ガラルの悪のジムリーダー   作:アタランテは一臨が至高

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withサイトウ その1

 マイクの前、二人の少年少女が大きなモニターを見つめながら座っている。

 どうやらもうすぐ始まる何かを待っているようで、何も喋らずにじっと動かずのままだ。

 

 やがて、3、2……とカウントダウンが聞こえたのちに、灰色の髪の少女が口を開く。

 

「はい、どうも皆様こんにちは」

「ちわー」

「本日は『ジムリーダーの知識量を試せ!~レンタルバトル~』ということで、ジムリーダーのオニオン選手とメロン選手に番組の用意したレンタルポケモンを用いて戦って頂きます。

 実況・解説は今季からラテラルのジムリーダーに就任しました私サイトウと、同じくキルクスジムリーダーのカイさんで務めさせていただきます」

「サイトウお前、固くない? バラエティーなんだからもっと楽しくいこうぜ」

「すみません、これが素なものでして」

 

 ハッキリと返された言葉に思わず顔が引きつる。

 今日はバラエティー番組の企画に実況として呼ばれてきた。この番組はメジャークラスのジムリーダーだろうと構わず多額の予算を投じて呼びつけるため、かなりクオリティの高いバトルが見られると評判だ。

 今回も対戦者のオニオンとメロンは共に今こそマイナークラスにいるものの、ゲームのシールド版においてはメジャークラスだった実力者である。

 

「それでは選手の紹介ですが……」

「まあ皆知ってんだろ。メロンもオニオンも10位、11位とマイナークラスの中ではトップクラスだからな。いつメジャーに上がって来てもおかしくねえ」

「そうですね。私もお二人とは今季何度か対戦させて頂く機会がありましたが、やはり一筋縄では行かず手痛い敗北も経験しました」

「ま、俺は全勝したけどな」

「………」

 

 自慢げに俺の戦績を誇ると、サイトウから冷たい視線を喰らう。

 いや、メロンはそもそも相性的にガン有利だし、オニオンも相棒のゲンガーははがねに若干不利なんだ、当然だろう。

 

「………」

「い、いやまあ、そもそもの対戦数が少なかったっていうのもあるけどな。4戦くらいやったら1回は負けると思います、はい」

「なるほど。やはりカイさんも認める強者ということですね」

 

 段々と強くなっていく視線に耐えきれずに言葉を吐き出す。

 この世界の格闘家というのは人間一人程度軽く惨殺できる実力を持っている。

 だから俺の行動は何一つとしておかしくないのだ。

 

「それでは早速レンタルポケモンの選択に入ります」

「まずはオニオンからか」

 

 オニオンが待機している別室にレンタルポケモンの入ったモンスターボールが送られ、モニターにポケモンの名前ととくせいに習得しているわざ、そしてもちものが表示される。

 

 トドゼルガ とくせい:あついしぼう もちもの:カゴのみ

 ねむる ねごと

 ふぶき じわれ

 

 マッスグマ(ガラル外のすがた) とくせい:ものひろい もちもの:オボンのみ

 しんそく でんじは

 まもる にほんばれ

 

 オコリザル とくせい:やるき もちもの:たつじんのおび

 からてチョップ いわなだれ

 10まんボルト がむしゃら

 

 ムウマージ とくせい:ふゆう もちもの:たべのこし

 マジカルリーフ めいそう

 まもる かみなり

 

 モジャンボ とくせい:ようりょくそ もちもの:こだわりメガネ

 げんしのちから メガドレイン

 たたきつける いびき

 

 エアームド とくせい:がんじょう もちもの:おうじゃのしるし

 こうそくいどう はがねのつばさ

 ドリルくちばし フェイント

 

「用意された6匹のうち3匹を選ぶんですよね」

「そうだな。……って、オニオンのやつ一瞬でムウマージ選んだな!?」

「一秒たりとも悩みませんでしたね。流石に驚きです」

 

 モニターの画像が表示された瞬間にムウマージの入ったモンスターボールを掴み取るオニオン。

 なんちゃってはがね使いの俺と違い、ジムリーダーたちはこういうところがある。

 

「えーと……ジムリーダーたちの知識を試すために、あまりガラル本土では見られないポケモンたちを集めました、とのことです」

「あー、確かに見ねえポケモンばっかだ。ヨロイ島とかカンムリ雪原まで行けば話は別だけど。でもムウマージとかは相当遠くの地方に行かなきゃ会えないし、それでオニオンも使ってみたくなったのかもな。

 ちなみにサイトウだったらまずどいつを選ぶんだ?」

「オコリザルです」

「……お前オニオンに何も言えないよ」

 

 俺の質問に即答したサイトウに少し引きつつ、オニオンの悩む様子を眺める。

 

「しかしこの企画、結構面白いな。ガラルにいると本当に見かけないポケモンばっかだし、人が育てたポケモンを使う機会なんて全くないし、ちょっとやりたくなったわ」

「私もオコリザルを育てた経験は一応ありますが、わざわざ他地方まで出向いて捕まえにいきました」

「俺だとエアームド……は割とよく使うか」

 

 流石にムウマージの即決が異常だっただけで、残る2匹はかなりじっくりと悩んでいる。

 しかしこれは知識がない故の悩みではなく、むしろ逆だろう。ポケモンたちについて良く知っているからこそ、どの組み合わせがベストなのか悩んでいる訳だ。

 

「おや、決まったようですね。2匹目はエアームドで、3匹目は……えーと、なになに? 『3匹目は言わないでください』……秘密にしておきましょうか」

「カンペ見てるってこと隠そうともしないのは潔いと思うぜ」

 

 3匹のポケモンを選んだオニオンの部屋のカメラからモニターは切り替わり、今度はメロンが映る。

 

「今度はメロンだな。新人も新人のオニオンと比べてこっちは……メジャーだとポプラ位しか年上がいないんじゃないか? カブとどっちが上だっけ……」

「たぶん後でメロンさんに呼び出されますよ」

 

 サイトウの言葉と同時、モニター内のメロンがこちらを向いて底冷えのするような笑みを浮かべる。

 何でだ!? こっちの言葉は聞こえてないはずだろ!!

 

「大体年齢についての話はカイさんも嫌いじゃないですか。オニオンさんとどっちが年上なんです?」

「は? 喧嘩売ってんなら買うぞ」

 

 若干キレ気味の俺に対しやれやれと首を振るサイトウ。

 舐めてんのか? ダイパ世代の俺からしたらお前なんかガキ中のガキだぞ。

 

「それではメロンさんのレンタルポケモンはこちらです」

「お。じゃあ今度はメロンが一匹目に何選ぶか予想しようぜ」

「いいですよ。当たった方にジュース一本で」

「あ、賭けんの?」

「おや。すみません、失念していました。お小遣いは足りていますか?」

「は???」

 

 ハッサム とくせい:ライトメタル もちもの:メタルコート

 バレットパンチ れんぞくぎり

 すなあらし あまごい

 

 ポリゴン2 とくせい:トレース もちもの:シルクのスカーフ

 まるくなる サイケこうせん

 たいあたり でんきショック

 

 ママンボウ とくせい:いやしのこころ もちもの:しんぴのしずく

 まもる アクアリング

 アクアジェット ねがいごと

 

 アリアドス とくせい:むしのしらせ もちもの:どくバリ

 かげうち むしくい

 どくづき いとをはく

 

 エモンガ とくせい:せいでんき もちもの:きあいのタスキ

 ほっぺすりすり ボルトチェンジ

 こうそくいどう ソーラービーム

 

 ミミッキュ とくせい:ばけのかわ もちもの:フィラのみ

 かげうち じゃれつく

 トリックルーム まねっこ

 

「それじゃあせーので言うぞ。せーの、」

 

 

「「ミミッキュ」」

 

 

 俺たちの言葉のほぼ直後、特に悩んだ様子もなくメロンはミミッキュの入ったボールを手に取る。

 

「おい、賭けにならないじゃねえか」

「しょうがないですよ。かくとう使いからしたらミミッキュなんて対策必須どころの話じゃないですからね」

「最強とまで言うつもりはねえが利便性が有り過ぎるよなあ」

 

 ガブリアスの天下を破ったアローラの王、ミミッキュ。そのゲーム時代でのチート性はこの世界でも引き継がれている。

 大体一発攻撃をスカせるというのがどう考えてもおかしいのだ。あの小さな体でキョダイダイオウドウの体当たりを受け止められた時は思わず二度見した。

 

「まあ、対策さえしてしまえばどうとでもなるんですけどね」

「その対策がこのバトルだと出来ないからなあ」

 

 当然、すべてゲームの通りに行くはずもなくゲーム時代には無かったミミッキュ対策がこの世界には幾らでもある。

 この世界でもミミッキュ最強、となっていないのはそのためだ。

 

「てか何でミミッキュ入れてんだよ。普通にワイルドエリアにいるだろ」

「まあ生息していても出会うのは珍しいポケモンの一匹ですからね。見たことないって人もいっぱいいると思いますよ」

 

 そういうものか。サイトウの言に納得しつつ、またメロンが選ぶ様子を眺める。

 しかしメロンはオニオンと違って案外長考せずにすぐポケモンを選び、さっとチームを決めた。

 

「ベテランっぽさが出てんなー」

「2匹目はハッサム、3匹目は……また秘密ですね」

「そうしたら1時間の作戦タイムか。ポケモンたちと連携を取るための時間だが、効率的に指示を出すためにこの時間でどれだけハンドサインやら何やらを叩き込めるかはトレーナーの経験が出てくる。まあ、こういうのはメロンの得意分野だから問題ないとは思うけどな」

「そうなのですか? ポケモンと仲良くなるのが上手い、と?」

「……まあ、見てりゃわかる」

 

 カメラはまた別の場所に移り、メロンとポケモンたちの様子を映し出す。

 

「なあ、これオンエアはされないんだよな?」

「……? はい、作戦タイムは全てカットされる予定ですが」

「なら良いんだ」

 

 俺の言葉に不思議そうな表情をするサイトウだが、メロンが口を開いたことで視線をモニターへ戻す。

 

「よーし、アンタたちそこに並びなさい」

「Qu?」

 

 特別普段と変わった様子の無いメロンがポケモンたちを一列に並ばせた。

 ポケモンたちは今から一体何をするのかとワクワクしている。

 

「おい、ブタ共。いや、ブタ以下の【編集済み】共」

「「「!!??」」」

 

 メロンが唐突に地上波に流せない言葉で罵倒を始める。

 当然何も知らないサイトウやポケモンたちは困惑顔だ。

 

「聞こえなかったのかい? 【編集済み】と言ったんだ。いいかい? アンタたちは今のまんまだとトレーナーの指示すら聞けない【編集済み】で【編集済み】な【編集済み】野郎さ。それを今から1時間でまあ【編集済み】ぐらいにはしてやる。わかったら返事だ!!」

「「「!!??」」」

「返事だ!!! 返事と言ったら『イエスマム』か『はいマム』以外の言葉を吐くんじゃない【編集済み】共!!!」

 

 メロンの怒号がモニター先の俺たちの部屋まで響き渡る。

 俺は既にサイトウの後ろに避難していた。

 

「え……え? 今、メロンさん【編集済み】って……」

「……あそこの家のトレーニングに付き合ったら日常風景だ。相当なスパルタなんだよあの人。

 これでも他人のポケモンだから大分マイルドにしている方だ」

 

 余りの出来事にカタカタと体を震わせるサイトウ。

 全く同じ気持ちを抱いた俺たちは、きょうせいギプスを着けながらマラソンを始めたメロンからポケモンたちと仲を深めるために触れ合って遊ぶオニオンにモニターを切り替え、試合が始まるまで二人で癒されていた。




次回は試合から始まります。
次々回は掲示板回です。
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