「部長。今回の会議の資料のチェックをお願いします!」
「あぁ。………ふむ。ここの資料は良いが、この資料に関してはもう少し情報を足した方がいい。特にグラフの数字に関しては鮮明にな。期限までまだ時間はある。焦らなくて良い」
「はい!」
「部長!今度のプレゼンで扱うPVをご覧いただきたく!」
「USBを置いておいてくれ。後で確認する」
部下から次々と提出される書類のチェック、それを流れる川の如く次々と流し、的確な指示を出すこの男。
「部長!どうですか?今夜一杯いきません?」
「悪いが妻が待っているんだ。また今度な」
「部長!今月3回目の社長の接待ゴルフについて…」
「あのバカに伝えておけ。少しは自重しろと。それと、今月に扱う資料についての印鑑が押されているか確認しろ。終わらせていなかったら自室に閉じ込めておけ。ついでに再来月のスケジュールを秘書に把握させておけ」
情報通信、まさにITを駆使するこの会社は、一時期、大赤字を記録した。だが、この男によって、窮地は救われ、今は黒字へと戻りつつある。
そして、終業時刻
社員は次々と支度し、オフィスを出て行く。
だが、1人だけ作業の手を止めない者がいた。
「あれ?部長は帰らないんですか?」
「あぁ。今度休暇を取るからな、その時までに小さい仕事だけは済ませておきたいんだ」
そう言いながら彼は手を進める。
そして、あっという間に終業時刻から2時間が経過した。
「ふぅ。ようやく終わったな」
机に背をかけ、コーヒーを飲み干すと、その空き缶を捨て、部屋の電気を全て消す。
東京都 豊島区 池袋
この地区は若者が多い学生街である。また、極道や、妙な集団も存在するために、喧嘩やカツアゲ、はたまた抗争がよく起こる。人々は身近に起こるその刺激に目を向ける。だが、この男はそれを汚物を見るような目で見る。
「(くだらん)」
彼にとって、その争いはただの原始人がマンモスを巡って争っているようなモノ。
すると、1人の少女が声を掛ける。
「源十郎さん」
「おぉ、杏里君じゃないか。元気か?」
「はい。お陰様で」
その少女は、小柄な身に制服を纏い眼鏡を着用しているという、いわゆる文学少女のような雰囲気を感じさせる風貌をしていた。
彼女の名は『園原 杏里』
「また分からない箇所があったら遠慮なく聞きにきなさい。友達も連れて来るといい」
「はい。いつもありがとうございます」
杏里は頭を下げると、去っていった。その姿を源十郎は微笑みながら消えるまで見守った。
「(あの歳で偉いものだ…)」
多くの人は、日常に飽き、刺激を求める。だが、この男は違う。
「おいオッサン〜何見てんだ?あぁ?俺たちゃ黄巾族だぞ?」
「罰として、罰金〜♪」
我が物顔で闊歩する未成年の若者達。辺りの者は、その気の荒さに見ることしか出来ずにいた。
その景色が、男にとって『不快』だった。
「……」
周りの人が見ている中、その男に絡んだ黄色いスカーフの集団は顔が歪み、背骨が折れる程まで叩きのめされる。
「生憎だが、お前達のような社会の荷物に時間を割ける程、私は暇ではない。友達ごっこは他でやるんだな」
外道を嫌い、群れを嫌い、日常への平和をただ求める。人外と言われる程の腕力と、神速の情報処理能力が彼の武器だ。
名を______『畑中 源十郎』
畑中 源十郎
身長 170
CV井上和彦
見た目 モブサイコの鈴木統一郎の若い頃
プライベートでは、髪を下ろしているが出社時はオールバックにしている。顔には一直線に斜め上から傷が入っており、それが影響して、『その筋』の人に間違われる事が度々ある。
現役の社会人であり、来良学園のOB。元は長野県上田市に住んでいたが、来良学園に入学するために、池袋に引っ越してきた。
驚異的な知能の持ち主であり、特に数学に関しては右に出る者がいないと記される程で、現役で東工大に進学した。難化した年であったにも関わらず、全教科平均9割という破格の得点率を叩き出している。
本人曰く、小中高ともに勉強しかしてこなかったせいか、『普通』の友達が大学入学まで1人もいなかったらしい。
園原杏里の母の弟であり、杏里の叔父にあたる。杏里の両親が亡くなった際に遺品整理や、葬式、遺産相続の手続き等をサポートした。
一人暮らしに否定的ではあるが、杏里の意思を尊重して、特別に許可している。
細身な筋肉質の身体だが、その筋肉のリミッターが外れており、静雄以上の怪力を持ち合わせている。普段の温厚な性格故にその力はあまり知られていない。
容姿は若々しいが、声だけは貫禄を匂わせる程低い。姪の杏里を実の娘のように大切に思っている。
黄巾族とブルースクウェアを『ガキの集まり』と記して嫌っている。
因みに、静雄達とは2つ年上であり、学生時代も新羅や静雄と何かと面識があった。