視察から二週間後の昼、弊呉鎮守府宛に伝令が届いた。
封筒には『重要書類ニツキ取扱注意』と書かれている。
封を切り、中の便箋を広げてみると前任の提督の処遇と新たな提督の着任日が記されていた。
処遇については提督としての指揮権の剥奪、軍人としての職権の喪失そして禁錮4年とのことだった。
そして次の提督の着任日は2日後だった。
〜〜〜2日後〜〜〜
今日は呉鎮守府への着任日だ。
海軍とは関わりがなかったが馴染みの佐竹からの頼みとあっては断るわけにはいかない。
「久しいなこの車に乗るのも…」
高級軍人輸送用の車に揺られながらそうぼやく。
通り過ぎていく呉の街はどことなく暗く、華やかさが無い。
いや、街の外観自体は西洋造りで彩り豊かだ、だが細かいところが美しくない
道端には空き缶が捨てられ、街路樹は密かに蕾を抱いているだけだ。
今にも泣き出しそうな曇った空も相まって気分が落ち込む。
前に来た時には道は人で溢れ、催し物がありいつでも賑わっていた、そんな街を想像していたばかりに落胆が隠せない。
そんなことを思っていると車がブレーキの音を立てた。
「つきましたよ。提督さん。」
運転手がこちらを振り返りそう言う。
「ああ、すまないな。運転ご苦労。」
そう言って運転手にチップを握らせて車から降りる。
鎮守府からは人の気配がしない。廃墟なのではないか、来る場所を間違えたのではないかなどと疑ってしまうほどだが地図を見てもあっているし、ここで降ろされたということはそういうことなのだろう。
ゆっくりと歩みを進め正面玄関の扉を開けると、薄暗いホールと先の見えない廊下が広がっていた。
「確か執務室はここを真っ直ぐ行ったところだったか」
覗き込むようにして目の前の廊下の先を見てみるが暗くてよく見えない。
電気は殆どが消え、窓から差し込む光も弱い。
「本当にこんなところに艦娘がいるのだろうか」そんな疑問を抱きながら廊下の突き当たり、『執務室』の文字が刻まれたドアのノブを捻る。
そして中を見ると、1人の少女が薄暗い部屋の中で立っていた。
「ようこそおいでくださいました。新しい提督様。私は前任の提督の秘書艦を務めさせていただいておりました香取と申します。」
その少女はこちらを見ると定型文のような自己紹介をすらすら言った。
「おう。よろしく。」
そうとだけ返して執務室の椅子に座る。
「本日はこの後13:10に着任式がございます。その時までには運動場の指揮台にお越しください。」
そういうと香取は一礼して部屋を出て行った。
「一時十分か…まだ時間あるし資料漁るか。」
〜〜〜規定時刻、運動場〜〜〜
この鎮守府の艦娘が全員運動場に並んでいる。特型に特三型、そしてさっきの香取とその姉妹艦。
艦の型ごとに縦に並んでいるが特型だけは二列で並んでいる。
ふと特三型の方に目を向けると
『提督からのお話』
その放送を聞いて、指揮台に登り、口を開く。
「あーどうも、この度佐竹に推薦されて着任した清水宗一郎だ。もとは陸軍将校だったがなんやかんやあって右手が義手になって現役を引退した。海戦指揮なんてロクにできやしないがまあヨロシク。それと秘書艦は誰でもいいから適当に執務室に来てくれ。」
そう言って指揮台を降りて着任式が幕を閉じた。
とりあえずやることは電球の入れ替えと掃除だな。