呉の枯桜並木   作:舌百

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久しぶりだな


暁に鳴り響く雷鳴

暁を助けてくれということを電に依頼されたので、解決のために他の姉妹艦…といってもまともなのは響だけらしいが貴重な情報源ということで話を聞くことにした。

電とともに特三型の宿舎の部屋前に立つ。

「ここか。」

「はいなのです。」

扉に手をかけると鍵はかかっておらずすんなりと開く。部屋の中はそこそこ広く真ん中に長テーブル、左手に二段ベッド、右手側に小さな即席ベッドが置いてあるだけだ。ぱっと見では綺麗に整頓されていて清潔な印象を受けるが、よく考えると異様でしかない。なぜなら、艦娘には感情のパッチが埋め込まれているからそれ相応の趣味的物品があるものだ。だが、この部屋には前述したもの以外何もない。研究施設のような、そんな気味の悪い印象を覚える。

「今は誰もいないようだな。」

「多分買い物にでも出かけたんだと思います。もう少しすれば戻ってくると思うのです。」

「そうか。」

地べたに腰掛ける。

電は彼女のものであろう二段ベッドの下段に腰掛ける。少しの沈黙が部屋を支配すると、部屋の扉がいきなり開いた。そこにいたのは白い髪の少女、ではなく電と似た髪色をした少女が立っていた。資料に目を通した時に見た雷だろう。だがその様子は資料とは似ても似つかない。目の下には凄まじいほどのクマを抱え痩せこけた頬の少女が立っていた。

「いな…づま、その人、だれ…?」

その少女は震える指で俺を指し、震える声で彼女の妹に当たる少女に質問した。確かに彼女は着任式の時電の後ろで下を向いていたような気もする。それなら俺の顔がわからないのも仕方がない。

「えと…新しい司令官さん…なのです。」

「そう…そうなのね…やっぱり…。」

と呟いたかと思うといきなり下を向いて聞き取れないくらいに小さい声で何か呟いた。何かを察した電が立ち上がろうとするのを手で静止する。

「わたっ…私がみんなを守るの!暁の代わりに!」

いきなりこちらを向いた雷が目尻に涙を浮かべながら殴りかかってきた。

電の悲痛な叫びが聞こえて来る。それは殴られる俺に向けたものなのか、それとも雷に向けたものなのかはうまく聞き取れなかった。そして、彼女の拳を防御もせずボタンも押さず、ただ座ったまま頬で受ける。

「ふぇ…え、あ…え?」

雷はなんの妨害もなく殴れたことに脳の処理が追いついていないらしく、殴った俺の頬、自分の拳、電などを変な声を上げながら順々に見ている。

陸上で、痩せた少女の拳といえど流石は艦娘。殴るということすらあまり知らない少女の拳であろうとも俺の右頬が真っ赤に染まっている。血は外には出ていないが内出血がひどい。おそらく頬骨も折れているだろう。

「気は…済んだか?」

傷をなるべく気取らせないように言葉を紡ぐ。

「まだ済んでねぇなら気が済むまで殴りな。俺は何もしねぇ。」

そして格好そのままに座り続ける。あと二、三発拳が飛んでくることに内心覚悟を定めていると雷は泣き出し蹲った。

「…俺ぁ何もしてないからな。」

なんとなくバツが悪くなって電に弁明を語る。

「わかっているのです。」

「慰めてやらないのか?」

「これは雷ちゃんが悪いと思うのです。」

「そうか。まあ終わるまで待つか。」

と、2人して雑談していると部屋にもう1人入ってきた。話を聞こうと思っていた相手、白い髪の少女。

そう、響である。

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