ハイパーみそしるさん、ツクシさん、ウサギさん、モノッチさん、信州そばさん、おきなさん、ななしさん、河童の奴隷さん、友達さん、笛吹きの人さん、正解おめでとうございます!
拙い問題でしたが時間を使っていただき、ありがとうございました。
本編はユウリ視点から始まります。
「はい、ユウリ選手の解答は……『1ターン目:ライチュウがほうでん、エモンガがレパルダスにほっぺすりすり、2ターン目:ライチュウが残っていた場合レパルダスにきあいだま、またはエモンガが残っていた場合レパルダスにとんぼがえり、3ターン目以降:攻撃技を持たないカポエラーを何らかの形で打倒』………正解です!」
またもやパンパカパンパンパーン、と気の抜けた音と共に正解を告げられる。
今回の問題はダブルバトルにおける行動順についてきちんと把握できるかどうか、という所が焦点だろう。
まず考えるべきはライチュウだ。防御しか出来ないスカーフカポエラーを除きすばやさが一番高いため、このポケモンの行動が盤面を左右することになる。
タスキを削りつつ行動を封じられるという点から、ねこだましをつい打ちたくなってしまうがカポエラーのファストガード*1の存在によりそれは完全に無駄打ちになってしまう。
また、きあいだまでレパルダスを削ることを優先してしまえば、かるわざ*2によってすばやさ関係が逆転され、上から2発目のあくのはどうを打たれておしまいだ。
勿論わるだくみを積む余裕なんてない。となると残るは、「ほうでん」だ。
ワイドガード*3の存在から無駄打ちのように思えるが、それは引っ掛けである。見るべきは相方のエモンガのとくせい「でんきエンジン」だ。
「でんきエンジン」はかなり珍しい特性で、他に持っているポケモンにはエレキブルなどが該当する。
その効果は「でんきタイプの技を受けたとき、ダメージを無効化してすばやさを一段階あげる」というもので、中々に有用な特性だ。
そして重要なのが、「すばやさを一段階あげる」という効果である。
ライチュウのほうでんによってエモンガのすばやさが引き上げられると、行動順が一気にひっくり返る。
本来なら何かをする前にレパルダスのあくのはどうで落とされていたエモンガが、一度の行動を保証されるのだ。
よって、敵にはワイドガードで防がれたとしてもほうでんは行動順をひっくり返すという面で大きな意味を持つ。
しかしこの時、行動を許されたからといってとんぼがえりでレパルダスを仕留めにいってはいけない。タスキで耐えられた挙句、かるわざの発動によってまたもやすばやさ関係が逆転されてしまう。ほっぺすりすりでしっかりタスキを潰すという詰めを誤らなければ、勝利は確定するだろう。
『流石だな! 問題は違うが、今までのチャレンジャーと比べても断トツで早いぞ!』
「ぇへへ……ぁ、ありがとうございます」
彼に褒められるとつい口がだらしなくにやけてしまう。
いけないいけない、折角今日は色々とキメてきたのだ。緩んだ口元を引き締め直す。
『このジムチャレンジはポケモンバトルを理論的にどこまで突き詰められるか、という素質を試した。その点じゃあ、お前は十分だ。素晴らしい!』
「ぇへ、えへ、えへへへへ」
めちゃくちゃ褒めてくれる。ヤバい。すごい。ニヤつきを止められない。なんだ、デレ期か? 耳が幸せすぎるぞ。
気持ち悪い声を出しながらデレデレしていると、ジムトレーナーさんが私に二つのモンスターボールを渡してくる。中に入っているのはアローラの姿のライチュウに、エモンガ。先ほどの問題で登場したポケモンたちだ。
私にその2匹を渡したジムトレーナーさんが無言のままスタスタと歩いて行った先には、バトルコートが床に描かれていた。
『――じゃあ、今からそれは机上の空論でしかないってことを教えてやるよ。第2のジムミッション、実践編だ!』
ジムトレーナーさんが繰り出すのはカポエラーにレパルダス。レパルダスの方は既に「わるだくみ」を積み始めている。
……こうなるというのは先に挑戦してきた人たちの映像を見ていたから知っていた。学校関係者とか色んなところに喧嘩売ってるな、とか色々と言いたいことはあるが、とりあえず一つだけ言わせて欲しい。
「はがねタイプ、関係ないじゃん」
◇◇◇
「……はは、やっば」
モニターに映し出されるアリーナの様子を見て、思わず乾いた笑いがこぼれる。
先ほどの問題と同じ状況を作り出した上での戦闘、その結果は無傷で佇むアローラライチュウとエモンガが示していた。
自分で言ったことではあるが、ターンなんて概念が全く信用に足るものじゃないってことをまじまじと見せつけてくれる。ゲームと現実は違う。命中率100の技も躱され、別に「ひっかく」を覚えていなくても爪があれば引っ掻くことは出来る。
先の問題のようなバトル理論は、本当に理論でしかない。リーグトレーナーたちに話を聞いても、参考にしたという意見はあれども本気で戦略の骨格にしているやつは見たことがない。……尤も、タマムシのエリカのようにその机上の空論であったはずのバトル理論でジムリーダーの位までのし上がった天才もいるのだが。
『もうジムミッションは終了ですか?』
息を切らして茫然とするジムトレーナーに追い打つかのような言葉。
ポプラの言が真実であれば敗者の気持ちがわからないでもあるまいし、ひどいやつだ。
今のはがねジムのジムトレーナーたちは一部のメインプランに関わっている人員を除き、その大部分はマクロコスモス社員の中から選ばれた強者たちである。彼らは前世でいうスポーツの実績で就職した人たち、企業所属のスポーツチームの選手のようなものに該当する。
当然ジムリーダーたちのようなトッププロには劣れど、バトルの腕にはかなりの自負を持っていたことだろう。それが見るからに小さな子供に叩き潰されれば、自信も失うというものである。
「おい、誰か今の相手したヤツを慰めとけ。ありゃ例外中の例外だ、ジムリーダーだって敵わねえよ」
その場で一緒にモニターを眺めていた奴らのことも含め、声をかけておく。
先ほども言ったが彼らは強い。ユウリと自身の距離がどれほどかはわからずとも、かけ離れていることは理解してしまっただろう。
何も一番を見て自信を失うことはない。この場にいるのは既に十分高いところまで登り詰めてきた者たちである。彼らの力で何が不足しているものか。
「じゃあまあ、行きますかっと」
ぐいと伸びを一つ。
試合前に行うべきことは単純、リラックスである。勝ちたいという気持ちが強すぎても、弱すぎてもいけない。勿論弱気になるのは論外だ。勝てる試合も勝てなくなってしまう。
ただ、今回に限っては「敗北」の二文字がいつまで経っても頭を離れなかった。
◇◇◇
「ようこそチャレンジャー。先ほどはお見事、素晴らしい試合だった」
「ぁ、はい。ありがとうございます」
モニター越しに喋っていた時よりも更にオドオドとした様子のユウリ。
一体どうしたことか。弱点があるというのなら、是非とも教えて欲しいところだが。
「それにしても、随分と観客が多いな。やっぱお前、かなり注目されてんぜ?」
「ぁ、ぃぇ、全然そんな大した人間じゃないんです……」
快進撃の結果か、他のチャレンジャーたちと比べても数倍の観客たちが歓声を上げている。
これほどの人数を集めるのは他にマリィくらいだろう。将来のチャンピオンは既に大人気のようだ。
あのスポンサーのロゴだらけのマントを着た将来のユウリの姿を頭の中で思い描く。
「…………」
「ぁ、沈黙はマズいって。なんか、なんか話さなきゃ……」
気づけば、ボーッと10秒くらい観客席を眺めていた。
ダメだな、あまり集中できてないようだ。こういう時はこれ以上悪くならない内に勝負を始めるに限る。
「ぁ、きょ、今日の天気って……」
「じゃあまあ、これ以上観客を待たせるのもなんだし、そろそろ始めるか」
「ぁ、はい」
何か言いかけた様子のユウリであったが、簡単に止めた辺りそう大した話でもないだろう。
話を半ば無理矢理に断ち切ってしまったものの、すぐに忘れてコートの端へ向かった。
審判を横目に見て、試合開始の合図を待つ。
戦法は何度も考えた。並の相手ならばジムリーダーに対策なんてされたらボコボコにされて終わりだ。
しかし、並じゃないのが目の前の
呼吸を整え、試合開始と同時にボールを投げる。
「――いけ、ドータクン!」
「――出番だよ、エースバーン」
やはりか。思っていた通りのポケモンに、安堵と苦々しさを感じる。
しかし、相性の悪い相手だからこそ、対策をした価値があるというものだ。
「そのまま手加減ナシ、『かえんボール』」
「――『トリックルーム』」
普段ジムチャレンジでは絶対に使わないような技に、観客席から驚きの声が上がる。
「たいねつ」の力によってエースバーンの豪火球を耐え切ったドータクンは、その身を震わせて空間を歪ませた。
突然の環境の変化に、小刻みにステップを踏んでいたエースバーンの動きが止まる。対してユウリの表情は、全くの変化を見せない。
「能力者でもあるまいし、その素早さを維持したまま動けるワケがねぇよなあ!
――吹っ飛ばせドータクン、『だいばくはつ』!!」
体内にて収束するエネルギーは、輝かしい光となって体外に溢れ出る。
それに付随して莫大な熱量がバトルコートをも焦がし始めた。
「だいばくはつ」
それはポケモンにおいて最大の威力を誇るわざであり、その力はわざを使用したポケモンすらも焼き焦がす。
通常のわざが威力100を超え始めると命中率の低下やステータスの低下などのデメリットを伴うのに対し、その威力は脅威の250。当然それに伴うデメリットも最大級であり、その技を使用したポケモンは漏れなく瀕死に至る。
瞬間的に高まった熱量は先ほどのかえんボールの比ではない。
その集まったエネルギーは、解放されればエースバーン程度の耐久力ならば簡単に貫き、一撃でその身を持っていくことを予想された。
光が余りの熱に真白く染まっていく。エネルギーの解放、すなわち爆発の直前、臨界点。
歪んだ空間に戸惑うエースバーンに、最早それを止める手立てはない。チェックメイトだ。
そんな風に考えていた俺の作戦は、いとも容易く覆された。
「Cooooo………」
バトルコートに倒れ伏していたのは、ドータクンただ一匹のみ。
「だいばくはつ」は、発動しなかった。
「『ふいうち』か……。タマゴわざだし、てっきり使えないと思ってたんだがな」
爆発の直前、僅かに硬直したその隙を突いての鋭い一撃。後の先とでも言うべきそれは、トリックルーム下で逆転したすばやさ関係をまた更に覆した。
瀕死となったドータクンをボールの中に戻しつつ、狂った作戦を頭の中で修正する。
先の動き、使ったわざが「ふいうち」にしても見事なものだった。恐らく特性は「リベロ」で確定。ますますエースバーンが厄介になるのと同時に、ユウリの才能に改めて恐怖する。
「ふいうち」というのは非常に強力なわざだが、同時にトレーナーの力量が問われるわざでもある。少なくとも、ガラルのジムリーダーで完璧に使いこなしていると言えるのはネズだけだろう。
「えへへ。『あの子』が得意なわざでもありますから、かなり練習してあるんです」
先ほどとは違って滑らかに動くユウリの口。俺とのバトルに高揚でもしているのか。
その熱が冷めない内に、俺も次のポケモンを繰り出す。
「ハガネール、行け。『ジャイロボール』」
「私たちに負けはないよ、エースバーン――『とびひざげり』」
見える勝ち筋は、既に相当細いものとなっていた。
次回は実況スレです。