「国際警察ぅ?」
『ええ。直接的に捜査協力を求めてきたわけではありませんが、少しばかりガラルで動きがありました。アナタを追ってきた可能性がある、とはローズ委員長からのお達しです』
マクロコスモス幹部専用回線からかかってきたオリーヴの電話内容に、冷や汗を垂らす。
国際警察。
ゲーム内ではハンサムというキャラにスポットが当てられてきた組織で、その名の通り国内外問わず各地の悪の組織を打倒するために動いている超エリートたちの集まりだ。
ゲーム本編で主人公が関わった事件だけでもシンオウ、イッシュ、カロス、アローラとさまざまな地方で数々の功績を残してきており、その優秀さは疑う余地もない。
当然、俺たちのやってることがバレたら相当マズい相手である。……あるいは、彼らの情報収集能力があればもう既に気づいており計画阻止のため動いているのかもしれないが。
『ひとまず計画は水面下のものに留め、彼らの動向を伺うようです。アナタもジムリーダーとしての活動に専念するようにしてください。特に、ウルトラビーストの使用は控えろとのことです』
……あ。
オリーヴの言葉に、ドンピシャで思い当たることがあった俺は先ほどと比べ物にならない量の冷や汗を流し始める。
マズい。非常にマズい。ヤツらは
胸の動悸が早まり、動いてもないのに息が荒くなる。
本当にタイミングが悪い。あと一日連絡が早ければ、あのように迂闊な行動は取らなかったというものを。
『……カイ? 一体どうし――』
「――カイ様! お電話中申し訳ございません、国際警察のリラと名乗るものが、ジムを訪ねてきております!」
電話中だというのにも関わらず、執務室の扉を焦った様子で開け放ってきたジムトレーナーの言葉に一瞬、思考が止まる。
……悪いことというのは、重なるものだ。苛立ちのままに電話を切り、音を立てて奥歯を噛み締める。
「――通せ。お前らは客室に近づくな。……あと一応、本当に一応だが、アリバイ作りの準備もしておけ」
◇◇◇
「どうもこんにちは、リラと申します。……その、何というか、随分と和風のお部屋なんですね」
「俺の趣味だ。客室と言っても、ほぼ自室みたいになってるからな」
特徴的な紫色の髪を持った女性――リラ。
彼女はジムの客室に通されると、大抵の人間と同じ反応をした。
……まあ、ガラル――つまりは、イギリスに来て畳と炬燵を見たら誰だって驚くだろうが。
「気に入らなかったか? 一応、奥に洋風の部屋もあるが」
「いえ、私の出身はホウエンですから。むしろ昔を思い出して懐かしい気持ちです」
嘘を吐け。アローラに来るより前の記憶は一切存在しないだろうに。
かつての生活を頭では覚えていなくとも習慣として体は覚えているのか、自然に靴を脱ぎ畳に正座するリラに心の中で毒を吐く。
「へえ。俺もあっちの方には行く機会がよくあってな。ホウエンのどこ出身なんだ?」
「――。フ、フエンですね。温泉で有名な」
苛立ちからか、俺の口は驚くほど簡単にリラへのダメージとなる質問を放っていた。
……尤も、彼女の事情を知らなければごく普通の世間話だ。彼女も自身の境遇を実感し落ち込むばかりで特に俺の言葉を訝しむ様子はない。
リラ。
ポケットモンスターエメラルド、つまりは第3世代にて登場したキャラクターであり、バトルフロンティアと呼ばれる施設の中でトップトレーナーとして名を馳せていた。
その後、ゲームにて再登場したのはポケットモンスターサン・ムーン、第7世代。懐かしいキャラクターの登場にファンたちは歓喜したが、彼女は一つの問題を抱えていた。――それも記憶喪失という、非常に大きな問題を。
アローラにて発見された彼女が持っていた記憶は僅かに四つ。
「自身の名前」「ホウエン出身であること」「どこかの塔を守っていたこと」「腕の立つトレーナーであったこと」
先ほどの俺の質問への答えは、ホウエン地方の都市でとっさに思い付いたのがフエンタウンであった、というのが実情だろう。記憶喪失であるという弱みを、調査対象である俺に見せたくないがための嘘だ。
それでいて簡単に動揺を見せたのは、別にバレても致命的な弱みになることはない事情だからだろう。本当にこれからの話し合いで不利になるようなことならば、徹底的に隠し通すはずだ。つまり、俺の言葉はただ彼女を傷つけただけだった、ということになる。
……何をやっているんだ。
「あっそ。んじゃ、お茶淹れてくるからちょっと待ってろ」
「む。自分から聞いておいてその態度はなんですか。私も手伝います」
「いいから座ってろ。客は黙ってもてなされてりゃ良いんだから」
そう言って、無理やり座布団の上に座らせてから自室に戻る。今の俺には、一人で頭を冷やす時間が必要だ。お茶を淹れる僅かな時間で、自分の取るべきスタンスを考える。
まず、リラがここにやって来た理由だ。
これについては、先日俺が繰り出したアクジキングで話が片付くだろう。ウルトラホールを開けているでもなし、感知など出来ないと高をくくっていたが……国際警察の情報収集能力を舐めるな、ということか。自分の迂闊さに歯噛みする。
次に、リラがここにやって来た目的だ。
無論、ウルトラビーストの保護を任務とする彼女らにとってはウルトラビーストの反応を検知したというだけで俺を訪ねて来る理由になり得るだろうが……問題なのは、ローズ委員長の計画に気づいているかどうかだ。
ローズ委員長が立ち上げ、そして現在まで成長を続けてきたマクロコスモス・グループ。それは今でこそガラルにおいて誰もが知っている企業グループになってはいるが、その裏では相当にあくどいことを重ねてきている。
敵対企業にスパイを送り込むなんてのは序の口、先日俺がやったように犯罪行為であろうと躊躇わずに行う勢いがあの人にはある。……というか、その勢いがあるからこそマクロコスモスはここまでの発展を遂げられたのだ。
そういうわけで、国際警察が動く理由は十分にある。彼らの目的がマクロコスモスの計画阻止であったら正直お手上げだ。
単にウルトラビーストについて聞きに来ただけならば良い。ゲームにおいてはここガラルの地にもウルトラホールが出現したのだ、幾らでも誤魔化しが利く。
しかし、本腰を入れて俺の周りを洗われるのはダメだ。国際警察を敵に回すと、最悪の場合
まずは相手がどこまで知り得ているのかを見極めること。その先の対応はそれによって変わってくる。
ひとまず自身のスタンスを落ち着けた俺は、ガラル特産の紅茶と共にリラの元へ戻った。
彼女は相も変わらず真面目に正座を続けている。
「ほらよ、紅茶だ。砂糖も好きなだけどうぞ。あと足は崩してもらって構わないぜ」
「ありがとうございます」
自分のカップにドバドバと砂糖を入れながら彼女を観察する。
国際警察らしく表情を偽る術は持っているだろうが、何となく今はリラックスしているように感じる。少なくとも、悪党の拠点にやってきたと言うほど警戒している様子は見られない。
……となれば、計画についてはバレてないと見ていいのか……? いや、こちらを油断させるための演技かもしれない。まずは話を聞いてみなければ。
「それで、国際警察サマが何の用だ? 観光がてらジムの見学に来た、なんて言えるほど暇な組織じゃあないだろう」
「ええ、そうですね。私がここに来たのはそんな理由ではありません」
紅茶を一口飲み、本題を切り出す。すると、目の前の彼女も真剣な顔つきになって佇まいを直した。
「ウルトラビースト、という存在を知っていますか?」
「……いいや?」
いきなり来たか。なるべく自然な様子で言葉を返す。
リラはこちらの嘘に気づいているのかいないのか、チラリとこちらの表情を確認した後話を再開する。
「ウルトラビーストというのは、異世界からやって来たと言われているポケモンで――いえ、ポケモンと言っていいのかすらまだわかってはいませんが、これまでは主にアローラ地方で存在が確認されてきました。
彼らについては未だ謎が多く、一般人への情報公開は行われておりません。また、彼らの中には危険な性質を持つものも存在しており、我々国際警察は彼らの保護・捕獲を任務の一つとしています」
顎をしゃくって話の続きを促す。こんなのはとっくの昔に知っていることだが、俺が今知ったはずの情報と既に知ってしまっている情報の整理をしなければいけない。聞き流すことはなく、話に集中する。
「そして、ここからが本題なのですが――ガラル地方でも、彼ら特有の反応が検知されました」
眉を上げて驚いた表情を作る。
……少々わざとらしかっただろうか。いや、俺の外見と態度のギャップからして普通じゃないのはわかりきっているだろう。無理に演技する必要もないように思えてきた。
「しかし、その反応が検知された現場に赴いた時には既に彼らの姿はありませんでした。反応も微弱なものであったため我々は普段ならば検知器の誤作動を疑い、簡単な調査の後すぐに通常の任務へ戻るところですが」
「……ですが?」
「ここ、ガラルの地にはまた別の事情があったのです」
続けて放たれたリラの言葉に少し嫌な予感を覚える。
大丈夫なはずだ。アクジキングの食事は何一つとして証拠を残さない。
「そも、我々はガラルには別の目的で調査にやってきていました。本来ならば、ガラル地方にウルトラビーストが現れたところで我々にそれを感知する力はなかったのです。
しかし、ウルトラビーストに関わる事件の調査のため、アローラを主な拠点とする我々が偶然この地にやってきていました。今回のウルトラビースト出現を検知できたのはその副産物です」
先ほどと同じく、こちらの反応をチラリと伺ってから話を続けるリラ。
大丈夫だ。まだ、表情は保てているはずだ。
「エーテル財団、という組織があります」
「――」
一瞬、思考が止まる。
遅れて湧き上がるのは、恐怖と不安と――怒り。
必死に作り上げた表情はもうズタズタに崩れ去った。しかし、奴らの名前を出されてもそれを保てというのは俺にとって少し酷な話である。第一、その名が出たというのならば俺の境遇についても把握されてると見ていいだろう。最早手遅れというものだ。
「……話を続けます。彼らはポケモンの保護活動を主に目的とした組織ですが、その実かなり黒いことも裏ではやっていたようです。そして元代表の意向で特に力を入れていたのが、ウルトラビーストに関連する活動でした」
もう表情を取り繕うこともなく、能面のような顔で話を聞き続ける。
リラはそんな俺を見て少しばかり憐れむような表情をしたあと、話を再開した。
「しかし、つい最近のことですが、とある事件をきっかけに彼らの悪事は我々国際警察以外の手によって暴かれました。そして元代表は事件の影響で意識不明の状態に陥ったまま、彼女の息子が代表を受け継ぎ組織は理念通りのクリーンなものに変わったのです」
薄々わかってはいたが、この世界のアローラはウルトラサン・ムーンではなくサン・ムーンの歴史を歩んだらしい。……俺からすれば、逆であった方がどれほど良かったことか。
「ただ、過去の負の遺産というのは清算しなければいけません。その事件の後に国際警察の取り調べが入り、過去の活動を調査したところ一つの非人道的な実験の記録が発見されました」
「非人道的、ね」
「……はい。これもウルトラビーストに関連することで、Fallと呼ばれる異世界からの来訪者――ウルトラビーストとは違ってこちらは人間ですが、そのFallである一人の少年が対象となったものでした」
……ああ、何となく彼女が俺を憐れむ理由がわかった。きっと、同じくFallである自分を俺に重ねているのだろう。あるいは自分が辿っていたかもしれない道だ、と。
ふざけるな。反吐が出る。
全くもってその通りだ。お前のような境遇であればどれほど良かったことか。妬ましい。羨ましい。そしてそれ以上に、最早道を戻れない自分に吐き気がする。
「……我々はその少年の行方を追いました。彼は数年前に財団の研究所から脱走していたのです。そして、我々は度重なる調査の末、遂に彼と思しき人物を発見しました。……それがカイ君、アナタです。今回のウルトラビーストの反応で、それは確信に変わりました」
とうとう、ハッキリと俺の名前を出される。
そして非常に残念なことに、彼らの調査はどこまでも正確だった。
「……それで? その少年を発見して、アンタらは何がしたいんだ? また実験か。あの地獄に連れ戻すって言うのか」
「まさか! 我々はエーテル財団とは違います。アナタを利用するなどといった考えは一切持っていません! 幸いアナタはこの地で大成しているようですし、身辺を調査して問題がないと判断されたら我々は手を引きます。無論、財団に賠償を求めるというのならば十分な額が払われるでしょう。アナタにはその権利があります」
俺の言葉を、食い気味で否定するリラ。ここまで来れば、彼女がやって来た目的は完全に理解した。純粋に、エーテル財団の被害者としての俺に会いに来ただけである。そしてそれは、今のところは計画が破綻していないということであり、そして将来的に破綻する可能性を含んでいるということでもあった。
「……ハッ! 信じられないね。大体、国際警察だって黒いところがないわけじゃないだろう。アンタも、それはわかってるんじゃないのか?」
「それは……」
そう。それが今現在も国際警察ではなくローズ委員長のところへ身を預けている理由である。
あまり残酷なことを描写できないゲーム本編においてですら、Fallの性質を利用してリラを危険な任務に追いやっていたんだ。財団以上とは言わないが、非人道的な扱いを受けたところで驚かない。
財団からの脱走後、ローズ委員長に拾われた俺は彼と契約した。俺がこの契約を守り続ける限り、彼もこの契約を守り続ける。彼の庇護下にある限りは、他の組織は手を出せない。
「……いえ、我々を信用できないというのならば構いません。アナタから保護を求めてくるようであればすぐさま引き取る予定でしたが、ただその予定が帳消しになっただけです。調査の結果、保護が必要ないと判断されれば我々はアナタに対して何もしないと誓いましょう」
……実の所を言えば、その調査がマズいのである。国際警察に保護される気は毛頭ないが、彼らの調査力は随一だ。最悪、メインプランについて勘付かれてしまうかもしれない。
しかし残念なことに、その調査を回避する手立てが思い付かない。ここでリラを消したって同じことだ。むしろそうなったら本腰を入れて調査を始めてしまうだろう。
難しい顔をして黙り込んでいると、敵意を抱いているとでも勘違いしたのかリラが神妙な様子で口を開く。
「……その、実を言えば私もFallなんです。国際警察も私のFallとしての力を利用していないと言えば嘘になりますが、気遣ってくれる部下もいればこちらの要望を飲む度量もあります。人権を無視されるようなことはありませんでした。決して、悪い組織じゃないんですよ」
……これだ。
彼女は強い同情をこちらに抱いている。これを利用しない手立てはない。
「知っているさ、
「…………え? 今、何と……」
「タワータイクーン、フロンティアブレーンであったアナタがFallであることを俺は知っている。だからこそ、アナタを餌のように使う国際警察のことが信じられなかった」
「一体、何、を……。フロンティア、ブレーン……?」
俺の言葉に、震えた手で頭を押さえるリラ。
全く聞き覚えのない言葉が、決して忘れてはいけないものだったと体が叫んでいるのだ。
言葉を重ね、思考を揺らす。
「今まで俺に仲間はいなかった。ウルトラビーストだけは唯一そう呼べる存在だったのかもしれないが、種族の差があっては慰めあうことも出来なかった。でも、アナタと会った今ならば違うと言える」
「――っ」
リラの目を正面から見つめる。彼女の表情を隠す技術は、もはや機能していなかった。
「タワータイクーン! バトルフロンティアの一角、バトルタワーを統べる女王、リラ! アナタだけだ! アナタだけを、俺は信じられる!」
「え、あ、う――」
彼女は失ったはずの記憶を掘り起こされて揺れている。今のリラの心に、国際警察としての責務は存在しない。そこに、唯一の仲間であるという意識を刷り込んでいく。
俺に頼れるのは貴女だけだと、俺を助けられるのは自分しかいないと、拾い手を求める子犬のように縋る。
「頼む、嫌だ、またあの日々には戻りたくないんだ……。死んだ方がマシだと何度も思った。いっそ殺せと何度も叫んだ。腹を切り開かれ、ワケわかんない薬品を投与され、時には電流を流された。頭痛を感じない日は無かった。腹が空っぽになっても体は吐こうとし続けた。極限状態だ、なんて言って飯を与えられず、睡眠すら許されない時もあった。何度も気が狂い、その度に正気に戻された。あんな生活には戻りたくない――国際警察にバレたらまた後戻りだ」
「そんなこと、は――」
「いいや、信じられない! リラだって組織の全てを知っているわけじゃないだろう。裏で何をやっているかなんてわかるわけがない。エーテル財団だって、その職員のほとんどは善良な一般市民だった!」
「う……」
更に同情を誘い、この少年は国際警察ではなく私だけを信用しているのだ、この少年が頼れるのは自分だけだ、という意識を強くする。国際警察ではもしかするとダメかもしれない、という猜疑心を植え付ける。
「お願いだ、俺のことを報告しないでくれ。俺のことを危険だと思うなら、ずっと監視していたって構わないから」
「いいえ、決してアナタのことを危険視しているわけじゃ――」
リラの反応に上手くいっていることを確信する。後は、上手く落としどころを見つけるだけだ。
「頼む、リラ、アナタの知るホウエンのことは、俺だけが知っている。こちらに来てからきっとホウエンを訪ねたのだろう? でも、何もかもが違ったはずだ。俺もそうだ。何一つとして知っている世界はなかった」
「……本当に、昔の私のことがわかるのですか……?」
思ったより記憶への執着が強い。恐らく、バトルタワーのことを思い出しかけているのが効いているのだろう。忘れてはいけないことだったと叫ぶ体に忘れてしまった心が追いつめられているのだ。
「勿論。俺とリラは、たった2人だけの仲間だ。俺の知る限りのホウエンの話をしよう。その代わり、リラは国際警察に俺のことを報告しないだけでいい」
「う……でも……」
揺れている。国際警察の一員としての責務と、記憶への執着がせめぎ合っているのだろう。この状態までくれば、後は少し逃げ道を作ってやるだけで十分である。
「じゃあ、1年だ。1年待ってくれれば、俺も覚悟ができる。1年間俺を観察して、その後に報告するというならば国際警察にも面目が立つだろう?」
「1年後……それ、ならば……」
1年後にはメインプランが成功するにせよ失敗するにせよ終わっている。
1年越しとはいえ国際警察への義理も果たせるし、この少年も納得してくれる。リラにとっては最良の選択のように見えるだろう。突如湧いてきた記憶の欠片で錯乱している今は、垂らされた蜘蛛の糸に飛びつくしかないはずだ。
「そう、ですね。私とアナタは唯一の仲間ですから……アナタには私しか信じられる人がいないのですから……私が、助けてあげなくちゃ……」
ブツブツと自身を納得させるように言葉を呟くリラの姿に勝利を確信する。
「ああ、ありがとうリラ! 流石はフロンティアブレーンだ!」
「はい、私はフロンティアブレーンですから、
リラの黒く濁った瞳を見つめながら、しっかりとその手を握る。
最良の結果と言っても過言ではない。最大の敵を打破し、むしろ味方に近い立場につけることが出来た。
彼女には唯一の仲間が出来た。今の状態を見る限りこの仲間意識は相当強い。思ったよりかつてのホウエンへ執着していたのが予想外だったが、もう彼女が俺にとって不利益となることをすることはないだろう。
ピンチを乗り越えたときというのは素晴らしく良い気分になるものだ。
良い気分だから、きっと俺は今笑えているはずだろう。