目当てだと思うけど?
まぁ、ステノ王女にもちゃんと利はあるみたいだけど。アルゴリス王子と婚約する代わりに、彼女はこのまま世界を放浪していい、って事にしたみたい。で、名目上『魔王軍の残党狩り』の旅に王子とダナエさん、それとエニュが付いて行くらしいわ。婚約の代わりに世界を旅する自由(猶予期間かも)を貰ったみたいね。ま、本来なら魔王を倒した事を国へ帰って報告、そのまま軟禁コースでしょうし王女にとっては良かったんでしょうね。
それで「女性三人に囲まれた旅とか、晴れてハーレム野郎の仲間入りね、おめでとう、アルゴリス王子」って笑顔で皮肉を言った私に王子は「いや、出来るなら貴女と共グゴハァ!?」って答えてる途中でダナエさんとエニュに両サイドから肘鉄を食らってたわ。残念でもないし当然、ってやつかしらね。
『皆揃ったようじゃの。改めて礼を言うぞ。よくぞ魔王を倒した。そなた等の活躍は後の世まで語り継がれるであろう。そなた等に真の勇者の称号である勇者ロ』
「うるさいわね主神。私しか分からないネタを振らないでくれないかしら?」
この駄目主神……最後くらいまともに締められないのかしら?それともコイツの住処まで乗り込んで行って直接シメないと駄目?
『フムフム。どうやら瑠璃華の記憶の方も粗方戻っておるようじゃの』
「いいから現状を教えなさい。他の魔族は?ブエルはどうなってるの?」
私の質問に駄主神は軽い感じで答えていく。私に関しては、現状魂の7割程度に回復してるみたいで、残り3割は『獣の権能』とか保持してると面倒なモノと一緒にアーサーによって粉々に吹き飛ばされたようね。ただ、今の私は単独顕現をEマイナスランクで保持してるっぽいのよね。駄主神はビーストには絶対ならないって言ってるけど本当に大丈夫なの?それ。
それとブエルは消息が途絶えた。多分自身を封印して力を溜めてるんだろうって。つまり将来的にまた魔王を喚ぶんだろうけど、どれくらい先になるかは分からないようね。ま、少なくとも王女達が生きてる間どころか数世代先くらいの間は無いだろうって。その頃には転生勇者も使えるようになるだろうし対処出来るだろうって。
その魔王復活まで私は地上に残ってスロー女神ライフを満喫しろってさ。パイオス側の魔力炉は回収出来なかったけど、現状でも私は魔族を圧倒出来るくらいの力はあるようだし抑止力になるからって。それにパイオスが居なくなってまた個人プレイに戻るであろう魔族ならブエル以外なら王女達や神殿騎士でも対処は可能だろうし。
女神の神核のお陰で私は不老不死だからね。いつかは今この時も忘れるくらい遠い過去になるのかしら。
次の魔王の時は転生勇者に適当に助言を与える女神的なポジションだと助かるわね。
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「まあまあまあ。私達が聞かされたお話とは随分違うのですねぇ」
「そうね。アルトリウスとアーサーが混ざってる話とかあるしね。それに何故か私とアーサーの恋物語になってるものが多いし。何故か、ね」
どのくらい年月が経ったかしらね……と言っても女神たる私の容姿は昔と全く変わらないのだけれど。そうね……数えるのも飽きるくらい月日が経って。今私が話しているのは今代の聖女アニスの先々代で彼女の教育係も務めたナル二。相応に歳を取って引退した彼女は、田舎で農作業でもして静かに暮らしたいらしかったから私の所へ連れて来た。って言っても何代も世代交代した歴代の聖女達全てを連れて来たわけでもなくて、彼女で3人目かしらね。他の2人も聖女の名に恥じない人格者だったわ。
今の私が暮らしているのは私が落ちたあの森の中。そう、あの林檎の木がある滝壺の傍ね。ログハウスと庭に作った大きくない畑を結界で囲って悠々自適に生活してる。偶にお忍びで街まで行って必要な物を手に入れたりしつつ、ね。
因みに今の時代だとカッサンドラさんは公明正大で歴代最高の大聖女、って事になってるわ。もの凄く納得いかないけど口出しするのもねぇ。それからステノ女王とアルゴリス王配の像がラケダイに建ってたりするし、私がかつて使ったあのスプーンが聖女即位の時に使われる聖遺物だったりする。
そうそう、今の私はナルニとの2人暮らし、ってわけじゃ無いのよね。
「
そう言って笑顔を見せて台所から現れたのは、首元に黒とオレンジのリボンを幾つもあしらった黒いドレスを着ていて同じリボンを長い金髪にも飾る少女。彼女は林檎のジャムの入った瓶とパンケーキの皿の乗った盆を落とさないように両手で確りと持っている。
「まあまあまあ、あの貴重な女神の果実をふんだんに使ったジャムにパンケーキ。美味しそうですねぇ」ってナルニは素直に喜んでいるけれど。あのねナルニ。その林檎、本当は貴重でも何でもないのよ。収穫しても次の日には何故かまた実ってるのよ。貴方達人間が勝手に『女神の果実』とか命名して崇めてるだけなのよ。そりゃ神殿の儀式の時しか出さないのは私だけど。
それで、そうそう。金髪のこの少女だけど。パイオスを倒して暫くして、私がココに住む事にして。ログハウスを建て終わって(私は建ててない、主神にやらせた)いざ住もう、って扉を開けたら何故か中に居たのよね。で、何故か私の事を
「上手く焼けたのね。ありがとう、アビー。みんなで食べましょうか」
私が咄嗟に決めた呼び名は気に入ってくれたみたいでね。アビーは名前を呼ばれる度に嬉しそうにするのよね。
っと。外へと通じる扉からピンポン玉くらいの光球が入って来た。
「ルリカ、お客さんだ……ってオイッ!パンケーキ焼けてるのかよ!俺も呼んでくれよ!」
この光球が最後の同居人。死後に正式に私の眷属として精霊になったニュクティ。ニュクティは私から魔力を貰って生きられるから食は不要なんだけど、まあそれはそれ。
「お客さん?……ああ、彼ね。今行くわ。3人とも、先に食べてて」
私は1人外へ。そうそう、森へと引きこもった私と別れたニュクティは、神殿の不正を監視する監査役的なポジションに就いたみたい。今でもその役職は代々ニュクティの子孫が務めてる。ニュクティ自身は結婚して、孫達に囲まれて亡くなって。精霊になっても暫くは奥さんの所に居たんだけど、奥さんが亡くなった後に私の所へと来た。
途中林檎を1つ採って。畑を横目に私は庭の結界の外へ。大人しく待っていた、他の個体より二周りくらい大きな体のワータイガー。この森の主って所かしら。あぁそういえばこの森、今や『聖なる森』とか大層な名前が付いてるわ。
で、このワータイガー。どうも私が何者か何となく理解してるっぽいのよね。こうして時々やってきて貢物を置いていくし。今日は鹿……鹿?みたいね。私に渡す為に狩ってきたのね。よしよし。私はワータイガーの頭を撫でてやる。擽ったそうにしつつコロコロと喉を鳴らすワータイガー。その口元に林檎を差し出してやると、ワータイガーは器用にそれを咥えた。因みに林檎には私の魔力を込めてあって、何故か薄っすら金色に光ってる。私の魔力、ピンク紫っぽい色なのに。
と。突然ワータイガーが空を見上げて睨み、ガルルル、と吠える。成る程、命知らずの若い魔族が性懲りもなく来たのね。ハイハイ、今始末するからちょっと待っててね。
私は魔力を全身に巡らせ一瞬でステンノの第三再臨の姿へと変化。今度は右の掌に1枚のカードを顕現させる。アビーから貰った7枚のカードのうちの1枚。
「限定展開」
カードが消えて、代わりに私の右腕に魔法陣が何重にも現れる。空から向かってくる魔族に向けて、私は右腕を突き出した。
「ストレンジダウン、チャームトップ。術式拡大、衛星弁開放」
腕に纏わり付いていた魔法陣が、あるものは私の周囲へと展開。またあるものは右腕を砲身に見立てたように腕の遥か前方まで円柱状に幾つも並んで展開する。
「バーナー点火」
右掌先端に莫大な魔力が集まって……事態を察した魔族が回れ右して逃げようとしてる。まぁ、もう遅いのだけれど。生物相手に放つのは初めてね。テストには丁度良い。
「ああ、そうそう。言い忘れてたわ。お代は結構。出世払いで返してね!…………『アースライト・スターボゥ』!!」
轟、と爆音とと共に私の魔力光の柱が一瞬で空を突き抜けた。魔族は……うん、消滅したみたいね。流石の威力。攻撃宝具を持たない私には有り難い事この上ないわ。
因みに残りの6枚だけれど。乖離剣エアに並ぶ界剣が出て来て元日本人の私としては恐れ多くて思わずそっ閉じしたセイバー。何故か某遊〇王みたいなホイール型バイクが出て来て思わず宇宙猫になったアーチャ。槍……ううん、日本的な鉾?が出て来てコレ何だか不用意に振るったら不味くない?ってなったランサー。何か底?に矢鱈長くて鋭利な刃物みたいなのが付いてる靴?が出て来たアルターエゴ。もうカード見るからに厄ネタ感満載で使いたくないビースト。それと使ったら虚影の塵が山盛り出て来た後に上から『スカ』って書かれた紙切れがヒラヒラと落ちて来たプリテンダー。これで計6枚。フォーリナーのカードが比較的使い易かったの分かってもらえたかしらね。
……セイバーのカードがアーサーじゃ無いのが何か引っかかるけど、まあいいわ。
さてと。折角アビーがパンケーキ焼いてくれたんだし、味わっていただくとしましょうか。
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旧ドーリス大陸の奥地。元魔王城廃墟。玉座に大層不機嫌そうに座る人物に対し、ブエルは臣下の礼を尽くすべく膝を付き頭を垂れていた。
「お初にお目にかかります、新たな魔王様。私の召喚に応じて頂き恐悦至極に存」
と話しているブエルの言葉を遮るように「はぁ……」と溜め息を付いた魔王と呼ばれた人物は続ける。
「そういうの要らないんですよ。私は今ほんっっっ当に忙しいんです。くだらない理由で喚んだのだったら殺しますよ?」
魔王は殺気を隠そうともせず、ブエルを睨みつけていた。存在の格が違う。パイオスは魔王といえど魔族であったが、今ブエルの目の前の存在は神とかそういう次元のそれ。正しく魔王だった。
その長い髪には宇宙が浮かんでいて、服など身に着けていないも同然。胸や局部は青白い炎が浮かんでいて隠されているだけだ。同じ炎が両掌、両足の先端に揺らめいている美女。それがブエルが呼んだ魔王の姿だった。
「それで?私を喚んだのは何の用でです?」
底冷えするような声を発した魔王に、ブエルは思わず冷や汗を流し答える。
「はい、我等魔族の仇敵たる女神ルリカを滅ぼして頂きたく……」
ブエルがルリカの名を出した直後、魔王の表情が固まった。ブエルは一瞬死を覚悟したものの、どうも魔王の反応は違うようだった。
「ルリカ……?ひょっとしてその女神って『松藤瑠璃華』
って名前だったりしませんか?」
「は、はい魔王様」
それから事の次第を話すよう要求した魔王に、嘗ての事を偽り無く話していくブエル。やがて全て話し終えると、魔王は先程までとは違い手のひらを返したように不機嫌さは鳴りを潜めていた。
「成る程、良いでしょう。魔王、やってあげます。瑠璃華を分からせてやりましょう」
「ハッ!ありがとうございます魔王様。つきましては御名をお伺いしても?」
「そうですね。カー…………ゴホンッ。ラーママーカ。魔王ラーママーカです」
魔王は現在の世界情勢を整理して報告するようブエルに言いつけ玉座の間から下がらせた。1人となった魔王は口元を引き攣らせながら周りに聞こえない程度の音量で独り言ちる。
「はあぁ!?私がアチコチ駆けずり回って必死に探し回った挙げ句に砕けた魂の欠片を見付けて、絶望しそうになっても諦めずに半泣きで探し回ってたっていうのに!こんな所で呑気にスローライフしてたってどういう事ですかぁ!?しかも決戦で喚んだのがあのスケコマシの聖剣使い!?そこは普通私を喚ぶ所ですよね!?ふ…………ふふふふ。いいでしょう。これは少しお仕置きしても良いですよねぇ?仕方ありませんよねぇ?」
また別の場所。
ラケダイよりも遥か東の山の頂。金髪に蒼い瞳の美少女が立っていた。登山には相応しくない普段着……しかもこの世界のものではなく現代地球のそれという異常さ。彼女の瞳は遥か西に向いていて、その口からポツリと言葉が漏れる。
「私の王子様の唇を奪った卑しい泥棒猫、みーつけた」
瑠璃華&アビーVSチョロイン益獣&(?)ブエルVSプーサーのストーカーさん。
瑠璃華さん、プーサーとキスしたばっかりにプーサーストーカーさんにギルティ認定くらいました。
アビーは彼女対策の為に来ていたりします。
チョロイン益獣さんはアヴェンジャーのほう。
クラスカード
セイバー→ヤマタケさん
アーチャー→水着エレナママ
ランサー→エリセ
アルターエゴ→メルトリリス
プリテンダー→僕らの妖精王さん
フォーリナー→青子
ビースト→ドラコー
ですね。
いやー、これにて完結。第二部とかは無いです。
第二ラウンドでも瑠璃華さんは苦労しそうです。
3年とか放置したのは素直に反省。
次書くとしたらフレッシュプリキュア(オリ主キュアパイン)か推しの子(オリ主アイ)とかですかねぇ。書くかは分かりませんけど。