「ユウリ選手! チャンピオン就任以来初の公式戦を終えたご感想を――」
「チャンピオン! ローズ委員長の判決に関して何かコメントがあれば――」
今受けている試合後のインタビューですら精神的にかなり疲れる。答えられる質問には回答し、答えられない質問にはノーコメントを貫く。言ってしまえば単純なことだが、これが中々難しい。ダンデさんは本当にすごかったんだなあ、と今更ながらに尊敬の念を抱いたものだ。
適当なところで話を切り上げ、スタジアムを後にする。
チャンピオン専用の送迎アーマーガアタクシーに乗り込めば、向かう先はここ最近いつも同じ。運転手も手慣れたもので、私が何も言わない内にアーマーガアは空を飛び始めた。
十分弱くらいか、流れる空の景色を眺めていれば到着するのはとある病院の屋上。運転手を置いて、一人中に入っていく。
見慣れた通路を歩いていると、いつもよりも忙しなさが増していることに気付く。緊急事態でも発生しているのかと言うほどに何人もの人間が廊下を走っているのだ。道中のトイレから出てきた病院スタッフに話を聞けば、この病院から一人患者が脱走したらしい。
嫌な予感を感じつつ道を急げば、辿り着くのは地下に設置されたVIP用の
しかし思った通りそこに患者の姿はなく、代わりに一枚のリーグカードが置かれているのみであった。
そのリーグカードを手に取ってみれば、随分と昔に作られたものであることがわかる。
裏返すとそこに書かれているのは印刷された数行の文章と、その下に殴り書きされた数字の羅列。ユウリはすぐにそれを電話番号と見抜いた。
そのリーグカードを眺めて呆けていれば、ポケットに入れてある携帯が震える。電源を切るのを忘れていたかと反省しつつ、この病室に限っては使用に問題なしとされていたことを思い出し通話に出る。
「――やぁユウリくん、ダンデだ」
電話口の相手はかつてのチャンピオン、ダンデ。現在はローズ委員長の後を継ぎバトルタワーという施設の運営を行っていたはずだ。一体何の用だろうか、と首を捻って言葉を待つ。
話を聞いてみれば、何も聞かずに一週間後シュートスタジアムへ来てくれと言うではないか。予定を確認すると丁度その日は予定が空いており――元チャンプの依頼とあれば、他の予定よりも優先されたであろうが――快諾の意を告げる。
電話を切り、再度リーグカードに記された電話番号を眺める。恐らくこれは偶然の出来事ではないのだろう、一週間後がやけに楽しみになった。
そして多忙の中にあっては一週間など優に過ぎ、約束の日がやってくる。
ここ最近はやけに色々な出来事があった。ナックルシティの復興は謎のエスパーポケモンを連れた謎の人物の手助けもあって急速に進み、戦場の中心となった街は最早元の賑わいを既に取り戻している。あの町では少し前もザシアンとザマゼンタを巡って一悶着あったのだ、呪われているとしか思えない。ザシアンの眠るボールを撫でつつ、これから先は何事もないように祈っておく。
そして約束通りシュートスタジアムに向かえば、既にそこにはメジャークラスのジムリーダー8人とダンデさん、ホップ、それに引退したはずのネズさんや、果てにポプラさんといった人物までが勢揃いで私を待っていた。
「よく来たなユウリ――それではここに、ガラルスタートーナメントの開催を宣言する!」
私の登場と共に、私には出せない大声を張り観客を沸かせるダンデさん。やはりエンターテイナーとしては、彼の方に一日の長がある。私ではバトル以外でここまでの盛り上がりを作ることは出来ない。
そして彼が言うには、ガラルにおける最強のトレーナーたちがタッグを組み、頂点のコンビを決める大会を定期的に開催するとのことである。
何ともまあ、中々に売れそうな興行だ。シングルバトルでは「彼」以外に全く負ける気のしない私だが、マルチバトルとあってはその牙城も崩されるかもしれない。結構楽しそうだな、と思いつつふとあのリーグカードのことを思い出す。
――もしかして、「彼」はこのことを知っていたのだろうか。
まさか、とは思う。でももしかしたら、とも思う。
……いや、きっと、これは必然の結果だったのだろう。未来が読めるなんて話は、意外と珍しくないのだから。
ダンデさんの大会の話を聞いて何となく「彼」の意図が読めてきた私は、2回目以降の大会の開催を今からでも心待ちにしつつ、とりあえず第一回を制覇しようかとパートナーを探すのであった。
カイ 背番号:151
ローズ委員長に 推薦された 期待のチャレンジャー。
彼のはがねタイプのポケモンは 非常によく 鍛えられている。
好きなポケモンを聞く度に 答えが変わるのを 不思議に思った
インタビュアーが尋ねると 「全員好きだから」 と答える。
将来の夢は 世界を旅すること。 それと出来れば
昔の友達に もう一度会いたい とのこと。
ローズ委員長のことは 恩人であると 語る。
最後に 強さの秘訣を聞けば 彼は
真顔で 「愛」と 答えた。