元ブラッド隊隊長・今ロドスアイランド所属ドクター   作:爆焔特攻ドワーフ

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邂逅

「色々忘れてしまった俺は君たちが求めるドクターではないのかもしれない。」

その言葉にアーミヤの顔が曇る。

口の中を湿らす。

「だが、例え君たちの記憶の中のドクターじゃなくても少しでも記憶の自分に追いつけるように最善を尽くそう。それが自分を起こしに来てくれた君たちに自分ができることなんだ。」

真っ直ぐにアーミヤを見据えて意思を発した。

 

アーミヤは、俺の言葉に少しだけ気が楽になったようだ。

場の空気が緩む。

肌が焼け付くような静けさから安心感を与える和やかな雰囲気に。

アーミヤの背を猫耳の少女が撫でる。

息を何度か繰り返しアーミヤがなにかを伝えようとした瞬間。

 

切り裂くようなサイレンが鳴り響いた。

同時にアーミヤのコートから電子音が鳴る。

「すみませんドクター。 はい、こちらアーミヤ。何が………『レユニオンです!レユニオンの集団が施設に雪崩れ込んでいます!早く逃げてください!』 ドクター!ごめんなさい緊急事態のようです。」

「大丈夫だ。聞こえていた。緊急事態なのだろう?ならば一刻も早くここから立ち去るべきだな。誰か脱出経路の確認ができる人物はいるか?」

俺が周りの人員を確認していると、アーミヤがポケットからタブレットを取り出す。

「ドクター、こちらの端末を確認してください。時間があまりないので詳しい説明は省きますがドクター専用の情報端末です。」

端末の画面に触れる。波紋が画面に広がり起動音が短く鳴る正常に起動したのか幾つかの電子音の確認の後に病院と思われる立体マップと自分達が居る部屋にある複数の光点と病院を起点に広がる無数の光点、おそらく先程の通信から類推するにレユニオンと呼ばれる団体もしくは集団の存在が表示された。

その無数の光点のうちの幾つかが病院に侵入し始めた。

何かを探すかのようにうろうろするのではなく目的地がわかっているかのように一直線に自分達のいる場所に向かってきている。

ここから近くの非常口及び非常階段に出るにはどこかでレユニオンとかち合うだろう。

「この中で戦闘訓練を受けているものはいるか?」

俺は素早くオペレーターたちに確認すると数人が手を挙げた。

「では、実戦を経験しているものは?」

誰も手を上げなかった。おそらく武装もそこまで重視していないのだろう、戦闘訓練を受けていると手を挙げたものたちも装備は軽装、先鋒もしくは牽制のための装備なのだろう。

なら、できることは一つ。

「ここは俺が前線を受け持とう。」

それを聞いた途端にアーミヤだけでなく他のオペレーターからも焦った、不安になった気配がした。

「ドクター!その必要はないです!まだ貴方は目覚めたばかりで体りょ…」

「大丈夫だ、問題ない」

目の前にあった壁を素手で抉る。多少取っ掛かる感触はあったがオラクル細胞で強化されていないコンクリート壁などゴッドイーターからすれば豆腐も同然。

抉り取った壁の一部を砕いて砂にする。

アーミヤの目は信じられないものを見るかのように見開いていた。

俺はそのまま関節をゴキゴキと鳴らして体を解す。そのまま手に相棒を招び出す。

本来ならどこかに消えたはずの相棒たる武器が勝手に収まる感触がする。

手首に腕輪が嵌り愛機とつながる感覚が全身に行き渡る。

呆然とするオペレーターたちを他所にレユニオンたちの先鋒と思わしき白い仮面に白を基調とした部隊が自分達がいた少し広い廊下にエレベーターで上がって現れる。

此方、自分を指差して何かを発すると猛然と走ってくる。

武器を交換する。一瞬で先が細いアサルト銃身が黒と紅色が美しい色を織りなすブラスト銃身に代わり躊躇いなく引き金を引く。

銃口から吹き出したのは鉛玉ーーーではなく全てを焼き尽くすかのような業火。

スプリンクラーが一斉に稼働させたそれは勢いを衰えさせずレユニオンを全て飲み込みエレベーターごと融解させて停止した。

人の焦げる匂いが充満するが、すぐにスプリンクラーによる水によって流されてゆく。

愛機を肩に担い未だ固まったままのオペレーターたちに振り向く。

「さて、これで一時は凌いだ。早くこの病院を脱出しようか?」

 

オペレーターたちは現実がうまく入ってこないながらもただ頷いて先頭をあゆむドクターについて行くことしかできなかった。


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