ガラルの悪のジムリーダー   作:アタランテは一臨が至高

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とりあえず一話分書き終わったBW(BW2)編。
未プレイでもわかるようにしていきます。

他の番外編は書き終わり次第、その都度投稿します。


inイッシュ その1

 

「あぁ、もう私はエンブオーと2人で生きていくしかないのね……。

 でもどうしようもないの。わかって、エンブオー。最早この世界には、あなたと私しか残っていないのだから……」

 

 嘆く女。

 寄り添うポケモン。

 

 ゾンビの大群によって荒廃した世界の中、生き残りの一人と一匹はただお互いのみを想って夜の砂浜に立つ。

 

 響く波の音。

 闇夜を照らす月光。

 

「あと少し……あと、少しだけ……このままで、いさせて…………」

 

 先行きは暗くとも、ただこの瞬間だけは。

 この世界が変わった3日間で失った多くのものが、焼き付いた網膜から離れてくれるまでは。

 

 何もかもを忘れて、自然の音と光景に浸っていたかった。

 女はそう願い、ポケモンは主人の望みを受け入れた。

 

「……っ」

 

 嗅ぎ慣れない潮の匂いが、鼻の奥をツンと刺す。

 きっかけを与えてしまえば、後は簡単だった。

 

「うぅ、ひっく……ううぅ……!」

 

 涙は流さない、そう決めていた。

 だって隣の相棒は、主人の涙に弱いのだから。

 

 幼少期には、よく「うそなき」でポカブにお願いを聞いてもらっていた。

 思春期で、本当の涙が堪え切れずについ零れてしまったとき、チャオブーは泣きながら助けを探しに行ってくれた。

 

 そして今、隣のエンブオーはそっと私の肩を抱いていた。

 自分だって泣きそうな顔なのに、一匹での留守番もできない「さみしがり」なのに、彼は私の涙を止めようと精一杯頑張っている。

 

 そんな彼の姿を見ていれば、不思議と涙は引っ込んでいた。

 今までずっと一緒だった相棒と共になら、この世界だって何とかなりそうな気がしてきた。

 

「……ねえ、エンブオー。こんな世界になっちゃったけど、わたし夢があるの」

 

「この世界を端から端まで、あなたと一緒に旅をするっていう、素敵な夢が――――」

 

 


 

「はーい、カットォー! お疲れ、今回もすっごく良かったよ!

 特に中盤のあのアドリブ! 思わず脚本まで変えちゃった!」

「えへへ、ありがとうございますー! エンブオーちゃんが思ったより張り切ってて、これは合わせるしかない!って感じだったんです」

「Buo!」

 

 ゾンビ映画「Z・ワールド」の全シーンの撮影が無事終了し、迫真の演技を行った主演女優を皆が讃える。

 特に監督と件の女優の付き合いは長いようで、女優のアドリブと、それに対して「やはり来たか」と言わんばかりに対応した監督の腕にスタッフたちは興奮冷めやらぬ様子だ。

 

 他の俳優・女優・撮影に参加したポケモンたちも口々に労いの言葉を掛け合い、誰もが撮影の終了を喜ぶ。

 

 

 ――そんな楽し気な彼らの様子を、私は一人さみしくスタジオの隅から眺めていた。

 

「い~な~。ああやって私もチヤホヤされたいな~」

 

 私の名前はメイ。

 女優を目指し、地元のヒオウギシティから単身ポケウッドにやって来たうら若い女の子!

 

 ……しかし芸能界は私の想像していたような甘い世界ではなく、現在絶賛終わりの見えない下積み生活中。

 

 単身ポケウッドにやってきてから早一年。どれだけ経っても貰える役はエキストラばかりだ。今回の撮影だって、私が演じたのは序盤でゾンビに襲われてセリフもなくあっさり死ぬだけの端役。

 昔夢見たキラキラの生活とはかけ離れた現状に、思わずため息がこぼれる。

 

「はぁ~……顔を覚えてもらおうと撮影お疲れさまでした、って挨拶に行ったら『何で君まだいるの?』って顔されるし。相変わらず貰える役はエキストラばっかりだし。

 女優目指して小っちゃい頃から頑張ってきたけど、もう流石に心折れそうだよ~! 演技力は主演の人とだって大差ないと思うのに……何が悪いって言うんだろ」

 

 幼少期からの特訓により、かなりのものと自負するにまで育った演技力。

 派手な技も朝飯前、外見のコンディションだって完璧なポケモンたち。

 

 その辺りは十分だと思うのになあ。

 人を映画の世界に引き摺り込む、演技の才とでも言うべきものが足りないのだろうか。

 努力量は大抵のライバルに負けていない自信がある。となれば、言い訳がましくなってしまうため言いたくはないが、原因は才能と見るべきだろう。

 

『何という才能だ……! この子ならばジムリーダーごとき、いやポケモンリーグだって相手になるかどうか……!』

 

 才能、という言葉にふと昔の記憶を思い出す。

 あまり好きじゃない思い出だ。やりたい事と得意な事が異なっているという事象はありふれたことではある。しかし、喉から手が出る程欲しがった才能がやる気のない人間に宿っているなど、周りの人間からすれば悪夢でしかないだろう。

 

 「才能」とは、とても残酷な言葉だと思う。

 逆に「努力」は、結構好きな言葉の一つだ。

 

 しかしその残酷さに心を折られる人間は毎日たくさん世界中に発生している訳で、私もあまりの成果の出なさにとうとう彼らの仲間入りを果たそうとしていた。

 

「せめてファンの一人でもいたらやる気出てくるんだけど……っと。なに、今の音」

 

 そうやってぶつぶつと一人で文句を呟いていれば、スタジオの外から爆発音的なものが聞こえてきた。

 そう大きなものではなかったが、意外と近い所からの音だ。

 

 世界各地から様々な種類のポケモンが集まってくるポケウッドでは爆発音程度珍しくもないが、たまに不慮の事故が発生している時がある。

 ちょうどスタジオに居座る理由も無くなったところだ。帰り道ついでに確認しておこう。

 

 そう思って外に出てみれば、割とすぐに犯人らしい人物は見つかった。

 道の真ん中、ポツンと一人で佇んでいる白髪の少年。

 他に人やポケモンは見当たらないのだから、恐らくは彼が先ほどの音の原因だろう。

 爆発痕なんかが残っていればもうドンピシャなのだが、しかし周囲は驚くほどに綺麗なままであった。

 

 困惑した様子で立ち尽くす彼は、何事かをブツブツと呟いている。

 状況が気になった私は、少しだけ立ち聞きをしてみることにした。

 

「どこだ、ここ? えーと、P・O・K・E・W・O・O・D……ああ、ポケウッドか。

 ……ポケウッド!? 何でだよ! 俺はミカンのところにでも転がり込もうと思ってジョウトに逃げてきたはずだぞ!」

 

 何やら困った様子で喚いているのだが、一体どうしたのだろうか。言っていることがよくわからない。

 

 この付近で喚いている人たちの事情と言えば、映画の出演を断られたとか、期待していた役が貰えなかったとか? 勝手に彼の境遇を想像して、少し親近感が湧いてくる。

 そうなると先の爆発音は彼の八つ当たりだった可能性まで出てくるが、一応話を聞いてみようと近寄って声をかけることにした。

 

「すみません。さっきの音って……」

「何だよ、俺だって今何が起きてるのか――――え、メイ?」

 

 一瞬、体が硬直する。

 しかしそれも当然だろう。全く見覚えのない人物に自分の名前を言い当てられたのだから。

 

「な、なんで私の名前知ってるんですか……!?」

「え!? あ、いや、その、えーと、ほら。あれだよ、あれ。

 …………そう! お前女優やってるだろ? 実はファンなんだ!」

「ええっ!?」

 

 想像もしていなかった言葉に、ドキリと心臓が跳ねる。

 心が折れかけて、ファンが欲しいと思った瞬間に望み通りファンが現れるなんて、運命かなにかなのでは?

 

 しかし余りにも都合が良すぎる展開に、思わず疑念が先走ってしまう。

 セリフを貰った回数すら数えるほどしかないのにファンになってくれる人物なんて、一体どれほどの数がいるのだろうか。

 

「ほ、本当ですか? 私まだ、エキストラでしか映画に出てないのに……」

「い、いや本当だって! ほら、えーと、サイン頂戴! サイン!」

 

 何故か焦った様子で頭を掻きながら、何かを誤魔化すようにサインを求めてくる私のファン。

 その余りの不自然さからファンというのは嘘かと一瞬思ったが、好きな女優が目の前に現れたらこれくらいは緊張するものか。

 納得した私は自分でもわかるくらいめちゃくちゃニヤけて、密かに練習していたサインをさらさらと差し出された手帳に描いて返す。

 

「お名前は……カイさん、ですね。はいどうぞ!」

「ど、どうも! ……うわー。『May』って、ガチでメイじゃん。何がどうなってんの? BW2主人公と同名の無名女優とかだったりしないかな……

 

 推しの女優のサインを貰えた嬉しさからか、ブツブツと何事かを呟く私のファン。

 ”私”のファン。ここ重要。

 まあ、カイさんは記念すべき一人目のファンなのだ。多少の奇行くらいは許容する腹積もりはこちらにもある。何の憂いもなく私のことを推して頂きたい。

 

「今なら大サービスで握手もしてあげますけど?」

「わ、わー。嬉しいなあ」

 

 ふんす、と少し調子に乗って右手を差し出してみればカイさんは大喜びの様子で応じてきた。

 自分の行動一つで喜ぶ存在がいるという事象に、かつてない程の幸福感を感じる。

 

「更に写真撮影まで許可しちゃいますけど?」

「や、やったあ」

 

 ふんすふんす、と憧れだったファンサービスを存分に行う。

 これは俗に言う「神対応」という奴では? 心の中で自画自賛が止まらない。

 

「じゃ、じゃあロトム、写真撮ってくれ」

 

 そんな風に自分に酔っていれば、彼が一言呟くと同時に携帯がバチバチと帯電しながら浮かび上がってきて、パシャリと自動で写真を撮るものだから驚きである。

 

「ええ、なんですかこれ。すごいですね、ポケモンがスマホの中に入ってるんですか?」

「え? スマホロトムって、知らないか?」

「えっ」

 

 聞いたことのない言葉に思わず閉口する。

 もしかして私、時代に乗り遅れている? 演技に人生を捧げてきた弊害がこんなところに表れてたりする?

 

「え、えーと、あれですよね。スマホがロトムだからスマホロトムなんですよね」

 

 マズい。こんなことでファンを幻滅させるわけにはいかない。

 初めてのファンが出来てから早くも5分で訪れたファン消滅の危機に、冷や汗を流しながら対処する。

 

「お、おう。まあそうだな。……スマホロトムって、イッシュには普及してないのか? でもアローラにはロトム図鑑があるよな……

 

 何か知らんが合ってたらしい。

 自分でも何言ってるのかよくわからなかっただけに、かなりホッとした。

 

 ロトムって何だろう。ポケモンの名前かな?

 スクールを中退してポケウッドにやってきた身であるため、普段見かけないポケモンの名前なんて知りもしないのだ。

 改めて考えれば、大抵の人はスクールを卒業している中自分だけこうというのは少しマズい状況かもしれない。

 低学歴をマイナスポイントと捉えるかどうかは人次第だが、少なくとも誇ることではないだろう。

 

 自分の良くないところがまた一つ自覚できた。やはりファンがいるのといないのとでは女優としての成長にも関わってくるらしい。

 

にしてもスマホロトムが普及していないっていうのは……いや、まさか……。

 なあ、今のイッシュチャンピオンって誰かわかるか?」

「へ?」

 

 やけに考えこんでいると思えば、急に変な質問をされる。タイムマシンにでも乗ってきたんじゃないかって質問だ。

 

 チャンピオンと言えば、どう考えてもあのチャンピオンだろう。

 ポケモンリーグの頂点、全トレーナーの憧れだ。

 

 確かつい最近交代したと聞いたが、どうにも私は映画関係以外に興味が無さすぎるみたいで、あまり記憶に残っていない。

 

 あれ、チャンピオンの名前が言えないのは普通にヤバくないか。

 これだからスクール中退は、とか言われても何も反論できないぞ。

 

「えーっと、あれですよね。この前新しく就任した、えーと、あの人」

「……アイリスか?」

「そう! そうそう、その人です。つい最近アデクさんから変わりましたよね。今月のことじゃないですか?」

 

 そうだ、アイリスさんだ。ようやく思い出した。

 頭の片隅にあった記憶が引っ張り出され、ずいぶんとスッキリした心持ちになる。

 尤も、顔までは思い出せないのだが。

 

「嘘だろ……」

 

 一方、彼は頭を抱えていた。

 私の常識知らず加減に呆れているのだろうか。

 確かに今のは自分でもちょっと引いた。

 

 このままではただただ私のバカを披露しているだけになってしまう。

 どうにかして話題を逸らさなければ。

 

「と、ところでカイさんはどこにお住まいなんですか? ポケウッドには旅行で?」

「ん? あー、家はアローラにあるけど――」

 

 そこまで言葉を繋げたところで彼の口の動きが止まる。

 それと同時に、帰り道を見失った迷子みたいに、何か不味いことに気付いたような焦った表情が浮かび始めた。

 

「ちょーっと、この後行く先は決まってないな……」

 

 何か不味い話題に触れてしまったのだろうか。

 慌てて話題の転換を試みる。

 

「じゃ、じゃあ私の女優としてのスキルアップには、何が必要だと思いますか?」

「へ?」

 

 先ほども悩んでいたことだが、私は今自分の限界にぶつかっている。それも何の成果も出せないまま。

 しかし先のカイさんとの会話の中でもいくつか自分の欠点は自覚でき、ファンという自分を注視する存在がいればこそ成長できる要素もあるのだと気づいた。

 

 ファンというのは、私のことを客観視してくれる有難い存在である。

 そんな存在である彼からならば、私の能力向上に有効な策をきっと編み出してくれる、そう思っての質問であった。

 

 そしてその、割と切実な思いも籠った質問に対する答えは、案外すんなりと返ってくる。

 

「ポケウッドの女優として成功するには何が必要か? バトルの腕じゃねえの」

 

 特に大して考え込まず、さらりと返されたような答えであったが、その言葉には確かに納得させられるものがあった。

 

『女優? ……いやいや、何を言っているんだ。こんなにも実力があるのに――』

 

 確かに私は過去のある経験から、バトルに対し少し距離を取っていた側面がある。

 それが女優としての成長の壁になっていると言うのならば、過去の嫌な記憶なんて忘れてバトルの腕を磨くべきなのかもしれない。

 映画においてポケモンバトルのシーンは最高に盛り上がる見せ場と言っても良いし、超有名女優であるカロスのカルネさんのバトルの強さなんかも考えれば、彼の意見は十分に一理あると思えた。

 

「具体的に、どうやったらバトルで強くなれますか?」

 

 かつてはスクールで名を馳せていた私だが、バトルから離れてかなり久しい。同級生だった彼らにはとうの昔に追い越されていることであろう。

 またスクールに入り直すべきだろうか。地元の校舎には当時の先生がいて気まずいので通いたくないのだが。

 

「一番メジャーなのはジムバッジ集めだろ。一地方を隅々まで巡りながら野生のポケモン・野良トレーナーたちと競い合って腕を磨いていく……うん、旅は良いモンだ」

 

 どこかしみじみとした様子で語る彼。

 確かに風の噂では、当時の町に住んでいた同年代の子たちの大半は旅に出てジムを巡っているという。途中で挫折したり、まだ挑戦し続けていたりと期間の長さは人それぞれであるそうだが。

 

「旅、かあ」

 

 武者修行、というやつだろうか。

 ポケウッドから離れることに少しばかりの抵抗感はあるが、短期間のものならば良いかもしれない。この苦境を脱するために、心機一転新しいことを行う必要もあるだろう。

 旅の具体的な期間は決められないが、ジムバッジを手に入れたら終わりにでもしようか。1つでもバッジを持っていたら一人前だってよく言うし。

 

 しかし、いざ旅に出ようと決めたところである人の顔が思い浮かんだ。

 かつての英雄の一人。唯一私の夢を応援してくれた人。

 

『そっか、メイちゃんは街を出てポケウッドに行くんだね。すごいなあ。私なんて、旅に出た理由も友達と同じことをしたかったっていうだけなのに。頑張って夢を叶えてね。応援するよお!

 ……それでね、2歳上の先輩として一つアドバイスなんだけど。もし何かあって、他のみんなみたいに旅をしたいって思う時が来たのなら、一緒に旅をする仲間を探してみて欲しいんだあ。

 ライバルみたいな、友達みたいな……そんな関係になれたなら、きっとその人はメイちゃんを助けてくれるし、メイちゃんをすごく成長させてくれると思う。

 私だって、()()()()がいたからこそ、今の私があると思うんだ』

 

 あの人の柔らかな笑顔を思い出し、腰元のモンスターボールを優しく撫でる。

 「メイちゃんを守ってくれるようにお願いしておいたよお」と渡された一匹のポケモン。「ゆうかん」なこの子は、旅という言葉を聞いてボールの中で少し喜んでいるように見えた。

 

 受け取った時は、私はそんなに危なっかしく見えるのかと思ったものだが、今考えればあの人は研究業に専念するせいでこの子の望む生活を提供してあげられない、という思いから私に託したのかもしれない。こんな風に、私が旅に出るところまで予想して。

 

 でも、それにしたって自分のポケモンを渡すというのは、うぬぼれでなければ確かな信頼の証だ。

 どうせなら私はそれに応えたい。あの人のポケモンに見合う私になれるように、助言には従っておきたかった。

 

「……カイさんって、さっき行く宛がないって言ってましたよね」

「ん? おう」

「カイさんって、私のファンですよね」

「お、おう」

 

 初めて会った人だが、見た目からして危険ではないだろう。いざとなれば力で抑え込める。

 それに旅は道連れ、とか袖振り合うもなんちゃら、とか映画のキャラが言っていたし、これも何かの縁ではないだろうか。

 

「その……もし良かったら、一緒に旅に出ませんか?」

 

 そんな軽い気持ちで提案する。

 私たち子供にとって旅とはそんなものだ。大概が幼い時分より一人、あるいは複数人で世界を回る。

 大人たちもみんな昔に旅を経験してきている。そして結構な人が口を揃えて言うのだ。

 旅は良いものだ、と。

 

「――」

 

 そして目の前の彼は、そんな私の言葉にどこか感じ入った様相を見せる。

 なんとなく。本当になんとなく、彼にとって「旅」とは大切なものなんだと感じられた。

 

 やがて彼はこちらの目を見つめながら、ゆっくりと口を開く。

 

「もしも、仮に。ポケモンの解放だとか、保護だとか、変なことを言ってくる奴らが俺たちを襲ってきたとして――その時お前は、どうする?」

 

 その問いには、簡単に答えを返してはいけない気がした。

 

 この人は何かを、すごく怖がっている。すごく不安な気持ちでいる。

 演技の業界に長くいたおかげだろうか。その質問には、そんな心情が込められているとわかった。

 

「大丈夫ですよ。安心してください。

 ――私が、守りますから!」

 

 だから、自信満々に言い切った。

 強い言葉で相手の不安を包み込む。

 私のファン第1号で、これから旅をする予定の仲間なのだ。それくらいのメンタルケアはしてあげようではないか。

 

「これでも私、ポケモンバトルの才能があるってスクールの先生に褒められたことがあるんですよ?

 先輩から貰ったポケモンもいるし、悪いやつらは皆やっつけてあげます」

 

 ふんす、といかにも自信のあるように告げる。

 だとしても、こんな弱そうな小娘の言葉なんて気休めにしかならないだろう。

 実際そんなに強くないと思う。

 

 でも目の前の彼の眼には、確かに私に対する信頼が垣間見えた。

 

「……じゃあ、『契約』だ。俺はお前のジムバッジを集める旅に同行して手助けをし、その間お前は俺を守る。ギブアンドテイク、裏切りはなしだ」

「当たり前じゃないですか! 私はファンのことを裏切ったことはありませんよ!」

 

 まあ、今までファンがいたことはなかったんですが。

 そんな冗談のつもりでの発言だったけど、彼は真面目に受け取ったようですごく真剣な表情をしていた。

 

「そっか。それなら信頼できるな。よろしく、メイ」

「はい。よろしくお願いしますね、カイさん」

 

 旅の始まりを告げる握手。

 それは何だか映画のワンシーンのようで、少しばかり胸が高鳴るのを私は感じていたのです。

 

 




~人物紹介~

カイ
白髪ショタ。
多分次からはこいつ視点で話が進んでいく。

本編終了後ミカンに匿ってもらおうとジョウトに向かったらご都合主義でセレビィにBW2時空に飛ばされた。

旅の提案をされた時は結構いろんなことを考えてる。
結局は最強の主人公に身を預けるのが最も安牌と考え承諾。
当然主人公の旅がそんな平穏に進むわけがない。

あわよくば、とビクティニの捕獲を計画している。


メイ
BW2♀主人公。ポケモンの女トレーナーの中ではトップクラスに人気が高い。
とある事件から一時期は男の娘として騒がれていた。

本作においては女優を目指す夢見る少女。
しかしトレーナーとしての才能の方が女優としての才より数万倍優れている。

ポケモンバトルで負けたことはないらしい。

スクール中退。現実世界で言うなら義務教育を終えていない。
そのため色々と常識に疎いところがある。

てもち

・ダイケンキ
・ケルディオ

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